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【そのとき投資】ゴルディアスの結び目を解くスタートアップ、S-Alpha Therapeutics

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【そのとき投資】ゴルディアスの結び目を解くスタートアップ、S-Alpha Therapeutics

Stonebridge Ventures(ストーンブリッジベンチャーズ)キム・ヒョンギ理事 

@そのとき投資(私はその時、投資することを決めました)では、現役の投資家がなぜこのスタートアップに投資したのかを共有します。

 西洋の伝説の中で有名なものの1つ。

 「紀元前334年、フリギア王国という所の首都にゴルディアスという戦車があり、その戦車には非常に複雑に絡み合い、結ばれた結び目が付いていたという。アジアを征服する人だけがその結び目を解くことができると伝えられており、アレクサンダー大王がアジア地域の征伐中にその地域を通る途中、刀で結び目を切り、アジアの王になった。」

誰もが聞いた話に言及したのは、これから紹介するS-Alpha Therapeutics社(エスアルファテラフティックス/以下S-Alpha)がデジタル治療剤というこの複雑で難しい結び目を解く人となることを願うことからであり、同時にアレキサンダー大王とは違って切り裂くことなく、1つ1つ解いてほしい気持ちで話を始めてみたい。

2017年、アメリカPear Therapeutics社の薬物中毒治療薬であるreSETがデジタルテラピュティクス(Digital Therapeutics, DTx)分野で初めてFDA承認を受けた。その後、2019年にアメリカAkili Interactive社のゲーム基盤ADHD(注意力不足過剰行動障害)治療剤などが承認を受け、世界中にDTxブームが押し寄せた。

特に、韓国内ではAkili Interactive社の承認を基点に次世代治療薬、第3世代新薬など大々的な呼称で呼ばれ、多くの関連スタートアップの創業をはじめ、既存のスタートアップのピボットまでも行われ大ブームと言ってもおかしくない状態になった。

だが、今ではこのような雰囲気は沈んでデジタル治療薬の未来に対する多くの冷静な懸念も存在している。

私もそのブームの中でデジタル治療薬開発会社投資のために多くの会社と出会ったが、適応する症状のみが違い、中身は同じ会社が雨後の筍のように出来ているだけであり、デジタル治療薬開発社には投資しまいかと考えていた。 


慣れ親しみと新しさの間で、静中動と動中静

このように疲れていた中、大きな期待なしに2021年初めにS-Alphaと初めて会うことになったが、今考えてみると、S-Alphaに会ったことが私のデジタル治療薬に対する考えを変えるきっかけになったのではないかと思う。

初のミーティングでは好奇心を誘発させる程度にだけ会社研究を紹介してくれた経営陣を通じて、できるだけ早く会社のことをもっと知りたくなり、その後私と共にヘルスケア投資をするわが社のノ・ユナチーム長と共に再びS-Alphaを訪ねた。

私たち2人は、この会社は「面白い」そして既存の会社とは「違う」ということで共感し、積極的な投資検討をすることになった。

私たちに投資せざるを得なくしたS-Alphaの核心は、まさに「NHBT」による行動矯正で生理的変化を誘発して病気を治療(Neuro Humoral Behavior Treatment, NHBT)する差別化された開発戦略だった。

このNHBTは、対象となる疾患を治療するために関連する筋肉、免疫機構、ホルモンなどを変化させる人の重要な特定の身体活動をアルゴリズム最適化し、ソフトウェア的に治療が可能なメカニズム、MOA(Mechanism of action)を作る。

多くのデジタル治療薬開発者が認知行動治療(Cgnition Behavior Treatment, CBT)という古典的な方法で精神領域治療薬にアプローするのなら、S-AlphaはこのNHBTベースで小児近視、免疫強化、癌性悪液質など、幅広い疾患のデジタル治療薬を開発している。

この新しいアプローチに対して本人はもちろん、多くの投資会社が共感し、資金調達を成功させてきており、その後会社は現在まで技術の高度化と臨床的有用性を検証するための努力を持続的に続けてきた。

その結果、SAT-001(小児近視)では韓国予備臨床の完了と同時にアメリカ臨床を開始し、SAT-003(癌性悪液質)の予備臨床準備、SAT-008(デジタルアジュバント)の研究者臨床を完了し、 SAT-008が体内免疫システムを活性化することも確認できた。

このような技術的完成度を高めるとともに、会社を内部的に強固にするために多くの力を傾けてきた。また、S-Alphaは韓国国内よりは海外でいち早く関心を集めており、誰もが知っている海外製薬会社の方から連絡を受けとり、様々な事業開発、さらに資金調達まで議論されるほどの注目を集め始めている。


コロンブスの卵

ある人にとっては、S-Alphaの核心であるNHBTの概念は、あまりにも当たり前なものでは?と感じることもあるだろう。しかし、私たちはどれだけ多くのことを頭の中に入れているだけなのか、そしてそれを現実のものにするのは難しいのかということをよく知っている。

S-Alphaはその「当たり前」に独自のアルゴリズムで誰もが頷くことができる強い根拠を作り、韓国で始めて承認を受けるデジタル治療剤開発会社ではないものの、同社が開発する最初のパイプラインであるSAT-001は韓国およびアメリカで小児近視としては初めて承認を受けることができるだろうと信じている。

最近、グローバルDTx企業の2022年第3四半期の実績発表があった。Pear社のreSET/reSET-Oが$9.3M(約126.7億円)、AkiliのEndeavorRxは$0.2M(約2.7億円)の売上を公示した。

派手なデビューに対し売上は期待以下だと見ることもできるが、その内訳を見ると、reset/reSET-Oは今年4月からアメリカ共保険の保険コード付与されており、EndeavorRxはまだ保険コードを受けていないにもかかわらず自己負担が95%台であり、今後の成長と患者の高い関心度を垣間見ることができると感じる。

デジタル治療薬市場にはまだ高いハードルが存在するのは確かに事実だが、市場は少しずつ開いてきており、ITとバイオの融合が特徴であるS-Alphaはこれを解決できると私は信じている。

Stonebridge Venturesは、S-Alpha以外にも、EMOCOG(イモコグ)、mindsai(マインズエイアイ)、spass(スパス)、Huraypositive(ヒューレイポジティブ)など、色々なデジタルヘルスケア事業を行う会社に投資と支援を行ってきた。これらの会社はそれぞれ異なる魅力で私たちを魅了し、彼らは順々に成長している。

それぞれのアプローチ戦略は異なっているが、今後これらの小さな風が集まって台風となれば、デジタル治療剤は最終的に予想を超えて製薬産業を揺るがすことはできるのではないだろうか。 


S-Alpha Therapeutics チェ・スンウン代表/S-Alpha Therapeutics  


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