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【そのとき投資】「診療後すぐ5分以内に漢方薬を受け取ることができます!」可能でしょうか?

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【そのとき投資】「診療後すぐ5分以内に漢方薬を受け取ることができます!」可能でしょうか?

sopoong Ventures(ソプンベンチャーズ)イ・ハクジョンパートナー

@そのとき投資(私はその時、投資することを決めました)のコーナーでは、現役の投資審査役がなぜこのスタートアップに投資したのかを共有します。

CAMELOTECH(カメロテック)は「韓方医院・韓方薬局のための韓方薬製造自動化システム」を作るスタートアップだ。CAMELOTECHのチョン・ウォンチョル代表に出会ったのは昨年、韓国農業技術振興院が管理し、sopoong Venturesが運営する農食品特化アクセラレーティングプログラム IMPACT EARTH(インパクトアース)を通じてだった。

韓医学についての私の幼いころの思い出は、当時ドラマ視聴率トップを誇っていた「ホジュン 宮廷医官への道」と「宮廷女官チャングムの誓い」であり、患者に東洋医学に基づく鍼治療と煎じ薬、灸を据える様子が思い浮かんだ。両親について韓方医院に行くと韓方専門医師のおじいさんがおり、薬局からは韓方薬の匂いがして、その匂いが嫌いではなかった。

大人になった今でもあまり変わらない。季節の変わり目になれば双花湯(サンファタン)を飲み、気力が落ちれば数年に一度、韓方のサプリメントをつくるために韓方医院を訪れる。変わった点としては最近の韓方医院は韓方薬の臭いがしないが、それは院外湯薬で生薬や製丸を別途に製造しているためである。

これまで韓方医院を利用するのに大きな不便さは感じなかった。韓方薬は好きではあるが、韓方医院で針を打つ時や韓方サプリメントを買う際に一回程度行くのがすべてで、特に改善されてほしいという思いもなかった。そんな私が運命的にCAMELOTECHに出会った。


 달이茶(DARIDATEATEA、ダリダ)と辰心香(ジンシンヒャン)ブランド製品/CAMELOTECH


「ブランド製品ビジネスへの投資は難しいと思います」

CAMELOTECHは「韓方をファンシー(Fancy)に」というタイトルを持ってブランド製品を作る会社である。伝統品のティーカプセル製品「DARIDATEA」と拱辰丹(コンジンタン)タイプの製品「辰心香」があり、特に十全大補茶、鹿茸大補茶をカプセル型でコーヒーマシンに互換可能にした「DARIDA」には、デザインや製剤的な部分で多くの悩みと努力が見えた。着実にB2B形態の売上も伸びている状況だった。

「ブランド製品は興味深くて良いが、投資は難しいと思います」これが私の最初の答えだ。製品は興味深く売上も伸びていたが、ブランドを見て投資をするには「ブランド力」がなければならない。しかしまだブランド力が検証されていると見るには難しいと感じた。

余談だが面白いのは、ブランド製品を作っているチームがブランドパワーを持った瞬間、投資家が訪れて投資をしたがるのだが、いざその時になると創業チームは売上と営業利益が発生しているため、投資を受ける理由がない。お金はその前に必要なのに。ブランド製品を作るチームが宿命のように資金調達の際に経験するアイロニーだ。

 

スマート製薬システム初期モデルの写真/CAMELOTECH


投資は難しいと言うと、「では、これには投資できますか?」と見せてくれたのが韓方薬を当日に受け取ることができるスマート製薬システムだった。

「診療後すぐに韓方薬を受け取ることができるって?可能なんですか?」と尋ねた。自らが必要として作り、薬局でテストをしているが、現場の韓医師の反応は良いということだった。

その話を聞いて最初に考えたのは、それが可能であれば、「風邪をひいたら韓方医院に行って処方を受けて、自分の状態に合わせてすぐに生薬を受け取ることができるのか?」、風邪をひいたときに葛根湯を自分の状態に合わせた、韓医師の処方を受けて飲むことができればかなり良さそうだと感じた。

そんな韓方医院に行きたいと思い、「代表、これだったら可能だと思います」と答えた。


「ブランド製品ビジネスとインフラビジネスの交差点」

ブランド製品ビジネスとインフラビジネスは基本的に拡張戦略が異なる。ブランド製品ビジネスは、ブランドパワーを持つことが重要で、持ち得れば、単一製品だけでも安定した売上と営業利益をもたらす。ただし、成長するためにはその後も後続製品が出て来なければならない。

インフラビジネスは、インフラを構築するのに初期費用と時間がかかるが、一旦インフラを構築すれば、そこに代わるのは難しく、そのインフラに基づいてより多くのビジネスチャンスを手にすることができるということを前提としてる。

2つのビジネスのうち、どちらに投資するかは各投資会社によって異なる。ただし、初期段階でブランド力がまだ検証されていない製品ビジネスに投資をすることは難しいが、同じ状況のインフラの可能性があるビジネスへの投資は可能である。

製品を作る多くの農業・食品スタートアップがこのような状況に直面しているが、当事者の立場からすると、もどかしく悔しいと思う。CAMELOTECHは、企業を成長させ、拡大するためにスマート製薬システムを高度化することを決めた。

