スタートアップ投資時に経営同意権が無効になるケースとは?
2023年7月13日、最高裁判所は、会社と利害関係者、そして投資家との間に締結する「株主間契約書」の条項が実際に有効である条件について決定した判例3つを相次いで下しました。3つの判例は、スタートアップ投資時に締結する投資契約書(新株引受契約書、株主間契約書など名称は様々です)のみを狙って出された判例ではありません。
しかし、会社と投資家との関係でしばしば約定される株主間契約条項が有効であるか、そして有効にするには、その前提条件は何であるべきかについて法曹界で抱かれていた疑問を相当数解決してくれるものでした。以下では、株主間契約のうちどの条項が効力を持たない可能性があるのか、そして最高裁判所が明らかにした株主間契約が有効である条件とは何かについて、細かく見て行きましょう。
株主間契約が無効になることもある?一体なぜ?
韓国商法は「株主平等の原則」を明示しています。株主平等の原則とは、株主は会社との法律関係において、持っている株式の数に応じて平等な扱いを受けなければならないことを意味します。
普通株式1株を有する株主は、同一株式1株を有する他の株主と正確に同一の権利を有し、第1種返済転換優先株主100株を有する株主は、第1種償還転換優先株主1株を有する株主に比べて正確に100倍の権利を有しなければならないという意味です。
このような平等さが最もよく現れるのは株主総会です。株主総会にはすべての株主が参加し、株主総会案件に対して自分が持っている株式数だけ議決に参加することができます。
また、会社の配当や会社清算時の残余財産分配などでも、これらの比例的な平等関係が成立します(もちろん優先株式は例外になることがあります)。原則として、会社が配当を決定すると、総配当金で各株主にそれぞれ保有した株式数に比例した配当金が支給され、会社が清算されるときにも債務をすべて整理した後に残余財産がある場合は、各株主に自己保有している株式数に比例して配分されます。
最高裁判所も一部の株主にのみ優越した権利や利益を付与することにする約定は、特別な事情がない限り無効と判示してきました。(最高裁判所2018)9.13.宣告2018年9920、9937判決、最高裁判所2020.8.13.宣告2003ダ29661判決を参照)
このような最高裁判所の判例の内容通りであれば、スタートアップ投資契約書に記載されることの多い投資家の権利関連条項も株主平等の原則に違反する可能性があります。
経営同意権を例に挙げます。
スタートアップ投資契約書によく含まれる投資家の権利の一つとして、「経営同意権」条項があります。経営同意権とは、投資を受けるスタートアップの重要な経営上の決定について投資家が事前に同意しなければならないという内容を意味しています。
経営同意権に含まれる事項は多様ですが、最も一般的な例は投資を受けた会社はそれ以降、新株発行(資金調達)を行うために常に投資家の事前同意を受けなければならないという条項です。
また、会社が巨額を貸出したり支出したりするときや、事業方向を大きく変更するとき、他の会社と合併したり会社を分割するときなど、会社経営に大きな影響を及ぼす事案についても経営同意権が設定され、投資家の事前同意を得るべきとしている場合が多くあります。
このような経営同意権が投資契約書に含まれる目的は様々です。
投資家は概して投資金を投入した会社をある程度は管理監督したいと思っています。特に投資家の資金が投資意図通りに支出されているかは、常に投資家が気にかけている点です。投資家の管理監督は、投資家が株主として出席する株主総会を通じて行われていますが、商法が定める株主総会の決定事項でないもの(例:新株発行)については、株主総会のみで統制する方法はありません。
さらに、投資家は会社に対して自分なりの判断と予測をして投資決定を下します。
このような判断と予測をした前提事実が突然変更(例:会社がオンラインショッピングモールを通じて安定したキャッシュフローを創出するという前提で投資したが、ある日ピボット(pivot)してAIソリューション開発事業をして数億円の研究開発費を支出したり、会社の発行株式総数が10,000株という前提で1,000株を投資したのに、急に50000株を新株発行し、投資家の持分が大きく希釈される)すると、投資家は自分たちの投資意図とは異なる運営をしている会社に投資したわけになります。
また、投資家がスタートアップの成長過程で重要な意思決定に積極的にアドバイスを入れたい場合も、経営同意権を通じて適切な時期に適切な意見を伝達できるようになります。
