世界のCEOの69%が、「AIがすでに自社の中核ビジネスを変化させている」と回答した。しかし、それを実際の成果につなげられている企業は、ごく少数にとどまっている。
IBMの企業価値研究所(IBV)が、33カ国・21業種のCEO 2,000人を対象に実施した「2026 CEOスタディ」によると、AI導入への高い関心と、実行成果の間には依然として大きなギャップが存在することが明らかになった。報告書では、AI変革に成功した企業は、そうでない企業と比べて直近3年間の売上成長率が17%高かったとしている。
いわゆる「AIファースト企業」の特徴は、単なるAI投資ではなく、組織運営のあり方そのものを再設計している点にあった。部門横断的な協業体制を見直し、AIを個別プロジェクトとして導入するのではなく、業務全体のワークフローに組み込んだ企業ほど、高い成果を上げている。
報告書が最も強調した変化の一つは、経営幹部体制の再編だ。2025年には26%にだった最高AI責任者(CAIO)の設置率は、2026年には76%へと急増した。CEOの77%は、テクノロジー部門と人事(HR)部門のリーダーシップ役割が融合しつつあると回答し、85%は「すべての機能リーダーが技術的専門性を備えるべきだ」と答えた。肩書きよりも先に、役割の境界が崩れ始めていることを示している。
AIが担う意思決定の割合も急速に拡大している。現在、業務上の意思決定の25%をAIが担っており、CEOらは2030年までにその割合が48%へ上昇すると予測した。また、AIの出力結果に基づく重要な戦略的意思決定に抵抗がないと答えたCEOは64%に達した。
AIモデル戦略も転換点を迎えている。現在は、事前学習済みのファウンデーションモデルを主に使用しているという回答は39%だが、2030年には13%まで低下する見通しだ。一方で、カスタムモデル・ファウンデーションモデル・小型特化型モデルを組み合わせる「ハイブリッド戦略」の採用意向は、同期間中に13%から50%へと上昇すると予測された。
これは、汎用モデルを借り受けて使う段階から、自社データと知的財産(IP)を基盤に差別化されたAIを独自構築する段階へ移行していることを意味する。この戦略を進めるCEOたちは、2030年の売上の13%が、今はまだ存在しない新製品や新サービスから生み出されることを期待している。
また、組織再設計の深さも成果を左右する要因として挙げられた。テクノロジー、財務、人事、オペレーション、部門間協業の5領域すべてを再設計した企業は、事業目標の達成率が4倍高かった。しかし、実際にAIを日常実務で継続的に活用している人材は全体の25%にとどまっており、報告書はこのギャップを「技術ではなく組織設計の問題」だと指摘している。
報告書はさらに、AI以後の技術競争を見据え、量子コンピューティングへの備えの必要についても言及した。現在、量子関連チームを組成しているCEOは46%にとどまるが、AIファースト企業の82%はすでに1つ以上の量子エコシステムパートナーと協業している。AI競争で先行した企業が、次の技術転換においても先手を取る構図を形成しつつある。
<画像=2026 CEOスタディ/IBM企業価値研究所(IBV)>
