旧盆の連休です。ちょい事情通の記者は「少なくとも48時間は本業から手を離して無駄な時間を過ごして来てください」とアドバイスしています。72時間なんて望みもしません。せめて48時間は本当に自分が起業家であることを忘れて、無駄な時間を過ごして、と。本日のレターは、ちょい事情通の記者が送る宿題です。今年、ちょい事情通の記者が出会ったインタビューの「10人の10のシーン」です。一つ一つ思い返すのが宿題です。
Altosハン・キム(キム・ハンジュン)、Mines AI(マインズAI)ソク・ジョンホ医師、ワシントン大学チェ・イェジン教授、FITOGETHER(フィットトゥゲザー)ユン・ジンソン、LIVSMED(リブスメッド)イ・ジョンジュ、Myrealtrip(マイリアルトリップ)イ・ギョンガン代表、Sandbox Network(サンドボックスネットワーク)イ・フィルソン、jeongyookgak(チョンユッカッ)キム・ジェヨン、Gaudio Lab(ガウディオラボ)オ・ヒョンオ、pinkfong(ピンクポン)キム・ミンソク
目次
- 1.Altosハンキム(キム・ハンジュン)代表、アメリカ系韓国人というラベリング対する本音
- 2.[MinesAIのソク・ジョンホ] うつ病を防ぐ世界初のバイオマーカー…自殺率1位の韓国で挑戦する医者
- 3.タイム誌選定AI影響力100人、ワシントン大学 チェ・イェジン教授 「安重根を『テロリスト』というAI、AI倫理をどうするのか」
- 4.FITOGETHER ユン・ジンソンの投資氷河期、彼の成功の秘訣ではなく、持ち堪えた理由
- 5.[LIVSMEDのイ・ジョンジュ]企業価値8000億ウォン(約900億円)のスタートアップ? 「パンデミック時は首枷をかけられた囚人だった」
- 6.[Myrealtrip]「3年だけ頑張ろう」で12年、パンデミックと氷河期も生き残る
- 7.[Sandbox Network] リストラから1年で四半期黒字転換に成功…イ・ピルソンが見るクリエイターエコノミーの未来
- 8.[jeongyookgak キム・ジェヨン]スタートアップの大企業関連会社買収、クジラを消化し始めたエビはどうなる?
- 9.[Gaudio Labのオ・ヒョンオ代表] ディープテクノロジーの孤独なマネタイズ、「小さな池、大きな魚戦略」
- 10.[pinkfongのキム・ミンソク] 「5000件のコメントより、チケットを持った50人の方がはるかに怖い」
1.Altosハンキム(キム・ハンジュン)代表、アメリカ系韓国人というラベリング対する本音
-最初の韓国投資も失敗したのに、投資を続けられたのですね。
「複雑ですが、まずはチャン・ビョンギュ(KRAFTON(クラフトン)創業者兼取締役会議長)さんが思い浮かびます。2007年頃か、周りから2人は相性が良さそうだと、チャン・ビョンギュさんを紹介してもらいました。本当に良い人でした。当時、彼は「첫눈(チャン・ビョンギュ会長が設立した検索エンジン会社、2006年にNaver運営会社NHNに350億ウォン(約37.4億円)で売却)」を売却したばかりで、投資に対する高い関心を持っており、当社から投資を学びたいと考えていました。私もこの人から学ぶことがたくさんあると思い、多くの時間を一緒に過ごしました。当時、チャン・ビョンギュさんは家を一軒用意し、大学生を連れてきて好きなように開発しなさいと寝泊まりして食べさせるプログラムを運営していました。私財を投じて学生にチャンスを与えているのを見て、この人、お金は本当にかっこよく使うなと思いました。そんな方なので、いつも周りに良い人とチームがついてきていました。2008年には、ゲーム「TERA(テラ)」を作っていたBLUEHOLE(ブルーホール、KRAFTONの前身)にも投資し、彼の紹介で「Baemin(配達の民族)」にも投資することができました。他の方の紹介でcoupang(クーパン)にも投資しました。いつの間にかチャン・ビョンギュ会長が私のところに来て、韓国に来て、もっと時間を過ごし、(韓国国内のITスタートアップに)投資をしてほしいと頼まれました。彼はいつも「投資してくれたら助かるんだけど」と私を誘惑していました。当時、韓国のVCファンドは部品や製造業分野への投資がうまくいって成功しましたが、インターネットやモバイルは見向きもされていませんでした。チャン会長のようにお金を稼いだ第1世代の起業家が自分のお金まで使って有望な起業家を支援し、その次の段階の投資をする人は誰もいないというのが私の投資のきっかけでした。様々な会社の代表に会いました。その時に思ったんです。ここには本当に多くのチャンスがあり、私たちが投資をすべきだと。」
-Altos Ventures(アルトスベンチャーズ)が韓国のスタートアップのエコシステムにどのような変化をもたらしたと自負していますか?
