今回は新韓ベンチャー投資でチームリーダーを務めるイム・スンウォンさんにお話しを伺いました。
第一弾では新韓ベンチャー投資や、現在イムさんが携わっている業務について、第二弾では日韓スタートアップの違いや、今後の注目分野などについてお聞きしていきます!


新韓ベンチャー投資 チームリーダー イム・スンウォン

日本で高校、大学を卒業後、日本のベイカレントコンサルティングにおいて、ANA、Rakuten、東京メトロなど大手企業を対象としたDX推進・業務改善戦略・新事業戦略コンサルティングに従事。
韓国に戻り、EYおよびPwCにて韓国大手企業を対象としたコンサルティング業務に従事。さらにその後MBAでファイナンスを専攻し、修了後にVC業界へ転身。

現在は、新韓ベンチャー投資チームのリーダーとして、日韓スタートアップ市場を中心に活動している。


新韓ベンチャー投資について教えて下さい。

私が働いている新韓ベンチャー投資は、韓国で人口の約70%が使用しているメガバンクの内一つである新韓金融グループの子会社として設立されたVC(ベンチャーキャピタル)です。

グループ全体のキャピタルマーケット分野において、ベンチャー投資を専門的に担当しています。
現在、約20本以上のファンドを運営していて、AUM(運用資産残高)は日本円で約1,800億円になります。

新韓金融グループ傘下であることを活かし、グループ企業とのシナジーを重視したCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)型のファンドも一部運用しています。

一方で、グループ外のLP(リミテッド・パートナー)によって構成されたファンドも多数保有しており、FI(財務的投資)を目的とした投資も積極的に行っています。

財務的な投資だけでなく、さまざまな産業分野の企業や金融機関との連携を可能にするSI(戦略的投資)も行っており、VCでありながらCVCの面も併せ持った柔軟な投資スタイルが弊社の大きな特徴です。

投資段階としては、シードステージからプレIPOまで、あらゆる成長段階のスタートアップを対象とした包括的な投資をしています。

セクターにおいても、産業分野から技術基盤を活用した企業、コンテンツ制作やプラットフォームビジネスまで、幅広い領域をカバーしています。

さらに、グローバルな投資力の強化にも積極的に取り組んでおり、現地VCとのパートナーシップや、共同ファンドの設立など国際的な協力関係を築いています。

投資地域も韓国だけでなく、日本、アメリカ、東南アジア、さらにインドへと拡大中です。

中でも私たち新韓金融グループは日本との結びつきが深く、日本国内の銀行やファンドからの出資も積極的に受け入れており、日本市場との連携を重視しています。

このように、グループ内の金融インフラや顧客ネットワークを活かしながら事業を連携し、戦略的投資(SI)と財務的投資(FI)を両立した柔軟かつ実効的な投資活動を展開している点が大きな特徴です。

現在どのような業務を担当されていますか?

私は現在、グローバル投資本部に所属し、韓国を含む世界中のスタートアップを対象に投資検討と実行業務を担当しています。
その中でも特に日本市場を中心とした投資活動を担当しています。

また、韓国企業の日本市場への進出を目指す韓国スタートアップに対しての支援も進めています。
日本での現地パートナーの発掘や、大企業とのマッチング、他にもイベントの開催などを通じてスムーズな日本進出支援をサポートしています。

さらに、日本のLPや政府機関、日本国内のVC・CVCと連携しファンドの設立・運用も行っています。

代表的な例としては、昨年初めに、日本にあるVCおよびグローバルブランドと共同で、日韓クロスボーダー型のファンドを設立し、現在も運用を継続しています。

こうした投資や、日韓進出の支援を通じて、韓国と日本のスタートアップエコシステムを繋ぎ、両国間の連携を促進する役割を担っていると感じています。

投資後においても、スタートアップが日本市場で事業を成功させられるよう、中長期的な視点で伴走し、パートナーとしての役割を果たすことを目指しています。

新韓ベンチャー投資で働くようになったきっかけを教えて下さい。

私は高校1年生の時から約10年間日本に住み、東京で高校・大学を卒業後、日本で就職しました。
日本ではベイカレントというコンサルティングファームに勤務し、その後韓国に戻り、EYやPwC(旧BWC)などでの勤務を含め、計約6年間コンサルティングファームでの経験を積みました。

日本・韓国両国でコンサルティング業務に携わる中で、企画立案や戦略策定をはじめ、大手企業のDX推進、新規事業の発掘、そしてグローバル市場への進出戦略の支援プロジェクトなど幅広い業務を経験しました。

多様な産業や市場に触れる中で、急速に変化する技術や消費者トレンドを肌で感じると共に、大企業の役割は依然として重要である一方、スタートアップの存在感や影響力が急速に高まっていることも実感しました。

こうした経験を通じて、単に戦略を提案するだけでなく、実際の投資を通じて企業の成長を支援し、その成長を見続けることが出来る「VC」という仕事に強く惹かれるようになりました。

その想いから本格的にキャリアチェンジを考え、MBAにも進学しました。

日本で過ごした期間、コンサルティングファームでの経験、そしてMBAでの学びを通じて培った知識や市場に対する理解は、私にとって唯一無二の資産です。

この資産を活かし、韓国と日本をつなぐVCとしての役割を果たしたいと考え、今のキャリアを選びました。

現在は日本関連の業務を中心に担当しており、VCというキャリアに辿り着くまでに積み重ねてきた時間と経験が、実際に私にとって大きな意味を持つものであったと日々実感しながら働いています。

今後、VCとしての目標はありますか?

同じVCと言っても、人によって目標は様々です。

VCの役割である良い企業の方々に会って投資をしてお金を稼ぎたいという人もいるかもしれませんが、私は、自分の韓国と日本に関するバックグラウンドを活用して、寄与できることをしていきたいと思っています。

単に資金を投資する役割だけではなく、韓国と日本の二つのスタートアップの生態系でそのような戦略的に連結できるような橋渡しができるような役割を担いたいと考えています。

その上で、新韓ベンチャー投資という会社は、韓国スタートアップの日本市場進出を支援したり、商談の場に同行したり、現地のパートナー企業を紹介したりと、私自身のビジョンと非常に合致した活動を展開しており、大きなやりがいを感じています。

また、日本のスタートアップに投資をした後には、韓国市場への展開や、さらにその先のグローバル展開までを共に進めていけるような存在でありたいと思っています。単なる資金提供者ではなく、事業拡大に伴走し、より大きな価値を創出するパートナーになることを目指しています。

加えて、私が先ほど述べたように、新韓ベンチャー投資は民間VCとしては異例とも言える、政府・金融機関・大企業との連携を可能にするファンドを実際に運営しています。このファンドは、韓国のみならず日本にも投資が可能な設計になっており、資金面の支援にとどまらず、実行力あるサポートを行える体制が整っています。

私はこの体制の中で、実際にスタートアップの力になれる「伴走者」として、長期的な視点で価値を共創していける存在でありたいと考えています。


新韓ベンチャー投資

HP:https://www.shinhanvc.com/en

第二弾も準備中ですので、お楽しみに👀✨