企画記事

日韓配車サービスの現在地(3/5):韓国の配車サービスの背景「旅客自動車運送事業法」

アイキャッチ
目次

第三回:韓国の配車サービスの背景「旅客自動車運送事業法」


韓国の配車サービスプラットフォーム会社は、「Uber(ウーバー)」、「Lyft(リフト)」、「Grab(グラブ)」といったグローバル配車サービスプラットフォーム会社と比較すると一歩遅れをとっています。タクシー業界の反発と、営業用車の類似営業行為に対する規制などが主な原因です。 しかし、このような制約要件があるにもかかわらず、韓国の配車サービスもやはり発展と進化を続けています。 

韓国の自動車保有環境は世界の流れと比べ、それほど変わりはありませんが、運転免許保有者の増加率は持続的に鈍化しています。それは同時に個人の自動車所有の鈍化を意味します。 特に、30代以下の運転免許保有者の割合は、近年、40%以下に下落しています。見方を変えれば、これは配車及び共有モビリティ市場を触発させることにもなり得ます。また、高齢のドライバー事故の割合が高まる中、同様にタクシー業界にも高齢化の波が押し寄せており、このようなタクシー市場の変化も、配車サービスの発展に拍車をかけています。


「旅客自動車運送事業法」 

それでは韓国は、具体的にどのような方策を通じて配車サービスの発展を進めたのでしょうか?日本の国土交通省にあたる韓国国土交通部は、2019年に「革新成長と共生発展のためのタクシー制度改編方策」を発表しました。 下記3つの方案が、改編方策の目標です。

  1. プラットフォーム業界が多様な革新を試みることができる制度的空間を設ける
  2. 既存のタクシーの競争力を強化するため、構造改革と規制改善を併行する
  3. 国民に安全かつ多様で親切なタクシー配車サービスを提供する

これに基づき、2020年3月に「旅客自動車運送事業法」が国会を通過し、続いて「旅客自動車運送事業法施行令」が議決され、同年4月8日に本格的に施行されました。現在、韓国の配車サービス市場におけるプラットフォームサービスは、上の3つの方策の枠内で提供が可能となっています。これらのサービスの定義と事例は、以下の通りです。

 

  • Type1:プラットフォーム運送事業

プラットホーム事業者がタクシー免許(第二種免許)の有無に関わらず、直接車両を確保して有償運送をする形態です。  このプラットフォーム運送事業を希望する者は場合はプラットフォーム(配車・予約、車両管制、料金前払いなど可能)、車両(13人乗り以下30台以上)、車庫、保険などの許可条件を満たさなければなりません。この事業を行うためには国へ税金を納付しなければならず、この税金はタクシー事業者の労働環境の改善などに充てられることになります。 

◆具体例:タダ・ベーシック(타다 베이식)」(現在は運営中止)

 

  • Type2:プラットフォーム加盟事業 

プラットフォーム事業者がタクシー会社を加盟店として確保し、有償運送を提供する形態です。つまり、プラットフォーム加盟事業は、プラットフォームとタクシー会社が結合し、従来とは異なるサービスを基盤にブランドタクシーが活性化されるよう、加盟事業者のプラットフォームを通じて運送契約を行います。そして、予約型加盟タクシーは、料金自己申告制に基づき、月額制利用料金設定や定額制といった様々な付加サービスの発売が可能になるもので、サービスモデルの質的改善につながります。現在韓国では、Type2のブランドタクシーが約3万台稼働しています。

◆具体例:カカオTブルー(카카오 T 블루)」、「マカロンタクシー(마카롱 택시)」 


マカロンタクシー出典:マカロンタクシー

 


  • Type3:プラットフォーム仲介事業 

仲介プラットフォームを通じて運送サービスを仲介するプラットフォーム仲介事業です。すなわち、一昔前のコールタクシー仲介と似た形です。事業者は多様な仲介料金と、これに基づいた多様で革新的な仲介サービスを提供できます。

◆具体例:カカオT(카카오 T)」、「ティーマップタクシー(T맵 택시)


kakaoTタクシー出典:kakaoT 

 


「タクシー配車サービスプラットフォーム」

韓国も日本と同じようにタクシー配車サービスプラットフォームが拡大しています。それでは韓国タクシー市場の現況はどうでしょうか。現在、韓国のタクシー市場には約23万台のタクシーが登録されています。このうち、一般(法人)タクシーは約7万台、個人タクシーは16万台ほどあります。韓国のタクシーは、一般タクシー、国際タクシー、模範タクシー、大型タクシーの4つのタイプに分かれています。

タクシー市場は2019年基準で約8.7兆ウォン(約8,700億円)規模へと反騰の気配を示し始めたのですが、一番好調だった頃の2011年の水準をまだ越えてはいません。 タクシー1台当たりの月間売り上げは、約280万ウォン(約28万円)程度であり、前年に比べて改善されたものの、これも同様にこの10年間、抜け出せずにいます。

ただ、今後のタクシー配車サービスのプラットフォーム連携による効率性の増大とともに、利益率とタクシー1台当たりの売上増加の余地は十分にあります。現在、韓国タクシー全体の15%程度が、タクシー配車サービスプラットフォームをベースにしたType2のようなサービスを行っています。Type2中心のサービスがタクシー事業と画一化しているという一部の見方もありますが、従来のタクシー産業を効率化し、消費者の選択肢が広がるという側面では肯定的だという専門家の意見が多いです。

タクシー配車サービスプラットフォームとの連携によるタクシー市場の変化や「旅客自動車運送事業法」のような法改正に伴い、韓国の配車サービスは少しずつですが、発展と進化を続けています。 


<関連記事>

第一回:共有経済、「所有」から「共有」へ

第二回:日本の共有モビリティ市場「タクシー配車サービス」

第四回:今後大幅に成長する⁉「カカオモビリティ」とは

第五回:韓国モビリティ業界初のユニコーン企業「ソカー」とは

/media/安基盛(アン・ギソン)
記事を書いた人
安基盛(アン・ギソン)

安基盛(アン・ギソン) 慶應義塾大学 経済学部 経済学科 少し面白い話を共有しようと思います。ある本で読みましたが、過去1万年の期間のうち9900年間の科学的進化速度が10だとすれば、1946年に最初のコンピューターができてから2000年までの進化速度はなんと100だそうです。 そして、2000年から2010年までの進化速度は4,000、その後の10年の進化速度は6,000、そして2030年までの進化速度は78,000以上になると専門家は述べています。 今後10年の世界では、我々は想像すらできないことが現実されるかもしれません。ますますデジタル化するこの世の中で、みんながエンジニアになる必要はなくても、少しでもI T技術の勉強に振れることは重要じゃないかなと思いました。 そこで、私の記事を通じて読者の皆さんに少しでもITの世の中に関心を持っていただけたら本当に幸いです。

関連記事

  • ホーム
  • 企画記事
  • 日韓配車サービスの現在地(3/5):韓国の配車サービスの背景「旅客自動車運送事業法」