インタビュー

社会人教育で人生に変化をもたらす|DAY1COMPANY イ・ガンミン代表

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株式会社DAY1COMPANY イ・ガンミン代表

社会人を対象とした教育コンテンツを提供するDAY1COMPANYの代表を務める。ベンチャーキャピタルでのインターン経験から2000年代後半の韓国のスタートアップの成長を見て起業に興味を持ち、3度の起業を経てDAY1COMPANYを設立。自身が起業した会社の3社目の投資元であるFast Track Asiaの代表からのオファーで、同社に入社し社内ベンチャーとして教育事業を立ち上げた。自身の創業経験からスタートアップ運営に必要な能力やスキルセットを身につけるための教育プログラムを提供している。



―DAY1COMPANYはどのような会社であり、どのようなサービスを提供しているのか教えてください。

 DAY1COMPANYは教育分野の会社で、社会人を対象にした教育サービスを提供しております。

私たちのモットーは「Life changing Education(ライフチェンジング・エデュケーション)」です。具体的には、教育によって自分のできることを増やし、能力を向上させ、それによって年収も増やし、人生に変化が起きることを目指す会社です。そのため社会人を対象として様々な分野の専門的な能力をさらに伸ばせるような教育を提供し続けています。



―御社の特徴でもあるCIC制度について教えてください。

CICとは、Company in Company(カンパニー・イン・カンパニー)の略で、社内カンパニー制度のことです。DAY1COMPANYには4つのCICがありますが、この制度の導入した背景は、教育業がドメイン中心のビジネスモデルであるという特徴に起因しています。

例えばデリバリー会社のビジネスモデルは、「消費者から注文を受けて、飲食店に注文を伝える」という機能が核心で、配達するものがジャージャー麺であろうとピザであろうとチキンであろうと大きく関係ありませんが、教育業ではチキンなのかピザなのかが重要なのです。

DAY1COMPANYでは、「データサイエンス」に関する教育コンテンツを多く提供していますが、顧客は私たちが提供するコンテンツを見て、私たちのサービスを利用するのです。そして、オン/オフラインどちらの方式にするのか、就職のための教育を受けるのかを決定するのです。

つまり、「データサイエンス」という分野を中心に、就職のための教育、オフライン授業、オンライン授業、あるいは出版など、様々なビジネスモデルが展開されています。そうすると問題が発生するのです。

例えば、データサイエンスを中心に「就職教育の事業本部」とミーティングをすると、就職教育の分野ではマーケティングよりも、多くの卒業生を良い会社に送り出すことの方がずっと重要なのです。大学受験の予備校において、サービスやコンテンツの中身よりも、有名大学に100人送り出すことの方がずっと重要ですよね。 同じように、NAVER(ネイバー)やKakao(カカオ)、Googleに何人送ったかがより重要になるということです。

ですが、同じデータサイエンスを扱っていても「オンライン事業本部」に行くと、逆の話をしなければならないのです。ここでは、受講者が動画を視聴して何をしたかはあまり重要ではなく、ユーザーが聞きたいコンテンツを作ったかがより重要になるのです。例えば、書店では顧客が買いたいと思う本を売ることが重要で、本を最後まで読ませる方法については書店が気にしていないということと似ています。

このようにビジネスモデルが違えば、それぞれ異なる原則で運営する必要があり、組織の構成員も違って当然です。

そこで、代表が1人であることはとても大変だったのです。あちこちで別の話をする必要があり、1日に400件ほどの意思決定を行うことは容易ではなく、多くのリーダーが必要なビジネスだと思いました。

DAY1COMPANYでは、会社を4分割にして、それぞれのCICに代表を置き、それぞれが責任を持って決定をするという仕組みを導入したのです。法人は1つですが、CICによって社内の文化も人も異なり、採用もCIC別に行っています。財務諸表やバランスシートも別々に作成しています。今年の費用をどこに使って、売上と収益をどれだけ生み出すかもそれぞれの代表自ら考えて決定します。もちろん私も一緒に話をします。

会社として、CIC間の交流の場をあえて作ることはしていませんが、社内サークルなどで会話をすることはあります。また、それぞれCICの特徴を生かして、提携をし事業を進めることもあります。


ーでは、4つのCICについて教えてください。

まずDAY1COMPANYは4つのCICで構成されており、ホワイトカラーを対象とした職務教育サービスを提供する「FastCampus(ファストキャンパス)」。次に自営業者や、フリーランスを対象としたサービスを提供しているのが「Coloso(コロソ)」です。Colosoでは、パン作りなどの分野をはじめ、3Dレンダリングイラストなどのデザイン分野も扱っています。



