人類の文明の歴史は、情報と人間が結ぶ関係の進化過程そのものだった。情報技術は、巨大な波のように周期的に文明を覆い、我々の生活を根こそぎ変えてきた。我々は既に5つの巨大な情報革命を経ており、もはや拒否できない第6波、まさに「エージェンティック人工知能(Agentic AI)」という新たな壁の前に立っている。過去と現在の文脈を正確に読み取ることは、来る未来の主導権を先取りする最も確実な道だ。

それぞれの波はその時代の世界を規定した。最初の波である「口伝」が少数の独占的知識だったならば、2番目の「文字」は情報の保存を、3番目の「印刷術」は情報の複製を通じて知識に誰でもアプローチできる公共財に拡大した。

4番目の波である「インターネット」は時空間の制約を崩し、「情報の拡散」と「探索効率」を最大化し、この流れが今のビッグテックを誕生させた。続いて登場した5番目の波「生成型AI」は、情報の洪水の中で単純なリストではなく、精製された「正解」を提示し、探索の文法を新たに記した。今、我々はこの変化の頂点で、単純な問答を越えて自ら課題を遂行する「行動するAI」を渇望している。

ところが、行動を代わりに任せるには必然的に「信頼」が伴わなければならない。この点でAIイノベーションの難題に直面することになる。

◇モデルは「基盤」だけ、革新は「サービス」で完成する

巨大言語モデル(LLM)はChatGPT(チャットジーピーティー)とGemini(ジェミニ)などを通じて飛躍的な発展を証明したが、依然として「行動」の段階に進むには致命的な限界を抱えている。まさに偽りを真実のように包んで出す「ハルシネーション(Hallucination)」問題だ。確率に基づいて次の単語を予測するLLMの元々の特性上、事実関係の正確性を100%担保しにくい点は、AIが実質的な業務や主要な意思決定の領域に入る上で最も大きな障壁となっている。

この限界は我々に技術を見る新しい視点を要求する。基盤モデル(Foundation Model)の高度化が全ての問題を解決してくれるという幻想から抜け出すべきだということだ。電気が発明されたとしても、世界が自然に明るくなることはなかった。電気を活用して電球を作り、家電製品を考案して人間の生活に適用した発明家たちがいて初めて、イノベーションは完成できた。

AI時代も変わらない。巨大モデルは素晴らしい「インフラ」であり、「電気」だが、それ自体は不完全だ。ユーザーは「モデル」そのものを消費するのではなく、モデルが解決してくれる「問題」に集中する。生成型AIが注ぐ情報の中で、ユーザーが経験する最大の苦痛は「信頼の欠如」だ。 「この情報が本当に事実ですか?」という疑いが解消されない限り、AIは重要なビジネスの意思決定やコア業務のツールとして使用することはできない。結局、6番目の波であるイノベーションの段階で主導権を握るのはインフラの上に立つ「サービス」であり、このサービスが提供しすべき中核的価値は断然「正確性」だ。

◇データの質が信頼を作る:「Liner」が見せた可能性

信頼の空白は逆説的に技術スタートアップに新しい機会の章を開いてくれる。結局、信頼を作る源泉はデータであるため、独自の高品質データを確保したスタートアップの存在価値はさらに鮮明になる。これらは、単にビッグテックの汎用モデルを活用することにとどまらず、市場に最も乏した「正確性」を技術的に補完し、新しい基準を提示する。

AI検索スタートアップ「Liner(ライナー)」の事例は、データ量よりも質がAIの信頼の核心であることを明確に示している。Linerは過去10年間、ウェブ上の無分別な情報の代わりに、世界1200万人のユーザーが直接「価値ある」と選別したハイライティングデータを資産として検索エンジンを開発した。

Liner、SimpleQAベンチマークの結果

「データの純度」に集中した戦略は的中した。 「Liner Pro Reasoning(ライナープロリゾニング)・推論モデル」は、AIの回答の信頼度を評価するOpenAI(オープンエイアイ)のベンチマーク「SimpleQA(シンプルキューエイ)」でビッグテック企業のAIモデルを抜いて世界1位を記録した。これは、AIの性能と精度がモデルの物理的サイズ(Parameter)よりも学習したデータの「質」と「選別」に大きく左右されることを示した象徴的な結果だ。ビックテックでさえ解決できなかった「信頼」の隙間、その解決策をスタートアップが自分たちだけの固有データ資産で証明したのだ。

LinerはAIの慢性的な限界であるハルシネーションを解決し、信頼できる情報探索体験を具現化し、AI技術を初めて皆の生活に定着させる「ラストマイル(Last Mile)」のイノベーションを主導していくだろう。大韓民国にとどまらず、世界中のユーザーに技術力が認められるグローバルスタートアップとして、K-AIが進むべき未来を先立って提示しようと思う。

◇知識の提供を越えて実行へ:行動するAIの大前提

我々は今、情報革新の第6波、「エージェンティックAI」の時代を迎えている。これまでのAIが質問に対する「知識」を与えることにとどまっていたならば、今後のエージェント時代は我々に代わって複雑な課題を「実行」し、「意思決定」する主体に進化する。航空券を検索することにとどまらず、顧客の日程と選好度を考慮して最適なチケットを前売りし、必要な文書を作成して発送まで終える形だ。

この新しい時代の原理は明らかだ。AIエージェントがユーザーに代わって何かを行うには、その判断の根拠となる情報が何よりも信頼できる必要がある。不確実な情報に基づく実行は、元に戻すのが難しいリスクを招くからだ。だから、AIの信頼度を技術に引き上げるスタートアップの役割は、エージェンティックAI時代を開く核心動力になる。

このような背景の中で、今後の数年は過去100年よりも速く、強い変化を生み出すだろう。そしてその変化の中心には信頼ベースのエージェントサービスがある。これらは、膨大な情報の海でユーザーが道を失わないように導く、新しい時代の「羅針盤」になるだろう。

◇「みんなのAI」のための提案:技術力あるAXスタートアップが未来だ

この巨大な変化の波を機会にするために、政府も「みんなのAI」を価値とし、国家的な力を結集している。とても頼もしいことだ。しかし、真の意味で「みんなのAI」を実現するためには、巨大モデルとインフラ構築に注目した視線を「AIサービス」と「活用(AX:AI Experience)」の領域に果敢に拡大しなければならない。国民が肌で体感するイノベーションは、データセンターやファンデーションモデルそのものではなく、自分のスマートフォンやPCの画面の中で、自分の人生を実質的に助ける「応用サービス(Application)」にあるからだ。

LinerのAI検索モバイルアプリの画面

真のAI強国は源泉技術を有した国であり、その技術をもとに全世界が使用するサービスを生み出す国だ。そのためには、国民生活の変化を導く「AIサービスの育成」に重きを置く必要がある。もちろん、これは単純な支援拡大を意味するわけではない。独自の技術で難題を解く準備ができたスタートアップを厳選する「玉石選別」が不可欠だ。準備された所に資源を集中してこそ、グローバルAI競争で勝機をつかむことができる。

<筆者>2015年にLinerを創業して代表を務めており、グローバル市場で「リサーチAIエージェント」分野をリードしている。米経済誌フォーブスの「2025年に注目すべき最高のAI創業者」に選定され、2025年大韓民国産業褒章を受章した。最近、Linerはサンフランシスコ・ビジネスタイムズが選んだ「急成長企業」6位に入り、シリコンバレーでも革新的なポジションを固めている。

<画像=Linerのキム・ジヌ代表>

原文:https://www.etnews.com/20251215000086