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【ちょい事情通の記者】コラボレーションツールJANDIの競争相手がSlackでもSwitでもなくKakaoTalkである理由

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【彼のWhy】コラボレーションツールJANDIの競争相手がSlackでもSwitでもなくKakaoTalkである理由

Toss Lab(JANDI)

  • ちょい事情通の記者 2号|イム・ギョンオプ

 最初はJANDIもテック企業をターゲットにしていましたが、数年で方向転換しました。テック企業の間ではSlack(スラック)がより早く普及しており、機能的にもSlackの方が優れている部分があります。それでもまだコラボレーションツールを使っていない会社の方がたくさんありました。なぜだろう?よくよく考えてみると、問題はKakaoTalk(カカオトーク)でした。部長が業務指示を今でもKakaoTalkで行っている会社があちこちにあったのです。だからJANDI(ジャンディ)の競争相手は、SlackでもSwit(スウィット)でもなく、KakaoTalkになりました。

JANDIはスタートアップToss Labのコラボレーションツールです。スタートアップを経てSalesforce(セールスフォース)のサービスとなったSlackがすでに韓国に公式進出し、ちょい事情通の記者たちでも紹介したイ・ジュファン代表のSwitも猛烈な勢いで成長しています。Kakao(カカオ)とNaver(ネイバー)までコラボレーションツールビジネスを行っています。それに比べて、JANDIはスタートアップの間では一般的ではありません。

「技術的な多くの機能を求めるなら、SlackやSwitを使った方が良いかもしれません。しかし、市場のすべての人がテック機能を求めているわけではありません。このような機能を難しく複雑に感じている方や企業が確かに存在し、この方々にはコラボレーションツールの最も本質、その文化を伝え、味わってもらうことが重要です。いつもスンデクッパ屋に行っている方に、会社の前のパスタ屋さんも美味しいとお教えするように。それがJANDIサービスの目指すところです。」 

企業のコラボレーションツールの導入が増え、その中でコラボレーションツールをめぐる激しい競争の中で、JANDIは今年6月で設立9周年を迎えるそうです。JANDIが生き残り、成長できた理由と、この激しいコラボレーションツール市場の将来が気になりました。Toss Lab(トスラボ)のキム・デヒョン代表にお会いしました。

Toss Lab キム・デヒョン代表 /Toss Lab提供

-コラボレーションツールの核心は何ですか?コラボレーションをサポートするということ?

「理念は『仕事をサポートするサービス』です。仕事には様々な種類がありますが、その中でもコラボレーションに焦点を当てています。会社でもプロジェクトでも、どんな業界や規模でも、コラボレーションは重要です。コラボレーションの中にも様々な内容がありますが、特にツールの役割としては、コミュニケーションとファイル管理の部分が特に重要です。

つまり、不必要な時間の無駄や情報の重複伝達などの問題を解決するのです。以前は社内システムでこれらの問題を解決しようとしていましたが、実際には多くの非効率がありました。そのため、人々はKakaoTalkやTelegram(テレグラム)のようなツールを使うようになりましたが、これらのメッセンジャーツールはリアルタイム性と利便性は良いですが、ファイル管理やその他の必要な機能が不足していました。JANDIはメッセンジャーの欠点を補いつつ、リアルタイム性と利便性はそのまま維持するつもりです。」

-Slack、Switと比較して、非常に具体的な機能的なメリット、あるいはアクセシビリティがより良くなければ競争にならないのではないでしょうか?顧客としてJANDIを使うべき理由は何でしょう

「まずは価格です。高くないと思いますが、大規模に導入する企業は結局SlackとSwitの価格を比較します。Slackに比べ、JANDIは価格的にアクセスしやすいのが特徴です。韓国やアジア諸国のユーザーの購買力を考慮しています。

Slackはアメリカで始まり、初期のターゲット顧客はIT開発会社でした。そのため、Slackの利点の一つは様々なアプリを連動できる環境を提供することですが、JANDIはそれとは異なるポイントを強調しています。アジアのユーザー言語と便利なUI/UX、そしてKakaoTalkやLINEのようなプラットフォームに慣れ親しんだ形の機能フローを備えています。そして、外資系ツールが注目しない当社だけの特別な習慣や働き方も含まれています。例えば、オープンコミュニケーションをしながら検索ベースでダイレクトメッセージを送る機能や、組織図、機能図も搭載されました。

韓国の消費者の傾向を見ると、NaverやGoogleの最初の画面のように多くの情報とツールを好む傾向があります。コラボレーションのためのToDo管理、メッセージ確認機能などもSlackより先にローンチしました。また、Slackができないのは、韓国企業のローカルグループウェアと連動させることでしょう。韓国企業の中には、SaaSを使わず、レガシーグループウェアを諦められずに使用している会社もあります。JANDIはこの連動が可能です。」

-機能的にも技術的にも、SlackやSwitのように、あれこれ機能を入れて対抗するのではなく?

