韓国IT・スタートアップ情報をお届けする「KORIT」のインタビュー。
今回は、韓国でスポットワーク事業を展開する Needer社 への出資を発表した株式会社タイミー Business Development本部の高野さん に協業の背景や今後の展望についてお話を伺いました。
株式会社タイミー 高野 由紀
作家から総合広告代理店へ転職し、大手企業の事業成長に貢献するプロモーションを推進。その後、2019年に株式会社タイミーに参画。関西支社立ち上げやマネージャー経験を経て、現在はHR領域全体の事業拡大を担うBusiness Development室に所属。
直近では韓国企業への出資を担当し、新規事業開発から経営管理まで幅広く携わり、社会課題解決と事業成長の両立を目指している。
目次
株式会社タイミーとは?
株式会社タイミーは2017年に設立、2018年にサービスを開始しました。働きたい時間と働いてほしい時間をマッチングするスキマバイトサービスを提供しています。
ワーカーは今働ける仕事がすぐに見つかり、給与は勤務終了後即日入金される仕組みです。企業側は、働いて欲しい時間に必要な働き手を確保できるだけでなく、働き手の中で希望する人材が見つかれば、無料で長期採用もでき、タイミーへの報告義務もありません。
ワーカー・企業共に、手軽かつ安心して利用できるスキマバイトサービスとして利用率No.1を誇っています(※1)。
現在、登録ワーカーは1,190万人(2025年7月時点)で、日本人の約10人に1人が登録しています。年齢や性別に偏りはなく、さまざまな世代がスキマ時間にスキルを活かして働いています。
一方、導入事業者数は約20万社(2025年7月時点)で、日本国内の大手企業から中小企業やコンビニ、物流・飲食・小売など幅広い業界で活用されています。
以前は学生の登録者が多かったのですが、コロナ禍をきっかけに副業解禁の流れもあり、学生以外の社会人ワーカーも増加し、数時間単位での勤務や、推し活のための短時間バイトなど、ニーズに応じた多様な働き方が広がっています。
(※1)調査委託先:マクロミル 調査方法:インターネット調査 調査時期:2025年1月31日~2025年2月4日 調査対象:直近1年以内にスキマバイトを経験したことのある18~69歳の男女1033人
韓国スポットワークサービス企業「Needer社」への出資のきっかけと目的
今回の出資は、ロッテの重光会長と弊社代表・小川の会合がきっかけで実現した、タイミーとして初の海外企業への出資です。会合をきっかけに、類似するビジネスとしてNeeder社が運営する「gubgoo(クック)」をご紹介いただいたことが始まりでした。
これまでタイミーは、国内企業での事業基盤の強化に注力してまいりました。ですが、その中で出会ったNeeder社は、弊社の事業と近しいビジネスを展開されており、将来的なグローバル展開を見据えた戦略的パートナーとして協業をスタートすることとなりました。
Needer社に期待する点は、韓国ベンチャー特有の圧倒的な成長スピードと、市場のフィードバックを迅速に反映するアップデート能力です。これらは、テクノロジーへの強力な焦点とグローバル志向を兼ねた韓国スタートアップエコシステムの特性として、日本企業から見て極めて魅力的に映ります。
また、韓国政府による支援策や、企業間の連携を通じて形成されるオープンイノベーションの仕組みも、今後の弊社の事業展開において大いに参考にすべきモデルだと考えております。
今回の協業を通じて、そうした知見を深く学び取り、自社の成長に活かすことができる点に大きな価値を感じています。
タイミーとgubgooの共通点と相違点
韓国では国家レベルでデジタル化が進展しており、日本におけるマイナンバーに相当する住民登録番号を基盤として、個人情報が一元的に管理されています。
高度に効率化されたインフラは、本人確認や様々な手続きにかかる時間とコストを大幅に削減し、事業者にとって極めて効率的な事業展開環境を提供しています。
