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長い間固定化されている問題のいくつかは、しばしば「慣習」という仮面を被って私たちの社会の奥深くに定着し、あたかも問題ではないかのように思われている場合がある。外見上特に問題視されないだけでなく、仮に問題として認識したところで、適切な解決策がないため、不便さを我慢し、物事の一部として受け入れられるのである。このように、誰もが当たり前のように感じている不便に疑問を投げかけ、自ら解決方法を模索してこそ、起業家の旅が始まるのである。

医薬品産業は、厳しい規制のため、イノベーションが遅れている分野の一つである。その中でも医薬品取引分野は、特にIT技術の手が大きく及ばない分野だった。部外者の目には単調に見える薬局の日常の中で、イノベーションが必要な部分はあるのだろうか?

医薬品B2B電子商取引プラットフォーム「yakollyeo(ヤクオルリョ)」を運営するLook insight(ルックインサイト)のカ・ジンウン代表は、水面下で医薬品流通分野におけるイノベーションのチャンスをつかんだ。

去る2001年、「診療は医師に、薬は薬剤師に」というスローガンのもと、韓国国内では医師は診療と処方、薬剤師は医薬品の調剤をそれぞれ担当する医薬分業が本格的に施行された。その後、現在のように薬局は処方箋ベースの調剤のみを担当し、病院卸売は医師との取引を中心に行われるシステムが社会に定着した。

Look insight カ・ジンウン代表 /Look insight

出生率の低下による経済活動人口の急減と地方都市の消滅問題

カ代表が製薬会社に勤務していた当時、最も目についたのは、固定化された医薬品流通システムにより、韓国国内1400余りの*門前薬局が背負っていたペインポイントだった。現行の薬事法では、薬局は専門医薬品を卸売業者から購入して患者に販売し、その際にマージンを残すことができないようになっている。

*門前薬局:総合病院や医療機関の近くに位置し、病院で処方箋を受け取った患者がすぐに立ち寄って薬を調剤できるように運営されている薬局。

問題は、韓国国内医薬品の卸売が約4000余りに達する1-2次流通業者を通じて散発的に行われ、需要先が見つからなかったり、有効期限が残っているにもかかわらず、業界の慣例上、流通業者が返品を拒否して払い戻し処理がされないことだった。このため、医薬品小売業者である薬局は残留医薬品をそのまま廃棄処分するしかなく、これはそのまま薬局の損失につながる。実際の損失規模を全体の薬局数で試算すると、1店舗あたり年間平均5,000万ウォン(約540万円)に達する。

それだけでなく、韓国の国民健康保険制度によると、薬局が患者に専門医薬品を販売する際、薬代の30%のみを患者から受け取り、残りの70%は3ヶ月後に健康保険公団から受け取ることになる。この3ヶ月の空白のため、卸売業者は薬局と必然的に掛け売りで取引を行うことになり、韓国全体の門前薬局の年間売上高8兆ウォン(約8,600億円)のうち約2兆ウォン(約2,100億円)の掛け売り負担を卸売業者が耐えなければならない状況となっている。しかし、2兆ウォン(約2,100億円)の資金を無理なく運用できる大型統合卸売業者がないため、売掛債権の負担を分散させようと今のように3,500余りの一次卸売業者が乱立することになった。

このように統合された医薬品のB2B流通システムの不在は、廃棄医薬品の払い戻し不可、3,500余りの卸売業者の重複した医薬品配送ルートや空車運行など、数多くの問題を発生させたにもかかわらず、薬局はただ背負っていく市場の慣習程度に認識してきた。さらに、問題解決のための情報収集ルートすら極端に限られていたため、声を上げる前に問題認識すら困難な状況であった。

yakollyeoサービス画面/Look insight

病院卸売と門前薬局をつなぎ、新たなエコシステムに挑む

カ代表は、業界全体及び利害関係者間の関係、それぞれのペインポイントに対する幅広い理解を基に、2019年、医薬品の返品保証システムを基盤とした医薬品B2Bコマースプラットフォーム「yakollyeo」をリリースした。yakollyeoの短期的な目標は、分散された流通の統合とプラットフォーム先払いシステムの適用によるマージンの拡大で、薬局により多くの利益を提供することであり、中長期的には、長い間断絶されていた病院卸売と門前薬局をつなぎ、医薬産業生長のエコシステムを造成することである。

現在、その一環として、yakollyeoには薬局が医薬品を購入する時点で、今後発生する返品を事前に保証するポイントを先制的に支給する「錠剤返品ポイント」制度を業界初導入し、実際に返品が必要な医薬品が発生した場合、証拠資料の検証後、預金に転換、これを購入に使用できるようにしている。

リリース直後から反響は大きかった。2024年1月に月間取引額20億ウォン(約2.2億円)達成後、7月に30億ウォン(約3.3億円)、11月には50億ウォン(約5.5億円)など毎月取引額を更新、2024年年間取引額は400億ウォン(約44億円)を突破し、月平均成長率(CMGR)は約21.4%となった。門前薬局をはじめ、約1900以上の薬局を主要顧客として確保し、月平均注文数と再購入率はそれぞれ1万1000件、88.4%を記録するなど、驚異的な成果を上げている。

投資家や政府の関心も高い。yakollyeoは2023年3月にSparkLabs(スパークラボ)からシード投資で資金調達し、2024年8月に中小ベンチャー部のTIPS(ティップス)プログラムに最終選定され、5億ウォン(約5,500万円)規模の研究開発資金を確保した。

2025年、カ・ジンウン代表とLook insightの人材が描く次の目標は何だろうか。彼らは、韓国1位の門前薬局流通統合プラットフォームとしての地位を固めるとともに、医薬品流通データ専門企業への飛躍という具体的な目標を描いている。カ代表は「会員薬局の調剤データを基に、事前に注文が必要な医薬品の種類と数量を適切な時期に推薦し、注文から在庫管理に至るまでの全過程をデジタル化、薬剤師が業務の本質にさらに集中できる環境を作りたい」と話した。

yakollyeoは、規制の障壁を超え、業界の慢性的な問題を解決し、医薬品流通の新しいパラダイムを提示する模範的な事例となった。イノベーションは勇気のある者の役目という表現のように、慣習の殻を破ったカ・ジンウン代表とyakollyeoが切り開いた新しい水脈が医薬品流通エコシステムに大きな波として定着することを期待したい。