【Adriel】マーケターのデータ雑務を3~4時間短縮するSaaS
【Adriel】マーケターのデータ雑務を3~4時間短縮するSaaS
2021年の韓国のデジタル広告市場規模は7兆5000億ウォン(約7600億円)規模と推定されます。2020年比で30%増えました。今や韓国全体の広告市場(約14兆ウォン(約1.4兆円))の中でも過半数以上を占めるメジャーな広告市場となったのです。コロナによるオフライン活動の減少とともに、デジタル広告市場がより急激に成長するようになりました。
それなのに、いざ広告やマーケティングエージェンシーや内部マーケターは困難を訴えています。アナリティクスツールが登場してはいますが、扱いも簡単ではなく、意思決定者にデータを説明するのも難しいのです。最近では個人情報保護法の強化でCookie(クッキー)の追跡が難しくなり、広告市場のデータ収集や分析も難しくなる予定です。この市場のペインポイントを狙って領域を広げているスタートアップがAdriel(アドリエル)です。Adrielのオム・スウォン代表にお会いしました。
Adriel オム・スウォン代表/Adriel提供
「広告データ分析はGoogleアナリティクスだけでは不十分」
「オンライン広告市場には広告主と広告代理店がいます。広告代理店の役割は、広告主の代わりに広告チャネルに広告を出すことです。行った結果物を広告主に報告し、報告された結果物を基に、広告成果がより良く出るように最適化の過程を経ます。そこから得たインサイトをもとに、次の広告はどんなコンテンツ、どんなメッセージで出すか、微調整を繰り返しています。このサイクルを回し続け、広告主が望む成果が出るようにすること。これが広告代理店の役割ですが、AdrielのAdOps(アドオプス)はこの役割を担うSaaSです。広告主が直接使用することも可能です。」
-広告代理店に代わるツールですか?
「顧客の70%は広告主、30%は広告代理店です。SaaSが人の役割、エージェンシーの役割を完全に代替することはできません。エージェンシーの方々の仕事のルーティンを見ると、凄まじい非効率が発生しています。広告代理店業界は残業も多く、仕事も大変ですが、テクノロジーを利用して非効率を解消するのです。広告主が直接広告を出す場合でも、このような非効率が発生するため、内部マーケターがAdOpsを使います。」
-アドテック領域では、AIを利用した広告入札を行うMOLOCO(モロコ)のソリューションが有名です。MOLOCOと類似する技術でしょうか?
「MOLOCOとAdrielは直接競合する技術ではありません。代理店、広告主が広告を出すチャンネルは、Instagram、Facebook、Google、NAVER(ネイバー)、Kakao(カカオ)など様々です。そして無数のアプリやウェブサイト、いわば、小さな紙面があります。MOLOCOは、GoogleやMeta(メタ)、NAVERのような非常に大きなチャネルを除いた、他のニッチチャネルにおいて、AIが広告の成果や良い紙面を選んで掲載してくれる役割を務めています。
Adrielはこうして、Meta、Google、NAVER、MOLOCOなどを通じて行われた広告の成果データを持ってきて、ダッシュボードを通じて分析して見せる役割です。これを代理店が広告主に、あるいは広告主に直接見せて、パフォーマンスの良いチャネルで広告を出せるよう意思決定をサポートするのです。例えば、NAVER広告やGoogle広告のパフォーマンスが良い場合は、他のチャネルの広告を移動してNAVERやGoogleで行う、というように。予算を調整することもあります。広告代理店と広告主は、広告効率を随時チェックしながら広告を出すための予算を再分配しています。このように自ら予算を再分配して最適化された広告成果を見つける過程と結果をメディアミックスオプティマイザーと呼びます。」
-広告成果分析ツールなら、GoogleやNAVERでも提供しています。
