大型資金調達のニュースが少ないスタートアップ業界に、今月初めにかなり大きな金額の資金調達のニュースが飛び込んできました。MAKESTAR(メイクスター)がシリーズDで300億ウォン(約33億円)の資金調達を行いました。新規投資会社として米国系投資会社であるHRZとRPS VENTURES(RPSベンチャーズ)、そしてCompany K(カンパニーK)が参加し、既存の投資会社であるAltos Ventures(アルトスベンチャーズ)、KDB産業銀行、NextG Investment(ネクストGインベストメント)も続けて参加したといいます。MAKESTARに緊急資金が必要での投資だったのか…?
MAKESTARは昨年、前年比100%成長し、売上高約960億ウォン(約105億円)を記録しました。ここ2年のスタートアップ氷河期の中で最も顕著な成長を見せたスタートアップを選べと言われれば、ちょい事情通の記者はMAKESTARを代表的なスタートアップとして挙げるでしょう。K-POPという業界の黄金期と重なったこともありますが、2015年に創業したMAKESTARも、コロナ禍によって苦労して準備したオフライングッズストアやイベントが全て中止となり、危機を経験したこともありました。清潭洞(チョンダムドン)に用意した1階の大型グッズショップは、しばらく真っ暗なまま放置されていました。しかし、MAKESTARはクラウドファンディングを基盤としたグッズ制作プラットフォームから遠隔ファンミーティングやイベント企画、K-POP関連のコマースプラットフォームに進化し、着実に事業領域と顧客接点を増やしてきました。
キム・ジェミョン代表は、現在上場しているエンターテインメント会社において、複数のK-POP歌手の海外進出をサポートした、初期創業メンバー出身です。韓国歌手の海外進出が低迷していた時期、キム・ジェミョン代表はFNCエンターテインメントでFTISLAND(FTアイランド)の日本進出の現場を担当しました。その時K-POPのグローバル成功の可能性を確信したといいます。
ちょい事情通の記者2号が感じるには、最もエンターテイメント業界人らしくない起業家でもあります。他のエンターテインメント業界の人からはトレンドに対する感性や感受性といった芸術的な側面が感じられるとするなら、キム・ジェミョン代表からは別の何かが感じられます。彼は「今は企画者、エンジニアと話す時間の方が多いです、K-POPのトレンドは制作の専門家を探さなければなりません」と、話します。
K-POPは、ちょい事情通の記者の関心分野でもあります。昨今の騒がしいK-POP界を見ながら、K-POPは果たしてここがピークなのか。その先があるのか気になります。そして、K-POPのビジネスモデル、お金を稼ぐ方法についても気になりました。MAKESTARは昨年、俳優エンターテインメント業にも進出し、来年初めに初の男性アイドルのデビューを準備しています。K-POP産業はまだ拡大の余地が残っているということです。 「プラットフォームでコンテンツIPを作って成功したNetflix(ネットフリックス)のような事例があるように、すべてのK-POPファンが求めるK-POPスーパープラットフォームを作る」と語るキム・ジェミョン代表とMAKESTARのストーリーです。

MAKESTAR キム・ジェミョンCEO /MAKESTAR提供
1.ファンがまだアルバムを買う理由 「ファン心の物理的表現」
-フォトカード(トレカ)アルバムを製作されていますよね。フォトカードアルバムとは一体何ですか?アルバムがCDではなく、フォトカードの中にアルバムが入ってるのですか?
