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【そのとき投資】農業で人工知能(AI)は人に替われるか?IoCrops

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【そのとき投資投資】農業で人工知能(AI)は人に替われるか?IoCrops

ソン・ジンファCapstone Partners(キャプストーンパートナーズ)審査役

@そのとき投資(私はその時、投資することを決めました)では、現役の投資家がなぜこのスタートアップに投資したのかを共有します。

 経路依存性とは慣性と習慣のために、現時点では最善ではないかもしれなくとも、それを使い続ける現象である。経路依存性は、時間が経つほど、規模が大きいほど大きく現れる。農業は人類史上最古の産業であり、強力な経路依存性によってこれまでイノベーションが非常に遅れた産業であった。そのため、高齢化や気候変動などの外部環境の変化に対応できず、現代社会は食糧危機に直面している。

 しかし、「危機はチャンスだ」という言葉のように、このような危機をチャンスとして新しい産業が誕生している。まさにアグテック(Ag-Tech)産業だ。農業は単純労働集約的産業からIT技術との融合を通じて技術・資本集約的先端産業に変貌している。製造業、サービス業などによって後ろに押されてもいるが、人間生活の基本要素の一つである食と関連した産業であるだけに市場規模が大きく堅固である。

①高い革新と発展の可能性 ②大きな市場規模により、アグテック産業は投資家にとってもチャンスの領域であり、それに対する関心と投資は着実に増加している。

 2016年、イ・セドルとアルファゴ(AlphaGo)の対決以後、様々な分野で人間と人工知能(AI)の対決が繰り広げられている。オランダでは現在、ワゲニンゲン大学(Wageningen University & Research)とテンセント(Tencent)の主催で、第3回農業AI競進大会(Autonomous Greenhouse International Challenge, AGC)本選が行われている。ミニトマト栽培対決が繰り広げられた2回大会では、本選に上がった5つのチームが開発した人工知能(AI)と農業の専門家との対決が繰り広げられた。

その結果、人工知能(AI)を活用した5チームすべてが生産量、収益、品質、コストなどの要素を総合的に考慮したとき、人間の農業専門家よりも高い順位を記録した。特に1位になったチームの生産量は人間の栽培専門家の2倍の水準に達した。第1回大会では、マイクロソフトが1位、人間の農業専門家が2位になったが、短期間で状況は変わった。人工知能(AI)はすでに様々な産業で人間に代わっており、農業も例外ではない。

 しかし、現在普及し、適用されているスマートファームソリューションは、ほとんどの場合、センサーを介した農場環境のリアルタイムモニタリングと環境コントローラを介した自動化設備の制御レベルで、作物生産の過程においての意思決定自体はまだ栽培者の経験に依存する方法で非効率的な生産が行われている。

一方、IoCrops(アイオクロプス) は、スマートファーム農家にIoTセンサーとデータ監視システムを普及し、収集されたデータに基づいて適切な栽培処方をリアルタイムで実施し、データ駆動型農業を可能にするソリューションを提供する企業として「生産の自動化」を超えて栽培過程における「戦略の自動化」を目指している。

IoCropsは、第2回AGCにおいて韓国唯一の本選進出チームであり、最終3位を記録したDigilog(ディジログ)チームの主軸として参加し、データベースの意思決定および制御ソリューションでの競争力を持っていることを証明した。


チョ・ジンヒョンIoCrops代表/CAPSTONE(キャップストーン)

IoCropsが夢見る未来農業の姿  

 IoCropsの既存事業モデルは、自社設計・開発したセンサーハードウェア、他メーカーの環境コントローラの互換を助けするソフトウェア、そして農場のすべてのデータを一度に管理し、収集されたデータを活用して予測・分析、農場運営に関連する様々なレポートとコンサルティングを提供することだった。その中で「開発したソリューションに基づいて実際に農業をしてみてはどうか?」という考えから始まったプロジェクトが「代農営(代わりに農業を営みます。)」だった。

 IoCropsは、ソリューション利用農家の一つだった密陽(ミリャン)市のパプリカ農家の温室1つを委託してもらい、運営してみることにした。農場には実際の栽培経験のない現場管理者1人だけが常駐しており、自ら栽培意思決定をせずにデータ収集および人工知能(AI)ソリューションの栽培処方に応じて作業者たちに農作業の指示だけ行った。

昨年10月から行われている代農営プロジェクトの結果、現在まで、該当温室の既存生産量だけでなく、同じ農場主が自ら運営している他の温室と比較しても、坪単価の生産量はより多かった。オンラインを通したAIベースの遠隔栽培により、栽培専門の人材人間なしで、人間の領域を最小化した技術的な栽培戦略を利用し、生産量を増大させることができることを実証したのだ。

 IoCropsは「環境情報(input data)」だけでなく、過失負荷、茎の直径、生長、花房状態など「生育情報(output data)」をビジョンAIを通じて得て、これを農業に活用するための技術を開発中ある。また、農作業の中で、現在に至っても人間が担当している比重が大きい収穫、摘葉(残葉の除去)、摘果(不要な量の果実を除去し、残った果実をより大きく成長させ、商品性を高める作業)などを行うことができるロボット開発にも力を入れている。

IoCropsは人工知能(AI)を通じて農業における意思決定を代わりに行うのはもちろん、実際の作業まで自動的に行われる完全自動化農場を目指している。

 IoCropsが夢見る未来の農業の姿では、様々な地域、国家の農場を保有し、各農場では人工知能(AI)の指示に従ってロボットが農業を営み、人は管制室(Control room)でシステムが正しく動作しているかをモニタリング及び制御している。IoCropsは今とは全く異なる農業に対するビジョンを持っている。

結論を言えば、彼らが夢見るビジョンに共感し、これまで見せた姿でこれを成し遂げることができるチームであると納得したため、投資を決定した。今後、農業にもっと大きな変化を呼び起こすであろうIoCropsに期待しがら、現在進行中の第3回AGCでの良い結果を楽しみにしてみる。 

/media/ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)
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