インタビュー

誠実に、着実に築いてきた時間 - お客様の夜明けを開ける|マーケットカーリー、キム・スラ代表

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目次

Q.マーケットカーリーを始めたきっかけは何ですか?

マーケットカーリーは生活をする中での不便さを解決したいという気持ちから始まりました。ワーキングママとして忙しく過ごしていると、仕事の後に買い物をするということはとても難しいという現実がありました。週末に大型スーパーで買いだめをすると、時間が経つにつれて鮮度が落ちてしまいました。周りにも同じ悩みを持つ人が多くいました。この問題を解決するために、良い品質の食品を毎日受け取ることができればいいなと思いました。ここで「誰でも家にいる時間である早朝の配送はどうだろうか」というアイデアが浮かびました。最も新鮮な状態の商品を出勤前に整理しておくことができ、効率的に買い物ができると考えました。こうして退勤後、夜11時までに注文すると翌朝7時に配達を受け取ることができる、国内初、週7日未明配送サービス「マーケットカーリー」を開始しました。

 

Q.明け方配送の時代を開いたマーケットカーリー、どのようなことを変えていきますか?

マーケットカーリーの主力製品は、毎日食べる野菜、果物、卵、魚介類、肉などの生鮮食品です。これらの食品は、鮮度が命であるだけに生産、収穫からお客様の食卓まで最も新鮮な状態を維持することがカギです。このために、カーリーは国内で初めて生産から、選別、包装、出荷までの流通の全過程を商品に合った最適温度を維持するフルコールドチェーンシステムを備えています。オンライン業界初の食品専用冷蔵、冷凍倉庫を構築品目別で最適の保管温度を維持しています。配送に関して、100%冷蔵車で配送することは、業界で唯一です。このような過程で発生する可能性のある商品廃棄率を最小限に抑えるため、週250万件を超えるビッグデータ分析を介して注文量を予測し、一般的なスーパーの商品廃棄率である2~3%よりも低い1%未満の商品廃棄率を維持しています。

 

Q.顧客を集めてサービスを成長させることができた理由は何だと思いますか?

マーケットカーリーは「私と私の家族が購入したい商品を販売する」という価値を重視します。なので、すべての従業員が顧客の立場で商品を選別します。このため、70種類以上の入荷基準に加え、毎週木、金曜日に開かれる商品委員会を通じ入荷するすべての商品を検証するシステムを備えています。過去5年間、品質の価値を維持してきたので、顧客の信頼を得ることができました。しかし、顧客の信頼は小さいことから崩れることがあります。なので、顧客の声にさらに集中しました。カスタマーレビューのVOC(Voice Of Customer)を介して販売商品群を広げたり、梱包材を変更したりするなど、顧客からのフィードバックを積極的に反映しています。マーケティングの開始は、顧客を理解し、分析することから始まると思います。詳細な分析で顧客がどのような商品が好きで、各商品の反応はどうか確認して満足度を高める尺度として使用しています。

 

Q.今までどれだけの投資を誘致しましたか?ファンドレイジング時期を決定する内部過程はどうなりますか?

マーケットカーリーは、過去5年間5回の投資を通じて総額4,200億ウォン(約406億円)を誘致しました。物流センターの拡張、サービスの高度化など、現在保有している資金に比べ追加の資金投資が必要な状況に全体的な事案を検討し、投資誘致を行いました。最初の投資誘致をするときは、100人を超える投資家と会いました。シリーズBまでの国内投資家を中心に投資が行われますが、2018年9月に行われたシリーズCから外国人投資家たちもマーケットカーリーの成長の可能性を見て参加しました。今年5月には、国内のスタートアップが誘致した最大量である2,000億ウォン(約190億円)のシリーズEラウンドの投資を完了しました。今回の投資資金は、金浦に追加オープンする物流センター、システムの高度化、顧客の拡大と人材を誘致すること等に使用する予定です。

 

Q.ファンドレイジングの過程で直面した最大の課題や障害は何でしたか?もし新たなスタートが必要な場合は何か他の方法を試してみますか?

