【彼のWhy】Dazayoのナム・ソンジュン 「空き家選びの原則」
【彼のWhy】Dazayoのナム・ソンジュン 「空き家選びの原則」
ちょい事情通の記者 第1号ソン・ホチョル
Dazayo(ダジャヨ)は空き家の再生プロジェクトを行っているスタートアップです。済州(チェジュ)島の空き家を10年以上無償で貸し出してもらい、 代わりにDazayoが費用を出して家をガラリと建て変えます。10年間旅行者に家を貸してお金を回収した後、 きれいな家のまま家主に返却します。
空き家として放置された状態だったため、 家主としてはラッキーです。いつも気になっていたのは、 Dazayoはお金を稼ぐことができるのか、でした。愚直なやり方では難しいような気がしたのです。
家を直すのに1億ウォン以上かかり、旅行客が泊まるとしても1年の半分の150日ほどで、 企業であるだけに従業員の人件費や事務所の賃料などなど、 どうにか損益は合ったとしても、「革新に成功すれば途方もない過失」というのは、スタートアップの夢とは距離があるように感じました。
何より、Dazayoはじっとしていてもお金が入る仕組みではなく、 まめに家を探し、リモデリングしていかなくてはならない構造です。1軒づつです。 ナム・ソンジュン代表に 「なぜ空き家なのか」「お金は稼げるのか」 と尋ねました。
ナム・ソンジュン代表に 「良い宿の写真と本人の写真を提供してほしい」と頼みました。素敵な宿の写真は沢山送られてきましたが、 自分のインタビューなのに自分の写真は来ていませんでした。
ナム代表の頭の中は、「良い宿」 でいっぱいなのです。夜中に作業している時に気づいたため、ナム・ソンジュン代表のKakaoTalkのプロフィール写真でお送りします。
「施工やインテリアは4ヶ月あればできるのですが、 どのように作るかというコンセプトと設計は6ヶ月かかります」
-なぜ空き屋なのですか?
「もともと済州島出身なのもありますが、ソウルで暮らしながら時々旅行で済州に行ったり、慶弔事で帰省したりすると、大規模開発が頻繁に行われていて、残念に思っていたんです。最初に創業する時から空き家関連の事業を行っていたわけではありません。始めは宿泊関連の仲介サービスをやろうとしていました。
その後に、空き家に戻った理由は、 実際 (宿泊仲介を)してみると済州島に来る方はホテルのような所より、 済州らしい宿に泊まりだがっていることに気づいたからです。大規模に開発されたリゾートよりも、です。その時、直接宿泊サービスをやってみようと思いました。以前から考えていた、 大規模な宿泊施設を作るのではなく古い空き家を活用したサービスをやってみようと思いました」
-ビジネスモデルはおおよそわかりますが。
「まず、空き家を無料で10年以上預からせてもらいます。それまで運営して収益を生み出し、その後持ち主の方に再び返却します。リモデリングを行っている期間は10年には含まれていません。」
-10年契約もあり、15年契約もある、という方式でしょうか?
「家ごとに期間は異なります。最短が10年です。一部規制緩和があり、 Dazayoは50軒までのこのような空き家を再生した宿泊事業を許可されています。現在、10軒が完工しています。今は2軒が施工に入っており、追加で2軒が設計に入っています。
リモデリングの期間として、施工とインテリアには約3~4ヶ月しかかかりませんが、企画に少し長くかかります。どのようなコンセプトで、どのように作り上げるのか、 コンセプトから設計までが6ヶ月かかります。
-家主とも相談しなければなりませんし、一軒完成まで1年くらいでしょうか。
「1年はかかりますね。ですが、Dazayoは捨てられ放置された空き家を利用しているので、家主はそこまで気にしていません。
-規制の問題は解消されましたか?
「現在は2年間50軒で登録し、また2年再延長する方式です。法令が改正されなければ、引き続き延長し続けることになります」
ナム・ソンジュン代表がインタビューで挙げた、雨が降る時に泊まりたい空間。雨どいをなくしているため、雨が降るとぽつぽつと軒から落ちる雨の情緒を感じることができる、とナム代表は語った。
「空き家を選ぶとき、家の状態は見ません。屋根がなくても構いません」
-空き家再生の趣旨は良いですが、 損益を合わせられるのでしょうか?
「家を直すのに2億(約2,100万円)以上かかります。最近は資材の値がかなり上がっており、 2億5,000万ウォン(約2,600万円)かかることもあります。3億(約3,100万円)かかる家もあります。しかし、基本的にどんな店をやったとしても、デポジットや権利金、 家賃はかかりますよね。本来宿泊業は賃料と保証金がかかりますが、私たちはそれが全くないのです。
-空き家を直すのに3億ウォン(約3,100万円)もかかると?
