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【Business Canvas 創業者キム・ウジン】 Googleの0.1%だけ説得すればデカコーン

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【Business Canvas 創業者キム・ウジン】 Googleの0.1%だけ説得すればデカコーン

「Google Workspace(グーグルワークスペース)の1000人に1人、0.1%だけ有料加入者として誘致できれば、デカコン(企業価値1兆円以上の非上場企業)になります」

起業家3年目であるキム・ウジン(33、89年生まれ)が代表を務めるBusiness Canvas(ビジネスキャンバス)は、Googleの正式パートナー企業です。GoogleがMicrosoft(マイクロソフト)とクラウドで、そして文書活用市場で激戦を繰り広げる中、Googleの秘密兵器のうちの一つがBusiness CanvasのサービスであるTyped(タイプド)という文書SaaS(saas、サービス型ソフトウェア)です。もともと天性の起業家遺伝子(DNA)だったのでしょうか。

キム代表は「幼少期はただ勉強を頑張る優等生でした。実は私、外国語高等学校を中退したんです」と話し、「実のところ、学業へのプレッシャーが大きかったんだと思います」と語ります。 ソウル大学を卒業した両親を持つ長男である彼は、「子供の頃は当然、一生懸命勉強しなければならない、と思っていたのですが、高校時代にプレッシャーに打ち勝てなかった」と話します。 「ソウル大学に行けなかったら大変なことになる」と、幼心に常にプレッシャーを抱えて生きてきたので、その反動で映画監督になりたいと思ったことがありました。」

代わりにフランスに留学した青年は、現在ではシリーズA投資を終えたSaaSスタートアップの代表として戻ってきました。キム代表のストーリーを聞いて、彼のKakaoTalk(カカオトーク)から持ってきた写真です。非常に多くの写真を提供していただきましたが、ちょい事情通の記者の目には、なぜかこの写真が彼の転機を示す全てに見えました。 


Business Canvas キム・ウジン代表のKakaoTalkには、なんと43枚のプロフィール写真があった。ちょい事情通の記者が選んだのはこの写真。90分間彼とインタビューした後に偶然見たこの写真は、キム・ウジンという起業家の真心を感じさせた/キム・ウジン代表のKakaoTalkキャプチャ


 


2023年1月シリーズA資金調達したスタートアップの事業計画書、「Runway」



インタビューの日程を調整していた昨年12月と今年1月の間に、Business CanvasはシリーズAのフォローアップ投資を獲得しました。当時、事業計画書を見たとき、他のスタートアップとは違う1ページを見つけました。ランウェイ(Runway)。お金をもらうための計画書にも、今や「生存期間」を明記しなければならない状況というスタートアップの現実を痛感しました。 2023年の投資氷河期、他のスタートアップの創業チームも事業計画書を作成する際に参考にしてほしいと、まず1ページ共有します。そして、いよいよインタビュー開始です。


「Typed」とは一体何なのか。Slack(スラック)も、Notion(ノーション)もあるのに、さらにTypedが必要なのか?

-Business Canvasが提供するサービスは「Typed(タイプド)」ですよね?

「はい。Typedという文書SaaS(saas、サービス型ソフトウェア)を運営しています。SaaSでは企業向け(B2B)のみを行っているところもありますが、有名なFigma(ピグマ)やNotionのような場合は、もともと個人(B2C)領域、つまり個人ユーザー、さらには学生から始まったケースが非常に多いです。Typedも最初は国を問わず個人ユーザーからスタートしました。Notion、Figmaもそうでしたが、アップマーケットに、ボトムアップで上がっています。個人からチーム単位、部署単位、そして、企業もスタートアップから、大きな企業まで。Slackも、最初はスタートアップが多く使っていましたが、今はエンタープライズレベルを超えて、政府(B2G)にも多く使われています。Typedは昨年は個人ユーザーとスタートアップを中心に、今年はエンタープライズまでアップマーケットする計画です。」


-文書SaaSはたくさんありますが、あえてTypedが解消すべきペインポイントというものがあるのでしょうか?

