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韓国スタートアップが一同に集まる「創業者通り」とは?

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韓国スタートアップが一同に集まる「創業者通り」とは?


先日、TIPSプログラムを運営しているTIPSTOWNのアン・ヨンイルセンター長にインタビューを行いました!
その際、「創業者通り」という韓国スタートアップが集まる通りがあるというお話をうかがいました。


TIPSとは、韓国政府が運営する技術系スタートアップのための支援事業のことです。
民間の投資会社がスタートアップ企業を選定し、民間投資と政府R&Dを連携して技術を持ったスタートアップ企業を支援しています。


TIPSが運営される前までは、政府がスタートアップ企業を直接支援してきました。しかし、成長が見込まれるスタートアップ企業を簡単に判断することは、政府にとっても容易ではありません。そこで、実力のある民間の投資会社が先に投資をした後、投資したスタートアップ企業を政府に推薦する方法を取り入れたのです。


本記事の前にインタビュー記事を読んで、TIPSがどのような支援事業を行っているのか是非チェックしてみてください!


記事はこちらから↓


韓国政府による革新的なスタートアップ支援プログラム「TIPS」|TIPSTOWN アン・ヨンイルセンター長|韓国のIT&スタートアップ業界専門メディア「KORIT」

TIPSとは、Tech Incubator Program for Startupの略語。民間の投資社が創業企業を選別し、民間投資と政府R&Dを連携し、技術を持った創業企業を支援する事業のこと。2013年に約30社程度の創業企業から始まり、2023年1月基準で2,134社の創業企業がTIPSに選定され、そのうち1社がユニコーン企業に選定、11社がIPO、62社がM&Aをするなどの成果をあげている。

korit.jp

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では、「創業者通り」がどのような通りなのか、歩いて行って見える景色とともに説明していきます!


「創業者通り」とは


韓国ソウルの駅三(ヨクサム)という地域には、「創業者通り」と呼ばれるスタートアップ関係者が集まっている通りがあります。


1,000人以上のスタートアップ関係者が300メートルにわたって集結しており、世界でもほとんど例を見ないスタートアップのための通りとなっています。


この直線上にスタートアップ企業が集まっている



ところで、「創業者通り」のある駅三という場所を知っていますか?

日本でも人気を博した韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の事務所がある場所が駅三です。ドラマからもわかるように、高層ビルが多く、様々な企業が集まっているオフィス街です。


「創業者通り」に集まっているスタートアップには、2つの共通点があります。
1つ目は、「技術力をもったスタートアップ企業である」という点、2つ目は「スタートアップの中でも初期段階の企業である」という点です。1,000人以上の技術系のスタートアップ関係者が集まっている通りを想像するだけで、熱気で溢れているのをイメージできるかと思います。


「創業者通り」にある施設とは


では、「創業者通り」には具体的にどのような施設が集まっているのか解説していきます。


創業者通り地図


上記写真にあるように、右のスターバックスから「創業者通り」は始まります。スターバックスから直線上に実際に歩きながら説明していきます。



早速少し進むと、まずはスターバックスのすぐ向かいにMaru180とMaru360という施設があります。


左がMaru180、右がMaru360


Maru180とMaru360は、スタートアップ企業に必要な教育やネットワーキングをサポートする支援施設です。現代グループが出資した財団であるThe Asan Nanum Foundationによって2014年4月に設立されました。

The Asan Nanum Foundationが運営する創業ベンチャープログラムに合格すると、費用負担なしで入居することができます。Maru180の設立から「創業者通り」の歴史が始まったとされています。


どちらも目を引く大きな施設で、中でもMaru360は2021年11月に設立され比較的新しいため、より現代的で解放感のある造りだと感じました。



次に、TIPSTOWN S5、TIPSTOWN S3が見えてきます。そしてTIPSTOWN S5、TIPSTOWN S3のすぐ先にはTIPSTOWN S2が、その向かい側にはTIPSTOWN S6が見えてきます。


TIPSTOWNとはTIPSプログラムに参加している運営会社、スタートアップ企業、支援機関が一同に集まっているスタートアップ支援施設です。TIPSTOWNには、基本的にTIPSの支援を受けている企業が入居できます。賃料の半分は韓国政府が補助しています。



