企画記事

【ちょい事情通の記者】10年目のHUINNOのギル・ヨンジュン「愚かなミス」

アイキャッチ
目次

【ちょい事情通の記者】10年目のHUINNOのギル・ヨンジュン「愚かなミス」

2017年通帳残高ゼロ...職員は退職し自分一人だった時。

HUINNOのギル・ヨンジュン、「愚かなミス」

スタートアップの起業家がメディアのインタビューに登場するのは、だいたい「人々がその会社の可能性を認識し始めた時」です。 誰も気づいていない時は登場しません。

「2017年7月、米国本社と韓国子会社、全て合わせて職員は私一人でした。」

10年目のデジタルヘルスケアであるHUINNO(ヒューイノ)の創業者キル・ヨンジュン代表は「Appleより先に心電図時計を開発した人」という修飾語を持っています。工学博士です。2014年7月にボストンで創業しました。ハーバード大学医学部出身の教授を採用したこともあります。1時間半のインタビューの間、成功ストーリーを聞くことになると思っていました。

「2016年11月、計算してみたら給料が6ヶ月分しか残っておらず、職員に話したところ、一人ずつ辞めて行きました。しかし、創業初心者であった私は愚かなミスを犯しました。韓国では退職金を払わなければならないことを知らなかったのです。一部の職員が労働部に告発し、訴訟も起こしました。あまりにも悲惨な状況に直面しました。」

現在、累積投資額だけで700億ウォン(約71.5億円)を超えるHUINNOの10年ストーリーです。

HUINNOのキル・ヨンジュン代表/HUINNO提供


「研究しながら高額の給料もらって...SAMSUNG(サムスン電子)に就職するために指導教授の推薦状をもらおうとしたのに...」

-指導教授から起業を勧められたのですか?企業当時、職業としては何をされていたのでしょう?

「2014年7月に法人を設立し、それ以前に起業準備をほぼ1年近くしていたと思います。準備の過程で中小企業庁の予備創業者事業などの支援を受けました。釜山(プサン)大学コンピュータ工学科で教授として働いていたのですが、毎年同じ講義が繰り返される中で、自分自身も少し怠惰になっており、講義の準備も少し疎かになっていることに気づきました。何か新しいことを準備しなければいけないと思いました。そんな話をしたら、私を指導してくれた指導教授が、就職よりも起業をしたほうがいいんじゃないかと勧めてくれました。私の専攻はコンピュータ工学、詳かく言うとヒューマンコンピュータインターフェース(HCI)でした。生体から出る信号をコンピュータにインターフェースする分野です。」

「当時、SAMSUNG(サムスン電子)総合技術院でこうした専攻の人を採用しようとしていて、私としては研究も続けられるし、給料も高額ということで、教授に推薦状をもらいに行きました。教授が『大企業に行くのではなく、自分で大企業を作るのも意味のあることだ』と仰いました。」

-研究者と起業家は全く違う道です。二股の道とでもいいましょうか。

「起業を勧めてくださったのはイ・ジョンテ教授です。今は退任され、名誉教授として残られています。韓国に初めてインターネットを導入された方です。コンピュータネットワークの分野で非常に長い間研究をされていました。イ・ジョンテ教授の研究室から多くの起業家が出ています。winet(ウィズネット)もそうですし、Gridwiz(グリッドウィズ)もそうです。Gridwizはスマートグリッド電力のスタートアップで、ここの創業者も同じ研究室出身で、売り上げはほぼ年間1000億ウォン(約102.1億円)以上あり、企業公開(IPO)も準備している段階です。就職よりも起業した成功事例がかなりあったため、教授がそう勧めてくれたのだと思います。」

-博士でしかも教授だということは、専攻していたHCIが起業のテーマだったのですよね?

「研究室で主にやっていた研究テーマは、生体信号を測定する計測器のようなハードウェアを作り、入ってくる信号を解釈して「人間はこういうときにこういう信号が出るんだ」というのを把握していくことでした。肯定・否定的な感情、嘘・真実をシグナルを通して調べるという研究を続けていました。博士号のテーマは、複数の生体信号を統合して血圧を推定することです。血圧を測定するのではなく、推定するのです。」

-血圧を測定せず、連続して測定する?

