「韓国のVCにはカラーがない。会社名を隠して会社のビジョンだけ見たら、どの投資会社なのか区別がつかない」。韓国のVCや投資業界では常に指摘されていることです。ちょい事情通の記者も様々な関係者から聞く話です。「ソフトウェアが世界を変える」と言ってソフトウェアに集中投資してきたa16z、創業チームより市場の規模と成長速度を分析したSequoia Capital(セカイアキャピタル)のような明確なカラーを期待するのは無理にしても、韓国VCの色が無色無臭だったということには一部同意します。

では、どのようなスタートアップ投資にはカラーがあるのでしょうか?一つは、特定のセクターに集中的に投資するか、そしてもう一つは、他とは異なる哲学と分析方法にあるでしょう。韓国のスタートアップのエコシステムが成熟するにつれて、徐々にこのような明確なカラーを出すVCも増えています。

今日紹介するVCであるCRIT Ventures(クリットベンチャーズ)も、「ゲーム・コンテンツ・Web3投資」を前面に打ち出しています。2020年に設立されたCRIT Venturesは、4年間でAUM(運用資産)を2500億ウォン(約265.4億円)に増やし、迅速な投資活動を続けています。創業者であるソン・ジェジュン代表は、Com2uS Holdings(コムトゥースホールディングス、旧Gamevil(ゲームビル))の初期創業メンバーで、昨年Com2uS代表を辞任し、CRIT Venturesに集中しています。彼の20年のゲーム業界経験をもとにゲームとコンテンツに投資し、韓国国内VCが前面に出さないWeb3(ブロックチェーン)スタートアップへの投資を果敢に宣言しました。

 「最初にGamevilを創業したとき、チームメンバーは10人ほどでした。1台のPCをまるまる1人で使えないほど劣悪で、PCを交互に使っていたこともありました。そんな会社が数千人単位の企業に成長する経験をしました。スタートアップから上場企業まで、フルサイクルを経験したことになりますね。韓国国内のVC代表はほとんどが証券会社やVC出身で、どちらも有意義な経験だと思いますが、完全なサイクルを経験した起業家としてエコシステムに貢献できる部分があると思いました。メンバーであるD-CAMPでも、オフィスアワープログラムを通じて多くの起業家をメンタリングしていますが、今でも起業家に会うと昔のエネルギーが再び湧き出るような気がします。私の方がむしろインスピレーションと刺激を受けています。」

 「まだ誰もやっていない、でもグローバルで通用するビジネスを発掘する」をモットーにするCRIT Venturesとソン・ジェジュン代表のインタビューです。

1.Supercell(スーパーセル)、NetEase(ネットイーズ)、Ubisoft(ユビソフト)などグローバルゲーム会社が出資したゲームファンド

-なぜ「ゲーム・コンテンツ・Web3投資」に集中するのですか?

「2020年の創業後、様々なセクターを見て回りました。2010年代にVC業界に大きな利益をもたらしたセクターがIT O2Oプラットフォームですが、Baemin(配達の民族)、Zipbang(チッパン)、coupang(クーパン)…ほとんどのセクターがすでに飽和状態でした。可能性のある分野やセクターを考えるうちに、今の投資戦略になりました。
飽和しているからといって、ITプラットフォームに投資しないわけではありません。非対面診療プラットフォーム「dr.now(ドクターナウ)」やフィットネスプラットフォーム「Butfit Seoul(バフェットソウル)」もありますし、広く知られているレストラン予約プラットフォーム「catchtable(キャッチテーブル)」や中古車取引プラットフォーム「hey dealer(ヘイディーラー)」にも投資しました。プラットフォーム分野でもまだ成功の可能性がある分野が残っていると思っています。その他の主力投資は、先ほどお話したようにゲームとコンテンツ、Web3です。」

-ゲーム業界に携わって20年近く経たれていますね。

「Gamevilでたくさんのゲームをパブリッシングしてきました。おそらく契約件数では、韓国国内ゲーム会社CEOの中ではトップクラスだと思います。モバイルゲームはPCやコンソールに比べてリリース数が多く、パブリッシングのプロセスが少し楽だからです。多くのゲームサービスをやっているうちに、自然とゲーム起業家や開発者とのネットワークができました。自然と自分がよく知っている分野に投資するようになったのです。」