5年前には新鮮製品を夜に注文すると、次の日の朝に受け取ることができるビジネスモデルについて理解されていなかった時期でした。長い時間をかけて説明しても、投資家たちからは「ありえない」という反応がほとんどでした。投資を決定する方が自ら買い物をする機会が少なく理解することが難しかったのでしょう。初めてマーケットカーリーを作るときに、顧客の立場で考えていたように、投資家の立場からも考えてみようと思います。なぜこのサービスへ投資すべきか、逆に考えてみると、投資家がしていた話を理解できます。このことを通じて、サービスの完成度を高めたいと思います。専門家なしに流通事業を開始し、多くの試行錯誤を経験しました。事前にこのような問題を予測して対応していれば、投資家たちを簡単に説得することもできたのではないかと思います。

 

Q.次の目標は何ですか?

マーケットカーリーは、過去5年間のフルコールドチェーンシステム、キュレーション、徹底した品質管理に基づいてサービスの完成度と顧客の満足度を高めることに焦点を当ててきました。今後マーケットカーリーが追求すべき目標も初心を守っていくことです。マーケットカーリーが粘り強く守ってきた商品の品質に基づいて、将来もお客様に信頼され、愛されるブランドになりたいです。 5年後、10年後、30年後にもマーケットカーリーが追求する価値に共感し、私達が提案するライフスタイルで、多くのお客様から愛されることができる会社になってほしいです。私自身もやはり、CEOでなくてもマーケットカーリーの成長と発展に寄与することができる人になることを目指しています。

 

Q.グローバル展開の計画はどうでしょうか?

国内でマーケットカーリーのサービス品質を向上させることが先であるので、海外進出について、具体的な目標や計画はありません。しかし、マーケットカーリーのサービスモデルが、香港、シンガポールなどでは十分に成功することができるのではないかと思います。現在プロバイダの方々と一緒に、海外進出まで行うことができればいいのではないかと考えています。

 

Q.新型コロナウイルスによる困難をどのように対処していますか?

カーリーもコロナは危機でした。 2020年2月19日に感染者が増え、一日の注文が30%以上に増加すると物流センターをフル稼動にしても、顧客との約束である次の日の発送が不可能だった日がありました。すぐに利益を考えた場合、一旦注文を受けて出荷を一日二日先送りで処理することもできました。しかし、これまで積み重ねてきた顧客との信頼を最優先に考えました。なので、注文締切を繰り上げて、注文は処理することができる分だけ受け、それ以降は品切れ処理するシステムに変え対処しました。目先の売上よりも私たちが5年間守ってきた約束を着実に続けることがより重要であると考えたからです。 5月末、常温物流センター勤務者が陽性判定を受けたときも陽性の事実が分かってすぐに物流センターを閉鎖し、防疫当局の指示に基づいて関連の従業員全員が隔離し、物流センター全体の防疫を行いました。関連した内容を顧客とメディアに継続して知らせ、事後処理についても毎日共有しました。これからも一緒に働く方の安全を注意深く見守り、お客様たちも心配なくご利用いただけるように最善を尽くします。

 

Q.初期段階の創業者にありがちなミスは何だと思いますか?

創業当初は目先の成果を出すために急ぎ、焦る気持ちから失敗をします。マーケットカーリーも初期には非常に困難な時期を過ごしました。当時注文数はもちろん、顧客が増えることも、手で数えられるほどでした。このような過程を毎日見るのがかなり辛かったです。「このような成長速度で私が夢見た会社を作ることができるのか」という心配が繰り返され、思わず急いでしまい、オーバーペースになってしまうことがありました。このような感情は、創業をした人であれば誰もが一度は経験したと思います。もちろんこのように急ぐほど、最終的に会社の方向を見失って路頭に迷うだけです。なので、私は今与えられている今日の仕事に最善を尽くして、それに対する結果は、月に一度程度見るようにして調節しました。その呼吸を均等にしながら着々と準備してみると、結果が付いてくるようになってきました。創業した方も、予定のある方も、このような困難な時期、目の前のことに急いで焦るよりも心をしっかりと持って、遠くを見る習慣をつけようと思うといいですね。

 

Q.スタートアップがマーケティングを行うときにどのような部分を考慮すれば良いでしょうか?

スタートアップは、まず大衆に知ってもらう必要があります。どのようなサービスなのか、顧客が知ることで流入が増加して、利用者も増えるからです。この時、大きなコストが費やされている広告について悩みが出てきます。しかし、スタートアップは予算不足のために、大々的な広告マーケティングを進めるには限界があります。また、限られた人員で広告進行した後に増加する顧客の流入への対応も難しいです。その過程で、顧客離脱になってしまうこともあります。流入した顧客を維持することが重要です。新規顧客が残っていくようにサービスを継続的に改善していくことが、スタートアップが必ず考えなければならない部分です。

 

Q.これまでに受けたアドバイスの中で最も貴重なものは何でしたか?