「血圧を測るというのは、文字通りメジャーするやり方ですよね。しかし、血圧と関連する多くの生体信号があります。血管の信号、心臓の信号、血液の信号など、いろいろな信号をまとめて血圧はこうだろうと推定する分野です。」

「AppleWatch(アップルウォッチ)、GalaxyWatch(ギャラクシーウォッチ)は普通の人のためのもの…高血圧患者では不正確な場合がある」

-血圧は誰でも簡単に自宅でも測定できますよね?推定する必要がありますか?

「なぜ必要かというと、血管を測るとき、一度きつく締めたり緩めたりしますよね。しかし、血管は輪ゴムではありません。一度血管を締めると、再び回復するのに通常4時間から6時間ほどかかります。連続して測定することができないのです。若い人は回復に3~4時間、お年寄りだと6時間程かかります。血管が狭くなっているのです。狭くなった状態で測定し続けることはできないのです。10回、20回とは計れないのです。」

-10回も血圧を測定する必要はありませんよね?

「結局、血液について得られる情報は「点」です。連続測定ができないためです。より必要なのは、「線」の情報です。血圧がどのように変化するのか、その推移を見れば正確に体の状態を知ることができるでしょう。ただ一つの「点」の情報だけで、高血圧だとか低血圧だとか処方して薬を飲ませるのは、ある意味間違った医療行為かもしれません。連続して測定する必要がありますが、残念ながらまだ連続測定する技術は、血管にセンサーを挿入して測定する方法しかありません。多くの企業が研究を進めていますが、完璧な血圧を測定する技術は未だ作られていません。」

-待ってください。医師は毎日朝・晩に測定するように言いますが、頻繁に測定すると健康に悪いのですか?

「いえ。何度も連続して、つまり5分に1回測定するのは良くないということです。1日に1~2回測るのは大丈夫です。」

-AppleWatchやGalaxyWatchが血圧も測定してくれるのでは?それも間違っているのでしょうか?

「最近、GalaxyWatchやAppleWatchで血圧を教えてくれるというような技術が多く普及していますが、まだ完璧に血圧を測定できてはいません。なぜなら、腕時計を使う方法では、正常な人が血流を流す量を基準にしているためです。心臓が一回血液を送るときに出る量のことですが、血圧に問題のない正常な人は、腕時計で測定される連続した血圧が比較的正確になります。しかし、血圧や、心臓に問題がある患者さんがそれで血圧を測ると、全く違う情報が出るのです。時計の説明書をよく見ると、心臓に問題がある方や高血圧の方は使用しないでくださいと書いてあります。」

-本当ですか?血圧をチェックし続けたいのは、高血圧の患者さんだと思いますが、高血圧患者にはAppleWatchは必要ないということですね。

「SAMSUNG(サムスン電子)やAppleがターゲットとする市場は、普通の人の中で健康に高い関心を持っている人たちです。高血圧患者や心臓に問題がある患者を対象に販売している製品ではありません。心臓に問題があったり、高血圧の患者はこの情報が不正確になる可能性があるため、問題のない正常な人だけ使えということです。誤った情報による責任は負わないということです。健康に関心を持っている方のために作られたものです。」

-起業アイテムは「血圧を連続的に推定する機械」でしょうか。

「私は血圧を推定するために様々な信号を集約・フィルタリングする研究をしていたので、これを起業につなげてみなさいというのが教授のアドバイスでした。当時はデジタルヘルスケアという表現もあまりなく、関連する医療法、つまり、許可や認証の手続きも未整備でした。」

20億ウォン(約2億円)必要だったが...手元には融資2億ウォン(約2000万円)

 -起業したのは2014年ですが、当時、デジタルヘルスケアに投資する投資家がいたのでしょうか?

 「2014年に起業しましたが、市場がないんです。デジタルヘルスケアという概念もなかったので、「将来こうなるだろう」という漠然とした展望があるだけで、市場もなく、製品もないので、これでどうやってお金を稼ぐのかという体系もありませんでした。」

-初期に感じた絶望のポイントは?

「何もない状態から試作品を作るには、かなりお金がかかりました。ハードウェアを作るためです。当時、20億ウォン(約2億円)程必要でした。当時は私もやはり腕時計式を考えていました。このように手を当てると血圧が測定される仕組みです。指をかざすと、酸素飽和度、心電図、脈拍数、血圧の4つの情報が同時に測定されるというものです。」

-当時、それが登場していたら、スマートバンドのFitbit(フィットビット)よりずっと良かったでしょうね。

「そうです。実は2019年になって初めて、私が作った製品(試作品)が認められました。」

-起業時に試算していた所要予算は20億ウォン(約2億円)。それを集める過程は?

