フィラ・グラン・ビアの4日間が終わった。世界最大のモバイル展示会「MWC 2026」は「The IQ Era」を掲げたが、展示場をに突きつけられた真の問いは一つだった。AIが通信インフラの付属品である時代が終わり、ネットワーク自体がAIに再設計されると何が変わるのか。

4日間の発表を経て出た答えは、3層のアーキテクチャにまとめられる。1層はAIネイティブに再設計されるネットワークインフラだ。2層はそのインフラの上で自律的に業務を遂行するエージェンティックAIだ。3層はこれら全てを安全に運営するガバナンスだ。この3つの層は別々のトレンドではなく、互いを前提とする1つの構造だ。AIネイティブネットワークがなければ、エージェントは遅延とコストの壁にぶつかり、ガバナンスなしではエージェントの自律性が規制リスクに変わる。MWC 2026は、この構造が最も鮮明になった場所だった。

1層:インフラの文法が変わっている

今年のMWCで最も多くの後続議論を生み出した発表はNVIDIA(エヌビディア)のものだった。BTグループ、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)、ERICSSON(エリクソン)、Nokia(ノキア)、SKテレコム、ソフトバンク、T-モバイル、Cisco(シスコ)など、10社余りのグローバル通信会社・装置会社が6Gを開放型AIネイティブプラットフォーム上に構築するという共同誓約を発表した。6Gの議論が毎年MWCで繰り返されてきたことは事実だが、今年は格が違った。ビジョンではなく、フィールドテストの結果、商用ハードウェア、多国間コンソーシアムが同時に議論された。

興味深いのは、同じ目的地に向かいながらも、経路が分かれている点だ。NokiaはNVIDIAのGPU加速にベッティングした。ERICSSONは独自のシリコンにニューラルネットワーク加速器を内蔵したAIレディーラジオ10種を公開し、GPUなしでもAI-RANが可能という路線を選択した。発表日のNokiaの株価は5.4%上昇し、ERICSSONはTCO(総所有コスト)と電力効率を根拠に反撃した。6G時代のネットワークインフラを誰が、どのアーキテクチャで掌握するのかをめぐるこの競争は、今回のMWCで最も実質的な産業構図の変化だった。

Qualcomm(クァルコム)も見過ごせなかった。業界初の3GPPリリース19対応モデムX105(ダウンロード14.8Gbps)を公開し、2029年の6G商用化のためのロードマップを提示。初のWi-Fi 8のチップFastConnect 8800も発表した。ERICSSONとMediaTek(メディアテック)は6Gセンチメーター波のデータ呼び出しのデモンストレーションまで行った。ソフトバンクは、初期の6Gサービスに400MHz帯域が必要だとする具体的な数値を提示した。6Gがパワーポイントからプロトタイプに移っている。

1層の変化は空にも拡大した。スターリンクとDeutsche Telekomがヨーロッパ10カ国を対象とした衛星モバイルサービスを2028年までに発売すると発表した。Vodafone(ボーダフォン)はアマゾンLEO衛星とタッグを組み、ヨーロッパ・アフリカのカバーレッジを拡大する。GSMAとヨーロッパ宇宙局は衛星-地上融合プロジェクトに1億ユーロ(約183億1600万円)規模のファンディングを公開した。サムスンはギャラクシー衛星通信を北米・ヨーロッパ・日本の主要通信会社と協力してAシリーズまで広げている。これまでのMWCで別途のセクションにとどまっていた衛星が、今年はネットワークインフラの本流に加わった。地上と宇宙を合わせたコネクティビティが1層の新しいデフォルト値となっている。

2層:エージェンティックAI、モデムからCRMまで

1層が敷かれると2層が作動する。AIがネットワーク上で自律的に業務を遂行するエージェンティックAIが今年のMWCの最もホットなキーワードだった。

Qualcommは5GモデムにエージェンティックAIを内蔵し、GSMAは通信会社級のAIサービスのための「Open Telco AI」イニシアチブを発足させた。Salesforce(セールスフォース)は、通信会社専用のAIエージェントプラットフォーム「Agentforce for Communications」を出し、請求紛争の解決から現場の営業まで、5つの特化エージェントを提供した。CRM・OSS・BSSからリアルタイムコンテキストを引き出し、単純なチャットボットではなく、実際のアクションを行う仕組みだ。

エージェントがネットワークインフラから企業のビジネス運用にまで浸透し始めると、そのエージェントが作動するデバイスのインターフェースも変わらなければならない。今年のデバイスセクションでは、この方向を示唆する実験が登場した。HONOR(アーナー)のロボットフォンは4DoF Gimbal(ジンバル)カメラが被写体を自動追跡し、LENOVO(レノボ)のAI Workmateのコンセプトはプロジェクターヘッドで周囲の表面に文書を投射して業務を補助することだ。サムスンは、ギャラクシーS26で、エージェンティックAIがユーザーの意図を理解し、先制的に行動する方向を示した。これらが示しているのは単なる奇抜なハードウェアではなく、エージェントの時代にデバイスが取るべき形態の初期の答えだ。