「Typedは、インストールする必要がなく、いつでもどこでもインターネットに繋がっていれば、自分のアカウントとして活用できる、そんな他の従来のSaaSと同じようなメリットがあります。基本的に文書を作成し、シェアし、知識を活用するサービスです。皆さん、共同作業をしながら文書を作成していますよね。Notionも最近よく使われるようになりました。Typedは少し異なっています。「リサーチヘビー」な文書が強みというか。例えば、Business Canvasは最近50億ウォン(約5.3億円)のシリーズA2ラウンドの調達を完了しましたよね。投資を受けるには事業計画書を書かなければなりません」(@キム・ウジン代表は直接Typedで文書作業している画面をZoom(ズーム)で共有した)

「文書ツールは、まずGoogleとのパートナーシップを通じてGoogleドキュメントツールを提供しています。Google Docs(グーグルドックス)はもちろん、スライドショー、Word(ワード)、Excel(エクセル)....つまり、MicrosoftのフォーマットもTypedで使用することができます。PDFファイルもアップすることができます。ドキュメントに入ると、従来のワードプロセッサと同じです。PPTも同様に作成できます。」

「果たして文書作業とはなんでしょう?知識を入れるコンテナですよね。知識を創出する過程というのは、既存の情報を総合して収集するプロセスではないでしょうか。リサーチ作業をしていると、たくさんのタブがあちこちに出て、忙しくなります。あるものは開いたり、あるものは開かなかったり。TypedはそれがExcelであれ、ウェブ記事であれ、YouTubeであれ、すぐに収集して一度に開くことができます。使ってみればわかります、その便利さが。」


-そのレベルの利便性を提供するサービスは、必ずしもTypedでなくてもいいのでは?

「もう一つあります。左側に見えるライブラリパネル、独特ですよね?いろいろな種類のドキュメントやプログラムがすべて表示されています。自分だけでなく、同じチームの他の同僚が作業したドキュメントや、作業中に集めた外部資料をすべて見ることができます。おすすめ資料もあります。自分が見つけた資料だけでなく、他の資料も。おすすめ資料では、現在本人が作成している事業計画書というテーマに関連性のある資料を上げてくれます。以前に他の同僚が作った資金調達に関連する資料、例えば英文IR資料のように、自分が作っていなくても同じチームメンバーが作っていれば、その資料を見せてくれます。検索機能もあります。」

「事業計画書を書きながら、「プライシング」をGoogleドライブで検索してみます。チームメンバーが投稿した成果物を活用します。知識のネットワーク効果が出始めます。単に成果物だけでなく、チームメンバーがそれぞれのレポート作成時に参照したり、探していた資料まで見ることができます。ここの検索結果にSlackのプライシングが出ましたね。誰かが、探しておいた資料です。ここのバックリンクを押すと、見えますよね? この記事はSlackのホームページの画面です。このように外部資料のソース確認も可能です。誰かが作業するためにキャプチャして持ってきていたものということです。私はウェブサーフィンをしたり、キャプチャする必要がなく、この資料を持ってきて、事業計画書を作成するときに使えばいいのです。」

Business Canvasキム・ウジン代表/Business Canvas提供


世界の知識労働者は毎日平均2時間、外部の資料を探すのに時間を浪費している


-知識コラボレーションツールは企業にとって数百億ウォン(約数十億円)の価値がある?

 「一昨年のMcKinsey(マッキンゼー)レポートによると、世界中の知識労働者が一日平均2時間から2.5時間を外部資料を探すのに費やしているそうです。 SlackやGmailなど良いツールが多くなっていますが、情報がどんどん分散しているのです。従業員1000人の企業であれば、年間300億ウォン(約31.7億円)以上の損失がこのような非効率のために発生します。」


-Typedのシステムは、資料の価値を一つ一つ評価する能力もあるとお聞きしました。

「おすすめ機能は使えば使うほど強力になります。例えば、ある文書を書くときに、どのような資料がどのように活用されるのか、システムは把握していますよね。時には昨日自分で書いた文書をまた自分で参考にすることもあります。このように他の人が多く参照するケースをもとにして、関係性が定義され続けます。多く利用された文書は、「おすすめ」のより良質な対象となります。人間の脳と同じですね。人間の脳もフォルダシステムのように膨大な分類をするのではなく、強化学習をしていますよね。連想に基づいてニューロンとシナプスの間で強化学習が続くように。 (@キム代表は、チーム全体の文書が散らばっている、各文書は複数の線で繋げられた画面を表示した)例えば、今この文書は一人で紐が切れた凧のように何のリンクもなくかけ離れており、結局チーム全体で見た時、あまり活用できない資料です。わざわざ削除しなくても、活用度が自然に下がると、あまりおすすめに表示されなくなります。論文を書くとき、たくさん参考されるとランキングが上がるのと同じです。」


-例えば、共有するチーム、あるいは企業全体、とにかく共有権限を持つすべての人が投稿した文書や、その時に活用した外部の他の資料をすべてTyped上で見ることができるということですよね?自分が行う文書作業に応じて、おすすめを行いますが、基本的なアルゴリズムは、以前に似たような状況で多く引用された文書を再びおすすめするというもの、ということですか?

