目次
- マーケティングチームなしで毎年500%成長中
- 現在のCTEEへのピボット後、初期顧客をどのように集めたのでしょうか?
- 最初はひたすら営業活動を続けたのでしょうか?
- 毎年500%以上の成長を続けていますが、初期以降はマーケティングをどのように行いましたか?
- パフォーマンスマーケティングを行う際、どのようなメッセージを主に掲げましたか?
- それでは、現在もパフォーマンスマーケティングは行っているのでしょうか?
- パフォーマンス成果の測定が難しくなったというのは具体的にどういう意味でしょうか?
- ではYouTubeの他に注力しているマーケティング手法は何ですか?
- マーケティングの面で「事業初期にこれを知っていたら良かったのに」と思うことがありますか?
- マーケティングのインサイトはどこで主に入手できますか?
- 初めてのグローバル進出市場として日本を選んだ理由が気になります。
- 日本でのマーケティングはどのように行っているのでしょうか?
- 今後、CTEEはどんな姿に成長するのでしょうか?
- 最後に、このインタビューをご覧の方々に伝えたいことはありますか?
マーケティングチームなしで毎年500%成長中
マーケティングPT.CTEE(NINEAM)の成長戦略
クリエイターがお金を稼ぐ方法にはどんなものがあるでしょうか?おそらく、ほとんどの人は視聴回数や広告収益を最初に思い浮かべるでしょう。クリエイターとして活動していたり、そのエコシステムに関心がある方はグッズ、製品開発、メンバーシップ、スポンサーなど多様な収益化戦略のことを考えていらっしゃるかもしれません。
今日紹介するCTEE(クティ)は、クリエイターの収益化を支援するプラットフォームです。たった7人のチームで年間取引額数億円を作生み出すだけに飽き足らず、日本市場まで進出して急速に成長しています。さらに、その7人のチームメンバーの中でマーケティングを専門的に担当している人は1人もいませんが、それでも毎年500%以上の成長を達成しています。

CTEE(NINEAM(ナインAM))のシン・ヒョジュン代表にお会いし、このような成長グラフを作るためにどんな努力をしてきたのかお聞きしました。

*起業家、マーケターを含むスタートアップ従事者の方々にしっかり成長している韓国スタートアップを紹介する目的でINNOFORESTとのコラボレーションで制作されたコンテンツです。MarketingPT、INNOFOREST両社共に、紹介する企業からの金銭的報酬は受け取っておりません。
*プロプランを購読すると、より多くの企業のデータやAI分析の要約などの情報をさらに確認することができます。
現在のCTEEへのピボット後、初期顧客をどのように集めたのでしょうか?
王道というものはないと考えました。当時営業スタッフが1人いました。私より3歳の若い男性スタッフでしたが、ダイソーに行って、卓球のスコアボードってありますよね?それを買ってきて事務所に置いていました。
「1人加入するたびに、一枚ずつめくろう」と言って。
当時、顧客30人を目指し、DM、Eメールなど手段と方法を選ばず営業していました。弊社のコア顧客はYouTube、Instagramなどでクリエイターとして活動しながら、Googleドライブ、メール、スマートストアなどでコンテンツを販売している方と定義しています。そういう活動をされている方は、とても大変な思いをされていました。コンテンツ作りだけでも忙しいのに毎晩メールで資料を送らないといけない訳ですから。そこで、その問題を解決することができる、というメッセージでアプローチを行いました。最初の30人を集めるのに1〜2週間ほどかかったと思います。

当時実際に使っていたスコアボード(出典:CTEE)
最初はひたすら営業活動を続けたのでしょうか?
