OOZZ – CEO チェ・チャンソル

慶熙大学産業デザイン学科専攻。 在学中は産業デザイナーを志していたが、自身の経験から「環境にやさしいデザイン」の重要性を実感し、2024年にエコリビングブランド「oozz」を立ち上げた。現在は代表兼クリエイティブディレクターとして、エコリビング市場におけるゲームチェンジャーを目指し活動している。


2024年創業、韓国エコデザイン会社「OOZZ」

私たちOOZZは2024年6月創業のエコデザイン会社です。

既存のエコ製品のユーザー体験を調査して、製品の品質を大きく向上させたり、既存エコ製品の問題点を改善して、大衆に愛されるエコ製品の開発に取り組んでいます。

弊社は少数精鋭企業で、代表である私を含めてメンバーは4人。4人全員がデザイナーという少しユニークな組織です。全員がデザイナーという強みを生かして、環境にやさしいだけではなくデザイン、使用感、そして素材にまでこだわったエコ製品をつくっています。

​​起業のきっかけは、育ってきた過程で目の当たりにした「自然破壊」

私は、韓国・済州島(チェジュ島)の海に近い村で生まれ育ちました。私が生まれた当時、済州は本当に自然豊かな美しい場所でした。

しかし、時の流れと共に、済州の姿は変わっていきました。海岸には、他国の海洋からゴミが流れ着くようになり、それまで当たり前に獲れていた魚も、だんだん獲れなくなりました。急速な温暖化の影響で、済州では、この20年で野生個体の約半数以上が失われたと聞いています。

もちろんこれは、韓国に限ったことではなく、日本や諸外国でも同じですよね。

済州で育った20年の間に、自然破壊と生態系の変化を目の当たりにした私は、環境保護に関わる仕事に就きたいと考えるようになり、この会社を立ち上げることになりました。

ですが、実際に事業を始めると、エコ製品に無限の可能性を感じる一方で、解決しなければならない問題がたくさんあることにも気づきました。

私が考える一番大きな問題点は、消費者の需要を汲み取りきれていないがために、エコ製品の本当の価値が伝わらない、という点です。

「環境にやさしい製品を開発するべきだ」という価値に共感してくれる方は、結構たくさんいます。でも、実際にエコ製品を見ると「人の目に触れる場所に置くにはデザインがイマイチ」「安っぽく見える」と、実際には手に取らない、購入しないというケースがたくさんあることも事実なんです。

せっかく環境にやさしい製品を開発して、「こんなに価値があるんだ」と主張しても、人々に求められなければ、本末転倒ですよね。

私たちは、デザインの力で、そのギャップを埋めていきたい。
デザインの力を使って、エコ製品を、もっと身近に感じてもらえるような社会をつくりたいんです。

OOZZのメイン製品、置き時計

私たちは、既存のエコ製品のユーザーにインタビューをして、デザインの力で製品の質を向上させるという活動のほかに、自分たちでもエコ製品を開発しています。

弊社の一番のメイン製品は、置き時計です。

弊社のメイン製品を時計にした理由は、人種や性別、世代に関係なく、世界中どんな人でも、必ず使うものがいいと考えたからです。最近は、いろいろな働き方が受け入れられてきているので、お家の中でお仕事をされる方も多いですし、仕事や生活をする中で、時計を使わない人はいないですよね。デスクの上に置く時計がお洒落で、かつ、環境にやさしいものだったら、いい気持ちで生活できるんじゃないかと思いました。

弊社の時計製品には、トウモロコシでんぷん由来のPLA(ポリ乳酸)から作られたプラスチックバージョンと、バイオチャーを混ぜたコンクリートを使ったコンクリートバージョンの2種類があります。

コンクリートバージョンにはUHPC(超高性能コンクリート)に、バイオチャーと呼ばれるカーボンネガティブとして注目される素材を配合したコンクリートを使用することで、カーボンニュートラルのイメージを強調しています。また、円と三角形からなる時計の針は、長針と短針を視覚的に区別できるように設計。目を惹くデザインになっていると思います。

また、もう一つ、キャンプ用に設計されたランタンの開発もしています。

この製品も、時計と同様の素材を使用したプラスチックバージョンと、コンクリートバージョンの2種類があります。
キャンプでの雰囲気や環境を考えて、明るくなりすぎないように、光の拡散を抑えるデザインにしました。

また、キャンプ用と謳ってはいますが、アウトドア商品っぽく見えすぎないようなデザインになるようにもこだわっているので、デスク周りなど日常にも馴染む汎用性の高い製品です。

デザインの本質は、目に見えない部分にこそ詰まっている

私たちは昨年12月、東京で行われたILS2024に参加しましたが、ILSに参加する前から、日本のエコ製品市場にはとても興味がありました。

エコ製品に限ったことではありませんが、日本の製品は、伝統素材など、素材の素晴らしさもさることながら、技術力の高さや、デザインの面でも、非常に洗練されていると感じます。社内でも、よく「日本のエコ製品のクオリティに追いつくのは、そんな簡単なことではないよね」という話をします。

また、それだけでなく、日本では消費者が各製品に込められたメッセージや作り手の想いを汲み取ってくれることがすごく多いんです。
例えば、韓国では高価格のエコ製品があると、「値段が高い」という側面だけで、すぐにマイナスのイメージを持たれてしまうことが多く、目に見えない部分にどんなストーリーがあるのか、どれだけの手間がかかっているのかということまで、気にかけてもらえることはあまりありません。

しかし、日本では「価格が高いのには、こういう理由があったんだね」と、その製品の本当の価値を見て評価してくれます。

ILSでお会いした日本企業の方々も、私たちの製品を真剣に隅々まで見てくれて、どこが良くて、どこが足りなくて、どんなふうに改善すればいいのかと、本当にありがたいフィードバックをたくさんしてくれました。
デザインの本質は、目に見えないところにこそ詰まっているのだというデザイナーとしてのこだわりを評価してもらえたことが、とてもうれしかったです。

自分たちの事業の価値を再認識でき、改善点を洗い出せたことで、これからどう歩んでいけばいいのか、さらに視界が開けた気がしました。
やはり定期的に海外の市場を見に出かけることは大事ですね。

今後は、日本だけなく、諸外国のエコ製品も、たくさん見に行って勉強したいです。パリで開かれる「メゾン・エ・オブジェ」という世界最大級のインテリア・デザインの展示会にも、参加したいと考えています。



エコ製品を当たり前に、市場の「ゲームチェンジャー」を目指す

今後の目標としては、まず10年以内に私たちがターゲットとしている市場でのシェア30%を獲得し、日本をはじめ、海外でのエコ製品の国際市場で認められるようになることです。
「エコ製品のデザインと言えばOOZZだよね」と言ってもらえるような、知名度の高い会社になりたいです。

そして私たちの最終的な目標は、エコ製品を社会に浸透させ、どの市場でもエコ製品が主流になるような社会を作ることです。今はまだ、消費者にとって、非主流的な製品に分類されているエコ製品を、主流製品として発展させ、エコ製品市場の価値と規模を拡張させていく。それが私たちの夢であり、ミッションであると考えています。

私たちがこのエコ製品市場の「ゲームチェンジャー」になれるように、これからも妥協することなく、時代のニーズに合わせながら、柔軟に考え、エコ製品の認識拡大のために活動していきたいです。