1.自動車保険仲介アプリとして始めたビジネス

自動車ディーラーとして生活している中で、車を購入する際にお客様が直面する様々な困難、特に情報の非対称性から発生するコスト的な消耗を目にしました。この問題を解決するため、車両購入をオンラインに移行することができれば、お客様にとってもっと便利になるのでは、というアイデアが、起業のきっかけとなりました。

当時、ダイレクト保険やダイレクトファイナンスのように、元受会社や金融会社が商品を開発し続けており、オンライン車両保険市場が徐々に拡大していました。そこで、オフラインでしか購入できなかった保険をオンラインで比較するサービスを始めたのがChabot mobility(チャボットモビリティ以下、chabot)です。

なぜ保険比較サービスが必要なのですか?

例えば、私がカーニバルという車種の車を購入した場合、現代海上と契約するのが一番安いのか、それともMeritz(メリッツ)と契約した方が安いのかなど、保険を比較してくれるサービスを提供していました。

当時は、オンラインでマーケティングが行われており、車を購入する顧客の情報を得るのは非常に高価でした。NAVER(ネイバー)の検索広告も非常に高価で、保険や金融分野はもともと競争が激しい市場なので、顧客情報を取得するのにコストがかかりました。

そこで、ディーラー時代に知り合ったディーラーのネットワークを活用することにしました。ディーラーが車を販売する際に、顧客に当社のサービスに紹介する形でサービスを作りました。ディーラーのためのメンバーシップサービスを作り、ディーラーが車を売る際、保険にchabotアプリを通じて加入するように案内しました。

一般的にディーラーは車を売ってマージンを得ますが、保険や金融を仲介することで発生する手数料も受け取っています。もともとはディーラーが直接保険を仲介することが多かったのですが、次第に消費者が「自分の保険は自分で比較して選びたい」というケースが増えてきました。

こうした状況になったとき、ディーラーの方達は「あ、じゃあchabotで検索してみてください」とchabotを紹介するわけです。そうして流入した顧客がchabotで保険を契約すると、ディーラーにも一定の手数料が入るという方式で始めました。

元々は、ディーラーとchabotが保険仲介手数料を分け合う形だったんですね。

ディーラーの方々としては、どうせ顧客がオンラインで加入するダイレクト保険へと離脱している状況でしたから。ダイレクト保険へ行ってしまいそうな顧客をchabotへ繋ぐだけで、副収入になったのです。

例えば、100万ウォン(約10.8万円)の保険料のうち10%である10万ウォン(約1.8万円)が当社のプラットフォームに広告費として入ってくると、このうち50%をディーラーに分配する仕組みになっていました。

自動車保険の価格は、そんなに違うんでしょうか?

実際に比較してみると、保険料は皆それぞれ違います。保険開発院にすべての保険会社のAPIが連動しており、保険料を一度に確認することができます。chabotはこの情報をスクレイピングして、最初はこの情報を顧客に提供する方式でした。

ITインフラの構築は容易ではなかったと思いますが、どのように進めたのでしょうか?

まず、保険開発院に入り、SI(システム統合)作業を行いました。ChabotがPM(プロジェクトマネージャー)として開発を行ったシステム構築です。入札で選ばれ、プロジェクトに参加したのは当社だけでした。市場がまだ技術的に成熟していない時期だったので、その作業を理解して進めることができる会社がほとんどなかったのです。

当時、保険関連情報は主にスクレイピング方式で収集していたのですが、この方式だと精度が劣っていました。例えば、保険会社が提供する情報値は完全なデータではないため、89万ウォン(約9.5万円)だと思われた保険料が、実際のダイレクト加入の過程で100万ウォン(約10.8万園)となる場合もありました。このようなデータギャップのために、消費者が混乱するケースが多くありました。

そこでchabotが保険会社との連携を強化し、直接のAPI連携を通じてデータを精緻化しました。一般的に保険会社のAPIは公開されないのですが、直接保険会社を訪ねてAPI連動を説得しました。当社が作ったシステムなので、このデータを利用する上ではchabotが優位に話を進められたんです。

保険の仲介はどのような過程で行われるのですか?

リンクを通じて顧客情報を簡単に取得、それを基に顧客カスタマイズサービスを提供します。お客様がリンクをクリックすると、情報同意が行われ、同意された情報は当社のシステムに渡されます。ドライバー情報、車両情報、既存の保険履歴、特約情報などを収集し、お客様に最適な商品や割引特典をお勧めします。

顧客が直接加入できるリンクチャンネルを提供し、自動的に加入が完了するようにしたり、直接手続きが難しい、または質問がある顧客のために相談サービスも提供しています。

市場の規模はどのくらいですか?