「空き家を直すと言っても、どの程度やるんだと思われていますが、Dazayoは「政府がやるように」単純に空き家をどうにか人が住める、というレベルに直して貧困層に与えるのではありません。本当にきちんとデザインし、高級ブティック宿に作り上げます。 値段も一泊かなりします。40万ウォン(約4万2,000円)以上の高級宿泊施設です」
-現在は赤字ですか?
「40万ウォン(約4万2,000円)や50万ウォン(約5万2,000円)を基準として、売り上げ高だけで考えると、50万ウォン(約5万2,000円)で300日営業すれば、理論的には一軒当たり1年の売り上げは1億5千万ウォン(約1,500万円)になります。
規制で365日中に300日しか営業できないことになっています。稼働率は、規制前も365日基準で75%まで上がり、 統計推移上では、このままいけば80%以上、90%まで行くだろうと予想されるほどでした。規制の問題が生まれ、そこまでは行けませんでしたが。
現在の傾向でも、300日フルで営業しても、予約が上回っています。実際に、既に来年度の予約まで入ってきています。しかし、まだ黒字には程遠いです。空き家再生数を増やし続けているからです。家を建てる費用が莫大にかかるうえ、 スタッフの雇用を続けると、 まだ黒字は出ません。
-家を選ぶときの基準はありますか?300日も旅行者で埋まる空き家はどんなものでしょう?
「韓国では、空き家をABCDの4つのクラスに分けて評価します。Aは普通の家、Bは少し手を入れれば大丈夫な家、Cは撤去するか、または本当にたくさん直さなくてはならない家、Dは撤去しなければならない家。Dazayoは家の状態は見ません。どうせ家はすべて修理しますから。屋根がなくても構いません。家の状態は重要ではないのです。
ただし、 その家が位置する場所は道路沿いか、プライベートな空間が演出できるか、 隣の家とあまり密接にくっ付いていないか、 苦情が入る予知があるか、 駐車場は確保できるか、 旅行者が怖く感じないか、 周囲の騒音は大丈夫か、というようなことを見ます。
ナム・ソンジュン代表の表現では 「曖昧な大きさのジャグジー」。子供たちは入って遊ぶことができ、大人は膝だけ浸かる程度。夏には冷たい水を満たし、腰かけてワインを、冬には暖かい水に足を浸して日本酒を飲むことを想像をしながら作った空間だ。/Dazayo提供
「スペースを作るときはイメージします。雨の日、しっとりとした雨を見るのに良いスペース」
-土地の大きさも見ますよね?
ええ。小さすぎてはいけません。庭がある家です。庭がなければ、まずは除外しています。家を直す際、哲学があるというよりはたくさんイメージします。ここに座って雨が降るなかで、雨音を聞き、雨が降るのを見ながらコーヒーを飲みたいだとか、 あの後ろの浴槽で雪が降る日にツバキ落ちるのを見たいだとか。
イメージしながら、そのような空間を実現させようと努めます。空き家を再生することはしていますが、当社は文化財を復元する会社ではなく、出来る限り空間を完全に再構成する会社です。旅行客が訪れた際、空き家にあるストーリーを活かしながら、快適に休むことができる、良い空間を作ろうとしています。 『ギフトのような空間』を作ります」
-10軒のうち1つを選んでください。
「涯月邑 峰城(エウォルウプ ボンソン)という村に峰城韓屋というのがあります。そこはあえて屋根の下に雨どいをつけませんでした。フォールディングドアを開けて床に座れば雨の日、 屋根の凹凸に沿って水が落ちてきます。凹凸ごとに。その後は野外の小さな、うーん、 小さなプールと言えばいいのか…ミニプール、 もしくはジャグジー?とにかく非常に曖昧なサイズのジャグジーです。
子供たちが遊ぶにはちょうど良く、大人が入ればちょうど膝の高さまで来るような。 そういうイメージです。夏には冷たい水を入れて、 スッキリとしたソーヴィニヨン・ブランのようなワインを飲み、 冬にはお湯を貯めて、おでんや温かい日本酒を飲む。そのような空間を作ります。」
-インテリア小物の価格も凄いですよね。 (※Dazayoのある空き家にあるスピーカーの価格をインターネットで検索すると、350万ウォン(約36万円)だった。)
「できるだけ良い小物を使う理由ですか?Dazayoの空き家に泊まる方は基本的に旅行に来ている訳ですよね。ギフトのような空間を作り、 できるだけ最高の経験を差し上げたいのです。旅行に来た際、素敵な経験をして、帰ることが出来るように。だから空間自体を少しショールームのように作っています。
マットレスは他のスタートアップの商品を使っています。今はiloom (イルーム)とブランドハウスの話を進めています。LG電子ともすべての電子製品をLG電子のものにする案で、互いに議論しています。
なぜなら、人々がLotte Hi-mart(ハイマート)やEmart(イーマート)のような場所で冷蔵庫のドアを一度開いてみたり、食器洗い機のドアを開けてみることはできますが、 実際に使用してみることはできませんよね。経験ができないのです。旅行に来て、2泊3日の間、宿泊施設ですべての電子製品やいろいろな家具を体験してみてほしいです。」
「Dazayoは済州島で空き家の再生をしているので、 地域の製品ともコラボレーションします。とても面白いローカル製品も多いです。そうしたものも、広報するところがないのです。コラボレーションを行い、顧客にウェルカムギフトとして提供しています。
お召し上がりいただいたり、体験されてみて、気に入られた場合は、タブレットを通じてご購入をアシストします。追加購入も可能です。「涯月(エウォル)のお父さんたち」という有精卵があります。宿泊施設に到着したら冷蔵庫に入っており、朝にそれをお召し上がりになり、 美味しいとなって購入して頂ければ配送も行います。
そのように冷蔵庫にはヨーグルト、 卵、 粟餅、 そして竹歯ブラシ、 柑橘類ゼリー、 チョコレートなどが沢山入っています。内容は頻繁に変わります。」
-ずっと済州島だけで運営していく予定でしょうか?内地ではやられないんですか?