「アメリカは7年前から平均して1社が使うサービス形態のSaaSが17個ほどありました。当時、韓国はGoogleDriveを含めて大体5個前後でした。JANDIは優先順位を決めなければなりませんでした。Jira(ジラ) やTrello(トレロ)などの有名ツールはJANDIで連動可能です。しかし、Slackのように数百個はサポートしていません。そのようにサポートしても、JANDIのターゲット顧客がこの機能を使いこなせるとは思えません。そこで注目したのがローカルとの連動です。

そして、Trello, Jiraのようなツールとうまく連動しようとしても、この機能を長く培ってきたSlackよりよく作るのは難しいということも知っています。Switはこのような機能を独自に提供する方向に発展していると思います。他のサービスが得意な分野はそのままにして、連動をスムーズにする方向です。製品哲学に違いがあります。」

-具体的に、どんなグループウェアと連携しており、どんな機能をJANDIで使えるのでしょうか?

「以前は、会社で承認や品目を上げるとき、グループウェアシステムに直接アクセスして確認する必要がありました。しかし、グループウェアと連動すると、JANDI内でその承認や文書に関する通知をリアルタイムで受け取ることができます。承認権者として誰かが支払いや承認の要求を上げると、JANDIですぐにそのシステムのウィンドウをクリックして内容を確認して承認することができます。また、JANDIではアラーム以外にも内容の要約を受け取ることができます。このような部分は設定の違いによって使い分けることができます。

社内のコラボレーションはSwit、Slack、JANDIなどのツールで可能ですが、外部とのコミュニケーションはまだメールが主な手段として使われています。もし自社がGmailのようなメールではなく、グループウェアのメールを使用している場合、JANDIでメール通知も受け取ることができます。韓国国内のグループウェアとの互換性が高いのです。」

 

JANDIサービス /Toss Lab提供

まだ仕事でKakaoTalkを使っている部長にJANDIをおすすめする理由

-KakaoTalkを使っている部長をJANDIに連れてくるという戦略は、うまくいってますか?顧客の会社はどのようになっているのでしょうか。 

「製造業、F&B、流通業、コマースなど分野は様々です。有料モデルを使用しているJANDIの顧客会社は3500社になります。最近、多くの企業がテックを導入していますが、よく見るとテック導入のレベルが違います。そのためJANDIは少しテックではない会社に焦点を当てています。最も重要なのは、レガシー企業のメッセンジャーとKakaoTalkのような個人メッセンジャーをまだ業務に活用している会社です。プラス、Slackのコストが負担になっている会社達。Slackはドル決済なので為替リスクもあります。最もJANDIを歓迎するのは、流通や物流分野の企業です。そうした企業は在庫、販売管理のため、独自のグループウェアを非常に多く使っています。しかし、JANDIはこの連動をカスタムサポートしているためです。このような企業は、JiraやTrelloのようなツールの使用割合よりも、グループウェア連動が優先されるため、JANDIを歓迎しています。」

-今でも大企業はSI系列会社を通じて独自のグループウェアを作り、メッセンジャーを使うことが多いです。この市場を、突破できるでしょうか?

「Lotte(ロッテ)百貨店全社がJANDIを導入し、1年以上使っています。もともとLotteはすべての系列会社のIT製品をLotte情報通信が担当していました。それでもJANDIを使い始めたのです。SAMSUNG(サムスン電子)もグローバル支社はSlackに切り替えています。これ以上SDSではサポートできなくなりました。複数の系列会社のエンドユーザーのニーズにSIが追いつくことができず、SIは特定の要件を受け取り、6ヶ月後に納品します。しかし、このタームがどんどん減っています。デバイスが増え、OSが更新され、競合他社の新機能が出るまでの時間はとても早いです。結局、エンドユーザーの需要を満たす方法はSaaSしかなく、この方法がメガトレンドです。」 

-チーム、部署のKakaoTalkグループチャットを作った部長は、なぜKakaoTalkをコラボレーション用に使うのでしょうか?

