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【ちょい事情通の記者】近所の人たちが家の前のビルへ部分投資、Lucent blockのちょっと変わった不動産所有

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【Lucent block】近所の人たちが家の前のビルへ部分投資、Lucent blockのちょっと変わった不動産所有


 Lucent block(ルーセントブロック)は、不動産部分投資プラットフォームを運営しています。不動産部分投資が規制特例で始まってからもう2年以上が経ちました。初めて導入されたとき、不動産投資の新しいイノベーションが始まったように思いました。しかし、業者の数も増えませんでしたし、何よりどのプラットフォームに入っても、投資に値するものがほとんどありませんでした。

 Lucent blockは今年6つの物件を追加するといいます。何より、彼らの不動産投資へのアプローチ方法は違っています。投資収益が目的ではなく、ジェントリフィケーションの解決、ローカルへの地域住民の介入を追求しています。不動産投資で影響力をもつことが出来る?興味本位でホ・セヨン代表にお会いしました。

「Lucent blockのSOU(ソユ)は不動産証券取引所、ピース投資と呼ばれていたり、STと呼ばれたりもするサービスです。不動産を分割して少額で売買することができます。会社哲学は、SOU(韓国語で「所有(소유)」)に込められた名前のように、すべての人に所有の機会を与えることです」


-部分投資の原理の理解も難しく、法のグレーゾーンということで不安に思う人が多いようです。

「現在、規制サンドボックス特例で運営されています。不動産部分投資は2021年4月に特例を受け、先月また延長されました。2025年まで可能なビジネスです。原理を説明すると、まず仕組みとしては、不動産の実所有者が信託会社に登記を任せます。韓国14社の専業信託会社のうち6社が当社と独占的に仕事をしています。今回の韓国証券と同じケースを挙げるなら、例えば1000億ウォン(約100億円)の不動産信託を任せるとすると、1000個を分けて1口当たり1億ウォン(約1000万円)で1000口公募するという方式です。1000株発行された株を買うのと同じようなロジックです。

 安定性については、収益証券を1000枚発行したら、それを勝手に取引する仕組みではなく、実際に1000枚それぞれを口座管理機関と預託決済院が一緒に運営します。株のように。口座管理機関がするのは、実際の名義書、内部的な操作やハッキングを防止する役割であり、リアルタイムで電子登録されます。不動産そのものに対する登記事項には様々な法的問題が発生しても、それとは別に利用者が購入した収益証券が取引に対する投資金を保護する仕組みがあります。

 Lucent blockはブロックチェーンノードも一緒に管理します。実際に取引データを毎日チェックし、実際のブロックチェーンデータと名義人のデータが同一であるということを実証するのです。仮に会社が倒産したとしても、金融消費者にとって、不動産や収益証券は保護される安全装置が備わっていると言えます」 


-不動産の1000分の1を買うというと、その権利は誰にあるんですか?証券化の概念は少し難しいです。

「法人への証券投資に似ています。企業の株主になるのと同じだと考えてください。この不動産に対して1000分の1の権利を持つことになったわけで、家賃収入についても、企業の配当のように1000分の1の分配権を行使することができます。登記上の所有者は信託会社にはなりますが、実際の意思決定に関する部分も同様です。例えば、もともと10億ウォン(約1億円)の不動産をバラバラに投資していたのですが、20億円(約2億円)で建物を買おうとする買い手が現れたとします。すると、株主総会と同様の収益者総会を開いて意思決定を行うことができるようになっているのです。完全に株式投資と同じになることはできませんが、株式投資と同じように、それに見合った制度的な仕組みが整っています。

 

-初めて不動産部分投資が登場したとき、すごくうまくいくと思いました。しかし、数年経ってもサービス内で投資できる商品自体がほとんどありませんでした。ほとんどのサービスにおいて、投資できる建物や不動産商品は2~3つしかありませんでした。

「SOUは現在4つの商品に投資することができ、今年6つ追加する予定です。SOUは、革新的な金融サービスを提供する以前から、「不動産投資に挑戦しよう!」と始めたわけではありません。むしろ、社会問題を解決しようとしているスタートアップに近いです。

