【チェ・ヒョクジェのWhy】 2年前、3000億ウォンの企業価値神話を描いたSpoon Radio しかし、現在進行形のチェ・ヒョクジェの挫折、そして彼の本気
【チェ・ヒョクジェのWhy】 2年前、3000億ウォン(約315億3000万円)の企業価値神話を描いたSpoon Radio しかし、現在進行形のチェ・ヒョクジェの挫折、そして彼の本気
ちょい事情通の記者 第1号ソン・ホチョル
「成功したという言葉ほど、プレッシャーなことはありません。スタートアップの成功とは?営業利益です。3年連続の営業利益、その頃のことについてお話しします」
Spoon Radio(スプーンラジオ)の創業者であるチェ・ヒョクジェに「辛かった一年について教えてほしい」と聞いたところ「まだ続いています」と返されました。スタートアップが投資誘致に失敗した時、通帳残高が数か月分しか残っていない時、創業家に選択肢はあるでしょうか?
「サクセスストーリー」だけでは創業の道は説明できないことはよく知っています。しかし、チェ代表が6月27日にアップしたFacebookの投稿を読んで、「私たちは依然として月の片側だけを見ていたんだ」と感じました。起業は華麗なものではないという命題はよく知っていたにも関わらず、です。
2018チェ・ヒョクジェSpoon Radio創業家/キム・ヨンジョン客員記者
「シリーズDの投資誘致に失敗しました。すべての資金調達計画が...」
インタビューを始める前に、必ず1度読んでほしい、Spoon Radioチェ・ヒョクジェ代表のFacebookの投稿です。
「昨年の初めにクラブハウスが出現し、オーディオ市場は急速に変化し始めました。日を追うごとに、韓国内外で新しいサービスが登場するなかで、競争は激化し、その結果、集客コストは看過できないほどに上がっていきました。韓国内では、kakaoが「음(mm)」というサービスを開始し、主要なテレビ広告キャンペーンとともにオーディオクリエイターを誘致するための戦争に参加しはじめました。
Spoonもやはり、市場競争で再び優位に立つために昨年末にシリーズDの資金調達に乗り出しましたが、資金調達に失敗しました。会社の資金が枯渇し始め、口先の危機ではない、絶望的で悲惨な現実に直面することとなりました」
「会社の存続のために、すべてのことをもう一度考え、すべての困難なことを実行しました。マーケティングコストを大幅に削減しても、キャッシュフローが不足し、経営陣の給与の削減、主要な役員の給与の凍結、そして、共に働いてきた人々のリストラという最も苦しい決断を下しました。
自分の手で選んだ人たちを自分でクビにしなければならないということは、個人的には最初にサービス失敗した時よりもさらに苦しい時間でした。全部捨てて諦めたいと、数百回以上考えたと思います」
「ランウェイ(会社を畳まなければならない限界)が間近に迫った状況の中、年初に新しい支援プロジェクトに選ばれ、緊急資金を受け取ることができ、スタッフ全員で当社のサービスを本質的に見つめ、1つずつ改善し続けました。他のどんな優先事項よりも、まず売上と収益という最も重要な問題を解決することから始め、収益を出す顧客、つまりDJの方たちの収益に焦点を当て始めました。
「当社のサービスでお金を稼ぐDJの数を増やす。そうなれば、私たちも利益を上げることができる。」この1つの目標へ向け、すべての優先順位を変更しました」
「上半期の熱心な活動により、高収益を出すDJの数が少しずつ増え始め、マーケティングチャネルの問題点であった効率を把握することで、コストを効率的に再分配することができました。少々の利益はひと月ふた月にしか続かないと、みんながそう考えていました。
ただ、そうやって、着実に黙々と改善を続けました。今年の上半期、そのような時を過ごして決算し、少額でしたが、創業以来初めて、6ヶ月連続黒字を達成しました。より冷静に数字を見ると、黒字を長期的に持続させ、さらなる成長をするためには、さらに多くの問題を解決しなくてはなりません。
しかし、これらの小さな成果により、新規の投資家を引き付け資金調達を行わずとも、成長できるだけの時間を自らで稼いだという事実は、会社のすべての意思決定において正しい変数として適用されました」
ランウェイ、スタートアップが生き残れる時間 会社の残高が0ウォンになるまでの時間
-SpoonRadioがなぜ昨年、急に?
