映像制作ツールの間をつなぐSFACESPACE「Klipse」、「切り抜き」の国へ向かう理由
AIを利用した映像生成ツールが登場した後も、クリエイターの一日は相変わらず慌ただしい。企画はチャットボットで行い、画像は画像生成ツールで、映像はまた別の生成ツールで作成する。字幕とカット編集は編集プログラムで、アップロードはチャネル管理画面で、成果確認は分析ツールで行う。その合間ごとにファイルをダウンロードして名前を変えて保存し、再びアップロードする作業が繰り返される。ツールが5~6個あれば、サブスクリプションも5~6個になる。そんな映像制作の現場を改善しようと、SFACSPACEはこの間をつなぐツールを作った。
SFACSPACEは、コンピュータビジョンを基盤とした映像処理ソリューションと映像データ構築事業、IT教育ブランド「スナイパーファクトリー」を併せて運営してきたソウル・麻谷(マゴク)にあるAI企業だ。去る7月8日、同社が正式リリースした「Klipse」は、コンテンツ企画からAI生成、編集、投稿、成果分析までを「ノードキャンバス」という一つの画面でつなぐWebベースのサービスだ。各作業段階が画面上にブロック(ノード)として配置され、前段階の成果物が次段階の入力としてそのまま引き継がれる。例えば5つのカットのうち3番目のカットだけが気に入らなければ、そのブロックだけを再実行すればよく、残りの作業はそのまま残すことができる。同社はこのサービスを携えて日本・東京進出を準備している。そんなSFACSPACEで代表を務めるヨム・ミンホ氏に話を聞いた。
Klipse以前に「サムノート」というサービスを作って整理したとお聞きしました。
「はい。前に『サムノート』というサービスを提供していましたが、それほど大きくない金額で売却しました。当時はサムノートのようなサービスがかなり増えていたんです。そんな市場の規模を見て、これはビジネスとして成立しなくなると判断しました。実はサムノートの核心はサービス自体よりも、契約を結んでいた大学インフラだったんです。それを譲渡することになりました。」
サムノートは、ヨム代表がKlipseに先立って作ったAI基盤の情報キュレーション・要約サービスだ。経済・IT分野の情報をAIで選別・要約するサービスだったが、彼はこの経験からメディア産業の成否を分ける競争力は結局「速度」であるという確信を得たと説明する。サムノートが情報を探して理解する時間を短縮するサービスだったとすれば、Klipseはコンテンツを企画し、作り、発信し、成果を確認する全過程の時間を短縮するサービスだという。
作るためのツールはすでに多い、Klipseが解決しようとする問題とは
ヨム代表は、映像制作そのものよりもツール間を行き来することに時間がかかると見た。
既存のサービスであればサービスごとに担当範囲があり、あくまでもその区間のみを担当する。編集に強いサービスは編集を、ロングフォームをショートフォームに切るサービスはその変換を得意とするが、その区間の前後はすべてユーザーの負担になる。成果物をダウンロードして次のサービスに再びアップロードする瞬間、前の段階で何をなぜそのように作ったのかという文脈は消えてしまう。しかし、Klipseでは生成した画像・映像・音声がファイルとしてそれぞれ保存されるのではなく、そのまま次の編集段階、投稿段階へと引き継がれる。
ロングフォームをショートフォームとして再構成する「ハイライト」機能を前面に打ち出す
「分野ごとに、例えば大食い(モッパン)映像なら、どの部分で再生数が爆発するかというアルゴリズムがあるんです。大食いのロングフォームをアップロードすると、これを何個に分けるかを判定して、すぐにアップロードできるようにし、ショート動画の作成まで全部やってくれるのが核心です。もう一つ、従来は編集段階に行くには別の編集プログラムに移らなければなりませんでした。私たちはそうした作業なしに内部ですべてできます。それもとても楽に、簡単に。そのため、コンテンツ一つを作るのにかかっていた時間が大きく短縮されます。」
機能自体はChatGPTやGeminiのような汎用AIがプロンプトだけでできることのように感じます。大手事業者が参入してくる可能性もあると思いますが…
「最近のような時代にそうでないビジネスがどこにあるかという気もします。汎用AIがプロンプトでできそうなことでもあります。ただ、実際のクリエイターの領域、自分のコンテンツを本当に見栄えよく仕上げなければならない領域では、プロンプト入力だけで代替するのは容易ではないと考えています。」
競合他社が簡単に追いつけない、Klipseの核心資産とは
「私たちの核心は前段と後段にあります。今のKlipseの基準では、映像を作る際に使わなければならない複数のツールを一つのツールで使えるという点です。しかし、より遠い未来に見ているのは制作の前段階にあたるアーカイブです。クリエイターたちは以前撮影した映像がどれほど価値を持っているか知らないまま過ぎてしまうことが多いです。管理ができないからです。映像理解技術を組み込んだ私たちのソリューションは、以前のどの映像が今になってどの地点のために反応が来るだろうというポイントを捉え、自動でショートフォーム編集まで行い、それを追跡できるマーケティング手段まで連携されています。古い映像の価値を発見し、再生産し、二次加工できるようにすることが本質であり、アーカイビングが始まると離れられなくなります。韓国のかつての国民的バラエティ番組『無限挑戦(ムハンドジョン)』のような有名な作品を今私たちが興味深く見られるように二次加工するような形です。」