 聖水洞(ソンスドン)にあるソーシャルベンチャーを手伝ったことがあるのですが、ジェントリフィケーション現象で商人が追い出されるのを目撃しました。資本主義の一種の副作用とも言えるのですが、これを解決したいと思いました。すぐに何十億ウォン(何億円)も手元になくても、少しの余剰金でパイを分け合えるのではないかと考えました。このような問題を解決したいという方向性から始まったので、SOUの扱うモノは社会にインパクトを与える効果を含んでいます。単純な収益だけを考えると拡大は遅いですが、ジェントリフィケーション問題を抱えている建物や事業者、あるいはローカルとの連携を考えたモデルは、鋭いニーズがあり、拡大が可能です。  


Lucent blockホ・セヨン代表 /Lucent block提供


不整脈で3ヶ月病院のベッドで「ああ、死ぬかもしれない」が変えたビジネスアイデア 

「SOUの3号物件は、大田(テジョン)地域の物件です。9億ウォン(約9600万円)の価値がある建物で、1200~1300人の投資家がいます。実際に投資家の60%程が大田(テジョン)地域の方です。この建物の1階にカフェがあります。数株以上購入した人にはカフェの割引、クーポンを提供するのですが、投資家がカフェの常連さんなのです。周辺のチキン屋さんや他のお店と連携して割引イベントも行い、「うちの地域のメンバーシップ」というポイントにしました。近所に住んでいる人はどうせそこを利用するので、特典があれば一度行くところを二度行き、さらに利用することになります。1号物件は売上連動型の不動産でした。手作りハンバーガーブランドのDowntowner(ダウンタウナー)の家賃が売上高に基づいて動くのです。バーガーショップがたくさん儲かると、自分に入る配当収入が大きくなるという仕組みなので、株主がハンバーガーを食べによく訪れます。このような好循環で、上場当初は月商2億ウォン(約2100万円)だったのが、上場後9ヶ月で3億ウォン(約3200万円)になりました。売上の増加はすべて株主のおかげとは言えませんが、株主が「自分が投資した店舗だ」という気持ちで直接訪問され、宣伝効果もありました」


-NFTの所有と似たような感じですね。NFTホルダーを対象にイベントを開催したり、ショップを開いたり。

「建物を投資する人のニーズは様々です。利回りを求める方もいれば、自分が知る建物へのエンゲージメントを持ちたい方もいます。あの建物、不動産の株主が自分であると強く認識するの中で、その場所を頻繁に訪れるようになるのです。収益率も重要ですが、それ以上に不動産を消費できることも重要なポイントです。

 ビルオーナー、賃借人、消費者この3つの主体が相互作用できるような共存構造を作りたかったのです。なので、商業用不動産というキーワードよりも、どのような不動産で3つの主体が接点を作り、利益を図ることができるか、共感できる価値に焦点を当てています。他の部分投資会社とはアプローチが少し違うと言えます」


-不動産投資のインパクト的なアプローチということで、ジェントリフィケーションのようなインパクトは、相場差益や金銭的利益を目的とした投資とは少し違っていますよね。どうしてこのようなインパクトアプローチをすることになったのでしょうか?

「カーネギーメロン大学でコンピュータ工学を専攻し、韓国に来たのですが、重い病気になりました。不整脈で、3ヶ月ほど入院して治療を受けました。本当に死ぬかもしれないと思うと、もし今日が最後の日だったらどんな意思決定をするのかということを考えるようになりました。事業そのものがうまくいくかどうかはわからないが、少なくとも試すことができること。お金ではなく、何か意味を残せる事業を探し、ジェントリフィケーションの問題を解決しようと思ったのです。後で潰れても、うちの社員の誰かが何をやっていたのかと聞かれたら、『こんな仕事をしていた、問題を解決しようとした』と言えるような会社にしようと考えていました。


Lucent blockの大田(テジョン)の3号物件(写真上)と1号物件(写真下) /Lucent block提供


金融委員会のロビーでNaverで検索した長官の顔を見て走っていった一ヶ月。

-ジェントリフィケーションの問題を解く方法を調べていたら、ここまでたどり着いた?

