The Plato – 代表 ホン・ユナ

1998年生まれ。ソウル大学で人文学と経営を学ぶ。学生時代にはエドテックのスタートアップ「フラットガーデン」を共同創業し、M&A売却まで経験。

その後キャップストーンパートナーズで投資チームの審査、AI・コンテンツ分野中心に関する投資を行う。2024年にThe Platoを共同創業した。


貴社についてご紹介お願いします。

弊社The Plato(ザ・プラトン)は、AIを活用したノートテイキングアプリ「Tiro(ティロ)」を開発・提供しています。

「Tiro」という製品名は、ローマ時代に速記を発明した人物、マルクス・トリウス・ティロに由来しています。彼の発明が人々の「記録」を革新したように、TiroもまたAIの力で現代の会議やコミュニケーションにおける記録のあり方を変えたい、という想いを込めています。

通常、会議が行われると、その後議事録や報告書の作成といった文書の作成が伴いますよね。
そうした場面でTiroが力を発揮します。

Tiroは、会議や発表での発言内容を単に記録するだけでなく、リアルタイムに内容を整理し、議事録、要約、ToDoリスト、報告書など、用途や目的に応じた形式で文書を自動生成できます。

また、作成した文書はNotion、Slack、Wordなど他のプラットフォームとの連携も可能なため、使い方の幅も広がります。

私自身がそうであるように、重要な会議の連続で、カレンダーがいっぱいになっている忙しい毎日を送る人々にとって、きっと役立つ製品だと自負しています。

サービスを始めたきっかけは何ですか?

弊社はソウル大学出身の3人で構成されたチームで、「起業を通じて社会に良い影響を与えたい」という共通の想いから始まりました。

私個人としては今回が2回目の創業で、最初の創業は学生時代でした。

当時、韓国の入試制度の問題を解決したくてエドテック領域で起業をしました。
ある程度ユーザーも集まり、事業自体は順調でしたが、事業を進めながら自分が本当に解決したかった問題を解決できているのか、あまり実感を得ることができない日々が続きました。
その後もっと学ぶ必要があると感じてVCで経験を積み、生成AIであるChatGPTの登場をきっかけに、この技術を使ってより大きな影響を与えられるのではないかと思い再度創業するに至りました。

今回は、自分自身もユーザーになり得る「身近な問題」を解決することで、社会に良い影響を与えたい、もっと世の中を良くしたいという目標を達成したいと思っています。

ノートテイキングアプリを選んだ理由としては私自身、打ち合わせの数が多すぎてその内容の記録に大きな負担を感じていたからです。
また、打ち合わせ話を聞きながらメモをして、質問もして、となると集中力が削がれ、本質的な対話に集中できないことも多くありました。

そんな実体験から「対話に集中してください」という思いを込めて、リアルタイムで文字起こし・構造化する機能を備えたTiroというサービスが生まれました。

他のサービスとは違うTiroならではの強みは何ですか?

私たちのサービスの強みは大きく三つあります。

1つ目の強みはリアルタイム性です。

Tiroは会話をリアルタイムで文字化し、構造化して表示することで、会議中の集中力を高め、理解を助ける設計になっています。 議論の内容が即座にまとめられて表示されるので、重要なポイントを逃さずに途中からでも内容が把握しやすくなります。

また、最近リアルタイム翻訳機能を追加し、重点的に進めています。
この機能により、韓国語で話した内容をその場で日本語などに翻訳·表示することができます。 実際に日本出張の際にも、円滑なコミュニケーションに大きく役立ちました。

二つ目は、記録の品質です。

Tiroの基本的な機能は会話の記録なので、その基本となる記録情報の品質はもちろん重要です。

さらに、Tiroは会話の文脈を理解して、専門用語や人の名前や会社名などの固有名詞についても、より高い精度で認識・記録できます。

また、韓国語や英語だけでなく、日本語、中国語など計12種類の言語に対応しており、どの言語においてもより高い品質で、ユーザーに良い経験を提供するため、より優れた性能をもつインフラとモデルを使っています。

他にも、利用者に寄り添ったサービスのために、単語帳や、カレンダー連動、チーム情報、会議中にユーザーが追加情報を入力できるウィンドウなど、様々な要素を備えています。

ユーザーがあらかじめカレンダーなどにミーティング相手の情報をメモしておくと、それを読み取ってTiroが作成する文書も記録の精度が大きく向上します。

そういった様々な技術を駆使することで、他にはないカスタマイズされた高品質の記録が実現されます。

三つ目は、記録後のファイル変換・加工技術です。 

先ほど会議の後には何かしらの文書の作成が必要になるというお話をしましたが、ミーティングのすべての記録が必要になるケースは、実際にはそれほど多くありません。

特に社内外多くのミーティングを行う人の場合は、自分が必要とするインサイトやその後アクションプランのみまとめた内容が必要という場合が多いです。

Tiroはそういった要望に注目して、会議の内容記録だけでなく、そこからの要約・文書作成作業にも注目し、サービスを提供しています。

私自身、創業をする前にベンチャーキャピタルで仕事をしながら多くの類似サービスを見て、実際に使用してきました。

もちろん、これまで見てきた製品もすべて良い製品ではありましたが、ただ話したことを単にテキストに変換するだけでは、ユーザーの本質的な課題は解決できないと感じました。

Tiroは単に音声をテキスト化するだけでなく、ユーザーにとって最も有用なアウトプットを生成できる「パートナー」となることを目指しています。


日本市場参入の最大の理由は何ですか?

