AIを活用したリアルタイムアバター(クローン)サービスを開発するスタートアップ「Pickle(ピックル)」が、韓国内外のベンチャーキャピタルから総額60億ウォン(約6億3,000万円)のシード投資を獲得した。
今回のラウンドには、韓国のBASS Ventures(ベースベンチャーズ)に加え、シリコンバレーVCのRebel Fund(レベルファンド)、Pioneer Fund(パイオニアファンド)、さらにY Combinator(ワイコンビネーター)の卒業生であるKulveer Taggar(クルヴィール・タッガー)氏やNate Matherson(ネイト・マザーソン)氏といった米国のエンジェル投資家も参加した。Pickleはこれまでも、Y Combinator(W25バッチ)、NFX、Krew Capital(クルーキャピタル)からプレシード投資を受けている。
同社は、2024年9月に設立されたAIスタートアップで、「AIを活用してオンライン上に『自分』のインフラを構築する(Building the Infrastructure for your AI-powered Online-me)」というコンセプトをもとに、カメラがなくてもユーザーの顔や声をリアルタイムで再現できる「AI Self(AIセルフ)」サービスを提供している。
ユーザーはわずか6秒間の顔スキャンで、ビデオ会議・SNS・ライブ配信などに活用できる多様なアバター(クローン)をすぐに生成することができる。独自開発の音声・映像生成型基盤モデルにより、超低遅延環境(ultra-low latency) を実現し、映像と音声間のズレを最小限に抑えている。また、アイデンティティ・メインテインアルゴリズムによって、ユーザーの表情や個性を高精度で再現することが可能だ。さらに、ディープフェイクの悪用防止モジュールも搭載しており、セキュリティと信頼性を確保したのも特長だ。
Pickleは今年5月時点で、1日あたり新規ユーザーが約200人ずつ増加し、わずか1ヶ月でユーザー数が5倍に拡大するなど、急成長を遂げている。全ユーザーのうち70%が米国、20%がヨーロッパに集中しており、平均週5回以上のビデオ会議やオンライン会議でPickle Avatar(ピックルアバター)が利用されている。
パク・チェグン代表は、「2025年現在、生成型ビデオAIモデル(generative video AI model)は、これまでにない速さで進化している。今回のシード投資をきっかけに、Pickleは、人々が自分自身を表現し、他者とつながるための、最も日常的で革新的なAIツールを目指している。」と今後の展望を明かした。
また、今年から新たにPickleの共同創業者として加わったイ・サンジュン氏は、「来月予定されているPickle2.0のローンチを通じてユーザー層を広げ、集まったデータを基にサンフランシスコに設立予定のAIリサーチチームと連携して、自社モデルの開発を進める『data flywheel(データフライホイール)を構築していく。」と述べた。
イ氏はウォートン・スクールの経済学部とハーバードMBAを修了し、Danggeun(タングン)で北米地域のGrowth & Strategy(成長戦略)を担当した。その後、米国系VCのGreyhound Capital(グレイハウンドキャピタル)でスタートアップの後期投資に携わった。
今回の投資を主導したBASS Venturesのヤン・ヒョンジュン理事は、「Pickleは最近出会ったスタートアップの中でも最も速い速度で成長し、結果を出しているチームだ。オンライン上で『自分自身』を複製・代替するAI技術とサービスにより、今後グローバル市場で多様なビジネスチャンスを生み出すことを期待している。」と投資理由を明らかにした。