「はい。2018年の創業当初は何も知らない状態でぶつかりました。サンドボックスの議論などなかった時代です。最初は開発者だけしかおらず、数ヶ月間、ただ開発ばかりしていました。ビジネスを全く知らなかったのです。不動産を流動化できるプラットフォームのみを先に開発して、不動産について勉強しながらサービス立ち上げの準備をしていたところ、周りの弁護士の先輩に事業の話を聞きました。ずっと聞いていたら、突然「ところで、資本市場法の問題はどうやって解決したのか」と聞かれました。その場で「え?その法律は何ですか」と聞くと、表情が固まったのです。それから法律を調べて勉強して、ここまで来ました。

 革新金融サービスの仕組みを調べて申請し、一か月の間金融委員会を訪れ、担当局長を待ちました。局長クラスはNaverで検索すると顔が出てきます。金融委員会のロビーにずっと座っていて、似たような人が通りかかると走って行って捕まえて。最初は戸惑われていましたが、3週間ほど経つと、降りてきて近くのスターバックスに連れて行かれました。「息子と同じような年齢だから話をしてやる」と言いながら、一つ一つ問題点を指摘してくれました。2年半の間、違法となるポイントごとに預託決済院を訪れ、証券会社の通りすがりの代理人を捕まえて懇願し、課長、部長、専務まで連れて行ってもらい説得しました」


-投資をどのように受けて2年半乗り切ったのですか?

「最初の5億ウォン(約5300万円)までは内部で作りました。他人のお金をもらうのは簡単ではないし、危険ですから。最後の最後に金融当局がサンドボックスを承認してくれそうな雰囲気になって、ソウル大学の技術研究所から投資を受けました。ところが、契約書を書く日に金融委員会からダメだと連絡が来たのです。どうしようかと思い、長文のメールを送りました。お金を貰うというのは撤回します、しかし、それでも私たちは最後まで行きますし、とても感謝しています、と。そう送って寝たのですが、一人も撤回されず、信じて一緒に進んでくれました。その後、承認されました。これがプレラウンド投資の段階でした」


-これまでの累積投資額は?

「200億ウォン(約21.4億円)程になります。ETRI HOLDINGS(エトリホールディングス)、CAPSTONE(キャップストーン)、ハナ銀行、韓国投資銀行、KYOBO(教保)証券などが主な投資社です」


-誰が、なぜ投資するのですか?投資社が気になります。不動産の含み益を狙っている方でしょうか?それとも一種の代替投資?

「インボルブメントとエンゲージメントがポイントです。当社のサービスユーザーは20代30代が70%、女性が40%です。4号物件は副業的なニーズを攻略しています。自分のお店のような感じで副収入を得たい方が多いので、Gongcha(ゴンチャ)と協力して、完全に合体させました。Gongchaと店舗を合わせた商品です。基本的にフランチャイズ創業や商売にかかるコストは大きいのですが、当社の公募を通じて、ある種の不動産と不動産で売る商品を流動化させて販売しました。このお店で出る収益の78%以上は株主に還元しています。直営とフランチャイズの間の新しい方式のモデルです。

ソウル文来洞(ムンレドン)にあります。投資する方は単純な売買ではなく、様々なデータを見たがっています。実際に運営をしてみたいという方もいます。そのため、300万ウォン(32万円)以上投資された方には、1日の売上、店舗運営レポートを提供します。15億ウォン(約1.6億円)の不動産で、4500人が株主です。主に文来洞(ムンレドン)、永登浦(ヨンドゥンポ)周辺にお住まいの方が多いです。不動産は最終的にはオフラインです。結局は自分が見て触れることができるもの。自分が行き来して交流できる場所であることが大きく作用することを検証しました。