「私は釜山(プサン)大学にいたので、釜山大学産学協力団の助けを借りて、初期4000~5000万ウォン(約400~500万円)の支援を受けて起業しました。20億ウォン(約2億円)をどうやって作ろうか途方に暮れていました。釜山(プサン)を一生懸命回りましたが、投資してくれる人は誰もいませんでした。反応としては「お前がやってもダメなビジネスだ。SAMSUNG(サムスン電子)がやってもいけるかどうかなのに」でした。資金調達に失敗しました。ローン2億ウォン(約2000万円)と支援金で2年近く耐えながら暮らしました。でも給料は払えないし、出来たこともないし、でしたね。」(@当時は個人事業主として登録していた。正式法人設立前に融資を受けて試作開発をしていたという意味)

-試作品もない個人事業者が20億ウォン(約2億円)を集めるのは、不可能に近いでしょうね。

「試作品を完成させるには、まだ15億ウォン(約1.5億円)ほどお金が必要で、時間も1年半から2年ほど必要でしたが、とても遠く感じられました。1から100までなら、2、3くらいでしょうか。研究室の先輩がソウルに行って投資を受けてみろと言われました。紹介されたのは当時の未来創造科学省でした。未来創造科学省傘下のBorn2Global(ボーントゥグローバル)というところで、投資を専門にコンサルティングしてくれるコンサルタントの方に会いました。一日30人いましたから、10分ずつコンサルティングをするわけです。ソウルに来てその列を3~4時間待ちました。田舎者がソウルに来て2~3時間、30~40人の間に挟まれて待ち、そうして会いました。」 

HUINNOの製品/FuturePlay提供


「FuturePlay(フューチャープレイ)が先に1億ウォン(約1000万円)投資し、TIPS(ティップス)制度の恩恵を受け、R&D受注もして...必要資金は十分だと思った」

-10分で気になってもらわなければならないスピーチですね。

 「よく言われるような、3分スピーチをして、この人が興味があれば少し長く話をして、興味がなければ『もう帰ってください。次へ』こんな感じのものでした。切迫していました。技術を説明しました。その日、約1時間半、その方と話をしました。その方が「私が紹介できる投資家が2人いる」と仰いました。それでその2か所がダメだと言ったら、また私を訪ねてきてください。そうなれば、セカンドティアをまた5チームくらい紹介します、と。今日私に説明したように、彼らに詳しく説明すれば、彼らも好ましく感じると思うと、チームを紹介してくださいました。」

-1時間30分の会話の後、紹介されたベンチャーキャピタルはどこですか?

「紹介された2カ所のうち1カ所がFuturePlay(フューチャープレイ)でした。FuturePlayの投資を受けました。TIPSという制度にも助けられました。初期創業者に民間投資会社が1億ウォン(約1000万円)以上の投資をすると、10億ウォン(約1億円)近くを政府が資金支援する制度です。TIPSにも選ばれました。そうして1年半で26億ウォン(約2.6億円)の投資を受けました。」

-正式な法人設立は米国のボストンでだったのですね。

「お金が用意できてから、韓国では法律も規制もまだまだだと判断し、米国へ行こうということになりました。米国ボストンで創業しました。」

-こんがらがる部分があります。それでは先ほどのお金がなくて苦労していた頃の話は、起業準備段階の話でしょうか?

「本当に何も知らない時代で、個人事業主でした。個人事業主の状態で2億ウォン(約2000万円)の融資を受け、産業協力団からお金をもらって1年ほど苦労した後、投資してくださるご縁に出会ったのです。2014年7月に法人を設立する際に、その法人を米国に設立しました。ボストンで創業し、韓国に子会社を設立した後、TIPSの支援はこの子会社が受けたのです。」

-必要としていた20億ウォン(約2億円)の問題を解決し、2014年7月の創業以降は順調だったのでしょうか?

「韓国法人では複数のR&D支援事業も受注しました。2017年までに30億ウォン(約3億円)ほど受注しました。R&D資金を受けて、売上を作りました。創業から3年半の間に、R&D 30億ウォン(約3億円)とTIPSの支援金を合わせると、キャッシュの準備は終えたことになります。ボストンに渡り、試作品を作ったのが2015年末でした。ボストンでは米国人を採用しました。」

-ハーバード大学教授も参加しましたよね?最高の人材を集めることに成功したのですか?

