李在明(イ・ジェミョン)政権の閣僚名簿には目立った人物が少なくないが、中小ベンチャー企業部(省)長官候補者に指名されたハン・ソンスク前NAVER代表も注目に値する。記者出身で、NAVER初の女性CEOにまで上りつめたハン候補者は「NAVERクイーン」と呼ばれるほど、韓国最大のポータル企業を象徴する人物だった。ハン候補者が中小企業政策の首長とされるや、業界の内外では「予想外のカードだ」との反応が出た。

実際、NAVERでもNAVER Cloud(ネイバークラウド)のハ・ジョンウAIイノベーションセンター長が大統領府AI未来企画首席に抜擢されることはある程度予想されたが、ハン前代表の入閣は全く予測できなかったとの声が多かった。デジタル転換と、AI技術革新を中小ベンチャー企業部の政策の核心軸とする政府の意思が反映された人事と見ることができる。同時に「破格」という評価も共存している。

今、中小企業と小規模事業主は文字通り生存の岐路に立っている。高金利・高物価・内需不振の三重苦に廃業の危機まで重なった現実に、現場の声はこれまで以上に切迫している。スタートアップエコシステムも例外ではない。コロナ禍以降、続いた投資の寒波にグローバル緊縮基調まで加わり、「資金の紐が閉じた」という言葉が現実になった状況だ。新しいアイデアよりも当面の運営資金を心配しなければならない企業が増えている。

このように不確実性が大きくなった時に指名されたハン候補者は、単なる「驚きの抜擢」ではなく、危機を機会に変えることができる実戦型リーダーとして注目されている。技術と市場、組織をあまねく経験したことに加え、変化と危機の状況でリーダーシップを発揮した経歴も持っているからだ。

ハン候補者は30年以上にわたり、IT産業の現場を渡り歩いてきた人物だ。記者としてキャリアをスタートさせ、empas(エンパス)の立ち上げメンバーを経て、NAVER代表まで上りつめたハン氏のキャリアは、技術の変化の真ん中で問題を解決して方向を提示する足跡を残した。特にハン候補者が2017年から2022年までNAVER代表を在任した時期は、モバイル中心のプラットフォームへの転換期だった。この渦中に検索・コマース・コンテンツ・フィンテック・AIなど、中核事業のモバイル戦略を成功に導いた。デジタル生存戦略が切実な中小企業と小規模事業主にとって、これほど時宜を得た経験を持つ人物は珍しい。

ハン候補者はスタートアップとベンチャーのエコシステムに対する理解も高い。ハン氏の在任期間中、NAVERは社内独立企業(CIC)の分社化、戦略投資、起業プラットフォームの構築などを通じて「ベンチャー業界の大きな手」と呼ばれるほど活発に投資をして協力した。Naver Webtoon(ネイバーウェブトゥーン)、NAVER PAY(ネイバーペイ)、ZEPETO(ゼペト)などは、このような実験で生まれた代表的な成功事例だ。起業家の苦悩、資金難、グローバル進出の難関などを誰よりも近くで見守り、支援してきた。

政策当局との疎通力も注目に値する。NAVER代表時代、ハン氏は国会と政府当局を直接訪ねて、プラットフォーム規制、ニュースの配列、コメント政策など、議論を呼んだ事案を調整した。また、リアルタイム検索語の廃止、アルゴリズムの透明性強化などの改革も直接推進した。単純な民間CEOではなく、政策環境を理解し、公的責任を認識するリーダーとして評価される理由だ。

今回の人事は中小ベンチャー起業部が直面した現実とも重なり合っている。単純な財政支援や規制緩和だけでは突破が難しい今、技術と市場を同時に理解して実行できるリーダーシップが切実だからだ。ハン候補者は、デジタル転換、AIベースのカスタマイズ支援、中小企業のグローバル進出プラットフォーム化など、現政権の中期政策基調を現実化できる適任者だと評価されている。

解決すべき課題もある。伝統ある製造業に対する理解不足、政府組織の運営経験が不十分な点は克服すべき部分だ。しかし、データに基づいて戦略を策定し、市場の流れを読んで組織の変化を導いたハン氏の経歴は、変化の速い現在の政策環境に、より適合しているとも言える。

今、中小企業は生存を越えて再跳躍の道を探し求めている。業界は宣言ではなく、実質的な突破口が欲しいのだ。ハン候補者がその答えを探し、力を与えてくれることを期待する。

<韓国の中小ベンチャー企業部(省)の長官候補者に指名されたハン・ソンスクNAVER(ネイバー)顧問が24日、ソウル汝矣島の中小企業技術情報振興院に設けられた人事聴聞会準備事務所に出勤し、指名を受けたことについてコメントしている。>

原文:https://www.etnews.com/20250627000067