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【ちょい事情通の記者が送るキュレーティングレター】

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【ちょい事情通の記者が送るキュレーティングレター】

ちょい事情通の記者はスタートアップが世界を見る「窓」です。スタートアップを愛する第3者の目線から、とても忙しないスタートアップ業界を見逃さないよう記事を集めてお届けします。

1.登場6日で「1000億単位」の企業価値を持つスタートアップ...「予算は銀行口座残高が0になるまで」

「闇のポケモン」と呼ばれる「パルワールド」はスタートアップです。パクリ論争にもかかわらず、市場は熱狂的です。1月19日のリリースからわずか6日間で800万枚以上が販売されました。同時接続者数は200万人を超え、「Counter-Strike 2(カウンターストライク2)」や「Baldur's Gate 3(バルダーズゲート3)」などの有名作品を一気に超えました。現在、パルワールドより同接者が多いのは、KRAFTON(クラフトン)のPUBG: BATTLEGROUNDS(バトルグラウンド、325万人)くらいだそうですが、それすらも超える勢いです。デビューと同時に1000億円単位超の時価総額のゲームを超えた、ゲーム界のスタートアップです。

実のところ、パルワールドは雰囲気だけ見るとポケモンをパクったたようにも思えます。株式会社ポケモンは1月25日、ホームページに「他社のゲームに関するご質問について」という記事を掲載しました。日本のマスコミから「パルワールド」の盗作疑惑についての問い合わせが殺到したようです。ポケモン側は「当社はこのゲームについて、ポケモンに関するいかなる利用も許可しておりません。ポケモンに関する知的財産権の侵害行為については、調査を行った上で適切な措置を講じる予定です」と述べています。

パクリ論争についても、スタートアップの創業チームに読んでみることをお勧めします。ゲーム専門誌THIS IS GAME(ディスイズゲーム)が伝えた、パルワールドを作ったPocketpair(ポケットペアゲームズ)の創業者、溝部拓郎氏のストーリーです。溝部拓郎は、パルワールドのリリース3日前に「このゲームが出せた6つの理由」を書いています。ヒットするか、まだわからない状況で書いた文章です。彼は「当社に現金が豊富な状態だったら、パルワールドは生まれていなかった」「コンビニでバイトするフリーターを採用した奇跡」「予算はまず銀行口座の残高が0になるまで」と書いています。

[原文1.[パルワールド]、同接者200万人、販売量800万突破!今後の方向性は?]

[原文2.「パルワールドは6つの奇跡がなかったら発売すらできなかった」]

パルワールド/Pocketpair

2.AppleのVision Pro

Appleの新製品が9年ぶりに登場しました。Vision Pro (ビジョンプロ)です。iPhoneとApple Watch、そしてVision Proの時代が来るのでしょうか?以下、記事の抜粋です。

  • Vision Proは、ユーザーがゴーグルのように頭に装着する方式の機器で、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)を組み合わせたAppleの新製品だ。ストレージ容量が256GB(ギガバイト)の最も低い仕様の製品価格が3499ドル(約52万円)に達する。
  • UBSのデビッド・ボーグト アナリストは、今年AppleがVision Pro を約40万台出荷し、売上高14億ドル(約2070億円)を記録すると予測した。AppleWatchが発売初年度に1200万台販売されたことに比べれば、両機器の価格差を考慮しても比較できないほど微々たるものだ。
  • Vision ProでYouTube(ユーチューブ)・Netflix(ネットフリックス)・Facebook(フェイスブック)など世界で最も人気のあるアプリをサポートしていないためだ。Meta(メタ)のFacebookやInstagramなどの代表的なソーシャルメディアもVision Pro用のアプリをリリースしないと決めた。

Appleの戦略については、誰も正解を知りません。知ったかぶりをするしかないのです。実のところ、Apple内部の正確な情報を確保するのも難しいのです。彼らが公開した資料にのみ頼らなくてはなりません。しかし、彼らにはいつも「何か」がありました。

[原文1.Appleが9年ぶりに新製品を出したのに...YouTubeも、Netflixも見れない]....

[原文2.「Vision Pro 」興行突風に...牽制する「Netflix」、乗り込む「Disney+(ディズニー+)」]

[原文3.Apple「Vision Pro」販売序盤好調...「事前注文3日間で最大18万台」].

[原文4.「没入型動画に夢中になる」Appleの驚くべき魔法、Vision Pro ]

3.人工知能の半導体戦争、OpenAIも参戦?それとも参戦するふり?

AIイノベーションという鉱山に参入するために必要な「ジーンズ」と「つるはし」の価格はあまりにも高すぎます。現時点では、事実上NVIDIA(エンビディア)が独占している状態です。NVIDIAのGPUであるH100の価格が台当たり4900万ウォン(約540万円)まで上がったそうです。人工知能分野の主導者であるOpenAI(オープンAI)は、NVIDIAのGPUであるA100を1万台以上使用しました。下手をすると、金を採る前にジーンズの代金を払って倒産する鉱山業者も出てくるかもしれません。

すぐにSK hynix(SKハイニクス)をはじめ、SAMSUNG(サムスン電子)、Micron (マイクロン)などのメモリメーカーも高帯域幅メモリ(HBM)という製品で便乗しました。ジーンズメーカーに良いジッパーのような素材を納品するということで、これもすごく儲かるようです。ファブレスであるAMDのようなNVIDIAの競争相手も競争製品を出すとすぐに株価が急騰しています。そわそわします。

OpenAIが登場しました。ジーンズとつるはしを自分で作ろうというのです。サム・オルトマンCEOがアラブ首長国連邦の投資家はもちろん、役に立ちそうな先駆者に会っているという話です。