「その通りです。もちろん、ここにロックマークがあるように、チームレベルで一緒に使っている空間であっても、例えば年収関連の資料であったりの権限管理が必要な資料は、1人で見たり、何人かで見たりできるように、別途権限設定が可能です。」


-どのようなフォーマットもすべてドラッグ&ドロップできるのですか?ライバルであるMS Wordもですか?Hancom(ハンコム)のWordも?

「コンテンツの形式フォーマットに関して制限はありません。例えば、ウェブから文書をこのように持ってきて、取り込むことができます。コントロールcを押すだけでTypedクリックボードで認識し、作成画面でコントロールvを押せば完了です。クリックするだけで、すぐに入れることができます。画像でもハングルでもパワーポイントでも何でも、このようにドラッグ&ドロップするだけです。MS Wordでも、パワーポイントでも。Excelも大丈夫です。」

 

184カ国で使われている?合ってはいるが、ユーザー数はまだ少ない…初期段階


-Business Canvasの企業紹介書を見ると、Typedは184カ国に進出しているんですね。

「Typedは昨年2月から有料化しました。一昨年の12月まではクローズベータテストの段階でした。2020年7月に法人を設立しました。実際、他のスタートアップでは、ある程度最小機能製品(MVP)を作ってから、法人設立する場合も多いですが、私たちはそうしませんでした。製品開発を始めたのは2021年1月くらいからです。企画段階におけるユーザー検証に時間がかかりました。1年ほどCBTをして、2021年、昨年2月オープンベータテストを進めながら、すぐに有料化しました。初期なのにユーザーが184カ国まで広がったのは、様々なプラットフォームで個人ユーザー、アーリーアダプターを中心にバイラルが大きかったからだと思います。」


-ユーザー数は?

「まだユーザーは3万人ちょっとのレベルです。一国に1人というところもあります。絶対的なパラメータはまだ大きくないです。スリナムでも1人使っているようです。ただ、184カ国というところをアピールするのは、それだけ拡張性があることを伝えたいからです。韓国内には多くのユニコーンがありますが、ほとんどが内需中心のスタートアップです。Typedはグローバルな拡張性に非常に優れています。言語メニューだけ翻訳すれば誰でも使えます。文書というのはとても普遍的なサービスです。サウジアラビア人でも、インド人でも、カナダ人でも、韓国人でも、ほぼ同じリサーチと文書作成プロセスを行っています。」


-3万人全員が有料ユーザーではないですよね?

「はい。基本的に無料で利用可能ですが、プレミアムを使う場合は有料です。昨年2月に個人ユーザーを対象にアーリーバード特典として、迅速に有料化し、仮説検証もその時にやってみました。人々が本当にお金を払うのか?当時は4.2ドル(約540円)ほどでした。作る側としては先を見ますよね。これに、まさか課金するわけない、正直そういう気持ちが大きかったです。まずはユーザーの判断に任せるべきだと思ったのですが、予想以上に多くの方が決済してくれました。B2C市場に早く行ってもいいと判断し、4~5月に追加機能を入れ、6~7月から本格的に今のプライシングプランへ移行しました。」

「最初は誰でも自由に登録すれば、機能制限なしで、Googleアカウントで25個までの文書を作成することができます。Typedに慣れ、効用を感じるのが、大体25個文書を作成してみた辺りで、そういう方々に課金を設けます。昨年7月辺りからB2Bも始めました。今は顧客はほとんどスタートアップ企業です。まだ初期段階です。」

 

Business Canvas キム・ウジン代表のYouTubeインタビュー映像


創業1年でユーザーも1000人しかいないのに、Googleとパートナーシップを結んだノウハウ


-文書市場は飽和しているのでは?飽和した市場で何を得るのでしょうか?