「Baemin(配達の民族)のキム・ボンジン代表は初期から長い間共にしましたが、売上が数十億円を超えた時、自分の役割は終わったと思われていました。それで、その時、「何言っているんだ。あなたは本当に優秀な人だし、もっともっとやれるよ」と応援しました。実際に見てください。売上高が1000億円を達成するまで、びくともしなかったじゃないですか。メディアのインタビューで言うような「大物になれる」というような自信ではなく、自分で何かを成し遂げられるという現実的な自信が大事だと思います。急いで達成しようとせず、一歩一歩その夢を実現できるようサポートしような、大きな努力を重ねています。アメリカでも大企業と仕事をしたことがあり、有名な代表にも会いましたが、韓国の起業家はそのような大企業の経営者と比較しても全く負けていません。」

2016年5月のハン・キム代表/Altos
2.[MinesAIのソク・ジョンホ] うつ病を防ぐ世界初のバイオマーカー…自殺率1位の韓国で挑戦する医者
-ちょっと失礼します。うつ病の問題を解決するということですが、うつ病というペインポイントはどれくらい大きいのでしょうか?
「有病率で調査したところ、韓国の全人口の約5%程度がうつ病患者だといいます。しかし、そのような患者のうち何人が精神科治療を受けているのか、国立精神保健センターが調査したところ、20~25%程度でした。韓国は自殺率1位の国なのに。自殺率が非常に高いにもかかわらず、精神科治療をなかなか受けに来ません。なぜ受けに来ないのか。みな、本当に自分が精神科に行かないといけなほどなのか、と躊躇するんです。骨が折れたり、風邪をひいたりして、整形外科や内科に行くのと違って、精神科には簡単に行けません。」
-自殺率のお話がありましたが、自殺の危険性診断と言っても千差万別のように思います。実際、明日すぐに自殺する人というのはそれほど多くないのでは。
「いえ。診断の結果、レッドグループの人は今夜にでも自殺する可能性のある人たちです。レッドグループは、自分のうつ病の深刻さに早く気づいて、すぐに治療するようにMines AIが赤信号を発します。自殺は偶発的に衝動的にする人もいれば、お酒を飲んでする人もいます。チェ・ジンシルさんも酒を飲んだ状態で首を吊りました。自殺というものがいつ起こるか予測するのは難しいです。事前にメンタルヘルスをスクリーニングし、管理する必要があります。」
-もしチェ・ジンシルさんがコルチゾール検査を受けていれば、最悪の事態まではいかずに済んだ?
「そうです。韓国は「人口10万人当たりの自殺死亡者数」を意味する自殺率が2021年26人です。2021年の自殺死亡者数は1万3352人です。韓国がOECD加盟国の中で一番高いんです。すごく深刻なのに、外からは「自殺まではしないだろう」と思われています。20~30代の若者の割合もかなり高いです。」

ソク・ジョンホ Mines AI代表/Mines AI
3.タイム誌選定AI影響力100人、ワシントン大学 チェ・イェジン教授 「安重根を『テロリスト』というAI、AI倫理をどうするのか」
-国際的なデータの共有ということは、韓国に関するデータがないため、AIが偏る可能性があるということですか?