海外進出は、創業当初から念頭に置いていました。

より多くの人々にAI技術をもって良い影響を与えるためには海外進出は必須で、その第一歩が韓国だっただけだと考えています。

ただ、現在ではAIサービスが溢れ、言語の壁も低くなっており、誰でも簡単に海外展開できる時代です。その中で競争力を持つには、表面的な参入ではなく、各国の市場に深く入り込む必要があると感じました。

その中で私たちが初進出地として日本を選んだのは都市構造やビジネス文化が韓国と似ていてミーティングがよく行われる環境であり、チロとの相性がとても良いと判断したからです。

実際、日本に出張に行ってみると特に対面ミーティングを重視する文化や高密度都市という特性はTiroのリアルタイム記録·翻訳機能の価値を極大化できると実感したり、その中で言語障壁に苦しむことも多く目撃して私たちのリアルタイム翻訳サービスで, 日韓国境を越えて業務する人々の問題を解きたいという思いもしました。

さらに、日本は地理的にも近いため、私たちが実際に訪問して市場調査を行いやすいことも大きな利点です。ターゲットとなる顧客層も明確で、製品の特性が合致していると感じています。

日本の利用者は、韓国と比べて慎重に製品を選ぶ傾向がありますが、一度信頼できると感じれば、長く使い続けてくれるという特徴があります。そうした信頼を重んじる日本市場で、着実に成果を上げていきたいと考えています。

日本市場ではどのような形で事業を進めていく予定ですか?

韓国の場合、私にとっては母国ということもあり、自身の人脈なども活用し、SNSを利用したマーケティングがうまく機能しました。
LinkedInやThreads、InstagramなどのSNSで製品紹介を行ってきました。また、SNS運用に慣れたマイクロインフルエンサーに実際に使ってもらい、紹介コンテンツを自発的に発信してもらうという形で、自然な広がりが生まれました。

日本でも同様のアプローチを試したいと思っています。そのため、IT製品の紹介に強いマイクロインフルエンサーや、そうした人材とつながりのあるエージェンシーとの連携が重要になると考えています。

加えて、日本ではBtoBでの導入も積極的に進めたいです。韓国では個人経由での広まりが多かったのですが、日本は企業との正式なPoCやデモを経た導入の流れが一般的で、市場規模も大きいため、ITセールスに強いパートナー企業との協業も視野に入れています。

日本進出はまだ始まったばかりですが、今後も信頼できるパートナーと継続的に連携していきたいと考えています。

今後のビジョンと目標を教えてください。

今後対話を記録として残して活用するという行為が、より大きな波及力を持つと思っています。

これまでは、本や授業で知識を得ていたものが、インターネットが登場して、知識の範囲がすごく拡張されたと感じています。

そして、それと同じようにTiroのようなノートテイキングサービスは、記憶力の限界を補い、人の思考を広げる可能性を秘めていると感じています。

私も20代を活発に過ごし、数多くの授業、ミーティング、セミナーなどに参加して多くの情報を蓄積してきましたが、どんなに一生懸命聞いても寝て起きると7割くらいは忘れてしまうんです。外国語のミーティング、講義は特にそうでした。

でもそれが当たり前のことではなくなる時代が来ると感じています。

自分が聞いた会話の重要な部分を記録することで、単なるメモではなく、自分の“第二の脳”のような存在になると考えています。

それを活用できる機能も引き続き出てくるでしょうし、記憶の限界を越えるテクノロジーだと思っています。

それで、私たちのチームは音声AI技術を通じて、人間の記憶力の限界を乗り越えるという大きなビジョンに挑戦しています。

少し具体的な目標をお話しするとすれば、アジアでナンバー1のノートテイキングAIアプリになることが目標です。

ノ-トテイキングサービスはたくさんありますが、音声認識、文書作成の領域にはまだ未開拓の市場があると感じていますし、グローバルナンバーワンになるような代表的なサービスはまだ確立されていないと考えています。
基盤モデルではOpenAI、アジアのデータセンター基盤ではNaverやKakao、検索分野では Google や NAVER があり、さらに Notion や Slack のようなジェネラティブワークの影響も出てきています。
そうした中で、私たちもノートテイキングの分野において代表的な製品として、Tiroをアジアからグローバルナンバーワンのサービスに育てたいと考えています。


The Plato

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