車両保険全体の市場は10兆ウォン(約1.8兆円)、年間取引額は約7,000億ウォン(約752億円)程度と言われています。これはchabotが保険仲介市場のシェア10%を達成すれば、売上70億ウォン(約7.5億円)を確保できるということを示します。

Chabot mobilityカン・ソンギュン代表 /chabot提供

2.英国のオフロード車輸入、スタートアップが獲得した輸入業者資格 

アプリから得られるデータは、どのように活用されているのでしょうか?

データを統合的に活用する機会を追求しています。chabotでは、金融情報、保険情報だけでなく、ドライバーの詳細データを確保することができます。例えば、ドライバーの性別、居住地域、家族状況、過去に運転した車両、運転習慣、年間走行距離などは、保険データを通じて知ることができる情報です。このように、金融情報だけでは得られない様々なデータをもとに、オンデマンドで様々なビジネス連携を可能にすることが目標です。

一般的なドライバーのサイクルとして、車の購入から販売まで約6.3年程度と見られているのですが、当社はこの期間、お客様が必要とするすべての経験とサービスを提供できるプラットフォームになることを目指しています。

珍しい輸入車も販売しているんですね

INEOS(イネオス)というイギリスの会社が作ったグレナディア車を直接輸入して販売しています。イギリス製の4×4オフロード車で、独創的なデザインが特徴です。年間約300~500台程販売され、車両価格は1台あたり約1億3千万ウォン(約1400万円)程です。INEOSはイギリスの化学会社ですが、会長がランドローバー旧型ディフェンダーのファンです。彼がオフロード車をモチーフにして率先して製作した車になります。

chabotではこの車両の輸入業者資格を取得し、韓国内で輸入業者として活動する権限を確保しました。韓国で輸入業者の資格を持つ企業は多くありません。通常、輸入業者の資格を得るためには高い資本力と信頼が求められるのですが、スタートアップが直接輸入業者として立ち上がり、ディーラーの資格まで確保したのは本当に珍しいことなのです。

輸入会社という地位がもたらす利点があります。輸入業者は、車両の認証から始まり、すべての過程を直接処理する必要があります。認証は国土交通省や環境省など関連省庁と協議して行い、リコールや問題発生時の責任も全て輸入会社が負うことになります。一方、一般的なディーラーはこのような過程を経ずに、車の販売だけを担当します。代わりに、ディーラーは企業の支社が提供する方針と条件に従わなければなりません。

輸入業者として活動すれば、ディーラーのように支社の方針に従属する必要はありません。特に、割引競争に縛られることなく、安定的に運営することができます。従来のブランドディーラー間の激しい競争とは異なったやり方、ディーラーは年末に在庫を早く売り切るために競争的に割引を行うことがよくあるのですが、当社は独自の価格政策を維持することができます。

輸入業者資格はどのように作用したのでしょうか?

chabotでは2019年度の年末、シリーズA投資で25億ウォン(約2.7億円)の資金調達を行いました。

投資を受ける際に、投資会社に輸入代行業をすることを伝えました。韓国に参入してきそうな事業者10社を選定し、コールドメールを送りました。当時はコロナ禍の時期だったので、直接会うことはできず、会社紹介状を送りました。韓国のスタートアップですが、このような事業を行っており、自動車をオンラインで購入するデジタル市場を革新的に変えることができる会社を作っていて、今回投資を受けたと紹介しました。また、シリーズBの資金調達も進行中であることを伝えました。

その提案書を送った会社の一つがINEOSでしたが、実は当時、韓国進出の計画は全くなかったそうです。まずは日本とモンゴルに進出する予定でした。

ところが、当社が送ったメールを見て連絡がありました。INEOSも2017年にできたばかりの新会社で、23年から車が量産されて出荷され始めました。我々がメールを送ったのは、まだ車を作っていた時期でした。INEOS Automotive(イネオスオートモーティブ)は新興のスタートアップで、まだ車も販売していない状態だったのに、韓国で売りたいと連絡をしてきたchabotは彼らにとっては新鮮だったようです。

既存の輸入業者は古いやり方だったのもあり、スタートアップのある種の覇気が、自動車市場ではスタートアップだった彼らに通用したのだと思います。

販売はオンラインが中心なんですね。

はい。テスラに似たモデルです。展示場はオフラインで存在しますが、実際の契約や販売はオンラインでのみ行われます。このように運営することで、多くのディーラーを置くことなく、効率的なオンライン車両販売が可能になります。

