ソウルの公共交通が乗り放題!市民も観光客も使える「万能パス」の正体

1.気候同行カードとは?

「気候同行カード(기후동행카드)」とは、ソウル市が2024年1月に導入した公共交通機関統合定期券です。一度チャージするだけで、指定した利用期間内、ソウル市内の地下鉄・バス・公共自転車・漢江バスなどを無制限に利用できます。

カード名の「気候同行(기후동행)」には「気候とともに歩む」という意味が込められています。マイカーの利用を公共交通に切り替えることで排ガスを減らし、都市の大気環境を改善することを目的として設計されたエコフレンドリーな交通カードです。

ロンドンの「トラベルカード」やドイツの「9ユーロチケット」など世界各都市で実施されている、乗り放題型パスによる大衆交通利用促進政策に倣い、ソウル市はこの取り組みを韓国で初めて導入しました。2024年1月の試験事業開始後、同年7月に本格事業へ移行し、外国人観光客向けの追加や青年割引の導入など、対象を広げながら進化し続けています。

2.使い方・料金・購入方法

対象交通機関
現在、気候同行カードで利用できる交通機関は、ソウル地域の地下鉄(一部京畿道区間を含む)、ソウル市免許の市内バス・マウルバス、公共自転車タルンイ(30日券に限る)、漢江バスとなっています。地下鉄に関しては、2号線、3号線、5号線、6号線、8号線、9号線など主要路線の全区間での利用が可能ですが、新盆唐線・GTX・空港バス・広域バスは対象外となっています。

外国人観光客の多くが利用する、ソウル市・仁川空港間については、仁川空港がソウル市外にあるため、空港鉄道の仁川空港駅からは気候同行カードでの乗車はできません。

一方、ソウル市内から空港へ向かう場合は、空港鉄道(ソウル駅〜金浦空港間)を一般列車で利用し、仁川空港駅で下車する場合に限り利用が可能です。なお、ソウル駅から仁川空港駅までノンストップで運行する直通列車では利用できないため、事前の確認が必要です。

万が一、利用可能区間外まで乗車した場合は改札を出る際に区間外分の運賃を払わなくてはならないので、現金を用意しておくと安心です。

気候同行カードの利用可能路線図(ソウル市公式サイト

カード本体の発行手数料は3,000ウォン(約540円)で、実物カードの発行が必要ですが、カードは再利用可能なので、一度発行してしまえば次回の旅行時は再チャージするだけで利用できます。

2026年5月現在、5,000ウォン(約540円)から利用可能で、1日単位での購入が可能です。ただし、5月2日の20時に1日券を購入しても、利用可能期間は翌日3日の20時までではなく、2日の終電までとなるので購入タイミングには注意が必要です。
また、開始日時の指定はできず、チャージするとそのタイミングからの利用になるので、遅い時間に到着して、本格的な観光は翌日からという方は、到着した当日ではなく翌日から必要な日数分をチャージすることをおすすめします。

チャージ料金一覧

購入場所
カードは地下鉄1〜9号線のお客様安全室または駅構内のキオスク、GS25・CUなどのコンビニ、明洞観光案内所、ソウル観光プラザ内観光案内センターなど様々な場所で購入できます。

駅にあるキオスクで気候同行カードを購入することができる(三成駅/KORIT編集部撮影)

新型交通カード発券機を利用すれば海外クレジットカードでの購入も可能に(KORIT編集部撮影)

気候同行カードのチャージはキオスクではなく、チャージ専用機械で行う(KORIT編集部撮影)

3.注目される理由、その影響は?

導入2年で1日平均用人数72万人へ
気候同行カードは2026年1月時点で累計充電件数1,700万件超・1日平均利用者数72万人という数字を記録。当初の目標だった50万人の1.5倍を達成し、ソウル市民・観光客双方にとって実用性の高いサービスとして定着しています。

利用者の月平均交通費節約額は約3万ウォン。カード導入前後を比較すると、対象エリアの1日平均交通カード取引件数は988万件から1,027万件へと約4.0%増加した一方、非対象エリアの増加は約2.2%にとどまりました。またアンケートでは利用者の92.9%が「満足」と回答しており、満足度の高さも注目されています。

交通行動への影響
利用者調査では、週あたりの公共交通利用が約2.26回増加し、マイカー利用は約0.68回減少したと報告されています。交通費の節約だけでなく、排ガス削減という当初の目的でも着実な成果が出ています。