TIPSTOWN S5とTIPSTOWN S3



TIPSTOWN S2とTIPSTOWN S6


TIPSTOWN S1からS6まではすべてTIPSで支援しています。S1からS6までに入居して活動している企業の数は約97社で入居人数は835人です。


また、単にオフィスを提供しているだけでなく、ネットワーキング教育訓練プログラム、投資家とのマッチングサービス、法律や会計相談が必要な際には専門家とのマッチングなどを行っています。そして、海外進出を検討する際には海外進出に特化した専門家たちをTIPSで募集し、メンターをつけることもしています。

スタートアップ企業は手厚い支援を受けながら、事業拡大のため日々TIPSTOWNで活動しています。



そしてTIPSTOWN S2の先にはTIPSTOWN S1が見えてきます。私がTIPSのインタビューをさせていただいたときに訪れた場所でもあります。



TIPSTOWN S1 外観


TIPSTOWN S1 エントランス


TIPSTOWN S1は地下1階から7階まであり、スタートアップ企業をはじめ、投資会社やスタートアップ支援機関などが集まっています。地下にはTIPSホールがあり、様々なイベントが開催されています。



そしてTIPSTOWN S1から少し進んだ向かい側には Gangnam jobandstartup Hub center 、TIPSTOW S4が見えてきます。


Gangnam jobandstartup Hub center とTIPSTOW S4


Gangnam jobandstartup Hub center は江南区役所が運営をしているスタートアップ支援施設です。オフィスのレンタル、メンタリング、資金調達の支援や、求職者には就職相談やジョブマッチング支援などを行っています。江南区役所が行う選考に合格したスタートアップが入居できます。


Gangnam jobandstartup Hub centerは2022年10月に設立された新しい施設で、地下2階~地上9階建てになっています。現在はAI、ITソリューション、バイオ分野など23社の企業が入居して活動しています。カフェテリア、コワーキングラウンジから、AI面接室、自習室、講義室、大講堂など多様な空間があります。


「創業者通り」を実際に目にして




実際に「創業者通り」を撮影しながら歩いていると、スタートアップに勤務している方を多く目にしました。お昼時には施設から団体で出てくる方たちも見かけ、仕事についての話をしていたり、電話で打ち合わせをしていたりとどの方も熱気に溢れているように感じました。


各施設で支援が行われているのはもちろん、スタートアップ企業が一同に集まっている点にも大きな意味があると感じました。様々な企業が集まることで、スタートアップ企業同士の横のつながりが密接になり、お互いに影響を与えながら成長していくのだと思います。


「創業者通り」が韓国だけでなく日本はもちろん他の国にもあれば、未来を担う革新的なアイデアが生まれるのではないかと思います。また、政府による手厚い支援を受けることで、技術力をもつスタートアップ企業は成長し続けることができるでしょう。




私自身韓国で生活をしながら、何気なく利用していたアプリがスタートアップ企業によって生まれたサービスであったりと、韓国スタートアップは意外と身近にあるものだと日々感じています。

韓国は「スピード重視」という言葉をよく耳にすると思います。実際にコロナウイルスの対応処置なども決定から実行までのスピードが速いように、韓国スタートアップの成長速度の速さも肌で感じます。
例えば日々使っているアプリに新機能が追加されていることや、決済方法がより簡潔になっているなど、実感することは多いです。


また、韓国スタートアップの記事から得られる情報や、実際のインタビューを通して韓国スタートアップはとにかくすぐに実行に移す場合が多いと感じます。「もしかすると失敗してしまうのではないかということも一旦やってみる」とスピード感を持って意思決定、行動をしていることを実感します。


今後も日々成長を続ける韓国スタートアップ情報を追い、迅速に伝えていけるよう尽力していきます!

/media/もも
記事を書いた人
もも

【KORIT編集部インターン】2020年青山学院大学を卒業後、新卒入社した金融企業にて勤務。入社と同時に独学で始めた韓国語に夢中になり、渡韓を決意。2022年6月から西江大学の語学堂にて現在韓国留学中。

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