本記事では、韓国観光公社の「2026観光プラステックブリッジプログラム」に選定されたXL8をご紹介します。
「2026観光プラステックブリッジプログラム」は、技術企業の観光分野への事業拡大を支援する観光事業化支援プログラムです。韓国の国家研究開発事業(R&D)への参加実績を持つ企業の中から、人工知能、スマートモビリティ・航空・交通、フィンテック、持続可能な観光の4分野で有望企業が選定されています。
COO イ・サンウン
西江(ソガン)大学大学院で国際関係学を専攻。国際会議プランナーとしてキャリアをスタートし、韓国政府の傘下機関で10年以上勤務。その後、テックスタートアップのBitsensingでの勤務を経て、2019年にXL8に参画。現在は、COO兼韓国法人代表として、グローバル戦略と韓国・日本市場での事業拡大を牽引しながら、リアルタイムAI通訳プラットフォームの「EventCAT」のグローバル展開と現地パートナーエコシステムの構築を統括している。
目次
創業のきっかけは、放送映像コンテンツのローカライゼーション
私たちXL8は、米国・シリコンバレーに本社を構えるAI同時通訳・翻訳の専門企業です。各種映像コンテンツ向けローカライズソリューション「MediaCAT(メディアキャット)」と、リアルタイムAI通訳・翻訳ソリューション「EventCAT(イベントキャット)」を提供しています。
2019年10月、創業者であるジョン・ヨンフン代表を含む米国在住の韓国人2名が、「メディアローカライゼーションにおける言語の壁をAIで解決する」というビジョンを掲げ創業しました。
ChatGPTや、Claudeといった生成AIツールが存在しなかった当時、放送映像コンテンツをローカライズする過程に着目し、字幕作成を行うAIプラットフォームの開発に着手したのが原点です。
現在は、シリコンバレー本社のほか、韓国にも法人を設立しています。さらに、日本、イギリス、トルコ、ベネズエラ、ベトナムなど世界中の拠点に約30名の従業員が在籍し、「グローバルワンチーム」として事業を展開しています。
映像コンテンツ特化型ローカライゼーションサービス 「MediaCAT」
まず、「MediaCAT」について説明させてください。

「MediaCAT」は、その名の通り、Mediaに特化した翻訳ソリューションで、映像コンテンツの翻訳にご活用いただいております。
AIの翻訳精度は学習データの質と量に大きく左右されるため、いかに良質なデータを用いて学習させるかが、翻訳の「自然さ」を決めるカギとなります。一般的な翻訳ツールとは異なり、当社は独自エンジンを通じて字幕翻訳や吹き替えのルール、会話特有の表現方法をAIに学習させています。
そのため、圧倒的に高品質で自然なローカライズを提供できるのです。
また、ドラマやバラエティなどで使われる字幕翻訳と映像吹き替え翻訳は、映像の尺に応じた文字数制限など制約が多く、各言語ごとに文脈に合わせて単語数を操って作り込む特別な技術が必要です。
このソリューションは一般には販売しておらず、顧客のほとんどが韓国の大手放送局や大手エンターテインメント会社です。彼らは、内部技術チームを持っており、様々なエンジンで比較・検収しています。そして、どのエンジンが、より適切で、上手く翻訳できているかをシビアに評価し、俳優や映像に出てくる話者の言葉を、一番適切に表現できる翻訳ソリューションを求めています。
「MediaCAT」は、そのような現場の厳しい条件をクリアしたソリューションとして多くのお客様に選ばれてきました。
専門性が高く、狭い市場の中で信頼を確保し、事業として成長させていくことは簡単なことではありませんが、当社の翻訳ソリューションの正確性は業界でも高く評価されていて、売上も年々拡大しています。
リアルタイム通訳・翻訳サービス 「EventCAT」
もう一つのソリューションは、「EventCAT」です。