「昨年、資金調達ができず、劇的に悪化しました。もともと昨年下半期の全てのシミュレーションと経営計画は、資金が入ってくると言う前提の下、組まれていました。
ところがシリーズDに失敗したのです。どれくらい大変だったか、ですか?スタートアップには、ランウェイ、つまり、投資資金で運営を維持できる制限時間が決まっています。スタートアップが赤字状態になると、ですね。Spoon Radioにも数ヶ月維持するお金しかありませんでした」
-すごく上手く行っていたSppon Radeioが1度の資金調達の白紙化で?
「すべてのスタートアップがそうなのです。通常投資は、A、B、C、このように受けて行きますよね。ステップバイステップで。その資金で、短くて12か月、長くて24か月、かなり積極的に投資を行います。人の雇用であろうとマーケティング費であろうと、そうすればその後結果が出てくるじゃないですか。
その成果をもとに、次の投資をまた受け取り、また積極的に行うのです。たとえば、市場が望むほどの成果を出せなかった場合、また成果が不十分な場合、次の資金調達は不可能です。
そうすれば、打撃を受けることになります。実際に、今、そうして上手くっていないスタートアップはたくさんあります。海外だけでなく、韓国においてもそうです。ソウルから釜山まで200km走り続けてきたのに、突然ガソリンの供給が途絶えた、という風に考えて頂ければ良いかと思います」
-シリーズDというガソリンを受け取らなくてはいけないタイミングで、シリーズDが白紙になった理由は何ですか?
「外部の競争状況が非常に激しくなっていました。クラブハウスがリリースされ、kakaoの『음』がリリースされ、海外では類似サービスがもっと沢山あります。投資家の立場からすると、『では残るのは誰か』少し待ってみよう、となるのでしょう。どうしても、新しく設立された企業は企業価値が低いので、投資家の立場としては、価格メリットがありますよね。さまざまな問題がありますが、最も本質的な問題は、市場を満足させられるほどの成果が出せていないことです」
-創業家として、代表として、当時はまず何を思いましたか?いえ、何をするべきだと思いましたか?
「生き残ることを考えました。どうすれば会社を運営し続けることができるだろうか、と悩みましたね。経営陣の給与削減、従業員の給与凍結やマーケティングコスト削減など、まずできることを行いました。にもかかわらず、キャッシュフローは予想ほど良くなりませんでした。
結局リストラということになりました。一番辛かったですね。全体の半分に近い人数を、私が、直接行いました。辛かったです。あまりにも辛く、精神科でのカウンセリングを受けました。例えば、リストラされるために会社に入ってきた訳ではないじゃないですか。私が、共に働いてほしいと三顧の礼を行った人たちなのに…(リストラ当事者には)ほぼ10年近く働いた初期のメンバーもいました。
生き残りです、生き残り。(会社に残る)当事者は、会社がまた好転するのに必要な順に残しました。役員たちは...」(チェ代表はしばらく何も言わなかった。)
「会社のために必要なら、出ていく、代表が決断してください、と言ってくれました。とても辛かったですが、その意見を受け入れました」
-スタートアップでリストラを行う際、普通は役員より新入り、そういう順で行うものではないのですか?
「経営陣にもある程度の責任があります。こうした話を(他の経営陣と)苦しみつつ、議論しました。一番辛かったですね。(辞める方の中には)副代表や、創業メンバーのマーケティング理事もいらっしゃいました。その方たちも辞められました。彼らが出て行き、今は気持ちを整え、再び創業する中で上手く行ってはいるのですが、当時はとても辛かったです。これが人のやることかと...」
スタートアップのリストラ「三顧の礼をして、来てもらった方を...」
-それでも、好転しましたよね。底も打ちましたし。
「やりとげたのではなく、準備ができただけです。どこから改善を始めるべきなのか分かった、そして以前とは異なるアプローチができそうだ、そういうレベルです。収益化に焦点を当てています」
-ひと月基準で黒字に転換しましたよね?
