RECON Labs – CEO パン・ソンフン

KAIST(韓国科学技術院)で文化技術の博士号を取得。現在はRECON Labsの代表として、AIを基盤にした2D・3Dコンテンツの生成および活用プラットフォームの開発・提供に取り組んでいる。
これまで10件余りのSCIE国際学術誌の論文掲載、20件余りの特許取得、VRコンテンツ大賞の受賞など、優れた研究成果と実践経験を重ねてきた。AIと実感型コンテンツ技術を融合し、新たなユーザー体験と価値の創出を目指している。


RECON Labsについてご紹介をお願いします。

RECON Labs(リーコンラボス)は、2019年に設立されました。

「AIを活用したコンテンツ制作を、誰もが簡単かつ自由に行えるようにすること」を目標に創業された会社です。

現在までに、ネイバーやカカオ、ロッテ、韓国投資パートナーズといった韓国内の大企業から投資を受けてきました。

設立当時はAIコンテンツはもちろん、AIに関する市場そのものがまだ一般的ではない時期でした。ですが、私たちはAIの可能性を信じ、AIコンテンツに関する事業を先行して積極的に進めてきました。

提供しているサービスについて教えてください。

私たちが提供するのは、写真や映像などの2Dコンテンツを3Dに変換するサービスです。作成された3Dコンテンツは、主にEコマースでの商品販売に役立てられています。
コンテンツの撮影は簡単で、撮影した映像をWebプラットフォームにアップロードするだけで、即時に3Dイメージを確認できます。

3Dコンテンツを利用することで、写真だけでは伝わりづらい細かい部分を確認できたり、後ろや横から見た時の状態も見ることができるため、ユーザーは商品を実際に手にした際の状態をより想像しやすくなります。

また、家具などの場合、実際に空間に配置したらどうなるか試すことができたり、3Dコンテンツの活用範囲は無限大だといえます。

この技術を生かし現在までに、Pan-Pacificなどのファッションブランド運営企業や調達庁などの官公庁とも関係を築いてきました。
他にも、マッサージチェアブランドbodyfriendでは、3Dモデルの製作を私たちが一貫して担当し、現代百貨店の協力を得て商品カタログの提供なども行っています。

今後は画面上で出来上がった3Dコンテンツを実際の製品としての生産まで範囲を広げていくことを計画しています。

サービスを始めたきっかけは何でしたか?

元々私自身はコンテンツを制作する会社に勤めていました。その中で、コンテンツ制作やデザイン、製造といった過程において人材に頼りきりになってしまう部分に問題意識を抱えていました。

多くのデザイナーがコンテンツ制作のために徹夜して作業をしているのを見て、人が手を動かして作業する過程をどうにかして削減したいと思い始めました。

アイデアを出したり、想像力を発揮するのはやはり人間が担うべき役割だと思います。
ですが、人間が考え出した想像を形にして、実際の製品として制作する過程はAIの手を借りてもいいんじゃないかと思っているんです。

色やデザインの変更、360度どのようになっているか確認することができる

そこで、自分自身が専門としていた3DとAIを使ったコンテンツ生成に関する分野の知識を生かして現在のサービスを始めました。

日本市場進出を決めた理由は何ですか?

「人間が創意力を生かしてものを作り、それを実際に販売できる製品として完成させる。」私がこの会社を通じて行いたいことはこれに限るのですが、そこに対するニーズが最も強い国の一つが日本だと思うんです。

日本は一人一人の好みが多様で確固としていて、それが実際に製品として制作、販売され消費者はそれを所有するために購入する。こういった市場が確立されているんです。

そういった日本の特徴をみて、日本で製作されたデザインを全世界に販売できるようにする生産ラインを提供したいと思い始めました。

日本ではどんな企業とパートナーシップを結びたいですか?

大きく分けて、二つの軸があります。

まずは製品デザインから実際の製品販売まで様々な3Dコンテンツを活用できるファッションや家具ブランドです。
これまで弊社が韓国で築いてきた3Dコンテンツ制作のノウハウを存分に活かし、大きな力になれると考えています。

もう一つはPOD製品を扱う印刷会社や、3Dプリンティングで迅速に製品を制作できる専門業者、少量生産に対応可能な製造メーカーなどです。

日本は先ほどお話ししたような消費者からのニーズに応えるため、少量でも高品質で製造できる高度な製造技術を持っています。
なので、今後高い技術を持つ日本の製造関係企業と積極的にパートナーになりたいと考えています。

前回東京で行われた「Japan IT Week 2025 春」に参加した際、多くの方が弊社のサービスに関心を持ってくださって、特に製造に関する事業を行っている会社ともお話しすることができ、大変参考になりました。

今後もイベントや展示会に積極的に参加し、日本でのビジネスパートナーを探したいです。

日本進出を準備しながら韓国との違いを感じた部分はありますか?

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、韓国はとにかく早く準備することが重要視されていて、クオリティは完璧でなくても、まずは試してみることを好む傾向にあります。

これはサービスを利用する会社も提供する会社も同じ考えのため、PoCに関しても早い段階から実施できることが多いです。

それと比較して日本は安全性や安定性、そして信頼感を重要視しているので、初めに受け入れてもらうまでは時間がかかる傾向があります。
ですが、一度その技術や効果が認められれば、長く続く関係になるのも特徴です。

そんな日本で事業を展開していくためには、日本の商習慣を尊重し、時間をかけて信頼を築く過程が必要だと考えています。

貴社の今後の目標を教えてください。

AIは皆さんご存じの通り、その可能性をどんどん広げ、これまで人間がやっていたことを代わりに行うようになってきています。

ですが、私はAIが主導になるのではなく、あくまでも人間の創意力をより効果的に発揮できるように助けてくれる存在として利用していかなければならないと考えています。

弊社は、デザイナーのアイデンティティを反映したうえで、実際に人々に使われる製品を生み出すような「ものづくり」をサポートしていきます。

それによって、コンピュータ内のデータが、実際に製品化され、商業的な価値を生み出すものとして世に出ることが可能になります。

私たちは、そのプロセスを実現する橋渡しとなるプラットフォームとして、経済の活性化にも貢献できる企業でありたいと考えています。

最後にKORITの読者の方々へお伝えしたいことはありますか?

日本企業も、グローバル展開に関して多くの課題を抱えているように感じます。
日本国内では内需が活発で、製造業やコマースも非常に発展していますが、海外との連携に関しては、多くの企業が関心を持ちながらも、なかなか実現できていない部分があるようです。

そうしたニーズに対して、私たちは製造と販売をつなぐ存在として、サポートできると考えています。
例えば、海外のクリエイターやデザイナーが手がけた製品を、日本で製造・販売し、日本市場を通じて流通・露出させる。そんな仕組みを構築し、実現していきたいと考えています。

私たちは単なるデザインや製造支援にとどまらず、ITを活用してビジネス全体をつなぐプラットフォーム的な役割を果たすことで、日本企業の海外展開や輸出の活性化にも貢献できると信じています。

そのような展開にご関心のある企業の皆さまには、ぜひお気軽にお声がけいただければと思います。


RECON Labs

HP:https://www.reconlabs.ai/