事業初期に複数の人と多くの話を交わしが聞いた言葉の一つが「千時間と万時間の力を信じる」という言葉でした。千時間を使うと一歩先に行くことができ、さらに万時間で、その分野についての専門家になれるという内容でした。もちろん、最初からすべてのことをうまくできるわけではありません。むしろ、それは正常であると言えるかもしれません。ただし、すぐに失敗にうつむくよりは、可能性に対する試みにより意味を置きました。結果が良くなくても、その過程で下した判断を分析することに焦点を当てました。固く決心しながら、これらの手順を繰り返しているため、今の軌道に乗っているのだと思います。創業を始めた方、悩みを抱えている方も同様です。成果が良くなくても、一日一日最善を尽くして挑戦してみることが最も重要です。大企業でも、小さな企業でも問題は常に起こるものです。ただし、その問題をどのように扱い、その過程で何を学ぶかで差が生じます。困難と試行錯誤が近づいてきたときに、むしろ発展する機会とするならば、より大きな成長をすることができます。

 

Q.人生を変えた本は何ですか?

人生を変えるといった素晴らしい意味ではなく、お勧めしたいものを選んできました。まず、ロバート・アイガーが書いた「ディズニーだけがするもの」という本です。ロバート・アイガーは15年間ウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOを引き受けるのですが、今年2月に引退した人物です。派手なスペックではなく、大器晩成型リーダーで、人との間の調和と疎通を一番重要視するCEOとして知られています。最も会ってみたいCEOにロバート・アイガーと答えてきました。本人の成長過程から企業のイノベーション戦略と未来の青写真をどのように描いてきたのかなどを解いた本であるので、多くの方にお勧めしたいと思います。2番目には、ハンス・ロスリングの「ファクトフルネス」です。何かについての意思決定をする際に、ファクトに基づいた決定が意外に難しいという点を取り上げ、データの重要性に言及した本です。この本を読みながら拡大して解釈したり、視点を歪曲したりしていないことを学ぶことができます。データに基づいた客観的な思考の重要性を改めて悟ることができ、助かりました。

 

Q.毎日どのように動機を与えるのですか?

私自身を自ら評価してみると、天才型ではなく、努力型に近い人間だと思います。私自身に才能がある場合は、長い間、誠実に向き合う部分ではないかと思います。このような点をよく知っているので一日一日のベストを尽くすことが私にはむしろ当然のことでした。マーケットカーリーも同様です。毎日の段階的な改善が大きな山を作るという信念を常に持っています。些細な内容でも一つずつ「昨日より良い今日」を作るために努力しました。お客様の声の中でブルーベリーの品質が良くなかったならば、今日はこの部分を解決します。次の日には配送に関連した内容を修正するというように一日一日を送ってきました。事業でも人生でも着実にすると、最終的に光を見るという真理は同じだと思います。毎日の緩やかな改善が、最終的に大きな山を作ると信じて、今後も着実に、また懸命に働くことです。

 

Q.もし10年前に戻るならば別の方法を試してみたいと思いますか?

その当時を思い出してみると、仕事が多すぎて、自分のケアに気を使っていませんでした。特にマーケットカーリー創業当初は会社に専念して健康を顧みず、2017年頃にバーンアウトを起こしてしまいました。会社が初期だったので仕事第一でしたし、健康を顧みることができませんでした。体力的に壊れてしまうと精神的にも影響を与える可能性があることを痛感した時期でした。もし10年前に戻ることができるならば、健康管理や瞑想など自分のための時間を通じて少し余裕を与えたいと思います。


原文:마켓컬리, 김슬아 대표가 성실하고, 부지런하게 쌓아온 시간 - 고객의 새벽을 열다. - beSUCCESS

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記事を書いた人
beSUCCESS

beSUCCESS is a professional media company with a particular focus on startups and tech industry | beSUCCESSは、韓国内企業の海外進出を支援するメディア会社としてシリコンバレーを含む全世界テックトレンドとスタートアップニュース、起業家精神など韓国内スタートアップのインサイト拡大のために必要な海外発信情報を直説的、間接的に提供するだけではなく、韓国のスタートアップエコシステムとリリース情報などの主要ニュースを英文で世界各国に提供し、韓国スタートアップのグローバル成功を支援する「つながり」の役割をしています。

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