STUDIO LAB – 代表カン・ソンフン
2010年から2021年までサムスン電子グローバルでマーケティングに従事。在職中にはKAIST(韓国科学技術院)の夜間専門修士課程に通い、IT経営分野を専攻しながら本格的にコーディングを習得。
2021年にサムスン電子を退職後、現COOのイ・ジェヨン氏とともにSTUDIO LABを設立。
目次
貴社はどんな会社ですか?
弊社はAIとロボット技術を基盤に、ファッション企業向けにコマースコンテンツを自動化する技術を提供しています。顧客は主に大手ファッション企業で、LF、新星通商、F&Fなどが弊社の技術を活用しています。
昨年12月には投資を受け、リード投資家としてSBI Investment Korea(SBIインベストメント・コリア)、さらにNAVER(ネイバー)、D.CAMP(ディーキャンプ)、ソウル経済振興院からも出資を受けました。
また、アメリカで開催されたCESでは2024年にAI分野の最高革新賞、2025年にはロボット分野の革新賞を受賞しました。
STUDIO LABを設立したきっかけは何ですか?
私はもともとサムスン電子で約10年間、グローバルマーケティングチームに所属していました。その中で常に課題だったのが、製品写真の撮影や商品紹介ページの作成です。
外注すると多額のコストがかかることに悩み、趣味で学んでいたコーディングを活かして技術的に解決しようと決意しました。
大学では経営学を専攻しましたが、コーディングが好きで独学を続けていました。
ただ、趣味というだけでは説得力に欠けると考え、KAIST(韓国科学技術院)にも通い、本格的に学びました。
現在のサービス「GENCY」は当初、私一人で開発し、その後投資を受けることもできました。現在の開発は、開発チームが担当していますが、技術の方向性を決める際には私も参加し、より良いサービスを目指しています。
提供するサービスについて紹介をお願いします。
弊社が提供するサービスは「GENCY」と「GENCY PB」の二種類に分かれています。
「GENCY」は、生成AIベースの商品紹介(詳細)ページ自動生成サービスです。
私たちがオンラインで製品を販売する時、製品をより魅力的に見せ、購買に繋げるため、商品の紹介ページを作成しますよね。
通常、このようなページを作成するためには撮影した何百枚もの写真の中から写真を選定し、製品の素材や特徴に関する説明を加え、ページ自体のデザインまでしなくてはいけません。また、業者に頼もうとすれば、1ページごとに何万円と費用も発生します。
ですが、私たちの技術を利用することで、そういった作業は必要なくなります。候補の写真を入力するだけで、AIが15秒ほどで商品紹介ページを自動生成するのです。

AI基盤の商品紹介ページ自動作成
もちろん単にページのデザインをするだけでなく、何千枚とある画像の中からより良い画像を選定、そして商品に関する魅力や、こだわりのあるポイントに関する説明もまるで人が作ったように全てAIが作成してくれます。
費用面はもちろん、作成時間や作成コストの問題も解決でき、より安価でクオリティの高い詳細ページの作成を実現できるのが私たちのサービスの魅力だと思います。
もう一つのサービスである「GENCY PB」は、動きながらカメラマンのように撮影をしてくれるロボットソリューションで、PBはPhoto Botの頭文字から来ています。
GENCY PBは、ロボットが自動で製品を撮影してくれます。