「代替アルバム」、CDの代わりになるアルバムなのでそう呼ばれています。これまでMAKESTARを通じて400万枚以上のフォトカードアルバムが販売されました。60組以上のアーティストが当社のフォトカードアルバムを通じてアルバムを発売しました。これは1年半から2年の間に達成した値です。今ではCDアルバムの代わりにフォトカードアルバムだけを発売しているアーティストもいますし、アルバム全体の売り上げの半分以上がフォトカードアルバムであるアーティストもいます。CDとフォトカードアルバムが共存する市場ではありますが、CDに代わるフォトカードアルバムの成長スピードは非常に速いです。市場の変化のスピードは、私たちが予想していたよりもはるかに速く進んでいます。
-NewJeans(ニュージーンズ)の問題で、ミン・ヒジン Ador(アドア)前代表がエンターテイメント会社におけるアルバムに付けたグッズによって押し売りするようなビジネスモデルを批判し、また、ある歌手のアルバムが包装だけを剥がした状態で山積みにされていたことが問題になりましたよね。
この問題の核心的な要因は、ファンがCDを購入するのは、音楽鑑賞というよりも、「フォトカードやその中に含まれるグッズが欲しいから」という購買動機です。今や所属事務所もCD自体にはもう価値がないと考えており、ただゴミ箱行きになるのを避けるために、フォトカードアルバムのような代替アルバムを検討しています。すでにファンからの需要はあり、この市場はさらに大きく成長するでしょう。
-CDからMP3に移行する際、もうCD市場とアルバム市場は消えるだろうと言われていました。しかし、毎年のアルバム販売量を見ると、まだ数十万枚以上アルバムを売っているアーティストがたくさんいますよね。むしろ市場が大きくなっているのでしょうか?
アルバム市場が大きくなった理由として、単純な音楽消費ではなく、ファンダム文化との結合が主な役割を果たことが挙げられます。ファンがアルバムを購入する理由は大きく分けて3つあります。1つ目は、文字通りコレクションするため。アルバムの中に入っているフォトカードやその他のグッズを手に入れるために購入するのです。これが基本的な購入理由です。
2つ目は、アーティストを応援するため。ファンは、自分の好きなアーティストがチャートで上位にランクインすることを期待して、アルバムを大量に購入する傾向があります。それだけファンの支持と応援はアーティストにとって大きな力になり、それによってより良い成果を出したいという気持ちが大きくなります。
3つ目は、イベントとのつながりです。アルバムの購入がサイン会やファンミーティングなどの特別なイベントへの参加と連動しているため、ファンはこれらのイベントに参加するためにアルバムを購入することが多いです。
このような理由から、K-POPのファンダム文化がアルバム市場を成長させ続けているのです。単にアルバムを聴くためだけでなく、コレクション、応援、イベント参加という独特なファンダムの特性が、アルバム市場の火種を再燃させたと言えるでしょう。
-私たちはアルバムだと思っているけれど、実はそのアルバムは「目に見える形」に過ぎないということですね。結局、裏側で実際に消費されているのはファンダム文化で、それが何らかの物理的な形で表現されたものに過ぎない。であれば、フォトカードアルバムがこの物理的な形態を代替して担えるメリットが必要でしょう。
フォトカードアルバムの価格は約1000円代前半です。一般的なCDアルバムより20%ほど安いです。スマートフォンでQRコードをスキャンして様々なコンテンツを楽しむことができます。アプリと連動して音楽を聴くことができ、写真や映像などのアーティストのデジタルコンテンツも含まれています。従来のCDアルバムから他のコンテンツを接続するのに必要な手順に比べると、フォトカードアルバムではより便利に、デジタル化されているのです。CDの廃棄による環境問題は何度も提起されていますが、フォトカードアルバムは環境にも配慮しています。環境にやさしい紙を使用し、環境にやさしいインクを使用しています。
-完全にアプリでコンテンツが提供されるのなら、最初からアプリのアクセスコードを渡すようにすれば、コスト削減にも効果的なのではないでしょうか。
「コレクションすることそのものにも意味があります。とにかくカードという形で手に入れて、消費するという方法です。このニーズを満足させながら、既存製品の限界や問題点を代替できる物理的な製品を実現するのです。」

