「転倒が起きたら知らせたり、2・3日経っても生体情報が検知されなければアラームを送ったり。市場にあるソリューションのほとんどがそうです。しかし、事件はその時すでに起きているわけです。事態が起きる前に見つけ出そうというのが我々の考えです」
ソウル・宣陵のD.CAMPで会ったJCF Technologyのキム・ジンミョン代表は、自社の非接触型見守りソリューション「McKare」についてこう説明した。JCF Technologyは現在、日本・東京への進出準備を進めている。壁や天井に設置したレーダーや熱感知センサーで心拍や呼吸の変化を検知し、緊急事態の前兆となる異常を捉えて知らせることを目指す技術だ。
2016年に設立された同社は、インタビューに先立って寄せた書面回答で、現在2万台を超えるセンサーを運用していると明らかにした。センサーは、ソウル市内の8つの自治区をはじめとする自治体の見守り事業に供給されており、同社は8カ国の12のパートナーと協力している。2024年に韓国内で商用化し、今年3月にはドイツのAWSリージョンにサービスを展開することで、欧州での商用運用基盤を整えた。
通信・電波技術を20年間研究してきたエンジニアが、人のために技術を生かそうと考えるきっかけになったのは、父親の存在だった。
「いつまでエンジニアでいられるだろうかと考えながら市場の動向を見ていた時期でした。欧州や日本では高齢化の危機が社会課題となっていて、自分の技術を人のための技術として使えないかと考えていた矢先、父が突然、脳卒中で倒れたのです」
ソウルから1時間ほど離れた平沢(ピョンテク)にいた父親は救急車で運ばれたが、その日は点滴を受けただけで退院した。明け方に駆けつけたキム代表に父は「大丈夫だ」と話したが、朝食の席に着いたところで再び倒れた。脳梗塞だった。
「二つのことを感じました。一つは、首都圏の近くに住んでいても、十分なケアを受けられていないということです。もう一つは、父に『普段と何か違うことはなかった?』と聞いたところ、3、4か月前から症状が出ていたというのです。なぜ言わなかったのかと尋ねると、父は『そのうち治まるものだと思っていた。こんなことになるとは思ってもいなかった』と話しました。だとすれば、倒れる人には、その前に何らかの兆候があって、それを見つける方法が必要だと考えました」
その解決策は、当時研究していたレーダー技術にあった。キム代表は、同僚をドアの向こう側に立たせ、レーダーを照射していた日のことを覚えていた。
「ドアの向こうの同僚には『動くな!』と言ったのに、どうしても動いているように見えるんです。でも同僚は動いていないと言う。よく見てみたら、その動きは呼吸によるものだったんです。ドアを透過して呼吸を検知できるなら、さらに精密化することで心拍まで検知できるはずだと考えました」
技術の核心は心拍・呼吸の数値そのものではなく、その「関係」にあるというのがキム代表の説明だ。同社が4年あまりの運用期間に「緊急事例」として分類し蓄積したデータは約2,200件に上る。これを分析してみると、正常な人と緊急事態に至った人の心拍・呼吸の数値には差がなかったという。
「そこで、一定時間内に得られた心拍、呼吸、体の動きのデータをすべて組み合わせて分析してみました。すると、特徴が見えてきたんです。単に数値を見るのではなく、それぞれが連動するパターンが崩れ、通常とは異なる変化が現れる。そこに、異常の兆候を見つける手がかりがあったのです。こうした変化は、誰にでも1日に1、2回ほど現れることがあります。しかし、ある日10回、12回と頻度が増えると、その数日後に倒れるケースが多かったんです」
しかし、技術が捉えきれない場合もある。キム代表によれば、異常の兆候を事前に捉えられなかった事例も約7~8%あり、心拍・呼吸に生活パターンとウェアラブル機器の血圧・酸素飽和度データまで組み合わせて、これらの異常まで検知できるよう開発を続けている。

非接触ケアソリューション「MakCare」は、レーダーセンサーで心拍・呼吸・動作を検知し、危険な兆候を通知する。©JCF Technology
センシティブな生体データなだけに、個人情報についても厳重に取り扱っているという。キム代表によれば、心拍・呼吸データは送信するが、個人を識別する情報は会社のサーバーに送らず、転倒や動作状態といった一部の判断は機器内で処理して結果のみを出力しているという。管制も個人名ではなく機器固有番号に基づいて行われているとのことだ。
