Draper Startup House Korea(DSHK)のイ・セヨン代表
韓国のスタートアップ市場は量的成長を続けている。2023年時点で約20万社の技術系スタートアップのうち、約1万2,000社が資金調達に成功しており、年間の雇用創出人数は15万人に達している。年間の投資規模も4兆ウォン(約4,300億円)を超え、スタートアップは韓国経済の中核を担う存在となった。
ただし、この成長は主に内需市場にとどまっている。韓国スタートアップの海外市場進出率は8%で、世界平均(25%)に比べて低い。売上の50%以上を海外で上げているスタートアップの割合も、韓国では全体の5%にすぎない。
一方、米国(25%)、ドイツ(18%)、イスラエル(15%)などはこの割合がはるかに高い。海外資本の流入率も韓国は7%にとどまり、シンガポール(32%)や英国(25%)との差は大きい。これらの数値が示すように、韓国スタートアップのエコシステムは量的には成長してきたが、「内需中心の成長」には限界があり、海外市場との実質的なつながりは構造的にまだ弱いのが現状だ。
このような結果は、戦略の不足だけが理由ではない。韓国は半島国家でありながら、北朝鮮の存在により地政学的に大陸と海洋の間で孤立した位置にある。この要因が、古くから海外市場との物理的なつながりを難しくしてきた。その結果、海外と自然に結びつくようなスタートアップが構造的に生まれにくくなった。
また、内需市場の特性もグローバル化を妨げる要素となっている。消費者の嗜好、言語、決済方式、文化などが過度に均質な韓国市場では、さまざまな顧客ニーズに対応した製品設計や国際的な標準運営方式を試すことが難しい。そのため、製品や組織が海外市場に適応する際に困難を伴うのだ。
投資エコシステムも量的には活発に機能しているものの、海外進出を支援する点では構造的な限界がある。2023年の時点で、韓国のVC(ベンチャーキャピタル)は年間約2,474社のスタートアップに投資を行っており、VCの数も383社と決して少なくはない。
しかし1件あたりの平均投資額は約1億2,800万ウォン(約1,400万円)で、米国の平均(1,500万ドル{約22億円})と比べると、10~15分の1に過ぎない。これでは、R&D(研究開発)、海外マーケティング、グローバル人材採用といった、海外進出に必要な資金を確保するには不十分だ。結果として、「量」を重視した分散型の投資構造が、有望なスタートアップの海外進出に必要な集中的かつ戦略的な資金供給へとつながっていないのが現状だ。
もちろん、韓国のスタートアップが持つ技術力と実行力は世界水準に達している。しかし、こうした強みを海外市場で成果につなげるには、初期の段階から市場へのアプローチ方法、顧客定義、資本構造をグローバルな視点で設計する必要がある。例えば、シンガポール発の「IJOOZ(アイジュース)」は、創業初期から世界市場をターゲットにビジネスモデルを設計し、創業からわずか1年で日本市場に進出した。現地ニーズに合わせた柔軟なモデルで急速な成長を実現している。
今後、韓国のスタートアップエコシステムが飛躍するためには、海外進出はもはや「選択」ではない「前提条件」となるべきだ。グローバル展開は、挑戦ではなく「デフォルト(Default)」であり、初期の事業戦略段階から組み込まれるべき核心課題なのだ。
<写真:Draper Startup House Korea(DSHK)のイ・セヨン代表>
原文:https://www.unicornfactory.co.kr/article/2025070117201145766