知能型ロボティクス基盤の自動撮影ロボット
会社ごとに撮影するスタイルや決まりがあったり、製品ごとに重点的に撮ってほしいポイントがあると思います。そういった部分に関しても、撮影前に伝えることでロボットが指示に従って撮影を行ってくれます。
逆に、まだガイドラインがない場合には、このブランドみたいなスタイルで撮ってくれと指示を出して撮影したり、GENCY PBがその製品を判別して、特殊なポイントや特徴のある部分を認識して、自ら近づいて、撮影してくれます。
このように弊社の技術を利用することで、写真撮影から商品紹介ページの作成までのすべてを解決できます。
貴社が提供するAI技術やロボットには、どんな特徴がありますか?
私たちのサービスは、ファッション分野に特化したサービスとなっているため、服や靴、カバンなどのファッションアイテムに関するデータを多く蓄積している点が特徴です。
そのため、商品の画像を提供するだけで袖の長さ、首元や肩回りの形、ズボンの丈や型など、具体的な商品の特徴を把握し、詳細な説明が可能になります。また、GENCYが作成する商品紹介ページは製品の単純な説明だけに留まらず、ページのデザインまで要望通りに作成してくれるので、既存の作業を90%以上簡略化できたという声もあります。
ロボットが自ら考えながら撮影するだけでなく、ファッションに特化したAI技術やロボットは、実は世界でも類をみない技術です。
これらの技術をファッション分野に活用しようと決めた理由は何ですか?
これまでファッションに関わる業務に携わっていたわけではないですが、撮影の機会の多さを考えたとき一番多いのがファッション分野でした。
今や誰もが持っているスマートフォンも、1年間に発売される新商品は多くても10種ほど。ですが、ファッションは服や靴、カバンなどジャンルも様々で、シーズンごとに100を超える商品が発売されることも少なくありません。
そう考えたとき、この技術はファッション業界で最も活躍できると考えました。
AIやロボットといった技術を利用することで、撮影の大変さ、写真の選定にかかる時間、各商品ごとのページを作成するコスト、そういった様々な苦労を少しでも軽減できたらと思い、より良いサービスのために日々研究を重ねています。
日本市場への進出を決心された理由は何ですか?
まず、日本のオンラインコマースが今まさに成長中であることが一番の理由です。
日本のオンラインコマース市場は今後さらに発展し、大きな変化を遂げると言われています。そんな可能性を秘めた日本市場は非常に魅力的だと思いました。
また、諸外国と日本の商品紹介ページを比較した時、文化的にも似たところの多い日本は、韓国で使われているデザインに近いところが多く、これまで弊社が培ってきたノウハウを生かすことができると思いました。
他にも、日本企業の方のお話を伺ったとき、日本のECサイトでも韓国のようにブランドごとにデザインされたページだったら良いなという話を多く耳にしました。
そういった声にお応えできるよう、私たちのサービスを日本でも提供していきたいです。
さらに、近年韓国のファッションブランドが日本に進出し、人気を集めていることにも注目しています。韓国企業が日本に進出するためには、日本語の詳細ページが必要です。
そのためには韓国語の詳細ページを翻訳する必要がありますが、そのためにはもちろんコストや時間がかかります。ですが、弊社の技術は日本語・英語・中国語など各言語での作成にも対応しているため、作業を自動化することができます。
このように日本市場に進出することで日本企業だけではなく、韓国企業に対しても弊社のサービスを活かせるポイントがあると考えました。
日本市場では具体的にどのような事業展開を計画されていますか?
今年は、パートナーと共にPoCを行い、日本市場進出へのきっかけを作りたいと思っています。
具体的にはSHOPLISTやSTORESなど、韓国、日本でECサイトを簡単に作れるようにサポートするツールやプラットフォームなどとパートナーになることを考えています。
また、楽天市場やZOZOTOWN等の、日本のファッションプラットフォーム、そして日本でファッションブランドを運営している方々にも積極的にコンタクトを取ることを考えています。本格的な日本進出に向け、私たちの技術が日本市場でどう生かせるのか検討していきたいです。
他にも、日本のプリクラのような撮影スタジオの企画もしています。
これまでのプリクラや韓国のセルフフォトスタジオ「インセンネッコ(人生4カット)」とは違い、撮影を始めるとカメラが自動で動き、自身が動かなくても360度色々な角度から撮影してくれるのが特徴です。この新しい撮影スタジオは、韓国・釜山でのポップアップ開催、大手通信会社であるSKTとの契約も行いました。
これまでとは一味違う撮影を日本の方々にもお楽しみいただけるように、現在日本でのポップアップ開催に向けて準備をしています。
今後のビジョンや目標などはありますか?
韓国では主にファッションブランドを対象にした事業を行っていましたが、今後は、楽天市場やZOZOTOWNのような海外のオンラインプラットフォーム企業にも私たちのサービスを提供することを目標としています。
また、現在はファッションに特化したサービスではありますが、ファッションだけでなく、他のカテゴリーでも弊社の技術を生かしていきたいです。
撮影の機会はやはりファッション市場が多いですが、食品や電子製品など何かしらの製品があれば、全ての業界で撮影の機会はありますし、製品について説明されたページの需要も多いと思います。
そしてそれが、単に説明するだけのページを越え、広告やインスタグラムの投稿、展示会やポップアップなど、様々なコンテンツで活用できると考えています。
そのためには、まず日本で私たちの「ファン」を作りたいと思っています。
日本では何よりも信頼が重要視されていて、一度信頼を得たら長く付き合うという特徴があります。
関係を長く続けるうえで、サービスのクオリティや信頼性ももちろん重要ですが、私たちのようなスタートアップ企業においては、顧客会社の方々の中にファンを作って応援してもらえるような環境を作るというのも重要だと伺いました。
韓国にはない感覚で、とても新鮮な視点ですが、早く私たちのファンを作ってみたいと思いました。
そこで、日本でのファンを作るためにも、来週ファッションワールド東京に参加してセミナーを行う予定です。セミナーにお越しいただければ、弊社の内容を映像等で詳しくご覧になれますし、展示会の期間中は弊社ブースにいるので、対面でのミーティングも可能です。
弊社の技術、サービスに関心を持たれた方は是非お気軽にご連絡ください。

STUDIO LAB
HP:https://www.studiolab.ai/en
カン・ソンフン代表(linkedIn):https://www.linkedin.com/in/sunghoon-kang-80732693/
ファッションワールド東京:https://www.fashion-tokyo.jp/autumn/ja-jp.html