「ある意味、KakaoTalkが本当に良いサービスであるからです。本当に良いサービスは、お酒に酔っていても簡単に利用できるものでなければなりません。その分、慣れ親しめて、簡単でなければなりません。KakaoTalkは私たちにとってそんなサービスになりました。オンラインで誰かと会話しようという時、まず思い浮かぶのはKakaoTalkです。KakaoTalkは使いやすさとアクセスが良いです。欠点は、それを使う私たちが、仕事の領域と個人の領域をうまく区別できないことです。KakaoTalkはそれだけ便利で、仕事と個人の間の境界が曖昧になり、これと共にKakaoTalkを仕事用に使うようになります。KakaoTalkを仕事で使う場合のデメリットは、様々なテーマの会話が混ざってしまい、アーカイブやフォローアップが難しくなることです。ファイルの保管も難しくなります。問題は、この多くの欠点をコラボレーションツールを使ったことがない人には説明しても無駄だということです。少しでも、体験版でも使ってみなくてはなりません。そうしてこそ、初めて違いがわかるんです。なので、Slackよりもハードルが低いJANDIが適格ということです。」

 

JANDI内でのファイル管理の様子 /Toss Lab提供

「人が集まればお金になります、Remember(リメンバー)も12年かかったといいます」

-顧客企業の割合はどうなっていますか?JANDIの主なターゲットは中堅企業?

「3500社のうち、大企業の割合は約300社で10%ですが、売上の割合は50%以上です。私たちが知っている中堅企業規模の顧客社の割合が30~40%程度を占めています。100~300人程度の従業員が働いている会社です。規模の大きい企業では、AMOREPACIFIC(アモーレパシフィック)もJANDIを使用しており、NEXEN TIRE(ネクセンタイヤ)もJANDIを使用しています。」 

-本当にJANDIを使うと働き方が変わりますか?中堅企業はこのようなコラボレーションツールに慣れてないと思いますが。

「韓国国内のLEXUS(レクサス)ディーラーの1社がJANDIを導入しました。この会社は本当にペーパー中心の文化が強いため、重要な書類の決裁をするために代理店にいる社員が本社に行くこともありました。しかし、JANDIを導入し、グループウェアとメッセンジャーを密接に連動させることで、このような紙の決裁や対面報告が激減したそうです。そうして使っているうちに、社内でも「不要な報告やペーパーを減らそう、私たちもできた!」という文化が定着し、会議回数もどんどん減り、ビデオ会議も増えたそうです。コラボレーションツールが文化を変える可能性があるのです。」

-価格がJANDIの強みだと仰っていました。問題は、価格が安いとそれだけ収益が出にくいということです。

「スタートアップの収益は信念の問題です。Rememberのチェ・ジェホ代表が最近Facebook(フェイスブック)に投稿していましたが、12年目でついに月黒字になったそうです。ものすごく多くの人が使っているのに、やっと黒字なんです。ユーザーが多ければお金を稼ぐ方法はあると思いますし、まずは多くの企業やユーザーをJANDIに引き寄せるために最低限のコストをかけて営業をするというアプローチです。

企業が必要とするサービスは非常に多く、一度JANDIに入れば他のサービスを行うこともできます。KakaoTalkもKakaoTalkに引き付けた後、ギフトやペイなど様々なビジネスを付けて収益を上げているように。例えば、無料顧客を対象にJANDI内の広告モデルを回すこともできますし、グループウェアをサービスすることもできます。グループウェア市場だけを見ると、韓国だけで約3000億ウォン(約325.3億円)で、この市場の中でJANDIが一定のパイを占めれば、持続可能性は十分に確保できます。」

-日本、台湾にも進出しました。

「顧客企業の5%が日本、5%が台湾です。日本と台湾の場合、まだ韓国と似たような方法でグループウェアを使用しながらレガシーな文化を持っていて、Slackの代わりにもっとアクセスしやすいコラボレーションツールを必要としている企業が多いです。韓国のように中堅、中小製造企業が多い場所はそうした文化です。特に日本は大企業の文化も保守的な面があり、JANDIがより適したコラボレーションツールであることを説得しようとしています。目標は、「東アジア市場に最適化された、カスタマイズコラボレーションツール」です。」

 

JANDI内部のカレンダー機能/Toss Lab提供



/media/ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)
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ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)

朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。

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