成功するでしょうか?以下の記事にはありませんが、「半導体開発」には蓄積された能力と時間、そしてお金が必要です。半導体は決して簡単な商品ではありません。また、半導体は最高品質の製品だけがきちんと本来の性能を発揮します。

例えば、OpenAIが天才集団であっても、「AI半導体に対する蓄積された能力」がない限り、実現可能性は容易ではなく、第二に、そのような人材と協力会社を確保したとしても、時間は必ず必要であり、最後に、どれだけのお金がかかるかは計り知れません。もちろん、OpenAIの立場でも、自分たちが「NVIDIAより性能が優れたAI半導体」を作らない限り、自社製品を出しても、購入先を変えさせることはできません。

同じ脈絡で、AMDが最近出したAI半導体がNVIDIAより性能が優れているかという質問は愚問です。奇跡がない限り、やはり最初に考えたNVIDIAの製品が優れています。SK hynixがNVIDIAと出したHBMに、SAMSUNG(サムスン電子)とMicronがすぐに追いつくことも不可能に近いです。同じような製品を作りながら、追いつく時間が必要です。なぜかって?それが半導体という産業の特徴です。

[原文を見る]OpenAIも「AI半導体開発」足早…UAE・TSMCに手を差し伸べる

OpenAIロゴ/NEWSIS

4. 「ほとんどの起業家は、自分たちが進む道を解決していく特別な能力を持っていなかった」 by Lenny

B2Bスタートアップの起業家はほとんど知っている「Lenny's Newsletter(レニーニュースレター)」です。恥ずかしながら、ちょい事情通の記者は今年に入ってから名前を知りました。いえ、恥ずかしくありません。知らないのは恥ずかしいことじゃないから。もう知ったので勉強すればいいのです。Lennyのレターの一部です。

Here’s a peek at a few of the more surprising takeaways:

1.   The majority of founders had no special skill or background in the problem space they went after.

2.   Most B2B startup ideas did not come from the founder feeling the pain at their last gig (though many did).

3.   Every prosumer product (e.g.Notion, Figma, Airtable, Miro, Slack, Coda) took two to four years of wandering in the dark before they found something that worked.

4.   Founders spoke to a median of 30 potential customers to validate their idea before committing.

5.    ~40% of startups pivoted at least once before landing on their winning idea—oftentimes more than once.

6.   About 20% were solo founders.

7.   Cold outbound works—it’s the second most common way to get your early customers.

[原文を見る] How the most successful B2B startups came up with their original idea

5.TALING(タリング)というスタートアップが生き残る方法

「死ぬ間際まで行ってこそ、すべてを手放すことができるのだと思います」TALINGというスタートアップのストーリーです。ちょい事情通の記者は「TALING」というスタートアップを全く知りませんでした。創業者と会ったこともありません。Naver(ネイバー)で検索してみると、教育スタートアップでした。

通常、「家庭教師」「教育」「講義」などの分野は、認知度を上げることやマーケティングが重要なB2Cであることが多いです。したがって、「魂まで売らなければならないほど、切羽詰まった生活を送る起業家」たちの間でも、より一層「大衆に何かを売らなければならない」宿命です。悪く言えば、このようなスタートアップのインタビューには少し「誇張」が入っています。「 うまくいく」と言ってこそ、生徒が一人でも増えるからです。例えば、「全然だめだ」と噂されている近所の塾に受講を申し込む高校生はいないでしょう。

徹底した有料コンテンツ戦略であるOUTSTANDING(アウトスタンディング)の記事ですが、TALINGのインタビューは全文公開で、「この文章は外部協賛を受けたスポンサーシップコンテンツ」と明記されています。それでもこの記事を共有します。仮に誇張があるとしても、誇張を取り除きながら「TALING創業者の悩み」を一緒に聞いてみましょう。

[原文を見る] 最大月間売上更新、年間営業利益10億ウォン(約1100万円)突破…この1年で、TALINGに何が?

6.Rebellions(リベリオン)とFURIOSA AI(フュリオサAI)、私たちはチップの民族ではないでしょうか。

最後の「ピックアップ」は、再びNVIDIAと半導体の話です。AI半導体に挑戦する韓国のスタートアップはかなり多いです。Rebellions、FURIOSA AI、DEEPX (ディープエックス)、HYPER ACCEL(ハイパーエクセル)などです。

ちょい事情通の記者が先ほど3番目のテーマで話した「半導体の特性」を覚えているでしょうか?半導体スタートアップがその隙間に定着するのは、本当に難しいです。天才たちがやっとファブレスで一つの分野の隙間を捉えるというだけでも奇跡に近いです。

半導体スタートアップのCレベルの方に「その不可能な挑戦」について質問したところ、こう答えられました。

「メディアではNVIDIAと競争するようにも言われていますが、そんなつもりも能力もありません。NVIDIAより良いAI半導体を当社が今出せるというのは、嘘でしかないでしょう。しかし、NVIDIAがあらゆる市場を100%捉えることはできませんし、NVIDIAの立場でもそうするつもりはないでしょう。NVIDIAが取りきれなかった、あるいは優先順位を後回しにした、そんな1%の市場さえ掴めば、当社としては成功です。簡単ではありませんが、それには自信があります。

私たちは配達の民族ですが、やはりチップが好きな民族ではないでしょうか。もしかすると、SAMSUNG(サムスン電子)やSKhynixに続く種はすでに蒔かれているのかもしれません。

[原文を見る] 韓国AI半導体企業の挑戦...「今年グローバル市場で成果を出す」

2023年7月Rebellionsのパク・ソンヒョン代表が朝鮮日報とインタビューする様子/オ・ジョンチャン記者



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