日本がスタートアップ大国の座を狙っています。経済規模や人口、蓄積された技術などを考慮すると、日本がアジアの代表的なスタートアップ国家の一つとして浮上する日もそう遠くないでしょう。VCの投資規模などは中国を除けばアジアトップレベルであり、今後さらに大きくなる予定です。

日本と地理的に一番近い韓国は、他の国より日本を知りません。正確には誤解している国です。先入観や偏見が強いせいかもしれません。サッカーの代表戦の時に国民全員が「監督」レベルのコメントをするように、やはり日本に関しては、あらゆる専門家が「推定」を真実のように語るので、先入観や偏見はさらに強くなるばかりです。

日本のスタートアップ起業は、2019年の1265件から昨年の4894件に急増しました。日本政府は2027年までにスタートアップに10兆円を投入します。日本の目標はスタートアップ10万件です。 「日本の官僚主義」をご存知でしょうか?半分は正しく、半分は間違っています。海外ベンチャーキャピタル(VC)が今年上半期に日本のスタートアップに投資した金額は225億円です。昨年の同期間より約18%高い数字です。金額は大きくはないですが、投資氷河期に海外投資家が特に日本に興味を持つ理由は何なのでしょうか?

日本で今年最もホットな会社は、Sakana AI(サカナAI)です。今年1月にシードラウンドで約3000万ドル(約46億円)を資金調達しました。Lux Capital(ラックスキャピタル)が主導し、Khosla Ventures(コスラベンチャーズ)、500 Global(500グローバル)が参加、日本の大企業NTT、KDDI、ソニーなどが投資しました。9月にはそのままシリーズAに進出し、2億1400万ドル(約330億円)の投資を維持しました。当時、投資家にNVIDIAが新たに登場しました。1億ドル(約154億円)を投資しました。会社設立1年でユニコーンになりました。Sakana AIは、GoogleのAI研究者出身のイーリアン・ジョーンズが共同創業者として参加し、共同創業者のほとんどが外国人であることが特徴です。ジョーンズは「トランスフォーマー」というAIアルゴリズムを最初に提示した論文「Attention is all you need(Attention is all you need)」の著者の一人です。

今日のレターは「日本のユニコーンはどこに向かって進んでいるのか」です。日本のスタートアップがどこへ進んでいるのか、少しのヒントになるのではないでしょうか。ユニコーンは日本経済産業省の基準に準拠しています。通常、日本のユニコーンは16個前後と言われていますが、昨今の円安の影響で減りました。[ 評価額10億ドル以上」「非上場」「テクノロジー企業」などが基準です。2024年1月現在7つとなりました。評価額も1月時点のものです。ドル円の為替レートのため正確ではありません。今年9月にユニコーンとなった「Sakana AI」を含めると8つです。

1.Preferred Networks(プリファードネットワーク) 評価額:3035億円

創業者は西川徹と岡野原大輔。西川はCEO(最高経営責任者)で、1982年東京生まれ、東京大学大学院情報理工系研究科を卒業後、2006年大学院在学中に岡野原大輔らと共に株式会社Preferred Infrastructureを設立しました。2014年3月にPFNを共同設立しています。岡野原は最高研究責任者(CRO)で、東京大学で情報理工学博士号を取得した人物です。]

いわゆる、大学院起業の事例です。デバイスが生産する膨大なデータをネットワークのエッジで分散処理する「エッジヘビーコンピューティング(Edge Heavy Computing)」という概念を提案した会社です。コア分野は3か所です。

交通システム(Transportation Systems、自動運転と交通最適化のためのAIソリューションの開発)と製造業(Manufacturing、生産工程の効率を高め、品質管理システムを革新)、バイオ&ヘルスケア(Bio & Healthcare、医療データ分析と新薬開発を支援)です。トヨタ自動車、FANUC(ファナック)、国立がん研究センター(日本)などの組織とAI・ディープラーニング分野で協力するプロジェクトを推進しています。

公式ホームページより

2.SmartNews(スマートニュース)評価額:3035億円

SmartNewsは2012年に設立された会社で、スマートフォンのニュースアプリ「SmartNews」を出したユニコーンです。創業者は鈴木健と浜本階生。

1975年生まれの鈴木は、慶應義塾大学理工学部物理学科を卒業し、東京大学大学院総合文化研究科博士課程を修了した人物です。電子マネー、複雑系理論、認知科学、情報社会学を研究し、国際大学GLOCOMの客員研究員として働き、SmartNewsを共同設立しました。浜本は1981年生まれ、東京工業大学工学部情報工学科を卒業後、フリーランスエンジニアとして活動し、2009年には「Yahoo!JAPANインターネットクリエイティブアワード」で大賞を受賞しました。