決定後非常に早い速度で新バージョンの製品化を推進したが、最大の特徴は液状の漢方薬を固体規格化してカートリッジ方式を採用したということである。 


スマート製薬システム最新モデルの写真と固体漢方薬カートリッジ/CAMELOTECH


まるでプリンターにインクをいれるように固体漢方薬カートリッジを作り、充填すれば韓医師が処方した電子チャート処方に合わせてワンクリックで生薬を作ることができるシステムを考案したのだ。

「これがどれほど革新的なのか?」というと、韓方薬を当日に受けることができるだけでなく、自分の状態に合わせた韓医師の処方に応じて生薬を受けることができる。私も既存の韓方医院を利用するのに大きな不便は感じなかったが、こういうものがあるなら韓方医院にもっと行きたくなる気がした。

現在、CAMELOTECHは、企業の成長のためにスマート製薬システムに集中してはいるが、安定的な売上を上げることができるブランド製品を販売している。

よく売れてはいるものの、通常投資的視点では、初期は1つに集中したいが投資環境が梗塞されている状況では安定的な売上とブランド認知を高めてくれるブランドビジネスと長期的な成長性をもたらすインフラビジネスの2つの成長方式は別にあり、交差する所を探して行くのが正しい選択のようだ。


「韓方医学のグローバル競争力のための標準化とシステム」

チョン・ウォンチョル代表は海外探訪中に、日本のKampo(カンポ)医学が世界医学界で認められ、位が高いのを見て創業を決心したという。カンポ医学は、日本の医師が投薬し、東洋医学治療を通称する用語である。

中国が東洋医学の発祥地であり、韓国で三国時代以前に独自の医学が発達して日本に伝えたという記録もあるが、現実は日本のカンポ医学企業がグローバル韓方薬市場のうち、特許医薬品市場シェア約80%を占めている。

韓方薬に対する薬理性、毒性、製剤構成分析などの標準化に多くの資源を投資し、厳格な品質管理と生産工程管理をシステム化することで、韓方薬に科学技術を加えて集中した。これが可能な理由は「標準化」と「システム」にあった。

これに韓国の韓方医学の標準化に対する研究も続いている。CAMELOTECHは524種の韓方薬原液を抽出して、規格化した錠剤形態に固形化し、これをカートリッジに充填された状態で漢方病院に提供しようとしている。

病院で韓医師が患者の状態に応じてコンピュータを介して、韓方薬を処方すれば、韓医師処方に合わせて個々の韓方薬がカートリッジを通じて排出・溶解されて混合され、その後5分で液状の韓方薬が調剤されるシステムだ。

このようなシステムを利用すれば調剤から包装まで全過程が自動で行われ、韓方薬を処方当日受け取ることができ、少量調製も可能だ。韓方薬の固化規格化技術により、賞味期限を24ヶ月まで伸ばすことができる。

韓国の韓医学技術とスキルは高い。しかし、グローバルでの競争力を持つには、それを支える標準化とシステムのための科学的技術力が必要だ。


 「『ホジュン 宮廷医官への道』と『宮廷女官チャングムの誓い』のある国」

朝鮮時代に登場したホ・ジュンは、当時中国と韓国の医学書籍を集め、伝統医学の標準を提示した東医宝鑑の著者だ。その時代の病気の予防と処方の要点、韓国産薬材の名称などを網羅し、整理して基礎を作ったと言っても過言ではない。

私の記憶の中で「ホジュン 宮廷医官への道」と「宮廷女官チャングムの誓い」は視聴率50~60%を誇った最高のドラマだったが、興味深いのは最近Kコンテンツの地位が高まり、ほぼ20年前のドラマである「宮廷女官チャングムの誓い」が再び流行し、それにより韓国の韓医学や韓方製品への関心も高まっているという。

高齢化が進み、東洋医学と韓国の韓医学への関心も高まっている今の時期は、韓国内のみならずグローバルでの韓医学の位を高めるべき絶好の機会ではないかと思う。韓医学がグローバルに進出するという部分で、CAMELOTECHは韓医師にとって薬局の甘草のような役割を果たすだろう。

最近、グリーンバイオの一つの領域として、天然医学素材についても活発に研究されている。臨床試験を経て個々に認定を受けた素材も増えているが、もしこれを固体化し、患者にオーダーメイド型で処方できれば、韓方薬処方の領域はさらに無限に広がっていくだろうという思いもある。

故チョン・ジュヨン名誉会長が造船所を建てる借款をしてもらうためにイギリスに行って、当時のイ・スンシン将軍と亀甲船が描かれた紙幣を取り出し、300年前に亀甲船を作った国であり、潜在力は十分だと説得したという逸話は有名だ。個人的な想像だが、CAMELOTECHがホ・ジュンと東宝医鑑を持ち出して、400年前に東洋医学の標準を作った国である、と説得し、海外投資を引き込み、東洋医学の世界的な企業になる日を想像してみる。

チョン・ウォンチョル代表がNASDAQ(ナスダック)に上場する、という高い抱負を話す時があるのだが、そのとおり必ずNASDAQに上場することを願っている。

/media/ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)
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ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)

朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。

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