韓国政府「10億ウォン支援」vs現場「支援金より規制改革」

韓国の李在明大統領が先月30日午後、大統領府で「国家起業時代戦略会議」を主宰している。

韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が先月30日、大統領府で「国家起業時代戦略会議」を主宰し、起業中心社会への転換を宣言した。「K-スタートアップが未来をつくる」というスローガンの下で開かれたこの日の会議は、約1時間40分にわたって行われ、関係省庁の長官、スタートアップの起業家、VC・AC協会や起業ベンチャー関連の経済団体代表ら60人余りが参加した。

李大統領は冒頭、「大企業・首都圏・キャリア中心に成長の果実が集中する『K字型成長』構造が固着化している」との見方を示した。 「今日が国家起業時代、雇用より起業に国家の中心を変える大転換の出発点だ」と強調した。

「みんなの起業」プロジェクトの輪郭

中小ベンチャー企業部(省)のハン・ソンスク長官は「みんなの起業プロジェクト」の詳細な計画を発表した。核となるのは、起業政策の根本的再設計だ。ハン長官は「起業政策の方向を『事業・プロジェクト中心の支援』から、「革新的な人材を発掘する政策』に果敢に転換することにした」とし、「審査の過程で選定される課題ではなく、事業と市場を創出するリーダーを育てていく」と明らかにした。

「みんなの起業プロジェクト」は全国民参加型起業オーディションだ。テックの起業家4000人とローカル起業家1000人の計5000人を選抜し、起業活動資金200万ウォン(約21万2000円)を支援する。このうち、1000人が17の市・道別予選と5大圏域別の本選を経て、最終的に100人を「起業ルーキー」として選抜する。1000人には最大2000万ウォン(約212万2000円)の事業化資金とAIソリューションを、最終100人には最大1億ウォン(約1061万円)を支援する。優勝者には賞金5億ウォン(約5300万円)と、ベンチャー投資金5億ウォン(同)以上の計10億ウォン(約1億円)以上が与えられる。

ハン長官は「最終100人が挑戦するTV起業オーディション番組を制作・放送する計画だ」と明らかにした。500億ウォン(約53億円)規模の「起業ブームファンド」もつくる。このほか、起業家とメンター・投資家をつなぐ「起業ポータル」の構築、失敗履歴を資産と認める「失敗経歴書」制度の導入も推進する。

テック創業の場合、政府がスタートアップの「初購入者」の役割を担い、ディープテック実証・購買を推進し、CES、ビバテックなど、海外の展示会への参加を支援する。地方での起業は、グローバル商圏17カ所とローカル拠点商圏50カ所を造成して支援する。1兆ウォン(約1062億3700万円)規模の再挑戦ファンドも造成し、失敗した起業家の再起をサポートする。

李大統領は、「みんなの起業プロジェクト」が1年に1回企画されたことについて、「1年に1回では少なすぎる。四半期ごとに3~4回程度はしなければならないのではないか」と提案し、ハン長官も「四半期単位で回していくことは可能ではないかと思う」と答えた。

「補助金を与えれば起業するのか」

討論では政策の実効性についても鋭い指摘が続いた。

Korea Startup Forum(コリアスタートアップフォーラム)のハン・サンウ議長は「政策が良く、補助金を与えると言うが、産めと言われて産むのか。子どもが産みたくて産むように、起業もしたくてするべきだ」とし「これは上手くいく、チャンスがあるという象徴を立てることが重要だ。起業オーディションをNetflix(ネットフリックス)の番組『白と黒のスプーン ~料理階級戦争~』のように、面白く作って国民に見せなければならない」と強調した。

ハン議長は、より根本的な問題も指摘した。 「医師、弁護士、会計士、タクシー、バスなど、地域団体の抵抗でDXが簡単ではない分野が多い。DXがダメならAXもダメだ」とし、「スタートアップが叩かれ、打たれ、折られ、踏まれれば、誰が起業するのか。未来志向的な社会合意を引き出す政治をしてほしい」と求めた。

この発言は政府の起業支援政策だけでは解決しにくい構造的問題に直接触れたものだ。いくら「初の購入者」を自任してファンドを造成しても、既存の産業と利害関係者たちの抵抗という壁は政府の支援金で越えることができる性格の障害物ではないからだ。

創造経済革新センターのパク・テヒ協議会長は「良いアイデアが出たのに規制があることを起業家が知らないケースがかなり多い」とし、「全ての創業開始段階から規制事項かどうか判断してほしいし、規制があるならサンドボックストラックを作ってほしい」と求めた。李大統領は「一定段階で点検をしなければならない」とし、ハン長官に規制スクリーニング段階を追加するよう、その場で指示した。

sopoong Ventures(ソプーンベンチャーズ)のハン・サンヨプ代表は「起業の数が重要なのではなく、起業の質が良くなければいけない。指標を起業数から市場規模と売上に変えなければならない」と提案した。特に気候テック分野については、「気候テックスタートアップは長い呼吸と膨大な資本が必要だ。気候エネルギー投資公社のような長期的で果敢な投資を専門に担える公的機関が絶対に必要だ」と強調した。

李大統領は「ファンドは清算欲求や利益実現欲求のため、持続性に若干の問題があるようだ。投資公社がより安定しているだろう」と答えた。気候エネルギー環境部のキム・ソンファン長官も「韓電技術ホールディングスを検討している。R&Dを4000億ウォン(約425億2700万円)、特許8000個を有しており、スタートアップと連携する余地がある」と明らかにした。

初期投資アクセラレーター協会のチョン・ファソン会長は、「現在、503の起業企画者(アクセラレーター)が全国にある。『みんなの起業プロジェクト』に彼らが参加して、地方での創業とテック創業を体系的に企画し育成すれば、成功率がはるかに高くなるだろう」と提案した。

「スケールアップだけが答えか」

地方の起業エコシステムの実情についても言及があった。INTERX(インターエックス)のパク・ジョンユン代表は「我々は製造AIスタートアップだが、年俸を2倍与えても地方に来ない。結局、ソウルにオフィスを開いて、ほとんどの人材をソウルから呼び寄せて運営している」と吐露した。

Sesang(セサン)商会のイ・サンチャン代表は、地方での起業のその他の観点を提示した。9年前から、縁もゆかりもなかった忠州(チュンジュ)でカフェとステイを運営しているというイ代表は「ここにいる全ての方たちがスケールアップと言われるが、ローカルという言葉を使うなら、成長よりは、自分が持っているものを分け合うことができる余裕もなければならない」とし、「スケールアップからスプレッドアウト(spread out)に観点を転換し、様々な地域と長く続くプレイヤーになることを希望する」と話した。

この発言は、この日の会議全体の中で「成長・スケールアップ」フレームを指摘する、静かな反論だった。政府の政策は5,000人発掘、100人選抜、優勝者に10億ウォン(約1億円)支援という「競争と成長」で設計された。しかし、地方での起業の本質が地域と共に長く持ちこたえることであるならば、スケールアップ指標でこれらを評価することが適切かどうかは別の問題だ。


1時間43分間続いたこの日の会議は、政府の野心溢れる政策発表だったが、この政策だけでは解決しにくい問題が指摘された。既存産業と利害関係者の抵抗、地方の人材誘致の構造的限界、スケールアップフレームに入れにくい地方での創業の本質。これらの問いに対する答えは、結局、政府の支援金の規模ではなく、社会的合意と規制改革の領域にある。国家起業時代の成敗はTVオーディションの視聴率ではなく、この構造的問いにどれだけ正面にから向き合うかにかかっているだろう。

原文:https://platum.kr/archives/280802