・UX、ヘルスケア、技術の専門家3名による創業チーム……医療ツーリズムプラットフォーム「iipuda」を構築
・AIによる病院マッチングとキュレーション戦略……「良い病院だけをつなぐ」
・台湾、日本、北米まで拡大……外国人患者向け医療ツーリズム体験の革新に挑戦
韓国医療の技術力は世界的に高く評価されている一方、外国人患者にとって医療ツーリズムはいまだ敷居の高い存在だ。言語の壁や情報の非対称性、病院選びへの不安などが重なり、実際に医療サービスへアクセスするまでには高いハードルがある。
Kiip Corporationの医療ツーリズムプラットフォーム「iipuda(イップダ)」は、この課題を単なる病院紹介ではなく、「信頼に基づく医療体験」という観点から解決しようとしている。パク・ゴンス代表は、価格競争よりも重要なのは信頼と安心感だと強調し、AI技術とキュレーションを活用して、外国人患者が韓国医療をより手軽かつ安心して利用できるプラットフォームを構築している。
目次
専攻で培った知見を活かした「クロスカルチャー」サービスの構築
パク代表は、小学校から高校までを中国とアメリカで過ごした経歴を持つ。その後ワシントン大学で人間中心設計工学(HCDE)を専攻し、多様な文化圏のユーザー体験を研究した。
多文化環境で生活した経験は自然と、「どのようなサービスが文化と言語を超えてユーザーに信頼を与えられるか」という問いへとつながった。彼は、韓国医療が高い競争力を持つにもかかわらず、外国人患者が実際には言語の壁と情報不足、病院選択への不安から医療へのアクセス過程で困難を抱えている点に着目した。
パク代表は、「医療ツーリズムにおいて、重要なのは結局のところ『信頼』と『安心感』だ」とした上で、「厳選された病院だけをプラットフォームにオンボーディングし、テクノロジーによって優れた病院と外国人患者の間の障壁をなくすことを最優先にしている」と述べた。
彼が注目したのは、韓国の医療ツーリズム市場における高い参入障壁だった。言語の問題や情報の非対称性、病院への信頼不足など、外国人患者が抱える課題をUXの観点から解決しようというのが、iipudaの出発点だった。

Kiip Corporationパク・ゴンス代表
UX・ヘルスケア・グローバル技術3名の創業チームが生むシナジー
Kiip Corporationのもう一つの強みは創業チームの構成にある。パク代表がグローバルUXとビジネスを担当する一方、薬剤師出身のヘルスケア専門家であるイ・ソジョン共同創業者が医療ドメインの専門性を加え、清華大学で自動化工学(Automation)を専攻した元LG電子研究員のキム・イェチャンCTOが技術開発を主導している。異なる専門性を持つ3人が、それぞれの強みを一つのプラットフォームに結集している。
パク代表は「医療ツーリズムは人の健康と直結する領域であるため、ヘルスケア専門家の視点がプラットフォームの設計段階から必ず必要だった」と説明した。続けて「そこにグローバルトップレベルの工科大学と大手企業のR&D経験を持つCTOの技術力が加わることで、医療の専門性・ユーザー体験・技術力のバランスが取れたプラットフォームを作れるようになった」と述べた。特に清華大出身CTOの存在は、メインターゲット市場である中華圏への進出においても重要な強みとして機能しているとのことだ。
このような創業チームの構成は、Kiip Corporationのサービス設計にも反映されている。単純に病院情報を集約するのではなく、信頼と安全性を重視したキュレーションと、AIによる病院・患者マッチングを中核に据えた。
パク代表は「信頼と安定性を伴うサービスを提供することが最大の差別化点だと考えている」とし、「韓国の医療ツーリズムは参入障壁が高いが、その障壁を大きく下げようと努力している」と語った。
実際、創業初期にはプラットフォーム事業者でありながら、自ら現場に飛び込んだ。病院カウンセリングから患者対応、誘致のプロセスまで代表自らが現場を走り回ってビジネスを育てた。パク代表は「医療コーディネーターとして活動してカウンセリングを直接担当しながらスタートしたため、より速いスピードで進むことができたと思う。私たちのビジョンに共感された院長が個人投資をしてくださった経験もある」と振り返った。