「例えば、サムギョプサルを食べる韓国の文化について、AIが『手でご飯を食べるのは未開で不衛生だ』と判断するエラーが発生する可能性があります。歴史観の衝突問題もあります。安重根はどんな人かという質問に『テロリスト』と答えるAIが世界で普遍的に使用されたら、韓国が受ける損害がどれほど大きいか想像するのも大変なほどです。」
-倫理的な面でAIサービスが直面している最大の問題は何でしょうか。
「AI開発がアメリカ西海岸のビッグテックに過度に集中しています。現在のAIサービスは、アメリカ、特にシリコンバレーの道徳観が過剰に反映されてるのです。近年、シリコンバレーを席巻した「効果的利他主義(effective altruism)」思想が代表的です。しかし、効果的利他主義は、多数の利益を達成するために少数を犠牲にしてもよいという全体主義的な傾向が強い思想であり、すでに多くの副作用を生み出しています。より大きな善のためには小さな悪を行なってもいいと判断するAIが人類にどれほど大きな脅威になるかを考えなければなりません。」

4.FITOGETHER ユン・ジンソンの投資氷河期、彼の成功の秘訣ではなく、持ち堪えた理由
-ユン・ジンソン代表は結果として現在、生き残っていますからね。不都合な真実は、「諦めずに最後まで頑張っても、失敗するスタートアップは失敗する」ということです。同じような状況で、本当に最後まで頑張ったにもかかわらず、結局廃業してしまったら、起業家個人が人生で受けるダメージはものすごく大きいです。一生がかかっているかもしれない。
「はい。私はまだ結婚もしてないし、だから自分のことだけ考えて、そんな感じがまだありはするのですが、悩みどころだと思います。周りの交流のある他の起業家の方ともそういう話をします。実際、起業家同士では、会社が潰れたら、早く廃業して再出発した方がいいのではとも言っています。」
「どうせ、持ち株が全部ダメになっていていて、新たにお金をもらって再成長できるポテンシャルもない、会社に人がいてこそ何かできるけれど、それすらもなければ、粘り強く耐えて何がどうなるのか、と。まだ私もそのような状況に直面したことがないので、判断するのは難しいです。その状況がどれほど大きなストレスであるかには共感するので、何が正しいか正しくないかを判断するには経験が不足していると思います。」
-少なくとも、諦める起業家に石を投げることはできないということに同意するわけですね。逆に、起業家にとって「良いVC、投資家」とはどのようなところでしょうか?
「むしろ、やり合って喧嘩してくれるVCがいいと思います。FITOGETHERは何度もラウンドを行ったので、機関投資会社が多いんです。10個程あります。まったく助けてもくれないけど、免責もしない、そんなハウスもあります。逆に、昔はよく揉めていたのに、最近はすごく味方してくれるVCもあります。正直、すごく関心を寄せてくれるVCの意見を起業家側が全部受けいれるわけにもいきませんよね。数年前にこの質問を受けたら、「自分が主張することに、すべてうんと言ってくれるVCが一番いい」と答えたと思います。 けれど、(投資氷河期を耐えてみて)今はそれだけが正解ではないように思います。」
-起業家の意思を常に尊重してくれるVCが正解ではないこともある?
「とにかく何かした時に責任を負うのは創業者の方がダメージが大きいのですが、その時にもう一度考えることができるように一緒に真剣に議論してくれる過程。以前はすごく嫌で、3年前の私に尋ねていたら、「こういうハウスは本当に良くない」と言ったと思いますが、振り返ってみると、そうやって言い合い、喧嘩をしながら、後にこうやって一緒に力になってくれるVCは、本当に良いVCだと今は思います。」
「VCの立場から見ても、それがエネルギー源じゃないですか。ある会社をしっかり把握し、市場を把握し、サーチもし、周りの状況も見てから、スタートアップの起業家にフィードバックをするのに、そもそも関係が浅いと、VCが起業家とディスカッションすること自体できないと思います。ディスカッションができるVCは、企業の代表からすれば、タダで使えるリサーチ要員です。」

FITOGETHER ユン・ジンソン代表/FITOGETHER
5.[LIVSMEDのイ・ジョンジュ]企業価値8000億ウォン(約900億円)のスタートアップ? 「パンデミック時は首枷をかけられた囚人だった」
-パンデミックが終わった今だからこそこう簡単に話せますが、パンデミックが起きたばかりの頃はどうでしたか?
「刑務所に閉じ込められたような感じで、『コロナが終わるまで髪を切らない』と決心しました。結局、髪はどこまで伸びたかというと、へその辺りまで来ました。」
-首枷をかけられた囚人という表現もありましたね。
「昨年初めに韓国国内で屋内マスクの解禁が発表されたとき、コロナが終わったと髪を切りました。3年も髪を伸ばしたのは、人生でこの時が唯一です。当時は髪を結んでいたのですが、道に出るとみんな道を譲ってくれるほどでした。とんでもない恰好でしたね。心情としては、時代劇で首枷を使うじゃないですか、首枷をかけられて、髪を垂らした囚人、まさにそんな感じでした」
-パンデミックと投資氷河期を乗り越えてきました。生き残った理由を自分で評価すると?