-コンテンツとWeb3もゲームと接している領域です。

「Com2uSが「MyMusicTaste(マイミュージックテイスト)」を買収したことで、K-POPと音楽コンテンツへの関心が自然と高まり、投資領域が広がりました。Web3やブロックチェーンもそうです。Com2uSで「Xpla(エックスフラ、Com2uSのクリプトであり、Web3)を運営しながら、自然とWeb3の起業家とも知り合い、情報を得ることができました。今日(インタビュー当日の時点)で、ポートフォリオ会社がちょうど100社になりました。」

-4年でAUM2500億ウォン(約265.4億円)を達成しました。VC業の成長指標があるとすれば、AUMですが、速い成長です。

「運営するファンドは全部で6つあり、そのうち4つは韓国にあり、2つはアメリカにあります。韓国の4つのファンドの資産は合計2240億ウォン(約237.4億円)程で、アメリカのファンドは約360億ウォン(約38.1億円)規模で、全体で約2600億ウォン(約275.5億円)規模です。韓国にある4つのファンドは、各セクターごとに分かれて運営されています。ITプラットフォームに集中投資するファンドが1つあり、DeCampとの協力ファンドがあります。マザーファンドから出資を受けたコンテンツファンド、グローバルゲームファンドもあります。

いくつかのファンドを詳しく説明すると、まず1つ目がスマートCRIT1号ファンドであり、主にITプラットフォームに集中投資しています。そして2つ目が、Korea Investment Partners(韓国投資パートナー)と一緒に作ったグローバルインタラクティブコンテンツファンドで、ゲーム分野に焦点を当てたファンドです。グローバルゲーム会社への投資に力を入れていますが、完全民間ファンドなので、LPもかなり特殊です。フィンランドのSupercellが韓国ファンドに初めて出資し、中国のNetEase、欧州のUbisoft、東南アジアのGarena(ガレナ)、韓国のCom2uS、111%と日本のmixi(ミクシィ)など多国籍ゲーム会社が出資したファンドです。Korea Investment Partners(韓国投資パートナー)のゲーム投資担当者とクリットが手を組んで共同投資しています。」

2.グローバルゲーム産業の変曲点、より緻密な戦略が必要だ。

-グローバル名門ゲーム会社のLP出資というのは、珍しいですね。海外のゲーム会社をどのように説得したのでしょうか?そして、そのファンドは結局、Kゲームに投資するのでしょうか?

「ゲーム投資のトラックレコードと規模ではKorea Investment Partners(韓国投資パートナー)がトップであり、私がゲーム業界に長く身を置いた経歴を前面に押し出してLPを説得しました。これまで18のゲームスタートアップに投資しましたが、ほとんどが海外のゲーム会社です。」

-この2年間、韓国だけでなく、ゲーム業界全般で暗いニュースを見た気がしますが、状況はいかがでしょうか?

「世界のゲーム業界全体が変曲点にあります。企業の利益圧迫はますます激しくなっています。Nexon(ネクソン)とCrafton(クラフトン)くらいしか安定した利益は出ていません。グローバルゲーム会社のほとんどで利益圧迫が深刻化している状況は似通っています。まず、ゲーム業界はもともと興行性が低いです。感覚的に言えば、10個中1個。10%のゲームが開発費とマーケティング費用を回収し、利益を出します。いわゆる大ヒットというわけではなく、利益を出せるという基準です。しかも昔に比べれば、この確率はどんどん低くなっています。

何よりも人件費の急激な上昇が問題になりました。パンデミックや様々な制度、開発者の給料など、様々な問題が重なり、ゲーム開発の人件費が過去の2倍レベルに跳ね上がりました。開発要員1人当たりの運営費用を月500万ウォン(約53万円)を基準にしていた場合、最近では1000万ウォン(約106万円)を基準にする必要があります。この状況では、ARPU(ユーザーあたりの平均売上)やDAU(デイリーアクティブユーザー数)を上げる必要がありますが、これも簡単ではありません。そのため、売上は変わらないのにコストは増え続け、成功するためのハードルはさらに高くなったのです。」

-ハードルが高くなったにもかかわらず、18社のゲーム会社に投資したという訳ですね。どのようなゲームスタートアップにどのようなロジックで投資したのでしょうか?