もちろん2層はまだ初期だ。CCS Insightは、エージェントシステムのパフォーマンスが統合の深さとガバナンスに依存していることを警告し、実際の通信会社の現場での検証はいま始まったばかりだ。

3層:規制がつくる新たな市場

2層のエージェントが自律的に動作するほど、3階のガバナンスは不可欠となる。AIの出力物に対して「誰が、いつ、なぜ、どのような根拠で承認したのか」に答えるシステムが必要だからだ。

今年1月に施行された韓国のAI基本法は、高影響AIにリスク管理システムと監査証跡の保管を義務化した。EU AI Actは今年8月に高リスクAIシステム規制が本格的に施行し、違反時には最大3,500万ユーロ(約64億1000万円)または海外の売上7%の課徴金が課される。ヨーロッパの中小のテック企業の60%以上がまだコンプライアンスに備えていないという調査結果は、この領域がコストではなく市場になっていることを示している。グローバルAIガードレールプラットフォーム市場は2025年の25億ドル(約3964億6500万円)から2030年の73億ドル(約1兆1576億7700万円)に、年間平均24%の成長が見込まれる。

4YFNで韓国のAI安全企業YATAV(ヤタブ)が開幕初日に20余りのグローバル企業と商談を進めて注目されたことや、Salesforce(セールスフォース)が通信会社エージェントに「信頼レイヤー」を強調したことも、全て同じ脈絡だ。AIを作っているだけに、AIを安全に使う方法を売ることがビジネスになる時代が開かれている。

韓国:インフラ競争のプレイヤーなのか、応用層の供給者なのか

韓国はMWCに182社が参加し、世界第4位の規模を維持した。しかし、今年のMWCで韓国の座標を読み取る上でより重要なのは参加者数ではなく、3層構造の中での位置だ。

1層でSKテレコムのチョン・ジェホンCEOは、ネットワークコアから顧客サービスまで、全面的なAIネイティブ転換を宣言し、独自のソバリンAIモデルを1兆パラメータ以上に拡大すると明らかにした。NVIDIA主導の6G AIネイティブ誓約にも名を連ねた。インフラ層で韓国の通信会社がグローバルアーキテクチャの議論の当事者として参加しているという意味だ。

2層と3層では4YFNのスタートアップ90社がエージェンティックAI、デジタルヘルスケア、AIセーフティという3軸を陣取った。42Maru(フォーティートゥーマル)はLG U+(エルジーユープラス)と共にエージェンティックAIソリューションを、Stress Solution(ストレスソリューション)はSKT展示館でウェアラブルベースのデジタルヘルスケアを、YATAVはソウル共同館でAIセーフティインフラを披露した。

注目すべきは、これら2つのレイヤー間の連結だ。42MaruがLG U+とAI心理ケアサービスを共同開発する事例は、通信会社の加入者ベースとネットワーク上に特化AIエージェントを乗せる垂直統合の初期実験だ。SKテレコムも1階のAIネイティブインフラを構築しながら、同時に2層のスタートアップ15社を4YFNで支援している。まだ、ESG相生プログラムの性格が強いが、この関係が実際の事業パートナーシップに進化すれば、韓国のスタートアップがグローバルビッグテックと差別化できる経路をつくることができる。

ただ、この可能性が現実になるには、通信会社-スタートアップの関係が展示の後援にとどまらず、事業パートナーシップに進化しなければならない。4YFNのブースに並んで立つことと、MWCで出会ったグローバルパートナーと実際のパイロットを行った後、その結果を翌年のリファレンスに持って出てくるのは違う次元の話だ。

設計図以降

MWC 2026は、AIネイティブインフラ、エージェンティックAI、AIガバナンスという3層が1つのアーキテクチャに収斂(しゅうれん)し始めた場所だった。これまでのMWCが見せてくれた「各ブースの技術を集めた風景」とは異なり、今年は層と層の間の依存関係が最も鮮明に可視化された。

ネットワークがAIに出会った時、変わるのは速度ではなく仕組みだ。そして、この構造は一層だけでは完成しない。AIネイティブインフラを敷くことができる通信エコシステム、その上で作動するエージェントを作ることができるソフトウェア力、これを規律するガバナンスまで、3層全てが備わったエコシステムが世界に何個つくられるか。この問いが今後のAIインフラ競争を左右する真の基準になるだろう。

原文:https://platum.kr/archives/283103