「ハーバード大学教授にお会いして試作品をお見せしたところ、「私と一緒にやろう」というのが第一声でした。「チーフメディカルオフィサー」としてジョインしてくださいました。2015年、2016年はそんな感じで、資金状況を見ながら、少し厳しいですが、飢え死にするほどではないと判断しました。」


2017年7月、投資金は使い果たし、社員も辞め、法人のスタッフは自分一人。


-「Born To Global」で、カッコいい米国現地起業ですが、お金は本当に物凄く消耗する場所です。

「2016年に入り、急速にお金がなくなりました。臨床試験もしなければならず、米国の人は給料がとても高いです。起業時に考えていた必要資金は20億ウォン(約2億円)だったことから、それでも40億ウォン(約4.1億円)あれば十分だと思っていました。投資金とR&Dの受注額を合わせると50億ウォン(約5.1億円)になり、十分に耐えられる、やってみようという話になりました。実際は2倍ではなく、4倍かかりました。米国ではオフィス費用、臨床試験費用、誰かにちょっと会ってコンサルティングを受けたり聞いたりするのにもお金がかかるため、恐ろしいほどすぐにお金がなくなりました。2016年11月、資金が枯渇し始め、「大変なことになった」と投資を受けようとあちこちを探しました。」

-2016年11月に「ランウェイ6ヶ月」だったんですね。 

「米国本社には米国・カナダ国籍の方が7人、ソウルにはハードウェアとソフトウェアを開発するスタッフが18人ほど働いていて、全体で見ると25~26人ほどでした。2016年11月に計算してみたら、あと6ヶ月分程の給料しか残ってないんです。大変なことになりましたね。今更どう考えても、大事です。」

-投資を受けなければなりません。当時はシード投資しか受けていない状態なので、米国でシリーズAの投資を受ければ問題解決ということですよね?

「12月は新規投資ができないのです。12月~1月は、投資会社は新規投資を検討しません。2、3月は株主総会シーズンと重なっているため、投資活動が難しいのです。結局はギャンブルになりました。来年4月に投資市場が開いたらすぐに、投資を受けなければならないわけですから。4月に投資誘致を始めて、6月末に投資金が入れば、劇的に給料が滞ることはありません。当時、職員に「私たちには6ヶ月分ほど給料が残っている。転職をしなければならないとか、会社が不安だと思う人は辞めてもいい」と話しました。3月から1人ずつ辞めて行き始めました。実際に資金調達がうまくいかなかったのです。」

-ランウェイですが、追加の資金調達は失敗し、法人に残った社員は創業者一人だけ?

「職員が1人、2人と辞めて行き、残ったお金は7月分くらいまでにはなりました。2017年7月、最後の職員が辞めて行きました。会社に残ったのは私一人だけでした。ボストン本社とソウル子会社合わせて、一人です。幸いなことに、給料はすべて精算済みでした。その時、また愚かなミスに気づきました。起業初心者の私が何を間違えたかというと、韓国では退職金を渡さなければならないことを知らなかったのです。信じて待ってくれる人も一部いましたが、一部の人は労働部に告発し、訴訟もしました。あまりにも悲惨な状況に直面しました。2017年、2018年、2019年でした。」

-申し訳ありませんが、2017年7月の時点で、そうなっていたのなら会社はもうダメになったのでは?一体どのように再起したのですか?

「会社というには、社員は私一人ですし、とても悩みました。畳んでしまおうか?やめようか?惜しいな。そんな風に考えていましたが、2017年から韓国でデジタルヘルスケアブームが起きたのです。一人になった2017年にソウル産業振興院でソウルイノベーションチャレンジ第1回大会が開催されました。人工知能やブロックチェーンをテーマに、自由な形式でチャレンジするというものでした。上位32チーム以内に入ると2000万ウォン(約200万円)もらえます。大会は2017年5月に開催され、その年の12月まで行われました。」

ソウル産業振興院のソウルイノベーションチャレンジ第1回大会がHUINNOの再起の足がかりに

-ソウル産業振興院が救世主?潰れた企業にもチャンスを与えてくれる、政府主催のイベントだったのでしょうか?