最初の30人のクリエイターに当社のプラットフォームを使ってもらうと、さらに新しいクリエイターの方が知ってくれて、流入が始まりました。クリエイターたちのコミュニティはとても結びつきが強いんですよ。狭いですし。一人のクリエイターが何かを使うと、それを他のクリエイターが見つけ、それが広がっていく市場であることを把握しました。
それ以降は影響力のあるクリエイターを中心に営業を行いました。同時に、クリエイターたちの邪魔にならないラインで、彼らのプレイス(=クリエイターが製品を販売するためにCTEEで作るミニホームページのような空間)に小さくサービスそのものを知らせるバナーも挿入しました。クリエイター仲間の方々がプレイスに入ってバナーを見ると考えたのです。実際にこのバナーを通じても流入がかなりなりました。
新しいクリエイターに営業をかけ、そのクリエーターが別のクリエーターを流入させることができるようにし、このようなサイクルを回すと製品がかなりバイラルに乗りました。これが序盤のマーケティングにおける、最大のポイントだったと思います。
毎年500%以上の成長を続けていますが、初期以降はマーケティングをどのように行いましたか?
クリエイターが約200人くらいになってからは何もしなくても1日5~10人くらいのクリエイターが着実に会員登録を行ってくれました。そのクリエイターが販売する商品を買おうとするユーザーたちの会員加入もますます増えました。ところが実際に自分の商品を売ってお金を稼ぐクリエイターは少数でした。 「会員加入したクリエイターたちの数」は、当社の売上に大きな影響を及ぼす数字ではなかったのです。
その頃、顧客を2つの部類に分け、当社の営業人材を「実質的に影響力を行使できる(=しっかりとしたファン層があり、自分の商品を販売できる)クリエイター」に注力させました。 「その他の収益化を準備している段階のクリエイターの方々はパフォーマンスマーケティングで集めてみよう」こう戦略を立てたんです。
パフォーマンスマーケティングを行う際、どのようなメッセージを主に掲げましたか?
最初は単に「クリエイターの収益化をサポートする」というメッセージをよく使っていましたが、今振り返ってみるとすごく曖昧なメッセージでしたね。当社は「デジタル商品を販売する際に有用なサービス」であり、収益化の過程を全面的にサポートするようなサービスではありませんでしたから。
だからメッセージをもう少し具体的な問題を中心に整えました。 「デジタル商品販売の不便さを解決する」という大きな方向性のもと、実際にクリエイターたちが共感できるペインポイントを扱った素材が有用だったと思います。

当時利用していた広告素材(ソース:CTEE)
それでは、現在もパフォーマンスマーケティングは行っているのでしょうか?
いえ、MetaやGoogle AdSense(グーグルアドセンス)のような広告はすべてやめて、5カ月程経ちました。
まず最初に、現在は広告がリファラル(=おすすめ、共有など口コミによる顧客獲得)の速度に追いついていません。広告の正確な掲載効果の測定も難しくなりました。
第二に、当社が使う金額に対して長期的に残るものがないという印象をかなり受けました。もちろん、いくつかのデータでインサイトを得ることはできますが、そうして得た顧客が利用を進めていくようなマーケティングをしたいものの、パフォーマンスには限界がありました。揮発性が高いんですよね。
だから今は「当社もオリジナルコンテンツを作るクリエイターのように活動してみよう」という考えでYouTubeを運営しています。まだ登録者は多くありませんが、頑張っています。
パフォーマンス成果の測定が難しくなったというのは具体的にどういう意味でしょうか?
先ほど申し上げましたが、クリエイターはCTEEに加入さえすれば商品販売に成功するわけではありません。だから「当社が実際にアクティブな顧客を得たといえるタイミングはいつか?」について考えたんです。当社はこれを「最初の精算を受ける時点」と定義しました。

CTEEのAARRR
このような定義の上では、実際「加入」そのものは重要な指標ではないのですが、パフォーマンスで導き出すことができるのは加入くらいなんですよね。アクティブ顧客になるところまで正確に測定するのは難しいですが、それでも間接的に測定してみるとCACが約20万ウォン(約2.2万円)を超えます。
これは持続可能な方法ではないと考えて、今はパフォーマンス自体を行っていません。
ではYouTubeの他に注力しているマーケティング手法は何ですか?
オンボーディングCRMを着実に改善しています。 「加入したクリエイターを収益化まで導いていくこと」に集中していく中で、マーケティングの重心がますますCRMに行っていますね。
今では主に営業とリファラルを通じてクリエイターの方々が流入しているので、流入した方々を既存よりさらに細かくグループ分けして、できるだけ多くの方が収益化に成功できるようにサポートしています。各グループの方々に特化した機能も多く提供しています。
マーケティングの面で「事業初期にこれを知っていたら良かったのに」と思うことがありますか?