「各メディアやチャネルは、広告主や代理店が成果を確認できるよう指標やデータを公開しています。しかし、これを確認するには、マーケターがFacebook広告管理者ページ、Google広告管理者ページに一つずつアクセスしてデータを確認し、データを持ってきてレポートを作成する必要があります。どの地域、どのような性別、年齢層、どのような人に何回見られてクリックされたかを確認し、実際広告主の商品やサービスについて、どのような行動をしたかを分析します。代表的なものとしてGoogleアナリティクスがあります。しかし、Googleだけを広告チャネルとして使用する場合には、Googleアナリティクスを使用すればいいのですが、様々なチャネルのデータ分析を同時に見る必要があり、ここで非効率的な動きが発生します。
マーケターが一つずつアクセスして、Excelでいちいち値を合わせて、統合されているもののような文書を作成しなければならないのですが、この作業に3~4時間はかかります。AdOpsはこれを自動で持ってきて調整し、ダッシュボードですべてのチャネルのパフォーマンスが一目でわかるようにします。また、データを持ってきて、自社の売上データなどと組み合わせて見ることもできるので、広告から購入に至るまでの消費者の行動パターンを分析することができます。」
マーケターのペインポイントをキャッチして解決したことを説明するAdrielの広報動画 /Adriel
突然市場ニーズが生まれた理由? 「Google、Facebookの養分市場が変わった」
-広告成果のビッグデータを一目で見るには、広告主や代理店が広告を出しているほとんどのチャネルからデータを取り込む必要がありますが、どの程度カバーできるのでしょうか。
「Google、Facebookのほか、Amazon、Twitter、Yelp(イェルプ、アメリカのグルメおすすめアプリ)、LinkedIn(リンクドイン)などのすべてのグローバルサービスの広告成果データと繋がっています。アメリカではよく使われるものの、韓国ではあまり使われない海外チャネルも多いです。600ほどの広告チャネルと接続されており、デジタル広告市場全体で使用されているデータチャネルの約90%程度をカバーしています。」
-なぜこんな技術やサービスがもっと早く出てこなかったのでしょうか?ニーズがないから?それとも技術的な障壁が高いから?
「両方です。まず、過去のデジタル広告市場は、GoogleとFacebookのシェアが2つで80%でした。マーケターは出勤して2つのチャネルの成果を確認するだけで良かったのです。しかし、今は50%レベルです。ソーシャルメディアだけでも、TikTokなど様々なメディアが生まれ、様々なサービスやアプリにトラフィックが分散されています。代理店や広告主の立場からすると、データを確認しなければならないチャネルが非常に増えました。韓国ではダッシュボードのニーズが高まっており、アメリカやヨーロッパではすでにAdOpsと同様のダッシュボード型分析ツールを使用していました。AdOpsと似たような製品を作っているアメリカ、ヨーロッパのスタートアップが5~6社ほどありました。しかし、その機能はあまりにもシンプルでした。
技術が複雑なためです。データをすべてひとつずつ手間かけて取り込み、チャネルごとに異なる値を調整して合わせる作業が必要で、数百のチャネルに広告を出せるアカウントとそれぞれのチャネルに対する理解が必要です。
Adrielはマーケティングエージェンシー事業を初期からやっており、今も行っています。当社が直接広告を出したこともあり、広告に対する理解が深く、広告主もダッシュボードの必要性については共感するところだったため、広告主と一緒にダッシュボードを高度化する作業を行うことができました。最初からデータ収集と分析だけでなく、直接広告を出さなければならないプレイヤーだからこそ、迅速な開発と高度化が可能だったのです。」
-マーケティングエージェンシーとSaaSツール、どちらがコア事業でしょうか?