原油高対策のキャッシュバックキャンペーンも
ソウル市は、中東情勢による原油価格の高騰への対応策として、2026年4〜6月の3か月間、30日券利用者を対象に毎月3万ウォンのキャッシュバックキャンペーンを実施すると発表しました。今回の措置により月間利用者は20万人程度増加し、100万人規模になると見込んでいます。

4.外国人観光客向けの取り組み

短期券の充実と海外カード対応
導入当初、海外発行のクレジットカードは利用できず、外国人観光客は現金のみで購入が可能でした。しかし、ソウル市は近年増加する外国人観光客の利便性向上のため、ハナカード・Tmoneyなど複数の事業者と緊密に連携してシステムを改修。2026年3月17日から、海外発行のクレジットカード・デビットカードで短期券(1〜7日券)の購入・チャージが可能となりました。

この影響は数字にも明確に表れています。導入からわずか1か月の間に1〜8号線のキオスクでは、1日平均9,158人・約7,000万ウォンの海外カード・モバイル決済での利用が確認されました。カード別ではVISAが最多で、モバイル決済ではWeChat Payが最も高い比率を占めました。

さらに注目すべきは、気候同行カード短期券のチャージ件数が、前年同期比で約2倍に跳ね上がったことです。前年の約12万件から約24万件へと急増し、海外カード対応が観光客の利用を劇的に押し上げたことを証明しました。利用の多かった駅はソウル駅・弘大入口駅・明洞駅と、まさに外国人観光客が集中するエリアでした。

観光スポットとの連携割引
気候同行カードを持っていれば、ソウル大公園・ソウル植物園・ソウル市立科学館の入場料が50%割引、ソウルの新名所「ソウルダル(ソウルの月)」では10%割引が受けられます。交通費の節約だけでなく、観光体験もよりお得になる一石二鳥のアイテムです。

利用エリアの拡大
もともとはソウル市内に限られていた利用エリアも、2024年9月には仁川空港1ターミナル駅、仁川空港2ターミナル駅で下車が可能に、2024年11月には高陽市・果川市の地下鉄駅での乗降が可能になるなど、徐々にソウル中心部を超えた近郊都市へのアクセスにも対応範囲を広げています。

5.市民向けの取り組み

青年割引・多子女・低所得層割引
ソウル市では市民に向けた様々な割引制度も用意しています。例えば満19〜39歳の場合、30日券を購入することで青年割引が適用されます。2025年9月からはさらに制度が拡大され、2子女以上の多子女家庭・低所得層・青少年向けの割引も始まりました。また除隊軍人については、軍服務期間分、青年割引の対象年齢が最長42歳まで延長されるという手厚い配慮もあります。

現在、利用者の57.1%が青年割引券を使用しており、漢陽大学駅(31.7%)・高麗大学駅(27.2%)など大学周辺での利用率が特に高くなっています。

後払い型カードとアプリ管理
2024年11月からは銀行口座と連携した「後払い型」気候同行カードが登場しました。(韓国人および外国人登録証所持者が対象)また、モバイルTmoneyアプリからのチャージ・払い戻し・使用履歴の確認ができるようになり、さらなる利便性の向上に期待が高まります。

6.韓国人も観光客も利用する「ソウルの顔」に

気候同行カードはいまや、ソウル市民の通勤・通学に欠かせないインフラであると同時に、訪韓観光客にとっても「とりあえず買っておきたい一枚」として認知が広がっています。

海外カードでの購入対応・短期券の整備・観光地割引といった外国人フレンドリーな施策と、青年割引・多子女割引・後払い機能など市民の生活を支える制度が共存するこのカードは、「ソウルを移動するすべての人のためのパス」として進化を続けています。

政府もこの流れを受け、2026年1月から「모두의 카드(みんなのカード)」を全国規模で導入しました。K-パスを改編したこの制度は、月ごとの基準金額を超えた交通費を100%還付する仕組みで、新盆唐線・GTX・広域バスを含む全国の大衆交通が対象です。気候同行カードとは仕組みが異なりますが、「定額で移動コストを抑える」という発想の源流はソウル発の気候同行カードにあり、その概念が国家政策として全国に広がったともいえます。

気候同行カードの存在感は、今後ますます高まりそうです。

出典・参考サイト