今考えてみるとお金をたくさん無駄にしました。顧客をきちんと定義していない状態で「ひとまず人から集めよう」と思ったのが一番大きなミスだったように思います。
「顧客獲得」の基準をきちんと把握していなければなりません。当社の売上に貢献する顧客が誰であるか、その顧客がどの時点で本物の当社の顧客になるのか。そうすれば、データも正しく見ることができます。
マーケティングのインサイトはどこで主に入手できますか?
インサイトを得るのは、少なくとも他社のマーケティングや、競合他社の広告といったものではないですね。マーケティング関連情報からはインサイトをあまり得られていません。
それでも時々助けを得ているのはもう少し人文学的なソースだと思います。例えば、「当社のサービスの価値をこのように見せるとき、相手がこのように反応するだろう」という仮説を立てるとき、人々の行動や考え方の流れ、そうしたことに関する情報から多くのインスピレーションを受けます。
最近ではストーリーテリングについても色々考えています。最近の人々はあまりにもショート動画にさらされているので、ただ浅い悩みから出てきた素材などでは、お客様にアピールするのは難しいように思います。むしろ「私たちが与える顧客価値をどのように深いストーリーとして描いていくか」についてかなり悩んでいます。
初めてのグローバル進出市場として日本を選んだ理由が気になります。
私たちがやっているクリエイターエコノミー関連市場はグローバルでは、ITソリューションをベースにとても急速に成長しています。代表的なものとして「Patreon(パトリオン)」のようなサービスがあります。Patreonの年間取引額は約3700億ウォン(約395億円)程度になりますが、このうちアジアが占める割合は5%にも届きません。韓国や日本のように経済規模の大きい国々をすべて含めても、です。
これを見て、アジアの国々では、クリエイターたちの収益モデルがとても断片的だと感じました。ほとんどのクリエイターが視聴回数、広告収益にのみ依存しているんです。コンテンツ以外の収益モデルをPatreonのようなグローバルサービスで実現するには、各国の政策、税務処理など様々なハードルがあるのも事実です。
実際に当社が韓国でCTEEをスタートした際、Patreonから移ってきた方がかなり多くいました。日本でも似たようなニーズがあるはずだという仮説を立て、日本市場に進出して孤軍奮闘しています。
日本でのマーケティングはどのように行っているのでしょうか?
当社が初期に韓国でやったように営業を中心に行っています。チームに日本人スタッフの方が1人いらっしゃいます。その方がDM、Eメール、コールドコールなどを通じてクリエイターの顧客を営業をかけてくれています。
当初は当社のサービスに関心を持っていた日本のエージェンシー数社と、インセンティブ方式でコラボレーションをしてみましたが、成果はほとんど出ませんでした。それ以来、韓国で成長した方法を日本に合わせて適用しています。
現在では継続して日本だけで月3000万ウォン(約320万円)水準の取引額が発生しています。
今後、CTEEはどんな姿に成長するのでしょうか?
CTEEは当初クリエイターたちの収益創出問題を解決しようとスタートしたサービスです。しかし、これまで当社が「デジタル商品(Eブック、テンプレート、その他デジタルコンテンツなど)販売」という狭い問題だけに取り組んでいたように思います。販売するデジタル商品がないクリエイターたちには価値を与えることができないサービスだったのです。
これからは収益化の問題解決にアプローチしようと考えています。クリエイターたちのコンテンツがますます刺激的かつ、挑発的になる理由の1つは私は断片的な収益モデルのためだと思います。視聴回数での収益だけに依存するため、みんなが視聴回数を多くするためのコンテンツ(=お金になるコンテンツ)だけ作ることになるのです。だからどんどん浅くなって、コンテンツはみんな似通ってきます。
短期的には、少数でもしっかりとしたファンを作っていくクリエイターたちが、視聴回数のほか、様々な収益モデルをCTEEで作れるようにしたいと思っています。YouTube、Instagram、Naver(ネイバー)、brunch(ブランチ)など、それぞれのチャンネルが持つ収益化機能(メンバーシップ、スポンサー、オン/オフラインイベントチケット、コミュニティなど)より自由度の高い機能を低料金で提供しようと試みています。
長期的には、私は誰もがクリエイターになる時代が来ると思っています。凄まじいインフルエンサーになるという話ではなく。非常に細分化された領域で自分の強みを商品化して月に約2~3万円ずつは誰でも稼ぐ時代が来ると思います。それまでCTEEが地位を固めて、「誰もがCTEEプレイスを1つは持っている世界」になることを願っています。
最後に、このインタビューをご覧の方々に伝えたいことはありますか?