一方日本では、本人確認の際にパスポート、運転免許証、マイナンバーカードなど複数の公的身分証の提出を必要とする場面が多く、ユーザーは勿論、事業者にとっても煩雑なプロセスが展開されています。
このような日韓のデジタルガバナンスと手続きの効率性の差は、弊社が今後、日本国内での事業運営におけるオペレーションのあり方を再構築する上で重要な示唆を与えてくれると考えています。
韓国市場でのスポットワークの広がり
現在、gubgooの利用者は個人事業主や小規模事業者が中心であり、従来、十分な内部リソースを有していた大手企業での導入は限定的でした。
しかし近年、韓国市場においても構造的な人手不足の兆候が顕在化し始めたことを受け、大手企業におけるスポットワークに対する潜在的な需要が急速に高まっています。これに対応するため、弊社はロッテホールディングス様をはじめとするパートナーとの連携を通じ、日系企業の韓国進出サポートや現地大手企業との協業を推進することで、企業規模に応じた適切なマッチング機会を提供するための環境整備を行なっています。
具体的には、日本の物流業界などでの活用事例を参考に、韓国企業でも効率化やコスト削減に貢献できるよう取り組みを進めます。また、企業ごとに専任担当を配置し、最適なマッチングを提供する営業体制を構築することで、安心して利用いただけるサービスを目指しています。
韓国市場の規模は現時点では日本より小さいものの、少子化や労働人口の減少といった社会的課題は、日本と同様に深刻化しつつあります。こうした共通の課題に対し、日本で培った成功事例やノウハウを活かすことで、韓国市場においてもワーカー・企業双方にとって手軽かつ安心して利用いただけるサービスを展開していきます。
株式会社タイミーの今後の展望
海外市場では、スポットワークという新しい働き方に対する受容度や独自の文化的背景が、現時点では未知数な要素として存在しています。そのため、まずは現地企業との協業を通じて市場理解を深め、その知見を基に事業展開を進めることが不可欠であると考えています。
今回の出資は、Needer社との戦略的な連携により、スポットワークサービスを現地市場でより迅速かつ効率的に普及・拡大できると判断したことによるものです。また、韓国の先進的なユニコーン企業やグローバルベンチャーが培ってきた独自のシステム、成長戦略、および事業ノウハウを深く学び、その洞察を日本国内のサービス革新と改善にも活かしていく方針です。
タイミーは、「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」というミッションを掲げ、働く機会のさらなる拡大を通じて、持続的な成長と企業価値の最大化を実現していきます。
また、働く方と企業との価値あるマッチングを通じて、新しい出会いや成長の機会を創出し、誰もが信頼感と安心感をもって利用できる社会インフラとしてのプラットフォームを目指してまいります。
KORIT読者へのメッセージ
スポットワークは、単なる一時的な収入源ではなく、個人の時間を能動的に活用し、新しい出会いや多様な経験を獲得できる、価値の高い働き方です。働く方にとっては、短時間であっても自身のスキルと経験を最大限に活かせる機会であり、企業にとっては必要なタイミングで適切な人材を確保できる有効な手段となります。
また、スポットワークの魅力は「単純な人手不足の補填」に留まりません。
ワーカーのスキルや専門性に応じて、報酬や労働条件を柔軟に設定できる点は、このサービスの大きな付加価値です。これにより、より多様な人材が自身の能力とライフスタイルに合った働き方を選択し、その能力を存分に発揮できる環境が社会に生まれます。
今回の協業を通じて、私たちはこのスポットワークが持つ本質的な価値を、日本国内に留まらず韓国市場にも積極的に展開し、その活用を加速させていきます。そして、人と人との新しい出会いと経験を生み出す機会を提供し、働く時間と人々の人生の可能性をより豊かにする原動力となることを願っています。
今後とも、社会インフラとしての進化を目指すタイミーの取り組みに、ぜひご期待・ご注目いただければ幸いです。
株式会社タイミーによるNeeder社への出資に関するニュースはこちら👇

