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【そのとき投資】Difon、スマートガラスの普及は私たちの手で

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【そのとき投資】Difon、スマートガラスの普及は私たちの手で

イ・チュンウク TBT投資本部長|Difon

 私たちが生活している空間には、どこにでもガラスが存在する。屋外ではない、私たちが主に滞在する屋内空間において、ガラスが占める割合は非常に高い。家、毎日通勤するオフィス、移動手段である自動車など、生活空間には常にガラスが存在している。ガラスは、滞在する空間と外部をつなぐ機能的な媒体であるだけでなく、独自の美的要素として空間のデザイン的要素にも多様に活用されている素材である。建築業界でもガラスが持つ美的要素のメリットから、建物の外壁として活用されるケースが増えている。しかし、ガラスには割れやすいという致命的な欠点がある。ガラスの熱伝導率は他の材料に比べて特に高い。そしてガラスの透明性によりプライバシーが侵害されるという欠点もある。そのため、居住空間にはカーテンとブラインドを使用し、車ではティンティング(Tinting)作業を通じてこの弱点を克服してきたが、面倒で、視認性が低下するという不便さを受け入れなければならなかった。最近、米国や欧州を中心に、このような不便さを技術的に克服するソリューション、「スマートウィンドウ」が拡大してきている。スマートウィンドウは、ガラスとガラスの間にフィルムを貼り付け、フィルムに「電気的信号」を送って光の透過率を調節し、熱エネルギーまで遮断する機能性ガラスを意味する。主に自動車のルーフガラスや建物の外窓、家具などに利用され、画像や映像などをガラス上に表示する用途で使われている。 

スマートウィンドウ技術で建築物や自動車のエネルギー効率、デザイン価値がアップ

 2022年8月に通った米国のインフレ削減法(Inflation Reduction Act, IRA)では、電気自動車、ソーラーパネル、風力タービンを含むクリーンエネルギー技術に対する税制上の優遇措置と投資インセンティブが規定されており、その対象にはスマートウィンドウも含まれた。韓国ではまだ米国のようにスマートウィンドウに対する直接的な政策的支援は具体化されていないが、「グリーン建築物造成支援法」に基づく「ゼロエネルギー建築物義務化ロードマップ」に基づき、2020年から1,000㎡以上の公共建築物を始めとし、2030年にはすべての建築物にゼロエネルギー建築が義務化されるため、スマートウィンドウで熱の移動と過剰な太陽光を遮断して冷暖房エネルギーを節約するソリューションが普及することが期待される。

また、電気自動車の普及に伴い、車両の屋根も徐々にスマートウィンドウに置き換えられる傾向にある。自然光を求める消費者が多くなっていることと同時に、車両下部にバッテリーが設置されている電気自動車の構造的特徴からヘッドルーム空間確保と軽量化、熱遮断による電気代(電気自動車の1kW当たりの走行距離)改善への代替案として、グラスルーフが電気自動車のデザイントレンドとして地位を固めている。ポルシェ、BMWやレクサスなどの高級ブランドを筆頭に、トヨタ、フォルクスワーゲン、ルノーなどの大衆車ブランドまで、スマートウィンドウ技術を適用したグラスルーフが急速に導入されている。このようにスマートウィンドウに対する市場の関心が高まり、HYUNDAI(現代自動車)、SK、ソフトバンクなどの大手企業が海外のスマートウィンドウ企業に投資を行った。

ポルシェのスマートウィンドウ技術を活用したグラスルーフ /ポルシェ

良質なスマートウィンドウフィルム量産化技術で、韓国内でのスマートウィンドウ普及に貢献

昨年8月にTBTが投資した「Difon(ディフォン)」は、スマートウィンドウフィルム専門のスタートアップだ。Difonへの投資を検討するにあたり、最も重視した要素は「経済性」と「技術力」だった。新しい技術が普及するためには、経済性が不可欠である。どんなに良い技術であっても、活用するには高価であったり、安定的な生産と供給ができなければ、空念仏になるのが現実である。従来のスマートウィンドウ製造技術は工程過程が複雑であり、設置過程でも電気配線作業が必要で、生産性と経済性において満足させるのが難しい側面があった。しかし、Difonは創業後、すぐに良質な原材料の調達からフィルムの量産自動化まで準備を整え、安価でスマートウィンドウを普及するための基盤を構築した。

また、ガラスは非常に長い間使われてきた素材であり、ユーザーに選ばれるには、紫外線や熱遮断、耐久性などの品質検証が不可欠だった。Difonは有力なグローバル自動車メーカーや韓国内有名建設会社と多くのプロジェクトを行い、優秀な結果を修めていた。それと共に様々なフィルムレシピを保有しており、様々な需要先に対応できる準備が整っていた。Difonが持つ技術の中で最も興味深かったのは、独自に開発したVPLC(Variable Polarized Liquid Crystal、可変偏光液晶)技術だった。ガラスの明るさをユーザーのニーズに合わせ、真っ暗闇から透明まで、細かく調整する技術で、IOTと組み合わせることで、ガラスの明るさを日照量、温度など外部環境に応じて自動的に調整することができる。従来のスマートウィンドウ市場で多く使われており、Difonが量産製品として優先的に選定したPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal、高分子分散型液晶)方式は単純な透明・不透明しか選択できないため、現時点ではDifon独自に開発したVPLCが技術的には最も進んでいると思われる。特に、真っ暗なレベルまで明るさを調整することができるため、従来スマートウィンドウの適用が制限されていた大型ディスプレイ領域にまで適用が可能になる。

Difon、VPLC適用例 /Difon

技術を通し、光から自由になった環境を作る

Difonのイ・ソンウ代表は、SAMSUNG(サムスン電子)やHYUNDAI(現代自動車)などを経験したエンジニア出身の創業者で、電子工学と光学の専門家である。20年間の安定した大企業での研究員生活を後にしたイ・ソンウ代表は、実生活に密着する“ガラス”をイノベーションし、より良い生活環境を実現するという強い信念から、2021年にDifonを創業した。 Difonはイタリアの口語表現で『人を守る』ということを意味しており、イ・ソンウ代表と会社が持つスマートウィンドウ技術を通じてエネルギー削減からプライバシー保護まで、『空間技術を通じてより豊かな生活を提供する』という意志が込められている。投資審査役として感じたイ・ソンウ代表の長所は、市場と技術の変化に敏感な技術者であるということだった。技術に対する専門性だけでなく、十数年の研究活動と調査を通じて、市場の流れと産業の構造を正確に理解している創業者だった。同時に、果敢な実行力と強い推進力を持つ起業家でもある。これを基盤に創業2年で少人数での量産製造ラインを構築し、韓国内外のグローバル企業と多数のPOC(Proof of Concept、概念実証)プロジェクトを成功裏に進めた。スマートウィンドウの先駆者である米国、欧州メーカーと比べるとスタートこそ遅かったが、これまでイ・ソンウ代表とDifonチームが見せた成果を考えると、グローバルメーカーとの競争が早くも期待される。

Difon イ・ソンウ代表 /Difon



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