一方、スタートアップの立場からは投資家の経営同意権は、自分たちで迅速で適切な意思決定をするのが難しくなると思うでしょう。このため、投資を受ける会社は、なるべく投資家と交渉して投資契約書から経営同意権を削除したり、維持しても最大限範囲を減らしたいと思っています。
結局、経営同意権とは、会社の持分をより多く保有している創業者に少数株主である投資家の同意を得るよう要求する条項です。持分の多い株主が進めたいと考える経営決定を、少数持分の投資家が中断させることができるという点で、経営同意権は商法が規定する株主平等の原則に違反した条項ではないかという議論が発生していました。
実際、2021年から2023年初めに出た下級審判決では、事前同意権条項はもちろん、事前同意権条項に違反した場合、会社が負担しなければならない早期償還および損害賠償義務条項も無効と判示することでスタートアップ投資市場にも少なくない影響を与えました。 (ソウル高等裁判所2021。10.28.宣告2020ナ2049059判決、釜山高等裁判所2023.1.12.宣告2022ナ52563判決、ソウル高等裁判所2022.2.17.宣告2003ダ29661判決等)。

最高裁判所の判断
最高裁判所は2023年7月13日に3つの判決を同時に出し、株主平等の原則と投資家の権利の間の議論をまとめました。
1) 最高裁判所 2023.7.13.宣告2021ダ293213判決
投資家Aは、2016年のB社に対して返済転換優先株式(RCPS)新株発行方式で20億ウォン(約2.1億円)を投資しました。
投資契約書にはB社が当該投資より低い企業価値で投資を受けるためにはAの事前同意が必要であると明示され、これに違反する場合Bが株式買収請求権(フットオプション)を行使して投資金20億ウォン(約2.1億円)すべての返還を受け、ここに加えて投資金に利子をつけた金額を違約金として支給しなければならない、と示されていました。また、Bが投資金の返還と違約金の支払いができない場合、B社の代表取締役であるCが利害関係人としてこれを代わりに支払わなければならないという内容も含まれていました。
以後、B社は合計30億ウォン(約3.2億円)規模で新株発行方式の追加投資で資金調達を行いましたが、これに対してAの事前同意を取りませんでした。Aは是正要求をしましたが、Bが応対しないと、投資契約書に記載されたBの権利である投資金返還と違約金支給を要求する訴訟を提起しました。
最高裁判所は、株主平等の原則に違反した契約条項は特別な事情がない限り無効だが、会社が一部の株主に優越な権利や利益を付与して他の株主と違う待遇をしている場合でも、法律が許容する手続きと方式に従ったり、その扱いの差を正当化できる特別な事情があったりする場合にはこれを許容できるとしました。
続いて、本事件の投資契約書に明示された経営同意権条項を見ると、該当投資契約が締結された当時、会社は投資金が必ず必要だったため資金調達のために経営同意権条項を付与することが避けられなかったのに加え、他の株主がこれによって不利益を被ったわけではなく、むしろ投資家が会社の経営活動に対する監視を行えるようにして他の株主と会社に利益を生ませるなどの特別な事情があったため経営同意権条項が有効だとしました。
また、経営同意権条項が有効であれば、会社がこれに違反した場合、会社が償還請求等の方法で損害賠償をするようにする条項も有効であると判示しました。
2) 最高裁判所 2023.7.13.宣告2023ダ210670判決
投資家Aは、2013年にB社に転換償還優先株式新株発行方式で10億ウォン(約10.6億円)を投資しました。
投資契約書には、B社が回生手続開始申請をする場合には、事前に投資者Aから書面同意を受けなければならないという経営同意権条項が含まれていましたが、B社は2016年の経営悪化で投資者Aの同意なしに回生手続き申請を行いました。
この事件においても、最高裁判所は①番判例と同様に、株主平等の原則に違反した契約条項は、特別な事情がない限り無効であり、扱いの差を正当化できる特別な事情がある場合には、これを許容できるとしました。
また、投資家が納入した株式引受代金(投資金)は会社の流動性の確保と資本の増加にかなり寄与したものと見られる他、他の株主が経営同意権条項で不利益を受けたと断定することは難しく、むしろ投資者が会社の経営活動に対する監視を行うことができるようにして他の株主と会社の利益になった等、特別な事情があったため、経営同意権条項が有効であるとしました。
また、経営同意権条項が有効であれば、会社がこれに違反した場合、会社が償還請求等の方法で損害賠償をするようにする条項も有効であると判示しました。
3) 最高裁判所 2023.7.13.宣告2022ダ224986判決
投資家Aは2015年に会社Bに返済転換優先株式新株発行方式の投資を執行しました。