「これまでの忍耐の過程ではないでしょうか。実は、LIVSMEDは8年ほど苦労して、(新製品の開発に成功して)一区切りついたと思っていたのですが、もっと大きな試練がやってきました。『 なんで私にこんなことが起こるんだろう』と精神的にも大きな苦痛でした。再チャレンジしようと気持ちを固める時は、本当に大変でした。そんな時、創業の時よりももっと厳しい目標を掲げて走っていこうという気持ちになったのですが、結局は忍耐、忍耐、そしてまた忍耐だったのではないでしょうか」

LIVSMED イ・ジョンジュ代表/LIVSMED
6.[Myrealtrip]「3年だけ頑張ろう」で12年、パンデミックと氷河期も生き残る
-では、Myrealtripの最大のライバルは誰でしょうか?
「NaverとGoogleだと思います。Booking.com(ブッキングドットコム)のような会社も同じようなことで悩んでいるでしょう。旅行は基本的に、頻度は高くなく、関与度は高い意思決定です。このようなときに最も適した文脈は検索です。Temu(テム)やAliExpress(アリエクスプレス)のような会社で数百円のものを買うときは、わざわざ他の販売店を検索して比較しませんが、800万ウォン(約85.5万円)の旅行はそうはいきません。遊休を使うので、日付も入念に計算しますし、検索と計画が重要です」。
「通常、このような時は個別アプリではなく、GoogleやNaverで先に検索します。さらに、Googleは非常に中立的なふりをしていますが、事実上、旅行OTA(オンライン旅行会社)と同じです。GoogleMapでホテルを検索すると予約が可能です。Booking.com(ブッキングドットコム)と変わりません。GoogleMapでディズニーランドを検索すると予約することができます。そしてNaverも似たようなやり方をしています。当社の立場としては、Myrealtrip(マイリアルトリップ)に直接アクセスしてロンドンと検索してほしいのですが、人々はすでにGoogleやNaverでロンドンと検索してから、入ってきます。当社からすると、検索広告費など、彼らに通行料のように払っているコストが膨大になるのです。」
「大きな課題です。競争ですが、旅行者がGoogleやNaverを使わないようにするのは難しいです。そこに良い情報がたくさんあるからです。だから当社は、どうにかして人々がMyrealtripを利用する理由を1つでも2つでも多く作るために努力しています。最近では、Myrealtripを使い続けさせるために、昨年の秋頃に「同行者検索」機能も追加しました。 「Eurang(ユラン、ヨーロッパバックパッカーズインターネットカフェ)」にもあった機能ですが、当社が旅行仲間をもっとうまく見つけようという気持ちで作りました。電話番号認証などで身分証明を追加し、同行の不安感を減らしました。反応は良い方です。今、Myrealtripコミュニティの投稿の50%くらいが同行者探しです。」

Myrealtrip イ・ドンゴン代表 /チャン・リョンソン記者
7.[Sandbox Network] リストラから1年で四半期黒字転換に成功…イ・ピルソンが見るクリエイターエコノミーの未来
-リストラを決断した起業家であり、代表として、個人的に一番つらいことは何でしたか?
「朝、目を覚ますとすぐに後悔が始まります。後悔すればするほど、間違った決断をした瞬間が鮮明になります。『 なぜあの人をあの時採用したのか』、『なぜあの組織を放置していたのか』、『なぜこの事業をやろうとしていたのか』、様々な後悔が押し寄せてきます。確かに当時はトレンドがそうだったし、その判断が正しいと思ったのに。」
「早く過去から学んで未来に行けと言われても、ずっと過去を思い出し、後悔してしまいます。私は少し完璧主義なところがあります。起業家、代表をよく見ると、ほとんどが完璧主義を目指そうとしています。財務も上手く、営業も上手く、投資も上手く受け取り、人柄もよく、推進力もある。全人的、超人的な存在を期待し、そうなりたいと考えています。完璧な存在でなければ、自分は認められ、愛され、成功する資格がない。そんな風に思っているように思います。」
「最近、『それでも、このアイデアで起業してここまでやって来たのは良かった』、『昔はちょっと失敗したけど、それでも君は成功する資格がある』と思っています。だから、起業家にちょっと自分を好きになれと話したいです。自分への厳しい視線を捨てる必要があるんです。何度も後ろを見たり、長く未来を見たりすると、さらにそんな考えに陥ります。今日一日だけうまく生きられたらそれでいいやと思う日も必要なんです。」