「デジタル広告市場が大きいアメリカの投資家は、'エージェンシー組織=R&D組織'と理解しています。引き続き広告主にサービスを提供しながらエージェンシーの役割を果たし、広告市場に対する理解を深めなければAdOps(SaaS)製品にインプットすることができません。当初のエージェンシー設立も、従来のエージェンシーをモデルにするのではなく、データを利用してツールを作り、広告を効率的に打ち出し、レポートも早く行えるモデルを導入しようとしてのことでした。業界に非効率な部分が多くあったためです。
マーケティング担当者の方に会うと、広告市場やマーケティング市場の3D業務を当たり前のように考えて仕事をしていました。毎朝、広告実績とデータを集め、広告主が一目でわかるレポートを作成するのに3~4時間使う中で、クリエイティブなアイデアを発揮する時間は減ります。単純な反復と顧客とのコミュニケーションに時間を取られ続けていたのです。これを解決すれば、他とは違うエージェンシーを運営できると思いました。」
AdOps分析ダッシュボード /Adriel提供
-最初から完璧にAdOpsを計画していたんですね。
「ほとんどのスタートアップの代表がそうでしょう。全て分かって作っているのではなく、群盲象を評すというような「まあ、これならいけそうだな」という感覚でスタートします。正直、このような細部や計画まで全て徹底していたわけではありません。
明らかに解決すべき問題があり、問題があるところにスタートアップが行き、市場が動きます。勘でわかるんです。問題は把握し、解決方法はどうすればいいのかという考えから始まり、AdOpsという製品が進化し続けたのです。」
-直接AdOpsを使う広告主もいます。
「代理店は広告の成果を報告しはしています。ただ、広告主の立場からすると、そのデータは1日遅れのデータであり、エラーもあり、正しいか間違っているかをめぐってエージェンシーとコミュニケーションを取り続けなければなりません。むしろ、代理店が行っていても、広告主が直接リアルタイムで広告成果を見たいというニーズがあります。だから広告主もAdOpsを使っているのです。」
-デジタル広告チャネルの90%をカバーするダッシュボードを作成しました。それでは、製品のイノベーション、技術的なアップグレードはもう終わったのでは?そうなれば、あとは営業を続け、顧客数を増やす作業が残っているのでしょうか。
「まだまだアップデートすべきことはたくさんあります。取り込むデータの調整、APIの更新などはメンテナンスです。イノベーションとして開発していく部分としては、ダッシュボードのようなレポート機能を超えて、最適化された広告を出すことまでのソリューションを提供するというのがあります。どこにもっと予算をかけるべきかを自動化し、結果的に最高効率の広告成果を広告主に与えること、今年重きを置いている技術分野です。
最近では、広告のコピーやフレーズを作成してくれるAIが登場しています。AIの効率も比較可能にする予定です。AIがどのようなコピーを書くと、広告効率が良かったのか、継続的に比較テストを行うことができるのです。このようなテストを繰り返すことで、代理店や広告主に対して様々な提案を続けることができます。」
AdOpsがデータを取り込むことができる広告チャネル /Adriel提供
Cookie広告時代...「Google、Instagramは負け、群雄割拠のチャネルが浮上する」マルチチャネル戦略が必要な理由
Adrielのチームメンバーの写真。前列中央の男性がランス出身のオリヴィエ・デュセーヌCTO。 /Adriel提供
-欧州の個人情報保護法の強化など、様々な問題でCookieレス(ユーザーの趣向を追跡できない)広告の時代が来ると言われています。そうすると、広告で得られるデータも制限されることになりますね。デジタル広告ビジネス業界全体の勢力図が変わるでしょうね。
「はい。今、デジタル広告業界最大の話題です。しかし、Cookieレス広告時代はAdrielにとってチャンスであり、AdOpsがさらに必要とされるでしょう。GoogleやMetaなどの広告チャネルは、顧客の流れ、1人の顧客が広告を目にしてから購入に至るまでの経路を追跡することが難しくなっています。データ収集が難しくなるのは結局はチャネルであり、個人をターゲットにした広告やマーケティングが難しくなります。
こうなると最終的に、1つのチャネルだけでは広告効果を得ることが難しくなります。例えば、Facebookだけでは最大の効率を出すことができません。Facebookの中で20~30代をターゲットにした広告と40~50代をターゲットにした広告を区別して精密なターゲティングを行うのが難しくなるためです。
Cookieレス広告の時代には、チャネルを多様化する必要があります。マルチプラットフォーム、マルチコンテンツに進んでいかなければなりません。例えば、40~50代の消費者をターゲットにした広告はFacebookに、10~20代の消費者をターゲットにした広告はTikTokに。今もそうですが、Cookieレス時代には消費者をターゲティングすることが難しいので、チャネルをターゲティングし、各チャネルごとに広告のパフォーマンスを比較し続ける必要があります。結局、チャネル間のパフォーマンスを比較するためにはAdOpsのようなダッシュボードを使うことになります。」
-広告業界では、Cookieレス時代の広告市場の動向をどのように予想していますか?