オンラインでも十分に車両を販売できるというchabotの仮説の検証を示しているでしょう。初輸入会社としての資格を取得したことで、今後は新興の電気自動車ブランドをはじめ、様々な車両の輸入に挑戦していきます。

グレナディア。オフロードの特徴を生かした車だ /INEOS提供

3.テスラのように、モビリティプラットフォームであらゆるエコシステムを構築するという夢

今後の市場戦略について教えてください。

市場全体の規模は約270兆ウォン(約29兆円)に達します。このうち170兆ウォン(約18兆円)は自動車購入市場、80兆ウォン(約8.5兆円)は保険市場、そして残りの20兆ウォン(約2.5兆円)は金融市場で構成されています。当社は、この巨大な市場で2~3%の市場シェア(MS)を確保するだけで、保険取引額、車両取引額、金融取引額などを合わせて約5兆~6兆ウォン(約5300億円~6300億円)規模の市場を形成できると考えています。もし全体市場で1%のシェアを取るだけでも、約2.7兆ウォン(約2700億円)の取引規模を確保できるという計算が出ます。

保険仲介市場だけでシェアを最大化するのも一つの戦略かもしれません。しかし、現実的に保険市場の50%を占めるのは非常に難しいことです。また、単に一つの分野だけに依存するビジネスモデルは、長期的な視点で見るとリスクが大きいでしょう。特定のサービスに問題が発生したり、外的要因で事業進行が困難になった場合、ビジネス全体が危うくなる可能性があるためです。自動車購入、保険、金融など様々なバーティカルサービスを統合的に提供するモデルを目指します。

保険仲介と販売以外に、どのようなことを行っていますか?

開発中の商品は新車パッケージ保険です。この商品は、車両購入時に発生する可能性のある軽微な損傷を保証する様々なサービスを一つのパッケージにまとめた商品です。

例えば、石にぶつかって発生する傷の修復、タイヤの破損などのトラブルを補償する保険を新車購入時に一緒に選択できるように設計しています。金融会社と提携し、リース・レンタル商品のオンライン販売仲介サービスも提供しています。

輸入車ディーラーで働いていた後起業されていますが、ディーラーとしての経験を教えて下さい。

2年半以上ディーラーとして働き、年間300台以上の車を販売しました。営業も本当に頑張りました。信頼関係を築くために自ら制作した車両関連動画をYouTubeにアップしたりもしました。カメラ機材を借りて、清平(チョンピョン)や大橋のような場所に行って撮影し、時間と手間をかけました。

当時はまだYouTubeが今ほど普及していなかった時期でしたが、お客様が特定の車両について気になることがあれば、自分が作った動画をお見せました。私がどれだけ熱心に車に興味を持っているのか、そのメッセージを伝えるためです。再生回数は重要ではありませんでした。大切なのは、その映像を見たお客様に「このディーラーは本当にクルマを理解している」という印象を持ってもらうことです。

なぜ輸入車ディーラーになったのですか?

ディーラーを始める前からこの起業を考えていました。初期資本もなく、ネットワークも不足している状況で、どの市場に参入すれば起業のチャンスが得られるか悩みました。

その中で自動車は普段から興味があった分野だったので、まずは自動車市場に入り、セールスから始めてみることにしました。営業でお金を稼ぎ、資本金を集めて起業するという計画。目標は、1億ウォン(約1,070万円)とし、貯められれば起業をしようということで、1年で目標を達成しました。

車に関するビジネスだけでも市場は十分に大きく、やるべきことはたくさんあるように思えますが、様々な事業に挑戦する理由は何ですか?

最終的な目標は、車を販売するスタート地点から、車両ドライバーのライフサイクルの全過程を含む完全な垂直統合サービス体制を構築することです。ドライバーがどの時点で参入しても、当社のサービスを活用できる統合的で体系的なプラットフォームを作ることが重要です。

そのために、各過程ごとに収益をモデル化し、バーティカルサービスを実装できる能力を一つずつ構築していく過程なのです。

テスラを見てください。テスラは車両製造だけでなく、衛星を活用したスターリンク通信、自動運転技術、バッテリー生産、ソーラーシステムなど、自動車に関連するすべてのコア技術とサービスを直接管理しています。車両製造を超え、完全な統合サービスエコシステムを構築しようという戦略です。もちろんchabotが車両生産まで行うの難しいですが、韓国市場に合った垂直統合型モビリティプラットフォームを構築する。それがビジョンです。

Chabot mobilityカン・ソングンCEO、チョ・ジュンサンCFOへのインタビューはこちら👇