「最近の投資としては、A BUTTON(エーボタン)に投資しました。Nexonで開発事業を総括していたくキム・デフォン代表が私と一緒に創業した会社です。「ビッグ&リトル」戦略を掲げています。ビッグはMMORPG、最高のハイエンドゲームに挑戦するという意味。リトルは、Nexonにいたときのように「DAVE THE DIVER(デイブ・ザ・ダイバー、カジュアルなインディーゲーム)」を意味します。ミドルはしないということです。Nexonで自ら証明した戦略をより精巧に挑戦するスタートアップです。」

-ミドル、いわゆる中堅ゲームも一つの方法ではないでしょうか。最近のスタートアップ投資においても適度なバリューのIPOを狙った中堅投資を狙うようになっているように感じます。

「今のゲーム市場の状況を見ると、中くらいの成功をするゲームは曖昧です。ダウンロード数や主要な指標である程度の成功を収めていますが、それ以上に大きく上回らないと持続可能ではないということです。コストが増え続ける状況では、中途半端な成功よりも、むしろ完全に大当たりを狙うゲームの方がはるかに優れています。
もちろん、ビッグ、ミドル、リトルは成功だけでなく、コスト面でも同じです。例えば、バトルグラウンドの場合、最初はリトルゲームとしての大胆な試みでした。しかし、その人気は完全に大型ホームランとなったわけです。ロストアークのようなゲームが大作として企画され、実際にそれだけの成功を収めたケースと言えますね。」

-韓国が得意な、韓国人が特に好きなMMORPGのジャンル人気が以前ほど高くないですね。過去のようにMMORPGでビッグゲームになれるのでしょうか。

「MMORPGのような場合はまだチャンスがあると思います。安定したファン層がいるんです。もちろん、以前のように売上上位20ゲームのうち半分がMMORPGという時代は簡単に戻ってこないでしょうが。今日確認したところ、20のうち4つのゲームがMMORPGジャンルでした。それだけゲームのジャンルが多様化しました。」

3.グラフィック作業をAIに置き換えるスタートアップ登場、「インディーゲームから変化が始まる」

-開発費が不足しているスタートアップの立場では、リトルプロジェクト、開発費の少ないゲームを先に開発するしかありません。1塁打でも打たなければならない状況です。

「リトルプロジェクトは最近、クロスプレイのおかげで希望が持てるようになりました。以前は、コンソールはコンソール、PCはPC、モバイルはモバイルでそれぞれ別々に遊ぶ構造でした。企画段階から開発方法、成功の方程式が違うんです。現在では、ハードウェアの技術仕様が同等になり、複数のプラットフォームで同時にプレイできる環境が整いました。最近では、PCとコンソールを同時にリリースしたり、モバイルとPCを一緒にリリースすることが一般的になり、場合によっては3つのプラットフォームを同時にリリースすることもあります。原神のようなゲームは、そんなクロスプラットフォームを活用した良い例です。
クロスプレイのおかげで、ユーザーとの接点が格段に良くなり、他のプラットフォーム市場にも挑戦するチャンスが生まれました。PCをターゲットにしたインディーゲームもモバイル版をリリースし、ユーザーとの接点を大幅に増やす方法でIP活用が可能になりました。例えば、Steamのインディーゲーム「Dark and Darker(ダークアンドダーカー)」のようなゲームが良い例ですね。」

-海外のインディーズゲームに投資した経験や、投資実績はありますか?