心拍・呼吸データを扱っているものの、現在のサービスは医療機器としては提供していないというのが同社の立場だ。
「病院のベッドサイドに設置されている非常ベルも、医療機器ではありませんよね。それと同じように、弊社の製品も診断を行うものではなく、あくまでも『今、この人は危険な状態になりつつあります』と知らせる役割を担うものなのです」
ただし、診断領域への拡張のために大学病院との臨床試験も進めているとのことだ。
海外市場についてはまず、オーストラリア市場への進出、そして日本とドイツがほぼ同時に続いた。オーストラリアでは1年半の検証を経た後、2年間で5,000台以上が供給されたという。キム代表は、市場ごとに製品の検証・導入過程には違いがあったと話す。
「日本では、実際の現場に適用する前に様々な条件を十分に検証する過程を経るケースが多かったです。大体6か月から1年程度かかりました。ドイツではさらに長い時間が必要でした。最初は『AIが分析する』という表現に個人情報の活用について懸念を示されるケースもありました。一方、日本は見守りサービスが長年活用されてきたこともあり、現場にいる方の理解度が高かった印象も受けました。製品の機能を理解して、実際の活用段階に移る過程ではむしろ速い反応が期待できるのではないかと思います」
現在、日本進出に向けた準備も進んでいる。同社は書面回答で、昨年10月に日本の電波法上必要なMIC-JP認証を取得し、現地企業のシンセイコーポレーションと供給契約を結んだと明らかにした。JCF Technologyは日本では現地パートナーが事業を主導し、本社は技術とAI分析を支援する構造を選んだ。製品の設置・運営、利用者の要望に継続的に対応しなければならない見守りサービスの特性を考慮した選択だというのがキム代表の説明だ。
「現地で実際に製品を見せて、顧客と接するパートナーの役割が重要だと考えました。日本のパートナー企業が主体的に事業を推進し、我々は後ろで技術とAI分析を支援する形にしようとしています。主要事業者の意思決定機能が東京に多く集まっているため、我々も東京を中心にパートナーシップを広げています」
現地企業との協力も協議中だ。キム代表は「ヘルスケア事業の拡大を望む日本の大企業と1年ほど協議を続けてきた」と明らかにした。来る10月には実証事業(PoC)と新規事業の推進についても協議している。日本での短期目標としては、6ヶ月以内に新規有償契約2件以上の確保を挙げた。
最終的にどんな会社を目指したいか質問に、彼は「SaaS企業を目指したい」と答えた。「AIとSaaSが別々に動くというより、結局はAIをきちんと学習させるための基盤の枠組みを作っていくSaaSに発展していくのではないかと考えています」
インタビューの最後に、キム代表は地方自治体の見守りサービスの現場で経験した事例を紹介した。一人暮らしの高齢者のもとで危険を知らせるアラームが鳴り続けていたにもかかわらず、誰も様子を見に来なかったため、同社が管理者と家族に直接連絡を取ったという。
「病院に搬送したところ、もう最期を待つしかないと言われました。ですが、それからの2日間で、ご家族全員が集まることができました。ご家族からは、泣きながら感謝の連絡をいただきました。こうしたことこそ、私たちの取り組みに意味があるのだと思いました。誰にも看取られず、一人で寂しく亡くなるのではなく、家族に見守られながら最期の時間を過ごせることが大切なのです」
彼が思い描く見守りの未来は、施設ではなく地域コミュニティにある。「見守り市場の未来は、地域コミュニティへと向かっていくでしょう。誰もが住み慣れた場所で年を重ねたいと思うものですから」。家族がいなかったり、家族と一緒に暮らすことが難しかったりする場合でも、最期まで周囲の人々とのつながりが保たれるよう、「途切れないネットワーク」を築きたいと語った。

JCF Technologyの入口に設置された「McKare」のブランドウォール
<画像=非接触型見守りソリューション「McKare」で日本市場攻略に乗り出したJCF Technologyのキム・ジンミョン代表が、Platumとのインタビューで非接触型見守りソリューション「McKare」の技術原理について説明した。>