「いいえ、黎明期です。TypedはGoogle Workspaceをベースにしています。Google Workspaceのユーザーは世界に約30億人ほどです。もちろん、Gmailユーザーの方が圧倒的に多いです。本当にGoogleの文書ツールのみを使うユーザー、特に有料で使うユーザーは600万人以上だとされています。現在の文書市場で注目すべき点は、MS OfficeとGoogle Workspaceのデュオポリー、つまり寡占市場という点です。元々はMSの独占でした。Googleが価格競争力や同時コラボレーションなどで若いユーザーの間で圧倒的に強くなってきています。Typedは、このようなGoogle Workspaceをベースに、Googleの効用をそのまま使えながら、コラボレーションや知識活用という価値をプラスするものです。30億人のうち、仮に1%がアプローチ可能な市場とすると、3000万人です。Typedが1%を掴みきれず、数年で0.1%だけ掴んでも300万人ですよね。1000人に1人だけでも、先ほど説明したTypedの機能を良いと感じたら、この市場を掴めるということになります。」


-300万人加入者がいれば、企業価値はどの程度になるのでしょうか?

「よく知られているNotionの有料ユーザーが300万人です。有料ユーザーは例えば月に10ドル(約1300円)ずつ払い続けますから。Typedが本当に0.1%さえ説得できれば、デカコンとなることができます。」



-なぜGoogleはTypedをエコシステムに入れたのでしょうか?まだ1年も経っていない時点で、Googleが急にTypedをパートナーとして認めましたよね?

「創業時からGoogleと戦略的に何かをしようと思っていたわけではありません。試行錯誤からアイデアが生まれるものですよね。最初は文書エディタを自社開発しようと思っていました。2週間ほど開発していて感じたのは、「このままではエディタを作って終わってしまう」ということです。Googleもそうですし、MSもこれだけ良いのに、ユーザーが当社が作ったエディタの便利さを感じるのかどうか疑問でした。それで、Google Docsやスライドなどを使って開発してみました。すると、予想よりよく合うんです。リサーチしてみました。Googleの状況を少し把握しました。Googleはクラウドのシェアを上げなければならないのですが、その戦略的要が文書ツールなんです。MSがAzure(アジュール)のシェアを急速に引き上げられたのは、MS Officeのシェアがかなり高かったため、それをバンドリングして素早く拡散することができたのです。Googleの立場からすると、Googleクラウドでお金を稼ぐためには、Google Workspaceのシェアを上げることが非常に重要な戦略的KPIだと感じました。」

「一昨年の8月、つまり創業して1年くらい経ったときに初めてGoogleと連絡を取りました。 TypedがGoogleに与える効用が明確だと話しました。Googleは結局MSと競争しており、追撃者の立場ですから、お助けします、と。最初はGoogle Koreaを説得し、 Google Asia Pacific(グーグルアジアパシフィック)を紹介してほしいと頼み、その後Google本社、このように説得の連続でした。」


-創業1年目ならGoogleに見せるデータもないはずですが、説得のポイントは?

「説得の要点は、当社はそちらを助けることができる、ということでした。当社はスタートアップ、それも当時CBTの段階でした。当時CPTのユーザーはまだ1000人弱だったのですが、結局Typedを使うのはGoogle Workspaceを使うのと同義なんですよね。TypedはGoogleログインしかサポートしていなかったので。「韓国において、このようにTypedを使う中で、MSからGoogleに移ってくる。移行されるのだ。当社のユーザーは今は1000人しかいないが、10万人、100万人になれば、かなりの部分がGoogleユーザーへと移行されるだろう。したがって、GoogleがTypedを手伝ってくれなくてはならない。」それが効きました。」

「また、Googleからすると、自分たちがセールスをする際にも、Typedが非常に役立ったと判断しているようです。Googleがアジアエンタープライズ市場に本格的に参入しだして、思ったより経っていません。アジアの中堅大企業においては、既存のGoogleのみを見せたときよりも、Typedを含む、Google Workspace全体を見せたほうが、潜在顧客の反応が良かったのです。MSでは見られなかった、知識ネットワークおすすめ機能などが悪くなかったということです。」




パリ大学 イェール大学 スタンフォード大学 ソウル大学 ニューヨーク大学...学歴で話題になったスタートアップですが


-Typedのライバルは世界ナンバー1のNotionですか?