「私は16位以内に入ろうという目標を持っていました。そうすれば、1億ウォン(約1000万円)貰えます。1億ウォン(約1000万円)あれば、充分2018年までやってみることが出来る。けれど、1位になりました。5億ウォン(約5100万円)を再びシードマネーとして受け取りました。そのお金で2017年末に再び人工知能の専門家(今のCTO)を採用しました。当時も容易ではありませんでした。退職金訴訟中だった上、ローンも12~13億ウォン(約1.2~約1.3億円)ほどありました。毎月利息を払いながら耐えました。」 

-転機はAppleによって起きたとお聞きしました。

「2018年、Appleが心電図測定機能を搭載したウォッチを発表しました。私のメールボックスが突然大騒ぎになったのです。例えば「あの世界が本当に来たんだ。あなたが2015年に見せてくれた時は、そんな世の中は来ないと思っていたけど、そんな世の中が来ている」というメールが来ました。 「あなたの考えは正しかった。今、まだその仕事をしているなら、もう一度会いましょう」という提案も。ボストン・ニューヨークで会った人たちからも、かなり多くの連絡が来ました。」

-Appleが出した心電図ウォッチをHUINNOが3年も前に試作品を出していたんですね。

「Appleより先に作ったのに、規制のために阻止された悲しい技術だとマスコミでも再び注目されました。そして、規制サンドボックス1号企業に選ばれ、規制も突破しました。2019年7月シリーズA資金調達を行いました。」

-投資会社が殺到し、連続投資誘致に成功?

「製薬会社も興味を示しました。Yuhan Corporation(柳韓洋行)も投資、全面的な支援をしてくれました。シリーズA-Bを受け取り、米国法人は清算しました。韓国で1位をとってから、また米国に出なければならないという思いです。2019~2021年に合計760億ウォン(約77.3億円)の資金調達を行いました。」 

700億ウォン(約71.2億円)以上の資金調達をし、米国法人は清算....韓国で1位になって再チャレンジしよう

-HUINNOは「人工知能ウェアラブル心電計」という製品を出しましたよね?製品名はMEMO Patch(メモパッチ)?

「現在、第1世代製品は販売中で、第2世代を準備中です。大学病院の大部分に導入され、使用されています。延世(ヨンセ)大学セブランス病院、高麗(コリョ)大学病院、盆唐(ブンダン)ソウル大学病院などです。ソウル大学病院、峨山(アサン)病院、サムスン病院へも導入される予定で、契約を完了させているところです。多くの大学病院で私たちの製品を出してもらい、患者さんが使うという方式です。」

-人体の信号を理解する機器ですよね?そもそもそのアイデアからの起業だったのですから。

「これは不整脈を早期に診断できる製品です。従来、不整脈の診断にはホルターという検査がありました。電極を何個も貼り付け、脇腹に大きな機械を装着して24時間生活するのです。HUINNOの製品は、絆創膏のように貼るだけです。パッチの形で貼ると、14日間連続して測定することができます。潜んでいる不整脈を99%見つけることができます。24時間のみの測定では、不整脈を見つけられる確率は42%です。日付が増えるにつれて高くなり、14日からはほぼ99%になります。」

-ハードウェア機器を作るのは、もはやHUINNOでなくても誰でも可能なように思えますが。

 「患者さんは、医師が処方してくれた通りに従えばいいのです。測定して病院に返却すると、HUINNOがこのデータを人工知能技術で読み取ります。心臓は1日に10万回ほど拍動します。1日でも、約10万回、24時間だけデータを出力してもほぼ1440枚程度になります。14日間で数万枚が出力されるので、それをうまくフィルタリングすることが重要な技術となります。」

「HUINNOは営業はせず、製品の開発だけをしている状態です。Yuhan Corporation(柳韓洋行)がHUINNOの製品のマーケティングを行っています。」

-海外進出はどうですか?米国法人は清算されていますが...

 「グローバル医療機器をリードしている会社、実名は言えませんが、そこと現在契約を進めています。契約を結べれば、この会社を通して製品を販売します。HUINNOの収益モデルは、患者の検査データを分析するサービスです。マーケティングとしては、ハードウェアは低単価でばらまく形にし、実際の収益は分析してくれるソフトウェアで発生します。」

-まだ韓国の心電図市場では1位ではありませんよね?