「内地に進出もしなくてはならないのですが、 自治体との協議が続いています。多額の資金がかかっているので、Dazayoの投資家や個人投資家は済州島を先にしろと仰っています。他の自治体からも要請が来ていますが、逆に私たちは自治体に言っています。それでは投資をしてください、と。
彼らも必要な事業であることは分かっていますが、このような形で何かを行ったことが一度もないため、悩んでいるのです。ずっと来られて、行政支援はノンストップでやってあげるから、一度やってみようと提案されます。江原道(カンウォンド)襄陽(ヤンヤン)扶安(ブアン)南海(ナムへ)河東(ハドン)谷城(コクソン)求礼(クレ)鬱陵島(ウンルン島)東海(ドンへ)、のすべてから連絡が来ました。
けれど、お金があってこそですよね。問題は私たちも投資を受けてやっていることなため、逆にこうお話しています。地方から投資をして頂ければ、行ってすぐにやります。政府やそのようなところで進めてくだされば、私たちの立場ではもっと多くのことができるようになります。
私たちは町に売上の1.5%を寄付することになっています。規制のサンドボックス条件にあるのです。政府の支援を受けるとなれば、より良い雇用などが必要となります。投資を受けたお金で、 多くの資金を使って家を修理したため、 料金を高く策定するしかありませんよね。
政府が投資すれば、金額を少しダウンさせることもできますし、あるいは一部の、 正直旅行に行きたいと思っていたり、良い宿に泊まりたいと思っていても出来ない方たちもいらっしゃいますよね。そのような方たちが泊まれるようにすることもできます。
-今は赤字、何軒程あれば黒字への切り替えが可能でしょうか。
「規制サンドボックスが終わり、200軒にまで拡大することを目指しています。空き家再生宿泊業というものが確立されれば可能でしょう。直してほしいという空き家の問い合わせが沢山来ています。全国から300以上の問い合わせが来ています。逆に空き家関連の他のスタートアップや青年たちは空き家を買えないと言いますよね。
実際の所、空き家はたくさんあるけれど、空き家をどのように買うのかわからないという話なのですが、Dazayoが空き家の主人とそのような方々を繋げて、私たちが持っているノウハウを伝えて、ブランドを共有するという戦略で行こうと思っています。スピードでいうと、他の自治体と協議がスムーズに行えれば、来年や再来年には50軒までは可能だと思います。
-実はDazayoのような空き家プロジェクトが大金を稼ぐのは並大抵のことではありません。自動で運営されているプラットフォームは、一度火が付けばすぐに上昇しますが、 Dazayoは一つずつ直接訪ねて修理していくためとても時間がかかります。なぜ難しいビジネスを始めたのですか?
「難しいビジネスを選んだのではなく、簡単なビジネスを発掘できなかったのです。しかし、このようなビジネスもなくてはならないでしょう。優良なプラットフォームビジネスもなくてはなりませんが、Dazayoのようなビジネスも必要です。
そのようなプラットフォームに良い供給をする宿泊施設が必要です。
Airbnb(エアビーアンドビー)やBooking.com(ブッキングドットコム)グループのような形です。DazayoはHANATOUR(ハナツアー)やKAFLIX(カプリックス)と独占販売契約でプロジェクト投資を進めています。今は10軒ですが、今後50軒、 後に200軒、1,000軒という風に増えて行けば、1つの小規模リゾートになるでしょう」
朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。
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