それから、コーディングブートキャンプともいえる就職教育を提供する「SnowBall(スノーボール)」。外国語学習サイトや、外国語教育コンテンツを販売している「Lemonade(レモネード)」という会社の4つです。

これらの会社の代表は、皆さんインターンとして入社し、社内で成長し、自分のビジネスを始めています。現在、4つのCICを合わせると、年間の売上高は1千億ウォン程です。そのうち現在日本にも進出しているColosoが300億ウォン程を占めています。




―日本進出をしたColosoについて詳しく教えてください。

Colosoでは「その道のトップから学ぶ」というモットーを持っています。アメリカにある「MasterClass(マスタークラス)」などが似たようなモデルになります。少し異なるのは、MasterClassはその分野のトップが語るある種の「気づき」や、ソフトスキル的なことを話しているのに対して、Colosoではその分野のトップが語る「実務」について扱っています。

具体的には、実際に高度な3D映像の制作について、Colosoのコンテンツでは、スクラッチから作る過程を全部見せるのです。どのような作業をどのような過程で行うのかを全てお見せするのです。その過程で「この作業にはこういうやり方もあるんだ」というディテールをキャッチしながら学べるように、コンテンツを作成しています。

私たちのサービスの重要な部分は、その分野のトップ講師が自分の仕事のやり方を”そのまま”教えてくれることです。

ひと昔前、例えば一流の広告を作れるようになるためには、一流の広告会社で働き、先輩の仕事ぶりを傍で見て学ぶことが必須だったように思います。ですが、対面で学ぶことに限らず、オンラインでその業界における最高の働き方や仕事の過程をありのままに見ることができるなら、それを選ばない理由はないのではないでしょうか。

実はこのことが私たちの考えの始まりだったので、今でも私たちのコンテンツのほとんどは作業をしている人の目線カメラ映像で作成されています。

もちろん、プロが作業している様子を見たからといって、同じことができるようになれるわけではありません。それでも、見ている過程での発見や気づきは、人によって全く異なり、無限大だと思います。そしてその発見や気づきこそが私たちの提供する価値だと思っています。

そのため、各分野の最高の人材を集めることにかなり力を入れています。私たちの講師の中には、キャラクターデザイン分野では、マーベルのキャラクターデザイナーや、スタジオジブリのストーリー作家もいらっしゃいます。本当にS級のプロのコンテンツをソーシングし続けてきました。


Coloso(コロソ)が提供している上半期人気ベスト講座。上段から映像デザイン、クッキング、プログラミング


―Colosoが日本に進出することになった経緯はなんでしょうか?

コンテンツの中でも力を入れている分野が2Dや3Dイラスト、あるいは3Dレンダリングなどの分野なので、(アニメ産業が発達している)日本市場は外せないと考えたのです。

韓国にいるS級の講師はほとんど網羅していると思っていますが、海外にはまだ、S級の講師が多くいると思い、海外に目を向けた時にアメリカやヨーロッパ、様々な国を検討しましたが、日本を優先することを考えたのです。

また、日本の消費者の特徴もあったと思います。コンテンツの著作権に対する概念が確立されており、教育コンテンツの価値について十分に認識しているユーザーが他の国に比べて多いことや、書籍市場の規模が非常に大きいことも、学習への関心がかなり高い市場であることを示していると思います。

そして、韓国やアメリカと比較して、日本の教育市場の構造を見ると、オフライン教育業者の割合がはるかに大きいですし「教えてくれる人」への依存度がかなり高いので、講師を中心にビジネスをしているColosoは進出しやすいと思いました。今は日本市場に多くいるS級の講師を集めたいと思っています。

2022年末には日本法人を設立し、つい最近日本のオフィスの契約したところです。 実際、サービスの販売やソーシングは韓国からでもできるのです。しかし、日本に行って、日本の方と一緒に仕事をしなければならないと思いました。日本市場や日本の顧客について理解し、かつ日本市場にいる講師の心を理解できるのは、同じ文化的な背景を持ち、同じように成長してきた人たちしかいないという考えを持ったからです。私では永遠に理解できないかもしれないと思ったのです。


―韓国と日本で市場は違いはあるのでしょうか。 

まず現状からお話すると、日本はサービス購入後の返金率が韓国に比べて約4分の1なのです。とても不思議なのですが、日本のユーザーは返金をしません。また、韓国の場合はサービスローンチ直後にものすごい販売量があり、ピークを迎えてからは落ちていく傾向があるのですが、日本では販売量が安定している傾向があります。