-あるスタートアップが最終的にリストラを行い、生き残ることを選択しました。先に経験した起業家として、この難しい選択をしなければならない他の起業家にアドバイスをお願いします。
「リストラのような困難な状況では、相手の未熟な反応や感情的な反応への恐怖が先行します。しかし、ほとんどの組織構成員は成熟した大人なので、正直に客観的に状況を説明し、合理的に会話をすることが重要でした。包み隠さず、妥協することなく、私たちが置かれている状況と、なぜそのような選択をせざるを得ないのかを合理的にきちんと伝えることです。その過程で多少の感情的な反応が出るかもしれませんが、それは自分のミスではありません。」
「私の好きな心理学者のアドラーの言葉を引用すると、『自分が十分に合理的に行動したのに相手が感情的に反応した場合、その感情を解決するのは相手の課題』ということです。例えば、清掃員を解雇するとき、その人が感じる苦痛に共感するのは当然のことですが、正当な契約関係のもとで合理的な判断をしたのであれば、それによって苦しむ必要はないということです。」
「メンバーと接するときにも、起きていない状況や相手の感情をあらかじめ恐れたり、苦しんだりする必要はありません。できるのは、自分自身が合理的に行動することだけです。もちろん、組織の状況や構成員の傾向によって、細かなやり方の違いはありますが。」

Sandbox Network イ・ピルソン代表
8.[jeongyookgak キム・ジェヨン]スタートアップの大企業関連会社買収、クジラを消化し始めたエビはどうなる?
-スタートアップのDNAが必ずしも正しいとは限りません。スタートアップのDNAの問題もあります。
「投資家の中にはVCもいれば、PEもいます。両者の話を聞くと、スタートアップはほとんどミッション中心、目的中心で組織を組んで動いています。そのため、ボトムアップ(Bottom-up)で「何をやるか」を考えて組み立てて成果を出す仕組みで仕事をしています。逆にPEでは、会社を買収して運営するため、トップダウンでKPIを決めて、そのKPIを達成する方向で組織を運営しています。」
「jeongyookgakをはじめ、流動性が高かった時代のスタートアップの悪い癖、習慣です。アウトプットと成果が異なるというエラーを犯しやすいのです。仮に新しいタットリタンがPB商品として発売されたとします。スタートアップでは、このようなコンセプトのタットリタンを出そうという目標を掲げ、必死に頑張って良い製品を作って発売します。しかし、この製品がどれだけの売上と利益を出して財務諸表に反映されるかは、細かく分けて見ないんです。製品開発、マーケティング、それぞれの組織が成果を出すという目的を持ち、「私たちの努力が集まれば成長になる」という視点で仕事をしています。結論として、会社に利益になったでしょうか?そうでない製品がたくさんあります。」
「一方、スタートアップが『個人の創造性を無視する』という大企業式、トップダウンの運営では『今年PB商品の売上10億(約1億円)を達成する。製品は関係なく、1個あたり平均利益2億ウォン(約2100万円)を目指す。もし1個あたり2億ウォン(約2100万円)達成が難しければ、商品を分割して各商品ごとに2000万ウォン(約210万円)でも利益を達成する』というように目標が降りてきます。目標は違いますが、必ずこの目標を達成しようとします。利益パフォーマンスはこの方がはるかに優れています。流動性が高い時代、スタートアップが自分の成長を物語る指標としてMAUを挙げていました。もうその方法は通用しないんです。結局は売上と利益です。過去のjeongyookgakの運営方法に後悔している部分もあります。」
「こうやって押さえることで、仕事の目的がはっきりするのは確かです。ただ、メンバーが積極的で、スピード感を持って仕事をしているとは言えません。個人の成長速度に制約があります。特にスタートアップの急速な成長は、メンバーの速い成長、ランニングカーブにも依存しています。結局、Chorocmaeul(チョロクマウル)とjeongyookgakのDNAの長所を融合させるしかないのです。どちらが正しい、正しくないという問題ではなく、お互いを客観視するということです。Chorocmaeulでは個人の達成欲求を刺激する方向性を考え、jeongyookgakでは運営の効率化を考えています。」

jeongyookgakのキム・ジェヨン代表
9.[Gaudio Labのオ・ヒョンオ代表] ディープテクノロジーの孤独なマネタイズ、「小さな池、大きな魚戦略」
-今までに何件の事業アイテムを畳みましたか?