MAKESTAR フォトカードアルバム /MAKESTAR提供
2.アルバム購入がファンコミュニティにつながるK-POPスーパーアプリが目標
-コロナ禍、MAKESTARのプラットフォームでZoom(ズーム)やビデオ通話機能を活用したファンミーティングを開催して話題になりました。当時、中小のアイドル企画会社から好反応でしたよね。
パンデミック期間中、MAKESTARは最も早く、最も積極的に、最も多くのビデオファンミーティングを企画したと言えます。パンデミックは終わりましたが、このようなビデオファンミーティングイベントが全くなくなったわけではありません。今でも海外ファンとの交流や、地方ファンにとってのアーティストとの意思疎通ができる場として有用な手段です。依然としてファンとアーティストが交流できる窓口は発展し続けています。一種のコミュニケーションに対するニーズですね。
MAKESTARはコマースプラットフォームでもありますが、フォトカードアルバムに連動するアプリを開発・運営しています。アプリがアーティストのデジタルコンテンツと直接つながり、その中にコミュニティ機能も追加される予定です。これらすべてを統合して、K-POPスーパーアプリに成長することが目標です。すでに社内でテストを行っています。
-ファンとK-POPアーティストのコミュニティプラットフォームはすでに複数のプラットフォームがありますよね。単純な掲示板やライブストリーミングのような機能の他に、何か特別な機能がありますか?
例えば、POCA(フォトカード)DBサービスというものを準備しています。このサービスでは、デジタルでフォトカードを一度に検索することができます。ファンが自分の好きなアーティストの様々なフォトカードをすべて確認し、自分がすでに持っているものと持っていないものを簡単に確認できるシステムです。一種の図鑑のようなサービスですね。ファンは自分に必要なフォトカードを選んで管理できるようになります。
もう一つ準備中のサービスは、ストリーミングパーティーを一箇所に集める機能です。アーティストがカムバックしたり新曲を発表すると、ファンが様々な場所で集まり、同じ曲を聴きながらチャットしたり、コミュニケーションをとるという行為が、重要なファンダム文化として存在します。このストリーミングパーティーをプラットフォーム内で統合して提供するのです。1~2週間ごとに新しい機能をテストし、ファンが気に入るかどうかを確認しながら進化させています。ですが、まだ試験段階なので、最終的なアプリに組み込まれるかどうかは分かりません。
-ファンコミュニティはすでに細分化されているのでは?そして、大手エンターテインメント企業はすでに自社プラットフォームを保有しています。HYBEの場合は、Weverseというプラットフォームにかなりの資金と人員を投資しました。
現在、ファンダム活動はNaver(ネイバー)カフェ、X(旧Twitter)、Instagramなど様々なプラットフォームで断片化されています。それぞれ異なるプラットフォームでファンが活動していますが、それを1つにまとめてくれるサービスとなると話は変わってきます。もちろん、HYBEのWeverseは自社アーティストをベースに、外部アーティストに拡大していますが、他にもファンのコミュニティが必要なアーティストはまだまだたくさんいます。
–機能的な差別化だけでなく、フォトカードアルバム購入者が集まるコミュニティの差別化も必要でしょう。つまり、このコミュニティに集まる人にはこういった特徴があるとか、このコミュニティでしかできないことがあるとか。
例えば、フォトカードアルバムを購入したファンが認証を受けたコミュニティという強みがあります。コミュニティの中で、アーティストやファン自身のイベント情報やイベント告知も確認できるようにするのです。最近はファンコミュニティにおけるフォトカードトレーディングも盛んです。この機能もアプリに実装する予定です。これまではTwitter(ツイッター)やJoonggonara(チュンゴナラ)のようなところで個別に行われていましたが、MAKESTARアプリで一つに統合して提供します。最も確実な潜在的な買い手と売り手が集まったコミュニティであれば、取引はより迅速かつ容易になるでしょうから。escrow(エスクロー)のような安全な取引システムも提供するつもりです。