「広告業界の人間が予想しているのは、GoogleやMetaのような企業のシェアが下がり、小規模チャンネルのシェアがさらに上がる時代が来ることです。ますます断片化するでしょうね。そして、今まではメディアから与えられるデータに依存していましたが、これからは広告主が直接収集するデータがますます重要になると思います。」
-SaaSのメリットは、海外進出が容易なことです。海外顧客の割合は?
「全顧客は約300社。そのうち海外のお客様は約20%で、昨年の10%台から約2倍ほど増加しました。競合企業の中でAdOpsレベルの品質の製品は3社ほどありますが、AdOpsが最も急速に発展しています。最近、オーストラリアとシンガポールの顧客が入ってきました。オーストラリアとシンガポールのエージェンシーはタイムゾーンが韓国と似ています。しかし、製品に問題が起こってサービスを受けようとすると、アメリカやヨーロッパの会社ではタイムゾーンが違うので不便を感じるのです。そのため、この程AdOpsを使うようになり、迅速なフィードバックを得ることができるようになりました。」
-CTOがフランス出身です。フランスの開発者でしょうか?
「夫です。2007年にアメリカのUCバークレーに語学留学に行ったときに出会いました。3年ほど付き合って結婚しました。私はコンピュータサイエンス専攻で、夫はアメリカに訪問研究に来ていました。開発については夫が統括しています。
韓国語は堪能ではありませんが、文化的にはほぼ韓国人に近いです。 「これ、ワンデイジョブ?」と言うのです。一日で終わらせられるか、と。韓国の「早く早く文化」を習得してしまったのです。10年早く始めていた競合他社に追いつくためには、もっと急がなければなりません。」
-夫婦での起業はどうですか?喧嘩も多いとお聞きしますが。
「最初は揉めていましたが、今はもう揉めないアルゴリズムを見つけました。結婚したのも早かったですし、事業も一緒にやっているので、一緒に成長し、一緒に育っている感じです。そうすると、考え方、見方も似てきました。今は役割分担もうまくできています。」
-10年早かった競合他社に、追いつけるのでしょうか。Salesforce(セールスフォース)のような大手テック企業も狙う市場です。
「実際Salesforceが1兆ウォン(約1000億円)かけて買収した企業があります。しかし、ターゲットとする市場や企業にはもっと大きなところも多いです。直接市場を争っているのは、アメリカのDatabox(:データボックス)という会社ですが、設立10年以上経っています。しかし、技術やソリューションの完成度は全く遅れをとっていないと自負しています。
Adrielは直接代理店をしているので、市場のトレンドの変化に敏感で、理解が深いです。何より開発速度と更新速度が本当に早いです。ご存知でしょうか?アメリカでは犯罪捜査にDNA検査を行うのですが、このための人員がアメリカには2万人近くいるそうです。韓国には100人程だといいます。しかし、アメリカではDNA検査の結果が出るまでに60日、韓国では10日かかります。韓国人より短気なフランス人もいますしね。」
-Adrielが2回目の創業で、1回目の創業はイグジットされていますね。
「スタートアップシーンに来る前は損害保険会社(AXA)に勤めていました。データに基づいてリスクを予測するのですが、リスト予測モデルはとても単純なものでした。夫に話したところ、機械学習を使えばもっと精巧にできるとのことでした。最初は2人で作って保険会社を回ったのですが、保険会社にソリューションを売り、その後、信用評価モデルも機械学習で高度化する製品としてサービスしました。創業7ヶ月で前Yello Financial Group(イェロ金融グループ、現DAYLI FinancialGroup(デイリー金融グループ))にイグジットしました。」
朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。
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