私は今年で約4年、韓国・京畿道(キョンギド)河南市(ハナム市)のミサ(渼沙)という地域に住んでいます。ミサに住んでいる人が、車を借りなければならない時に思い浮かべるのはS Car、G Carだけではありません。「towncar(タウンカー)」を利用すれば、しっかりと管理された近隣の人の車をかなりの低価格で借りることができます。

towncarは、2021年に河南市ミサ地域でスタートした韓国で唯一のP2P車両シェアサービスです。towncarが出来る以前は、国内で個人が自動車シェアを通じてお金を稼ぐのは「違法」でした。

しかし、towncarは規制サンドボックスを通じて事業承認を受け、合法的にサービスを開始。河南市からスタートしたtowncarは、 今では京畿道(キョンギド)全域で事業を展開し、月2億ウォン(約2,140万円)以上の取引額を生み出しています。

綺麗な成長グラフとなっている

今回はそんなtowncarの代表とCMOにお会いして、成長の裏話をお聞きしました。

1.towncarの始まり

「韓国では違法だからダメ」
「絶対に汚されるだろうに、誰が他人に車を貸すのか」
「事故が起きたらどうするのか」
「S Carがあるのにわざわざこれを使うわけない…」

towncarのアイデアに初めて触れた大多数の人々はこんな反応を見せました。しかし、創業者のユン・ジン氏は「まだ経験してない人たちの言葉」に意気消沈することはありませんでした。代わりに実際の利用者はどのように感じるのか、サービスを正式に構築する前に直接確認してみることにしました。

まず、ユン・ジン氏自ら1人目の車両オーナーになることにしたのです。

当時住んでいたミサのマンションの入居者を対象に車を貸すために赤い中古ミニを1台購入しました。その後、管理室、入居者代表の許可を得てレンタルサービスを開始します。 (ユン・ジン氏は普段から近隣の人々のためにアパートの運営に関連する様々なボランティアを行っていたため、比較的簡単に許可を得ることができたといいます。)

同じアパートに住んでいる人から赤いミニを借りることができるという内容のチラシを500枚印刷し、全世帯に配って回りました。同時に、エレベーターにも貼り出しました。しばらくして約100件、KakaoTalk(カカオトーク)の問い合わせが来て、そのうち20件のレンタルを実現しました。

当時作ったチラシと看板(出典:towncar提供)

数件の実例が作られると、近所の人々が2番目、3番目の車両オーナーになってくれました。従来のミニに加え、CARNIVAL(カーニバル)、NEXO(ネクソ)まで車は3台に増え、約100件の車両シェアの事例が出来ました。この100件のデータを得る過程でユン・ジン氏は事業への確信を持つようになります。それ以降の、規制特例、保険商品開発にもこのデータが非常に重要な役割を果たしました。

自分が自由に使える中古車のミニ1台とKakaoTalkのチャットのQRコードひとつ。これがtowncarの始まりでした。もっともらしいアプリもウェブサイトもありませんでしたが、需要を検証するのには十分でした。

2.知名度のない極初期スタートアップが顧客と信頼を築く方法

規制特例で合法的にサービスを立ち上げた者の、人々の視線はまだ冷たいものでした。

「違法ではないんですか?」
「実在する会社ですか?」
「事故のときの保険は?」

人々は生まれて初めて聞く名前のサービスに簡単には心を開きませんでした。当然です。

ユン・ジン氏のマンションの住人達は「ユン・ジン」という人に対する信頼がありましたが、ミサの住民の「towncar」に対する信頼はゼロに近いわけですから。実際、検証段階では効果があったチラシがミサ地域住民対象としたものでは全く通用せず、CAC(顧客獲得単価)は70万ウォン(約7.7万円)まで上がりました。

絶望的な結果でしたが、towncarチームは、アプリの離脱率を着実に改善していき、同時に優れた顧客体験(+ユースケース)を作成することに集中しました。関心を持つごく少数の顧客間の車両シェア体験を「圧倒的に満足のいく体験」にするために現場に直接飛び込んだのです。

初期の車両オーナーの方々は、本当にアーリーアダプターでしたね。ご自身の車を用途変更までして参加して頂いていました。当時は車のオーナーたちの取り入れがとても難しく、お一人お一人が本当に大切だったため、当社の方で、収益創出に必要なすべてのことをやっていました。

車の写真を撮ったり、洗車も代わりに行い、実際の取引が発生したら深夜でも出かけて、その車を借りる方々の家の前に持って行きました。企業ではなく「近所の人」の車を借りたという暖かい体験を感じてもらうために手紙を書いたりもしました。

実際、初期のtowncarで車を借りたお客様は、ほとんどが積極的にレビューを残されています。レビューの推奨や作成による報酬も用意していませんでしたが、自発的に自分の車両使用体験を詳細に共有してくださいました。