実はまだ日本について分からない部分が多くあるのですが、その中で私たちが推測しているのは、日本は比較的コンテンツを所蔵することの価値を高く見ているようで、コンテンツの消費スピードも比較的ゆっくりと着実な印象があります。


―これまでで一番印象に残っているお客様の声があれば教えてください。 

お客様の声とは少しちがうのですが、ある「事件」がありました。私たちがColosoのコンテンツで海外進出するべきだと思ったきっかけは、一つの情報提供があったからです。

Colosoのコンテンツが中国の海賊版サイトで、違法に売られていたのです。そのサイトにある他のコンテンツは1つのコンテンツが1~2万ウォン(約1,000円∼2,000円)程だったのですが、私たちのコンテンツは10万ウォン(約1万円)で出されていて、一番売れていたのです。

翻訳機で中国語に変換し、字幕が編集されて売っていた違法コンテンツにもかかわらず売れるのなら「どこに行っても売れるのではないか」と思いました。

それが一番印象に残っている出来事です。お客様の声とは少し異なりますが「お客様の心を知る」という意味で、私にとっては最高のレビューではないかと思っています。


―最後に今後のビジョンについて教えてください。 

実は教育業には様々な先入観が存在しています。例えば、教育業は実際の価値を生み出すというよりは、価値を生み出す人たちをバックアップするためのバックオフィスのような存在だと考えるケースも結構ありますし、教育業は国内ビジネスだと思われている場合も非常に多いです。

もちろんその文脈はとてもよく理解しています。なぜなら、学校教育は常に同じコンテンツであり、この分野ではその国の教育方法に左右されるしかないのです。こういった学校教育の分野は当然、内需産業と考えるのが正しいと思います。しかし、社会人向けの教育はそうではないと思っています。

この事業をやりながら、壊したい固定観念でもあります。教育業もグローバルにビジネスできることを見せたいですし、その第一歩がColosoだと思っています。

また、「社内教育の近代化」は重要なミッションであり、成長エンジンだと捉えています。そして長期的に見ると、メガトレンドがあると思います。 会社内の研修は「面倒なもの」として捉えられている場合が多いですよね。研修に参加しても寝ているだけの場合や、今やるべき仕事が目の前にあるのになぜ無駄なことで呼ばれるのかと思っている社員は多いのです。そういった企業の社内教育について、私たちがトップ企業の働き方を見せるコンテンツを使用したときに、目を輝かせて熱心に受講していたのを見て、社内教育もドラマチックに変化させることができると実感しました。

また、日本でも韓国でもITバブル前の2000年代初頭を起点に、会社が社員の将来に責任を持てない方向に世の中が変わり続けていると思っています。

昔は存在していた「一生職場(日本では終身雇用)」がなくなったということですね。そうなると、キャリアを自分で作っていかなければならないのですが、これについて教えてくれる人がいません。自分のキャリアをどのようにデザインすれば自分の市場価値が上がり、より多くのお金を稼ぐことができ、より良い生活を送ることができるかどうかについて教えてくれる先輩もおらず、場所もありません。ただ一人で体当たりで理解しなければならないのが今の現実です。

「本当にそうすべきなのか」というのが私たちの考えです。キャリアも教育で解決できる部分は確かにあるのです。 一度しかない人生を無駄にするようなことはしてほしくないのです。そして、自分のキャリア設計に対して、お金を払うことを惜しいと思わないだろうという考えを私たちは持っています。

「教育業の固定概念を払拭」「社内教育の近代化」「教育によるキャリア形成」、この3つの側面が今後DAY1COMPANYが見据えていくべきビジョンだと考えています。


DAY1COMPANY(デイ・ワン・カンパニー)-イ・ガンミン代表

◆各サービスホームページ

会社HP:https://day1company.co.kr/

Coloso日本ホームページ:coloso.jp

Coloso韓国ホームページ:Coloso.co.kr  

Coloso米国ホームページ:coloso.us

fastcampusホームページ:fastcampus.co.kr

zero-baseホームページ:zero-base.co.kr

mylightホームページ:mylight.co.kr

newspressoホームページ:newspresso.kr


採用情報https://day1company.ninehire.site/

お問い合わせejjang@day1company.co.kr

/media/KORIT編集部
記事を書いた人
KORIT編集部

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