「EventCAT」は、人の会話やスピーチ、講演の内容を、リアルタイムに翻訳・文字起こしをします。対応言語は50言語以上に及び、自社開発のストリーミングベース音声認識・翻訳エンジンに同時機械翻訳(SiMT)技術を組み込むことで、従来の逐次翻訳に比べて遅延時間を約70%削減することに成功しています。
すでに SusHi Tech Tokyoなどの国際的な展示会や、大規模カンファレンスなど、言語の壁が存在する多様なビジネスシーンで導入されています。特に、予算の都合や会場スペースといった制約により、同時通訳者の手配が困難だった(あるいは導入を見送っていた)イベントにおいて、多くご活用いただいています。
また、最近では、日韓両国の大学やインターナショナルスクールといった教育機関での導入実績も広がっています。他にも、医療観光で韓国を訪れる外国人患者とのコミュニケーションツールとして、韓国の医師が集まるプラットフォームからも「EventCAT」に関するお問い合わせを多くいただいております。
さらに、専属の通訳者が在籍する大企業であっても、「文字起こしされたスクリプトや要約が残る」点に着目し、通訳者と「EventCAT」を、目的によって使い分けたり併用するケースも見られます。
「EventCAT」には、これまで広告費用をかけていません。ビジネスの現場で利用される度に、その利便性と正確性が話題になり、業界内に口コミで広まることで販路を拡大してきました。
本当に価値のあるものは、広告を出さずとも現場からの紹介で必ず広まっていくのだと実感しています。
汎用AIにはカバーすることのできない「正確性」と「専門性」
この事業を展開していく中で一番難しいことは、やはり汎用AIとの共存だと思います。
当社は、AIが一般に普及する前から開発をしてきた企業であり、「AIとは何か」、「AIをどのように使うべきか」、「なぜAIを使わなければならないのか」などについて、長い間議論を続けてきました。
そして、そんな中、ChatGPTやClaudeなどの生成AIが登場しました。
端末があれば誰でも無料でAI翻訳が使える環境が当たり前になった現代、「なぜ翻訳サービスに、わざわざお金を払うのか」という考え方を持つ人も増えています。
たしかに言葉そのものの翻訳だけなら無料の汎用AIでも事足りるかもしれません。
しかし、言葉は「心」であり、「文化」でもあります。
人間の感情が込められた会話特有の言い回しや、言語が持つ文化的背景などを正確に伝えるためには、「MediaCAT」や「EventCAT」のような特定の領域について学習させられた特化型AIは必要不可欠です。当社の「正確性」や「専門性」といった、汎用AIではカバーすることのできない付加価値を大切に育てながら、事業を展開していきたいです。
また、AIが進化し普及する度に競合他社も多くなっていきますが、同業の皆さんと通翻訳業界のエコシステムを創り上げ、共に市場を広げていくことに大きな意味があると考えています。
世界最大のコンテンツ市場である日本で、新たなビジネスインテリジェンスを創出する
私たちは、近いうちに本格的に日本市場に進出する予定です。
IP大国である日本には、素晴らしいコンテンツがたくさんあり、世界のコンテンツ市場で確固たる存在感を示しています。特に、アニメの人気は凄まじく、グローバルな動画配信プラットフォームの普及も相まり、日本アニメと関連IPの海外需要は、年々増加しています。
しかし、まだまだ一部のコアなファン層にしか届いていないコンテンツも多く、その理由の一つは、ローカライズの問題だと考えられています。日本の素晴らしいコンテンツ文化を世界中の人に同じ解像度で楽しんでいただくために、私たちがローカライズの専門企業として貢献していきたいと思っています。
また、コンテンツの言語の壁を取り払う 「MediaCAT」と、会話や言葉のコミュニケーションの言語の壁を取り払う「EventCAT」の2つが合わさることで、今までにないビジネスインテリジェンスの提供を実現できるのではないかと考え、現在、事業戦略を立てているところです。
異なる言語同士が出会う場所で、人々を繋ぐ一つのインターフェースになること。それが、私たちが目指すAIローカライズ通訳・翻訳ソリューションの未来です。
当社の事業内容にご興味のある方は、いつでもご連絡ください。

XL8