多くの方に「クリエイター市場」といえば、有名なYouTuber、著名インフルエンサーが率いるような市場であると思われています。私はそうは思いません。
当社は顧客を「デジタル小規模事業主」と呼んでいるんです。お金を稼ぐ方法が非常に多様化しており、無形の製品や経験を作ることでお金を稼ぐ活動の進入障壁はますます低くなっています。
この市場は実は平凡な日常とますます密接になっている市場だということを是非お伝えしたいと思います。
クリエイター活動をしながら様々な収益モデルを構築している方なら、私たちはいつでも歓迎です。
このインタビューを通じて、小さな企業の起業家、マーケターの方々が学んでほしい点を私の観点からまとめてみました。
1.ターゲットの正確なペインポイントを具体的に把握すると、マーケティングが容易になります。 顧客がまったくいない超初期にはピンセットセールスをする中で、彼らが実際に経験する苦痛はどのような言葉で表現されるのかに直接耳を傾けてみてください。そううれば、すべてのマーケティング戦略に適用するキーメッセージを取得できるでしょう。
2.熾烈な市場がない今の時代に、「バイラリティ」は成長にほとんど不可欠です。 単にインフルエンサーたち何人かに交渉してコンテンツを作り上げて、コミュニティに浸透させ、投稿をいくつかアップすれば、バイラルになるわけではありません。自分たちのコア顧客は誰なのか、彼らがどのような経路で新製品に関する情報を得るのかなどを具体的に把握し、それに合った製品から口コミまで緻密に設計するのがバイラルの核心です。
3.パフォーマンスマーケティングは、揮発性の高いマーケティング方式です。 「顧客への転換」を目指して広告を回すからといって、広告が本当に転換を起こすと誤解してはいけません。広告はトラフィックを起こすだけです。転換は製品によって引き起こされます。製品自体の新しさと体感価値、その価値を表現するメッセージやビジュアル、既存のお客様のレビューやおすすめなど、複合的な要素が転換に関わります。規模の小さい企業は、揮発性の高いマーケティングではなく、自社に資産として積み重なるマーケティングを最初に行わなければなりません。顧客に貴重なコンテンツを提供し、当社の製品の一部またはチームの能力と時間を活用して顧客と良好な関係を築き、それらと引き続きコミュニケーションできるマーケティングが自社に資産として蓄積されるマーケティングです。費用の面ではるかに効率的であるだけでなく、それ自体が後に競争優位性を作ってくれます。
4.データは、顧客定義が明確になったときに本物の武器になります。実際に自社に売り上げをもたらす顧客がどんな顧客なのか知らなければなりません。物の製品を売るビジネスも同様です。製品を購入したからといって、全員がコア顧客になることはありません。積極的に自社の製品を使用する顧客、再び自社モールにアクセスして再購入する顧客、さらには製品使用経験をコンテンツにして自ら共有する顧客まで。本当の売上高に大きな影響を与える顧客が誰であるかを定義できると、データも適切に活用できます。
5.結局のところ、マーケティングは人を理解することです。 実は事業そのものがそうです。人々にとって本当に必要なものを把握し、それを魅力的な製品にすることができるチーム、その製品の価値を人々が体感できるようにメッセージ、ビジュアル、経験を生み出すことができるチームが勝利します。そのためには、最終的に人を理解する力を育くまなければなりません。人は自分自身をよく分かってくれており、自分に必要なものを与えてくれる企業にのみ自発的にお金を支払います。
原文:https://www.innoforest.co.kr/report/NS00000430
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