こうした方式は初期の成果にもつながった。一般的な医療ツーリズム誘致業者が最初の1年間で患者誘致自体に苦労するケースが多い中、Kiip Corporationは創業初年度に外国人患者の誘致を通じて1億ウォン(約1,047万円)以上の取引額を記録した。

Kiip Corporationの医療ツーリズムプラットフォーム「iipuda(イプダ)」のアプリケーション画面
AIで医療ツーリズムの参入障壁を下げる
Kiip Corporationの核心競争力は、AI技術を活用した病院・患者マッチングシステムだ。単に病院情報を掲載するだけではなく、外国人患者の言語や症状、予算、好みなどを総合的に分析して各ユーザーに適した病院を推薦する仕組みだ。医療ツーリズムで最大の不安要素となる情報の非対称性を、AIで解消しようとしている。
パク代表は「技術によって良い病院と外国人患者の間の障壁をなくすことが最も重要だ」とし、「AI技術を活用して病院と外国人患者の間で実質的なつなぎ役を果たしている」と説明した。これに加え、厳選した病院のみをプラットフォームにオンボーディングする「ミシュランガイド式キュレーション戦略」も採用している。単に多くの病院を確保するのではなく、医療スタッフの経歴や施設水準、外国人患者への対応経験などを審査・検証したうえで入店を認める仕組みだ。価格競争よりも信頼性と安定性を優先するという方針が、プラットフォームの運営方式にもそのまま反映されている。
こうした戦略は海外顧客の獲得にもつながっている。Kiip Corporationは現在、北米地域からの利用者も獲得しており、来年からは台湾と日本市場を中心にマーケティングを本格的に拡大する計画だ。パク代表は「台湾と日本市場は韓国医療とK-ビューティーへの関心が高く、アクセス面でも優れているため、重要な市場だと見ている」とし、「すでに北米からも顧客が流入している以上、今後は言語・文化・情報の障壁なく誰もが韓国医療を気軽に体験できるプラットフォームをつくることが目標だ」と語った。
彼が目指すのは、単なる病院予約サービスではない。見知らぬ国でどの病院を選べばよいか分からず不安を抱える外国人患者が、より安全かつ自然に韓国医療を体験できるよう支援する「医療アクセス基盤」に近い存在だ。医療観光が単純な価格競争を超え、信頼と体験中心の産業へと移行する流れの中で、iipudaの方向性もますます明確になってきている。
韓国から日本へ、そして世界へ広がる医療観光プラットフォーム
2026年現在、同社は日本国内での認知度向上と日本人顧客の獲得に注力している。SNSコンテンツの拡充やメディア露出、アプリストア最適化(ASO)を通じて、韓国で美容・医療施術を希望する日本のユーザー層に向けて「iipuda」の認知度を高める取り組みを展開中だ。提携クリニックの厳格な審査や日本語専任サポートの提供など、信頼性を最優先する運営方針も、日本市場において一貫して維持されている。
2027年からは、日本国内の医療・美容クリニックとの提携を本格化させる予定である。韓国への送客にとどまらず、日本の医療機関もプラットフォームに組み込むことで、海外の患者が日本で医療・美容サービスを円滑に受けられる環境の構築を目指している。まずは日本からのアウトバウンド需要を拡大させ、将来的には韓国を含む世界各国から日本への「医療観光(インバウンド)」を包括的に支援できるプラットフォームへと発展させる計画だ。
さらにiipudaは、従来の美容(皮膚科・美容整形)領域に加え、今後はLongevity(幹細胞などの再生医療)やヘルスケア分野へのサービス拡大を睨んでいる。日本国内では2014年に再生医療関連法が整備され、承認前の再生医療であっても患者と医師の合意に基づく自由診療が広く認められている。そのため、韓国からも幹細胞治療を目的に年間数万人規模の患者が日本を訪れているとされる。同社はこうした潜在需要を韓国市場のみならずグローバルへと広げ、日本を含むアジア全体の医療観光を繋ぐ一大プラットフォームへの成長を見据えている。
<画像=パク・ゴンスKiip Corporation代表>
原文:https://www.venturesquare.net/1080189
※本記事は、VENTURESQUAREで公開された記事をもとに、一部修正・加筆のうえ作成しています。