MAKESTARサービス。コマースプラットフォームを基盤とする /MAKESTAR提供
3.今では4大企画社も販売するプラットフォームに成長
-売上高が1000億ウォン(約109億円)近くになりましたね。事業別売上高の割合はどうなっています
コマースが90%、残りはフォトアルバムアルバムから出ています。
K-POPがグローバルに広がっています。
実際の購入につながった国は、累計で180カ国ほどです。事実上、ほぼすべての大陸の国々がK-POP関連のグッズやイベントに参加したことになりますね。
-以前、MAKESTARにアクセスすると、まだ厚いファンダムや販売チャネルが確保されていない中小エンターテイメント会社やアイドルが多かったですが。最近では、大手芸能事務所の代表アイドルもMAKESTARでグッズを売ったり、イベント参加のファンを募集したりしていますね。
2015年に初めてサービスを開始したときは、当然のことながら新しい会社だったため、認知度も低く、主に新人アーティストを中心が中心でした。しかし、昨年から4大企画会社、SM、JYP、YG、そしてHYBEまで、すべてがMAKESTARプラットフォームに入店しました。
エンターテインメント会社はそれぞれのプラットフォームも持っていますが、販売チャネルは多ければ多いほど良いので、MAKESTARのような外部プラットフォームと協業する方が得になります。例えば、SAMSUNG(サムスン電子)が自社製品を自社モールだけでなく、coupang(クーパン)や他のチャネルでも販売しているように。
aespa(エスパ)のファンじゃない人にも、他の商品を見に来た時にaespaのグッズや公演チケットが目に入るようにできるなら、わざわざ出さない理由はないでしょう。そして、MAKESTARが単に特定のファンのためだけでなく、グローバルなプラットフォームとして定着しているため、企画会社としてはグローバルな広報効果も得られるというメリットがあります。
-こうしてコマースプラットフォームになると、Amazonのように特定のアーティストやイベントの広告をかけ、収益を最大化することもできますよね。
まだ予定はありません。MAKESTARのプラットフォームの拡張速度、アクセス国とユーザーの数がもっと大きくなれば考えることもできますが…今はコマースの購買環境そのものを改善することに注力しています。
-ファンプラットフォームの拡大が目標であれば、この事業に最も積極的に投資しているHYBEのWeverseが最も強力な競合となるでしょうか?
企業のDNAとも関係しているように思います。HYBEがどのように考えているかは分かりませんが、HYBEは彼らが保有しているリソースと資本を活用してBTS、LE SSERAFIM(ルセラフィム)、SEVENTTEN(セブンティーン)のようなアーティストのトレーニングを行い、既存のレガシーエンターテインメント産業を基盤にビジネスを拡大することに本当に強いです。K-POPの興行に多大な影響を与え、グローバル化によって成功したビジネスモデルを確立したのも事実です。
彼らの立場からすれば、このモデルをうまく続けて地位を固めようとするでしょう。一方、ITベースのプラットフォームビジネスを拡大することにどれほど優先順位を置いているかは分からないので、明白な競合にはならないかもしれません。
-プラットフォームでコンテンツを作ること、コンテンツ制作会社がプラットフォームを運営すること。2つの違いは何でしょうか?
Netflixは最初からプラットフォームベースの会社であり、ディズニーはよく知られているように世界最高のコンテンツ会社でした。ディズニーはプラットフォームであるDisney+(ディズニープラス)を後から作りましたが、その前にすでに強力なコンテンツを保有していました。
一方、Netflixは当初は外部からコンテンツを調達して提供するプラットフォームでしたが、今ではオリジナルコンテンツ制作に投資していますよね。この例から、プラットフォームを先に作ってからコンテンツに拡張する会社と、コンテンツを先に作ってからプラットフォームを構築する会社があることがわかります。どちらを優先するかで戦略が変わることもありますが、各社の基本的なDNAやビジネス手法に違いがあるのではないでしょうか?

