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人工知能、公共の安全をアップグレードする

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人工知能、公共の安全をアップグレードする

はじめに

 いつの間にか秋が過ぎ、冷たい風に衣服を重ね着する冬がやってきました。そして、秋が過ぎて冬が始まろうとしているこの時期に思い出す記念日があります。それがハロウィーンです。日本はもちろん、韓国でも多くの若い男女がハロウィーンになると街に繰り出し、様々なコスプレをしながら祭りを楽しみます。

しかし、今年は以前とは少し違う雰囲気です。2022年10月29日、韓国ソウル・梨泰院(イテウォン)で起きた不幸な事故は、ハロウィーンを控えた韓国と日本の両国に多くの影響を与えています。

 


 

9月、東京・渋谷区の長谷部健区長は記者会見で、「昨年の韓国で起きたような事故が渋谷で起こってもおかしくないことを非常に懸念しています。ハロウィーンを目的に渋谷駅に来ないでください」と呼びかけました。

韓国も一部地域ではハロウィーンの祭りを中止すると発表しましたが、それでも多くの人出が予想されており、警察も人出が集中することに備えて、密集が予想される地域で事故に備えて訓練を行うなど、万全の準備をしています。

しかし、狭い地域に警察や医療スタッフが配置されたとしても、人員による現実的な困難があります。今月29日の梨泰院事故から1年に合わせ、各自治体では相次いで安全対策を発表しています。その中で、ソウル市が活用しているAIベースの人波検知システムに関する内容が印象深かったので、今日はその内容と併せて関連企業を紹介したいと思います。

 

第2の梨泰院事故を防ぐために

 


 ソウル市は、人波密集事故を事前に予防するため、今月から年末までCCTV(防犯カメラ・監視カメラシステム)とAI、IoT技術ベースの人波検知システム、すなわち「知能型災害安全システム」を導入すると明らかにしました。

このシステムは、人波の密集をCCTVが検知し、その映像をリアルタイムでAIが分析し、単位面積(㎡)当たりの人数を自動的に確認します。その後、現場にある電光掲示板に密集度を3段階に分けて表示します。案内放送とともに警察や消防などの対応要員にも状況が即座に伝達され、迅速な対応ができるようにしました。

 


 

このシステムが機能するためには、現場の状況を把握できるCCTVの役割が非常に重要です。英国のサイバーセキュリティ会社の「世界150主要大都市の公共CCTV台数調査報告書(2022)」によりますと、ソウルは単位面積(2.6㎢)当たりの公共CCTV台数が約619台で世界2位でした(中国は調査から除外)。

しかし、CCTVの台数に比べ管制人員が圧倒的に不足している現実と、最近発生している不特定多数をターゲットにした犯罪の解決策の一つとして「知能型CCTV」が積極的に議論されています。知能型CCTVは、AIディープラーニング技術に基づいて自ら映像をリアルタイムに分析し、災害や事故、犯罪などを事前に予測できるCCTVです。

 

AI技術を取り入れた知能型CCTV



従来のCCTVが各種犯罪や災害、事故などを監視し記録する役割を果たしていたのに対し、AIとIoT、クラウド技術などが融合した知能型CCTVは、映像を基に危機的な状況を探知し、管制センターに自ら緊急事態を知らせる「安全の番人」の役割まで果たします。このような知能型CCTVは、実際、犯罪者を捕まえ、事前に予防するために高い効果を上げています。

知能型CCTVは大きく2つに分けることができ、一般のCCTV映像を基に知能型管制システムが映像を分析する「選別管制型」と、AIカメラが異常徴候を捉えて自ら管制システムに信号を伝達する「エッジコンピューティング方式」に分けられます。

どちらの方法にも長所と短所があります。しかし、「エッジコンピューティング方式」の場合、設置費用は比較的高いのですが、設置環境空間の変化、即ち季節や天候、カメラを覆う物体など、現場の変化に100%対応できない問題により、現場では既存のCCTVが活用できる「選別管制型」がより好まれています。

この分野には主に既存のHanwha Vision(ハンファビジョン)、KTなどの大企業がシェアを占めており、競争が激しいのですが、顔・映像認識Visual AI分野で業界1位のAlchera(アルチェラ)と、ソウル市に今回導入された「知能型災害安全システム」を開発したIntellivix(インテリビックス)が現在、この市場で頭角を現しています。

 


Alcheraは、独自の映像認識AI技術である「Smart Viewing(スマートビューイング)」をベースに、スマート空港出入国ソリューション、金融決済関連の顔認証ソリューションなど、様々な分野で成果を上げています。Alcheraは顔・映像認識Visual AI分野で韓国1位の技術力を誇り、2020年末には、韓国株式市場(KOSDAQ)に技術特例上場しました。

上場後、現在は営業赤字が続いていますが、最近、AI山火事検知ソリューションをリリースして中東市場への進出を模索しています。グローバル市場調査事業者の「Transparency Market Research」の報告書によりますと、グローバル映像監視市場規模は2027年までに146兆ウォン(約16兆1,614億円)に達し、韓国の市場規模も同じ時期に約5兆5,000億ウォン(約6,074億6,000万円)に拡大すると予想されるため、技術力が十分なAlcheraへの投資の魅力は依然として高い状況です。

 


 

IntellivixはAI第1世代企業で、自社開発した映像認識AI技術を活用して2017年に韓国で初めて知能型CCTVの性能認証を受けました。海外でも唯一、英国政府傘下の映像分析技術認証機関から映像分析機能に対する試験認証を受け、技術力が認められた企業です。

今年初めには中小ベンチャー企業部(省)が主管する中小企業経営・技術イノベーション大展示会で長官賞(1位)も受賞しています。前述した知能型災害安全システムはもちろん、ナイフなどの凶器を振り回したり、周囲に凶器を持った人が徘徊(はいかい)している場合、自動的に警報を鳴らして危険な状況に備えるAIソリューションを作り、今もその技術力を誇っています。

 

最後に

 


安全規則(規定)は誰かの血で書かれる」という言葉があります。本当に悲しい言葉です。昨年の梨泰院圧死事故をはじめ、最近起きている無差別犯罪(不特定多数をターゲットにした犯罪)により、韓国は凶悪犯罪を事前に予防するための方法を模索するため、政府と企業が積極的に動いています。

完璧な安全は存在しないため、知能型CCTVをはじめ、技術を活用したセキュリティや治安の確保は、韓国では今後もさらに市場が拡大するでしょう。10年前、韓国でフィーチャー・フォンからスマートフォンに時代が変わり、携帯電話の役割が拡大したように、CCTVもまたその役割が拡大し、知能型CCTVが公共の領域でより多くの役割を果たし、私たちの安全を守ってくれることを願っています。

/media/パク・ジュニョン(박준영)
記事を書いた人
パク・ジュニョン(박준영)

世の中の様々な話題を人々に伝えるコンテンツを扱うエディターです。 会社に通いながら人々に知識を共有し感じる幸せが好きで、現在はフリーランサーコンテンツエディターを目標に文を書いています。 誰でも読みやすい文を作成することが私の目標です。 現在は個人ブログと韓国の投資コミュニティ2~3ヶ所に寄稿しています。

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