「韓国の心電図検査市場で1位になることがまずは目標です。韓国市場でシェア60~70%まで上りつめるのが目標です。韓国の心電図市場は大きく見れば1000億ウォン(約101.8億円)程度の市場になります。HUINNOが心電図市場を支配したと言えるのは60%以上だと思っています。海外進出もすでに進めています。ベトナムでは臨床を行っている状態であり、日本市場は先ほどのグローバル医療機器会社の日本支社と協議を進める予定です。」

潜んでいる不整脈のリスクを見つける...24時間なら確率42%、14日なら99%

-IPOも準備中ですよね?HUINNOが求める企業価値はどれほどでしょうか?

「とりあえず、企業価値が私たちの目標とは考えていません。社内でコアだと考えているのは、自分たちが食べていけるだけのお金を稼ぐということです。つまり、利益を出そうということです。現在職員は80~90人なので、年間100億ウォン(約10.2億円)程度の売上を出せば、自分で食べていく能力は生み出せると考えています。今年の目標としては慎重に50億ウォン(約5.1億円)程度と見ており、来年は年間BEP(損益分岐点)を越えたいと思っています。」

-米国に再チャレンジしますか?

「来年はまた米国に戻り、米国のマーケットシェアを20~30%占めることが今後5年程の目標です。」 

「最終的には米国市場で有意義な成果を出したいと思っています。未だ、韓国の医療機器が米国本土の市場で成功したケースはないようです。長期的には、売上高で見ると、韓国と米国市場で3000億ウォン(約305億円)以上を出す企業になりたいです。」

-売上3000億ウォン(約305億円)の医療スタートアップ?それが目標でしょうか?では、営業利益率の目標は?

「韓国のKOSDAQ(コスダック)・KOSPI(コスピ)に上場している医療機器会社を見ると、単一品目で200億ウォン(約20.4億円)以上の売上を出している会社はありません。HUINNOは5年以内にグローバルで2000億~3000億ウォン(約203憶~約305億円)の売上を上げ、営業利益率は少なくとも50~40%を確保するのが目標です。」 

HUINNOの目標は「企業価値がいくら」ではありません。自分で食べていけるだけのお金を稼ごう、自分で食べていける能力を持とう、です。」 

-起業家としての夢をお聞きしたいです。

「心臓病で突然死する人はたくさんいますよね。HUINNOの技術でそれを大幅に減らします。可能なのです。なぜなら、早期に診断する能力があるためです。むしろ、突然死へと繋がるような方には、ヘルスケアコストはあまりかかりません。突然の脳卒中や心臓発作でも、良い医療技術があれば助かります。問題は、一命を取り留めた後の生活の質がものすごく落ちることです。しかも、国民健康保険公団全体の医療保険費用の11~12%がそのような方に使われています。早期に診断すれば、そのような方がかなり減り、全体的なヘルスケアコストも大幅に削減できるでしょう。」

-脳卒中を減らすことが夢ということでしょうか?

「節約したお金で重症の患者さんへ医療保険費を使うことができるのです。世界のヘルスケアの流れを見ると、新薬はとても高額です。筋ジストロフィーのような病気の治療薬は20億ウォン(約2億円)ほどかかります。血液がん治療薬などは韓国でも臨床を行っていますが、1回の注射に3億ウォン(約3000万円)ほどかかるそうです。パーキンソン病治療薬も出てくると思いますが、かなり高価になるでしょう。医療費をそういうところに使うべきだと考えています。症状のない不整脈患者が2次症状へと繋がるのをHUINNOの技術で早期に診断し、ヘルスケアコストを大幅に削減できれば、より安定した医療保険エコシステムが構築されるだろうと信じています。」

-不整脈で亡くなられる方が、韓国で年間どれくらいいるのでしょうか。

「お亡くなりにはなりません。それがより悲しいのです。最大のリスクは脳卒中ですが、脳卒中で亡くなることはありません。障害を持って生きることになります。早期診断すれば防げます。脳卒中を予防する薬を投入するのです。血液をサラサラにする薬をあらかじめ処方するのが現在の治療法です。」

-そうしたリスクを持つ割合はどのくらいなのでしょうか?40歳時点で何パーセント?

「40歳以上の成人の30%が不整脈を持っているといいます。不整脈の中で最も危険なのが心房細動ですが、60歳以上の心房細動の患者は90%が脳卒中になると言われています。」


/media/ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)
記事を書いた人
ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)

朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。

関連記事

  • ホーム
  • 企画記事
  • 【ちょい事情通の記者】10年目のHUINNOのギル・ヨンジュン「愚かなミス」