文来洞(ムンレドン)4号物件の構造を説明するハ・セヨン代表/Lucent block提供


うちの地域の不動産、PassiveなものをActiveに


-法的な問題はないのですか。初めて見る商品ですよね。

「はい。これまでなかった構造を作り出したもので、当社なりに誇りを持っている部分です。信託会社もあり、一般の人達もいるのです。一般人が収益証券を持っていて、Gongchaは賃貸借契約をすることになります。賃貸契約の仕組みは、単純に家賃500万ウォン(約53.6万円)というようなものではなく、それプラスお店の営業利益をいくら取るというような形で契約しました。金融業も本質はサービス業です。自分のポケットからお金を出させることが重要です。収益を良くするのも一つの方法ですし、このようなエンゲージメントを与えるのも一つの方法です。一つの論理で構成された商品ではないのです」


-投資は最大いくらまで可能でしょうか

「個人は2000万ウォン(約214万円)です。


-現在、部分投資スタートアップは4社しかありません。なぜ業者の数がもっと増えなかったのでしょうか?

「法人設立から4年半経ちますが、ユーザー1人を集めるのに3年かかりました。規制の問題もあり、金融消費者保護が本当に重要で、保護装置を作るのに1年半かかり、しっかりと固めようとすると、利害関係者がかなり多くなりました。まずITシステムを作るのも一仕事でしたし…私は暗号セキュリティ、ブロックチェーンを専攻した開発者であるにもかかわらず、かなり時間がかかりました。その後、金融委員会、金融監督院、預託決済院、信託会社などとの問題を解決しなければなりませんでした。それでまた時間がかかりました。誰でもすぐにできるビジネスではありません」 


-物件を見つけるのも簡単ではないでしょう。ビルオーナーが部分投資を受けるニーズがなくてはいけませんよね。所有者が一部分を投資用商品として売り出すニーズがあるのでしょうか

「100億ウォン(約10.7億円)のビルがあるとすると、そのビルオーナーには様々なニーズがあります。まず、売却をする際に、どれだけ高く売れるかを考えるでしょう。第二に、100%売却するのは嫌だという時に、一部を流動化したいというものです。現金が必要な場合もありますから。ここでニーズが発生します。また、三つ目は賃貸店舗営業関連で、顧客を拡大し、ファンを作ることです。自分の建物の価値を上げる方法です。また、営業主体、賃借人の中には、建物を買いたいというニーズもあります。自分が建物の価値を上げていく感覚を得たいケースですね。私たちはこれを全てリストアップして、お客様を説得しました。他社はただ仲介業者を訪ね建物を取引するだけだったのに対し、当社はそれぞれの利害関係を分けて、このようなアプローチを行いました。そのため、今年6件の物件を追加し拡張するのです」


-人気のある商業用不動産を上場させるには、説得は容易ではないように思えます。江南(カンナム)のビルオーナーのinterestの気持ちを満足させるのは簡単ではないでしょう。

「不動産の説得についても、当社がビルオーナーを仲介するよりも、利害関係のある賃借人、社長の方がはるかによく知っています。このように一緒に行う方が楽なのです。SOUプラットフォームでは金融、投資家という言葉は使っていません。ストーリーを重視しています。不動産詐欺に遭わないようにする方法などのコンテンツを発信しているのですが、お客様はそこでの滞在時間が長いです。建物のストーリーに対する価値を提供するのがビジネスの本質です」


-「江南(カンナム)の不動産に投資すれば数年間数%儲かります!」こうしたキャッチフレーズへの関心はもっと大きいはずなのに、収益率は実際にはそうではないのでしょうか?

「SOUは、active fund、株主総会など、収益率を自分が作れる部分をアピールしています。当社しかできないやり方ですし、その方がずっと賢い方法だと考えています。Gongchaの場合、株主として顧客を集めるとキャッシュバックを現金で還元されます。収益率は非常に重要ですが、この収益率に投資家である自分が貢献できること。受動的なものを能動的に変化させることで、ビジネスも、収益も拡大し続けることができるのです。若い世代のトレンドでもあり、社会の変化と連動して動いていきます」



ホ・セヨン代表が描いたSOUによる地域活性化モデル/Lucent block提供

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朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。

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