「過去のVRオーディオ技術まで含めると…これまで6つ以上の事業アイテムを畳んだり、事実上事業化に失敗していると思います。
「Gaudio Labは、この山でなければ、下山して新しい山に行くべきだというコンセンサスを確実に集めます。そうしてこそ、決定の後、組織が揺らがずにいられるのです。みんなが同意したことですからね。下山と新山を決める会議には、メンバー全員が参加できます。出席は役員に限定されません。ディスカッションの時間、枠も決まっていません。誰でもアイデアを持ち寄った人と議論することができます。」
「私が考えていた新しい事業アイテムを従業員に阻止されたこともあります。特に苦労して開発した技術やサービスを中止しなければならない場合、議論はより激しくなります。外から聞いたら喧嘩しているのかと思うくらい口論になったこともありますし、結論が出ずに何ヶ月も会議が続いたこともあります。証明した資料、技術を持って来いと何度も要求されたこともあります。この会議でリリースも出来ずに中止になったビジネスモデルもいくつもあります。もちろん、2年間のディベートを経てリリースされるサービスもあります。」

Gaudio Lab オ・ヒョンオ代表 /ナム・ガンホ記者
10.[pinkfongのキム・ミンソク] 「5000件のコメントより、チケットを持った50人の方がはるかに怖い」
-今後もキャッシュカウはデジタルだけども、没入感はオフラインの方が高いということですか?
「テレビでミッキーマウスを100回見ていても、ディズニーランドでオフラインで実際の着ぐるみが踊るショーを体験するのとは、違うんです。それは、自分ではなく、周りの人が一緒に叫んでくれる経験だと思っています。自分だけが好きなのかと思っていたけど、あなたも好きなんだ、安心して好きになってもいいんだ、と。キャラクターがある種検証された対象となるのです。」
-キャラクターが検証の対象になる?どういう意味ですか?
「集団の同調です。これは強くキャラクターに没頭するのにとても重要なシステムだと考えています。だから、オフラインでもう少し欲を出しています。初めてこれを感じたのは、幼児教育展に初めて出た時でした。pinkfong(ピンクポン)はアプリ・YouTubeで明確に好調な売上と収益を出していましたが、思ったより世の中は静かでした。pinkfongは、幼児教育展で初めてサウンドブックやぬいぐるみの販売をを始めたのですが、ものすごい人だかりが出来て大騒ぎになったんですよ。」
-集団の同調?それがキャラクタービジネスの核心?
「私も現場で一生懸命梱包しました。消費者の声がずっと聞こえてきていました。 『こんなに人気があるんだ』と内輪で話している声です。自分だけが知っているのかと思っていたら、あなたもpinkfongを知っていたんだ、ということです。このインパクトがとても大きかったと思います。自分だけが毎日見ていて、自分だけがそうだと思っていたけど、友達もみんなそうだったのだと、知るのです。ここでその光景を見た、放送局のPDであるとか、何かの公演関係者であるとかが、『これで何かしてみたら良さそ』と思うわけです。」
-オンラインの消費者に、オフラインで「あなたはこれが好き」という印象を与える?
「スターフィールドのようなモールで、pinkfongはある種の無料公演を行っています。消費者はチケットを買わないんです。でも、1階、2階、3階とも密集して何百人、何千人と人が集まります。そういう写真があります。私たちから見ても、その写真にはインパクトがあります。 (オンラインの)1億ビューよりも、500人の観衆に対して、人々が感じるインパクトの方が大きいのです。」
「コメント5000件よりも、チケットを持った50人が並んでいる方が怖いですよね。pinkfongもオフラインビジネスに力を入れています。劇場版はもう4作目です。ポップアップテーマパークも継続的に開催しています。他の国で先にオープンしています。シンガポール、マレーシア、香港など他の国でもテストしています。テストデータが蓄積されれば、有意義な洞察が得られると思います。実験を続けていますが、幸いにもうまくいっています。」
-今、仰った「コメント5000個より、チケットを持った50人の方が怖い」というのは、どういう意味ですか?
「消費者に『私はこれが好きだ』と認識してもらわなければなりません。オンラインで見ていると、明らかに好んでいるにもかかわらず、消費者はよくわかっていないのです。そこで、『あなたはこれが好きなんだ』ということを、気づかせるには?無料公演を見るより、1万ウォン(約1000円)、3万ウォン(約3000円)払ってチケットを買って公演を見に行ったら、その公演が良かったかどうかは別として、『私はこれにお金を使ったんだ。私はこれが好きな人なんだ』という認識が生まれます。」

The Pinkfong Company キム・ミンソク代表。/キム・ジホ記者