「正直に言えば、そうですね。もともと私は生産性ツールであるNotionを含め、この分野のマニアでした。2010年、Evernote(エバーノート)しかなかった頃から。学士・修士で経営学を専攻していたので、常にリサーチしていました。コンサルティング会社に入り知識小売業者と呼ばれるコンサルティング会社でリサーチを行っていました。気づいたのは、中堅企業や大企業も同じように、リサーチは非常に非効率的だということです。」

「最初は文書の共有とコラボレーションをしたのですが、ユーザーたちはとにかく同じ文書、コラボレーションスペースにいるため、TypedをNotionの代わりとして認識していました。もちろん、Business CanvasはNotionとは比較にならないほどの初期スタートアップ段階であるため、より特定のバーチカルで、よりターゲティングするための準備をかなり行っています。」


-創業アイテムは、長い間文書のペインポイントを見る中で見つけたようですね。

「フランス、イギリス、アメリカで学士号と修士号を取得し、韓国に来てすぐにDeloitte(デロイト)で2年ほどコンサルタントとして働いていました。非効率性を感じました。例えば、隣のチームで実は数ヶ月前に同じようなプロジェクトをやっていたということがありました。その時、どれだけリサーチしていたことでしょう。でも、その時の資料を全く活用できず、また資料を作り直します。また、フォルダはどれだけ沢山あるでしょう。これは国や企業規模を問わず、誰もが同じように経験する問題だと感じました。いえ、コンサルティング会社に勤めていたのを辞めて起業しようとした時も、創業アイテムは明確ではありませんでした。」


-Business Canvasは学歴が良いスタートアップというイメージがありますが。

 「否定しないのが、アイビーリーグ出身者もいるし、ソウル大学出身者もかなり多いんですよ。最初に投資を受けるとき、そういうところも強調しますよね。しかし、外部ではBusiness Canvasはスタッフを採用するときに学歴をすごく見るという噂があるようです。チームメンバーの中に高校を卒業して大学には通っていない社員がいるのですが、その話が出たとき、オフィスで「私、高卒なのにここによく勤めてるね」と言っていて、みんなで爆笑しました。実際は当然学歴などは見ていません。」



-ちょっと待ってください、でもアイビーリーグと高卒とでは年収が違うんじゃありませんか?

「違いません。まだ初期なのでそうなのかもしれませんが、年収表上では学歴による差はありません。修士だろうが、学士だろうが、高卒だろうが、良い大学であろうが、全く差はありません。他のスタートアップもそうですが、前職の年収ベースをかなり参考にします。」


-いわゆる学歴の良い方たちの間では不満があるのでは?

「学歴が良いというだけですよね。私の立場からすると、いろんな縁で集めたチームなので、そもそもそんなことは関係ないんです。今でこそ、投資資金が少しできましたが、ご存知の通り、初期は年収をそこまで払うことができないので、そもそもお金が欲しかったら(学歴の良い)人たちはすでにスタートアップではなく、他のところに行っていたでしょう。」


「ソウル大に行けなかったら大変なことになると」と彷徨っていた外国語高校生

-かつては高校を中退し、映画監督を目指していた高校生でした。

「幼少期は、とにかく勉強熱心な優等生でした。実は私、高校を中退したんです。エリートコースとは本当にほど遠い人間です。実のところ、学業へのプレッシャーがとても大きかったように思います。両親もソウル大出身の、韓国で言うところのエリートです。私は長男でした。小さい頃は、当然勉強を頑張らなきゃ、こんなふうに思っていたのですが、高校の時にプレッシャーに打ち勝てなくなりました。 「ソウル大学に行けなかったら大変なことになる」と。幼心に常に重荷を背負って生きてきたので、その反動で映画監督になりたいと思ったことがありました。彷徨っていた時、父がフランス留学を勧めてくれました。普通、海外留学といえばアメリカですが、私が映画監督の話をしたら、父が本当に一度やってみないかと勧めてくれたんです。」