積み重ねられた肯定的なレビューは、その後、ユーザーの利用決定に大きな影響を与えます。取引額がゆっくりと積み上がり始めました。

収益を出す借主の方々もこの時期に1人2人と生まれ始めました。

3.成長を導いてくれる魔法のチャンネルのようなものはありません。

車を借りたい人の立場で、towncarを利用したときに得られる価値は明確です。

まず、他のカーシェアリング、レンタカーサービスに比べて価格が安い。自分の隣人が直接所有し、管理している車であるため、通常のシェアカーよりはるかにきれいです。 わざわざ沢山説明をしなくても十分に説得力があります。おかげで、車を利用したいお客様を確保することは比較的簡単です。

towncarユーザーが感じる価値

十分な需要と十分な供給が満たされると、プラットフォームは成長します。towncarは供給を増やすことに注力しました。

河南から始まり、今では京畿道全体を網羅するサービスになりましたが、今も依然として需要に比べて供給が不足している状況です。

車を増やすことが今当社とって最も重要です。そのためにできることは全部やったと思います。地域ターゲットが可能なほとんどのデジタルマーケティングチャンネルはもちろん、当社がサービスしているエリアで車のオーナーに会えるガソリンスタンド、整備所などのオフラインチャンネルまで。
これをしたら「オーナーが急激に増えた」と言えるものがあればよいのですが、そんなものはありませんでした。ゆっくりですが、着実にあちこちで流入が発生しており、今でもより良い方法を見つけるために努力を続けています。

合法的なサービスといっても高価な資産である車を他人に貸与するというのは、依然としてオーナーの立場からすると負担になります。当然、車を借りようとするユーザーよりもオーナーの流入を引き出すのがはるかに難しいです。

現在towncarは、オーナーが得ることができる期待収益と恩恵に重きを置くことで関心を集め、実際にtowncarのオーナーとなる過程で生じる可能性のある心理的障壁をコンテンツで解消しながらオーナーを徐々に増やしていきました。アプリ、公式ブログやYouTubeなどでtowncarのこのような努力を垣間見ることができます。

towncarブログ内のオーナー勧誘のためのコンテンツ

予想収益、車両購入時に得られるメリットを積極的に強調するアプリ内機能

今でもtowncarでは一生懸命オーナーを募集しています。京畿道地域に住んでいて、自分の車で副収益を作ってみたい方は、このリンクから、towncarのオーナーになる方法をご確認ください! (towncarのアプリをダウンロードすると、サービスエリア拡張に関するお知らせも最初に受け取ることができます。)

4.1年で取引額を600%以上成長させた秘訣

INNOFORESTでtowncarの取引額グラフを見ると、2024年6月から上昇幅が大きくなり、2025年8月までに約600%ほど成長したことが確認できます。

この時期のマーケティングにどのような変化があったのかを伺いました。

24年6月から取引高の成長率が速くなっている

24年5月に当社は投資を受けました。マーケティングに活用できるリソースが増え、知名度を高めるためのキャンペーンへの投資をたくさんしました。投資を受ける前には、オーナーからの問い合わせを生み出すコンバージョンCPAキャンペーンに集中していたとすると、その頃からは、towncarというサービス自体を知らせる映像トラフィックキャンペーンとYouTubeコンテンツ広告などを一緒に行い始めました。このような知名度キャンペーンが直接の成果につながるかについては、いつも悩んでいますが、成長するグラフを見ると、確かにこれが変化の始まりだったと感じています。

最近行われた130万人の登録者を持つ、YouTubeチャンネル「キム・ハンヨンのMOCAR(モカー)」でのブランド広告


もちろん、知名度キャンペーンにお金を費やしたからといって、すべての企業がこのように成長するわけではありません。

[1] きれいな近隣の人の車を安く借りることができるというサービス本来の価値
[2]車のオーナーの方々が一緒に作ってくれた暖かい車両シェア体験
[3]近所にある車を清潔かつ安全に利用して返却する多数の忠誠顧客(=高いリテンション)
[4] そんな文化と認識をつくるためのtowncarチームの努力

これらすべての要因が少しずつ積み重なってtowncarのイメージを作り、そのイメージが知名度キャンペーンにより、広く広がり、より多くの顧客を流入させたのです。


おわりに

利用件数が急速に増えているにもかかわらず、towncarの事故率は一般的なレンタカー、カーシェアリングサービスに比べて圧倒的に低い水準を維持しています。

「私と一緒に生きていく近隣の人々」の車を借りるというサービス自体の特性がより安全なサービスを作り出し、自分の車で簡単かつ手軽に副収益を上げることができるという認識がますますかみ合って積みあがれば、今後もtowncarは既存のカーシェアリングサービスの需要を吸収しながら着実に成長することはできるのではないでしょうか?

お話しを伺っている間、ずっとtowncarというサービスに対する代表とCMOの愛情、そしてお二方のこのサービスが持つ価値に対する自信を感じることができました。

私も「次の車は最初からtowncarのオーナーになることを考えて購入してみようかな」という気持ちになるほどです。

スタートアップは、成長する過程で多くの困難に直面します。

コアメンバーが自社のサービスに自信を持ってこそ、その困難を克服し、着実な成長という結果を生み出すことができます。複雑な成長戦略やマーケティングが難しく感じられる場合は、まず起業家やチームメンバー、自分の大切な知人を満足させることができる製品を作ることに没頭してみてください。 「この製品をより多くの人に使ってほしい」という本気の気持ちが素晴らしいマーケティング戦略の開始点です。

原文:https://www.innoforest.co.kr/report/NS00000422

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