SmartNewsは、ニュースサイトと連携してモバイルで話題のニュースを発信するという方式をとっています。日本とアメリカで5000万ダウンロードを記録し、月間2000万人が利用するアプリです。

公式ホームページより

3.SmartHR(スマートHR)評価額2428億円

クラウドベースの人事・労務管理ソフトウェア「SmartHR」を提供する会社です。入退社手続き、年末調整などの人事・労務業務を効率化し、ペーパーレス化を推進し、日本企業の顧客獲得に成功しました。

創業者の宮田昇始は、2013年の創業以来ずっとCEOを務めていましたが、2021年12月にCEOを退任し、その後は取締役会の創業者として会社運営に関わり続けています。現在は、2016年に入社してCTOを務めた芹澤雅人氏がCEOとして会社を率いています。今年7月には、米国KKRが主導したシリーズEラウンドで1億4000万ドル(約215.4億円)を調達しました。

公式ホームページより

4.Spiber(スパイバー)評価額1851億円 

Spiberは山形県に本社を構えています。他のユニコーン企業は東京を基盤としているのに対し、地方出身のユニコーンです。Spiberは世界初の人工合成によるタンパク質素材「Brewed Protein(ブリュ―ドプロテイン)」の大量生産に成功した会社です。いわば人工の蜘蛛の巣を作ったのです。新素材を開発し、ファッションや自動車産業に活用しようというものです。

創業者の関山和秀は、慶應義塾大学先端生命科学研究所での研究から、構造タンパク質素材に着目し、これを人工的に合成・生産することを目標にSpiberを設立しました。関山は慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス出身で、もともと起業も神奈川県藤沢市で行いました。その後、慶應義塾大学先端生命科学研究所がある山形県鶴岡市に移転しました。

Spiberの関山代表/Spiberホームページ

5.Playco(プレイコ)評価額1517億円 

ダウンロード不要で即座に楽しめる「インスタントゲーム」を開発するスタートアップです。設立と同時に約100億円の資金調達を行い、すぐにユニコーンになったケースです。

創業者はジャスティン・ウォルドロン(Justin Waldron)、村上翔太、マイケル・カーター(Michael Carter)、デケム・セラニ(Tekemu Serani)の4人です。ジャスティン・ウォルドロンは、モバイルゲームZynga(ジンガ)の共同創業者で、Zyngaで上級副社長(Senior Vice President)を務めた人物で、チーム管理、M&A、製品成長戦略などを担当しました。Playco(プレイコ)ではCEOとして、事業開発、投資家との交渉、人材採用などビジネス全般を統括しています。

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6.Opn(オープン)評価額1517億円

Opnは電子決済の基盤サービスを開発するスタートアップです。社名も「Opn(オープン)」で、「デジタルエコノミーへのアクセスは誰にも自由でオープンでなければならない」という意味を持っています。前身は2013年にタイで設立されたオンライン決済サービスであるOmise(オミセ)。2020年にOpnに変わり、2022年に三菱UFJ銀行などから約155億円を調達し、ユニコーンになりました。

Opnは企業向けのオンライン決済サービスを提供しており、シンプルなAPIで日本内外の約120の決済手段に対応しています。企業が国ごとに異なる決済手段にいちいち対応する必要がなくなるのです。

創業者の長谷川潤は1981年に東京で生まれ、高校卒業後アメリカに渡り、プログラミングとウェブデザインを学び、その後2つのアプリ会社の起業を経験しました。東南アジアの成長性に着目し、3社目として2013年にタイに設立したのがOmise。2022年にはアメリカの類似企業を500億円規模で買収したこともあります。

公式ホームページより

7.Go(ゴー)評価額1517億円

Goはタクシー呼び出しサービスです。2023年5月にGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)から100億円の資金調達を行いました。2020年9月にJapanTaxi(ジャパンタクシー)とDeNAのタクシー呼び出し事業が統合し、Mobility Technologies(モビリティテクノロジーズ)を設立しました。2023年に社名をGoに変更しました。

トヨタ自動車やNTTドコモのような日本最大手の企業が投資し、当時のタクシー呼び出しの強者2社が統合し、一気に日本のタクシー呼び出し市場を席巻しました。CEOは中島宏ですが、創業者というよりは、CEOと言った方が正しいようです。

公式ホームページより