「スウェーデンに「Snowprint(スノープリント)」というゲーム会社があります。2年で投資額を回収しました。別のスウェーデンのパブリッシャーに買収され、2倍以上のマルチプルで回収しました。韓国では馴染みのないモバイル戦略ゲームのジャンルを主に開発する会社でした。マニアが好きなジャンルでしたが、このジャンルの競争力が認められたんです。」

-ゲーム業界でまだ開かれているウィンドウはどこでしょうか。

「「Supervillain Labs(スーパーヴィランラボ)」がありますね。20人規模の小さなチームです。わずか3ヶ月で放置型RPGを完成させてリリースしました。面白いのは、この会社にはグラフィックデザイナーがいないことです。UIデザイナーだけで、あとはすべて開発者と企画者です。デザインはAIに任せたのです。Web3ゲームを開発するだけでなく、AI技術を非常によく活用しています。これにより、開発コストを革新的に下げながら、迅速にゲームを作っています。AIはゲーム業界のゲームチェンジャーになる可能性があると考えています。」

-グラフィックの作業リソースを減らすことは、ゲーム開発プロセスにそれほど大きな影響を与えるのでしょうか?

「ゲーム開発において、グラフィックが占める割合はかなり大きいです。特に3Dゲームを作るときは、イラスト作業からモデリング、アニメーション、背景やキャラクターの制作など、様々な工程が必要です。各段階ごとにチームが細分化されて作業をしなければならず、この過程でかかる時間とコストは莫大です。ゲーム開発にAIを活用するスタートアップは、そのため、グラフィックを2Dにすることを選択します。2Dグラフィックスは、AIが描いたものと人間が描いたものが区別できないレベルまで来ています。これで、決まったテンプレートやフォーマットに基づいてデザインを生成すると、AIがものすごいスピードでグラフィックを作ってくれます。
特にインディーズゲームのジャンルでは、過去のインディーズゲーム会社がグラフィック関連コストを削減するために、ゲームの量、ボリュームを減らしました。プレイ時間も短くなるわけです。AIを活用することで、グラフィックのコストを抑えた分、よりボリューム感のあるゲームを作ることができます。」

-新しい技術やビジネスモデル(BM)を取り入れたゲームの試みはありますか?

「「puzzle monsters(パズルモンスターズ)」ですね。昨年、「Idle Ninja(忍者育成)」というモバイルWeb3ゲームを開発し、成功裏にサービスした経験がある会社です。ソウル大学ブロックチェーンサークル出身者が集まって作ったチームで、特にWeb3ゲームでどのような要素をNFT化し、どの部分をトークン化すべきかについて本当に多く研究しています。ゲームとWeb3の組み合わせが難しいのは、経済システムの維持です。トークンの価格と需要を維持すること。経済学的かつ数学的な複雑な問題ですが、puzzle monstersチームはこれを見事に解決しました。通常、Web3ゲームのトークンエコノミーは価格崩壊で簡単に壊れることが多いのですが、Idle NinjaのトークンであるNinjaトークンは現在も価格が安定しています。それでもIdle Ninjaは着実に売上と利益が出ています。次回作を準備中という話を聞いて投資しました。
もう1つ、サブカルチャーも韓国や日本のマニアックなジャンルでなく、他のアジア諸国や欧米圏でも十分に成功できると思います。台湾でも徐々に反応が来ています。欧米圏にも出られると思います。サブカルチャーゲームを作るスタートアップ(「VA Games(VAゲームス)」)にも投資しました。」

-ゲーム投資の要は結局、人、チームだと言われています。すべてのスタートアップ投資がそうですが、ゲームも結局は人への投資です。良い開発チームとはどんなチームでしょうか。

「必ずしも過去に成功した人がまた成功するわけではありませんが、失敗から学んだ教訓があり、それを次のプロジェクトでどのように補完するのかという明確な方向性があれば、前向きに評価します。特に、実際にゲームを開発し、リリースしたことのあるチームが一緒であれば、その経験のおかげでチームワークもより円滑になります。次に、どのようなゲームを作るつもりなのか戦略を見ます。これまでやってきたジャンルや市場と全く違うことを試みることは、時には危険なこともありますが、同じジャンル内で非常に激しく悩み、自分たちの強みを持って「今回はこうやって勝負してみよう」という明確なビジョンを持っているチームがあるのです。」