「データ分析チームによる内部シミュレーションにおいて、(月別の黒字を)継続することはできないというデータが出ました。サービスやプロダクトを改善する必要があります。スノーボールインパクトのようにどんどん大きくなっている構造ではありません。(月別の黒字は)耐えなければいけない数字です。そのため、まだ行く先は遠いです」
-スタートアップにとって6か月連続で黒字というのは、意味深いことです。
「意味深いですが、それで浮つきはしません。プロダクトを改善する必要があります」
-SpoonRadioは上手く行っていますよね?
「まだ遠いです。なぜなら、グローバルなサービスを目指していますが、現在、韓国と日本以外の国ではこれといった成果がないためです。アメリカで成果が出てこそです。ページビュー数を増やさなくてはなりません。アクティブユーザー(MAU)の数は、昨年に比べて大幅に減少しています。アクティブユーザーを再び上昇傾向にさせる必要があります。大変ですが、やります。背水の陣で取り組みます」
-やはり、もう一度資金調達に挑戦しますか?
「今年はとりあえず、資金調達は行わずに耐えます。自力で耐えてみます。資金調達、投資を誘致するプロセス自体がスタートアップにとって大きなリソースを必要とするためです。人的資源も時間もです。投資の誘致に焦点を当てるよりも、事業指標を計算して営業利益を増やすほうが会社にとってはるかに有意義だと考え、下半期には資金調達を行うつもりはありません」
-創業家として、いや個人として、今日、今、一番念頭に置いているものはなんですか?
「会社の営業利益ですね。ただ、ただ、ひたすらに。私の個人的な生活や、そんなことは今関心の外です。会社がうまくいくことが一番重要であり、営業利益を上げることが最優先事項です」
-成功した創業家というのは、とても?
「外部の方から、会社が成長し成功したと言われるたびに、とてもプレッシャーを感じます。もちろん、企業価値は数百億(約数十億円)と数千億(約数百億円)ですが、実現された数字ではありません。将来価値により、外部から可能性を認めてもらった数字であり、実際に目で見ることのできない金額です。
当社より価値の高い企業はありますし、それらの会社の代表たちは、私よりもストレスを感じているでしょう。だから会うたびに、ただお互いを慰め合って頑張ろう、頑張ろう、頑張ろう、と言っています。私にとって、成功の基準は、会社が約3年間一貫して営業利益を上げることです」
「ヒップにやっていたら、みんな死にます。スタートアップの肩パッドをとりましょう」
-Spoon Radioは現在、3年間営業利益を上げることができる組織ですか?
「体質改善を行っています。組織の構成員、全員が収益についての悩みに、本当に注力しています。マーケティングをするにしても、より精密に行っているということですね。楽しそうだ、かっこよさそうだ、ということではなく。スタートアップ業界ではよく「ヒップだ」と言いますよね。
私はこう言っています。「ヒップだ」で死ぬことになる、YOLOを探しているうちに、棺に行くことになる、スタートアップの肩パッドを外そう、と。ヒップだからと英語の名前を使い、水平的な文化、在宅勤務などを行っており、すべて成果を出すために行っていたことなのに、主客転倒になっていた部分は大きく変えました」
-一例だけ取り上げると?
「フレックスタイム制を導入しました。実は、これは私の変化です。私が、決して妥協しなかったのが、出勤時間でした。10時には全員が出勤するという定時出勤です。スタッフが『フレックスタイム制にすればパフォーマンスが良くなる』と言うので、今までやったことのない試みを行いました。
定時出勤は私の経営理念でしたが、9年経って目が覚めました。今は、誰もが自由に出勤し、時間をこなして、仕事をしています。また、4.5日制も新たに導入しました。月曜日のお昼からの出勤です。元々は週5日勤務でしたが、月曜日の朝は集中できませんよね。月曜日の朝はゆっくりと休んで、月曜病をなくし、短時間で効率的に集中します。ただ、4.5日制を導入した時に約束しました。
成果が維持されてこそ、制度の導入に納得できると思います、と。何人かは冗談半分で、「4.5日制を続けるために一生懸命働いた」と仰っていました。
-会社を変えようとする中で、結局創業者が変わったんですね?
「私は、『すべてを変えなければならない』と話していました。しかし、一人の方から、代表は変わらないまま、会社に変わろうと言い続けるだけでは受け入れられないだろう、と言われたのです。頭を一発殴られたような気分でした。その時から、私も大きく変わり始めました」
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