-映画界には近寄らず、経営学部に進学されました。 

「転機となった最大の出来事は、フランスに行き、入学前に1年ほど語学研修をしたときに起こりました。その時、日本人の方が創業した会社でインターンをしていたんです。スタッフ5~6人の会社でした。留学生を対象に不動産を仲介するオフラインプラットフォームでした。フランスで鉄道局や郵便局が80~90年代に社員寮をたくさん建てたのですが、その建物を留学生に再賃貸するビジネスでした。経営者は日本人のおばさんだったのですが、インターンである私に凄い自主性を与えてくれました。プライシングも意見を出せば変えてくれたし、毎月給料も上げてくれました。有意義な仕事というものを、その時に初めて感じたと思います。 「自分にも得意なことがあるんだ」と思いました。6ヶ月のインターン終了後、その日本人の方が会社を譲ってくれました。ありえないケースですが、正直、私は結構うまくやれていたようです。6ヶ月の間に、韓国の売り上げが日本、中国の売り上げより圧倒的に多くなりました。おばさんが「私は辞めるから、お前が自分で経営して、スタッフにも給料をあげてやってみろ」と言ったんです。受け継いでやっていました。」


-フランスに留学させたお父さんの心境はどうでしたか?

「当時、父がパリに飛んできました。そうでなくても、遅い年齢で学校に行かなきゃいけないのに、何をしてるんだ、と言って。でも結局、経営する中で潰してしまいました。1年足らずでした。自分の不足を凄く感じました。本当に勉強しないといけないんだ、と思いましたね。大学では経営学を学びました。韓国に来てからは、コンサルティングファームで新社会人として、一生懸命働きました。」



夜10時に退社して子どもを見て、夜12時に出勤する生活...寂しくない

-有名企業であるDeloitteを辞めて、無計画に起業したケースでしょうか?

「当時は、起業はむしろ遠い存在だったように思います。実は仕事はすごく合っていたんです。ただ、虚しさを多く感じました。お金をたくさん稼がないと、これでは足りないんじゃないかと思い、副業もやってみました。翻訳関連の仕事でした。翻訳を自分でやりもしましたが、システムを作って回していました。週末を削っていましたが、かなり稼げました。月に1500万ウォン(約160万円)、2000万ウォン(約210万円)程稼いでいたと思います。たくさん稼いだため、ついつい散財してしまったり、車も外車に変えようとしたりして、妻も私におかしくなったと言っていました。お金をたくさん稼いだからといって幸せなわけじゃないんだなと改めて考え直し、自分自身が思ったことをしてこそ幸せなんだと、遅くなる前に起業することにしました。当時は、実はアイテムもはっきりしていませんでした。」

「辞表を書いて辞めましたが、どうしたらいいのか全く分かりませんでした。一応部屋は確保したのですが、1ヶ月も経たないうちにすぐに諦めて、とりあえず経験を積んでみようと思って、とりあえず別のスタートアップにCSOとして入りました。」


-起業家生活、満足していますか?一番寂しい時は?

「正直、私以外にも、似たような気質の人はたくさんいると思います。仕事しかしません。子どもが去年の7月に生まれたのですが、昨日も夜10時に退社して赤ちゃんを見て、夜12時にまた出勤しました。特別な趣味もありません。今回、チームメンバー全員に3日間、月火水の有給休暇を与えました。 いつも深夜12時、1時にも多くのチームメンバーが一緒にいたのですが、みんなが休暇に行ったのです、私も少し不安です。」


-夜12時に出勤する夫を見て奥さんは怒りませんか?

「妻もとても理解してくれる方です。もともと、以前のコンサルティングファームにいたときも、普通の一般サラリーマンと比べると、ちょっと異常なワークライフバランスでしたから。」


-パリに飛行機に乗ってきたお父さんは、現在のキム代表の姿をどう評価していますか?

「今はとても誇りに思っているようです。父と息子なので、あまり表現はしないのですが、それはむしろ私が有頂天にならないようにしているんだと思います。でも、とても誇りに思ってくれているのは確かです。父から本当に多くのことを学びました。うちのチームは珍しいことに離脱率がほとんど0です。良いか悪いかは別として、一度来られた方はほとんどここで一緒に成長し続けています。いつも思っているのが、右往左往していた私を父が信じて待っていてくれた姿、それを見てむしろ私が学びました。」

「どうにか経営をしてみている中で、とても助けになっています。人には本当に、信頼というものがすごく力になるんだな、ある人が私を信じてくれて、私がどんな決断をしても試行錯誤も含めて長期的に待ってくれて信じてくれるということが。それをたくさん学んだと思います。」

 

Business Canvasのスタッフの集合写真/Business Canvas提供

/media/ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)
記事を書いた人
ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)

朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。

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