本事件において、投資家AとB社が締結した投資契約書は、前の①番及び②番の判例とは若干異なり、B社の帰責事由があるか否かにかかわらず、他の申請権者(例えば、B社の他の株主)によって回生手続きを開始申請をする場合にも、B社が投資家Aに投資金を返還することを規定する条項が含まれていました。
ところが、2016年投資家A以外の株主がB社に対する回生手続開始申請を行い、その回生手続が開始されました。
最高裁判所は、このような事例では、B社の帰責事由があるかどうかにかかわらず、回生手続開始申請が発生した場合にも、投資家Aは他の株主と異なり投資金を回収する権限を保有することになるが、これは商法が定める株主平等の原則に違反するものであり、この事件における経営同意権条項は無効だと判決を出しました。
それにもかかわらず、この経営同意権条項に違反した場合、B社ではなくB社の他の株主(利害関係人C)が投資者Aに投資金を返還しなければならないという別途の利害関係である責任条項については、これは投資者AとB社間の契約ではなく投資者Aと利害関係人Cとの間で締結された別契約とみなすことができ、投資株主平等の原則とは無関係であるため、利害関係人Cは投資者Aには、投資契約書に記載されている通り、違約金支給等を負担すべきと判断しました。
結論として、最高裁判所は(1)株主平等の原則は常に同一に適用されるのではなく、具体的な投資状況によって若干異なって適用され、株主間の扱いの差を正当化できる特別な事情がある場合には経営同意権条項と、これをそのような事前同意約定および早期償還請求または損害賠償または違約罰約定が有効となる可能性があると判示しました。
(2) さらに、株主平等の原則は株主と会社間の法律関係に適用される原則なので、会社が数人の株主と個別に締結した株主間契約があるならば、たとえ特定株主と会社に対する関係ではそのような早期償還請求または損害賠償ないし違約金約定が株主平等の原則に反して無効だとしても、他の株主に対する関係では有効と解釈されることがであると判示しました。

結論
以上をまとめてみると、最高裁判所は株主平等の原則は明らかに存在するものの、投資契約上経営同意権は株主の扱いの差を正当化できる事由があれば有効だと結論を下したのです。最高裁判所が列挙している「扱いの差を正当化できる事由」を見ると、現在の従来のベンチャー投資実務と大きくずれている点はないようです。
ただし、今回の判決は、経営同意権や違反の際に投資金の返済条項が常に有効であるとまとめたわけではなく、一部の事案に対しては、経営同意権が無効になる可能性がある余地を残したことにも留意する必要があります。
例えば、①番の判決文をみると、投資家株式を第三者が譲受する場合、経営同意権が承継されなければ、経営同意権は投資契約上債権的権利であり、投資者株式そのものに付与された株主権ではなく、株主平等の原則に違反しないとしました。そうすると、投資家株式譲渡時の投資契約の権利義務も一緒に承継されると定めた投資契約では、経営同意権は無効と解釈される可能性があるという結論が出ます。
また、当該判決では新株発行の決定は取締役会の決議事項であり、株主総会の決議事項ではないため、経営同意権の対象として新株発行を含んでいても株主の権利は侵害されないとしていますが、それならば株主総会の決議事項(例えば、合併、定款変更)は経営同意権に入れないと解釈される可能性もあります。
最高裁判所の2023年7月の判決を見れば、特定の投資家に少し優位な地位を付与しても、無条件に株主平等の原則に違反しているため無効とはならないことが確認できました。
それにもかかわらず、投資家が持つ権利が強すぎて会社の他の株主と比較して格段に優れた地位を与えると、無効と解釈される余地は依然として残っています。これは投資をする投資家の立場としても、そして投資を受けるスタートアップの立場としても株主間契約書を締結する際に留意すべき点といえるでしょう。
成功した投資と成長は結局投資契約書から始まると思います。投資契約書に記載する株主と会社、利害関係人の権利義務は、スタートアップと投資者の両方にとって重要であり、また気をつけなければならない事案です。
「慣行的にいつもこのように投資してきたから」、「慣行的にいつもこのように投資されてきたから」と考え、既存に作られた投資契約書をそのまま活用するより、投資状況および当事者と株主の現実に合わせて必要な内容を投資契約書に盛り込むように注意を払ってみることも大切でしょう。
原文:https://www.innoforest.co.kr/report/NS00000354/
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