ベータテストに参加したあるクリエイターはKlipseを「AI映像界のFigma」と表現したと同社は伝えた。個別機能よりも作業全体が一つの画面でつながっている点を表現した言葉だ。
B2Bサービスか、B2Cサービスか
「両方やっています。私たちは『スナイパーファクトリー』という教育ブランドも運営しているので、教育課程に私たちのソリューションを組み込んで映像生成教育課程を開くこともしています。クリエイター向けにも、企業向けにも提供していて、ソウル芸術大学校やテレビ局などでも私たちのソリューションをご利用いただいています。」
リリースから一か月ほど経ったが、市場の反応はどうか。
現在、Klipseは4種類のサブスクリプションプランとクレジットチャージを組み合わせた課金体系で運営されており、実際に決済が発生しているケースもあると同社は明らかにした。
同社がより重視する指標は、正式リリース直前にクリエイター26名を対象に行ったベータテストの結果だ。自社アンケート基準で、成果物を修正なしまたは軽い修正だけですぐにアップロードできると答えた割合が73%、無料ベータ段階で有料転換の意向を示した割合が67%だった。サンプル数が大きくない自社調査である上、回答はあくまで意向であり実際の転換率とは異なる。具体的な有料顧客数や売り上げ規模は明らかにしていない。ただ、見慣れない作業方式が通用するかどうかの最初の検証だったというのが同社の説明だ。
登録者500万人台のYouTubeチャネルを対象に、ハイライト抽出と複数プラットフォームへの同時配信を実際の運用環境で試してもみた。各段階で使われるモデル性能を補強するため、NAVER Cloud、アリババクラウド、Twelve Labsなどモデル事業者との連携協業も進めていると同社は付け加えた。

ヨム・ミンホSFACSPACE代表。SFACSPACEはKlipseを前面に押し出して日本・東京市場進出を準備している。©Platum
なぜ日本を初の海外市場として選んだのか
「まず、韓国から行くのに一番楽じゃないですか。1時間で行けますし。もちろん、中国も近くにありますが、韓国文化がかなり浸透している国でもありますし、まずは日本じゃないかと選びました。そして私たちのストレージは韓国内はNAVER Cloud、海外はAWSなのですが、中国ではグローバルのAWS環境をそのまま使うことができません。そうういった事情からもより一層日本市場が魅力的でした。」
中国でAWSは別途の中国リージョンとアカウント、現地事業者が運営する体系を経なければならない。グローバルインフラをそのまま移せないという点が負担だったという話だ。
日本を選んだ背景には、Klipseの技術的な背景もあったという。同社によるとKlipseはロングフォーム映像処理技術から出発した。ハイライト抽出はすでに蓄積された映像が多い市場で特に価値が大きい。日本は放送・バラエティ・アニメーションにライブアーカイブまでロングフォーム資産が厚く、長い映像から良い区間だけを切り取って再編集してアップロードする「切り抜き」文化がすでに一つの産業として定着している市場だ。同社の立場では切り抜き需要を新たに作る必要がない。すでにある需要にKlipseを提案すればよい。
サイバーエージェントがデジタルインファクトと共同で発表した「2025年日本動画広告市場調査」によると、日本の縦型動画広告市場は2025年に2,049億円と前年の1.6倍規模に成長し、2029年には5,648億円に達すると見込まれている。クリエイターエコノミー協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが昨年12月に発表した共同調査では、2024年の日本のクリエイターエコノミー市場規模は2兆894億円と推算された。
ヨム代表が描く顧客は三層だ。個人クリエイター、ブランドマーケティングチーム・広告代理店・MCN(クリエイター所属事務所)、そして放送・エンターテインメントのような大手コンテンツ企業だ。個人クリエイターはオンラインでも検証できる。一方、映像資産を蓄積しチーム単位の有料プランを契約する顧客は主に後の二層だ。この市場は少数に集中している。東京商工リサーチが集計した日本の広告会社1,823社の2024年度実績を見ると、売り上げ100億円以上の59社が業界全体の売り上げの65%を占めた。これら大手代理店と主要放送局、MCN・エンターテインメント会社の本社はほとんどが東京にある。日本の中でも東京を拠点に定めた理由については、「結局PoC(概念実証)を行うことが最も重要な要素です。実際に大手通信会社やコンテンツ企業に会って話す機会を作るにはやはり東京がいいのではないかと考えました」と話した。
Klipseはすでに商用化されており、現地のミーティングでもすぐに製品を見せることができる。相手会社が持つ映像をその場で入れてショートフォームが出来上がるところまで実演できる。スライドやデモ映像ではなく、相手の実際のコンテンツで対話を始めるわけだ。
日本の映像特有の画面字幕(テロップ)文化がある。AI編集にも「見る味わい」まで作れるのか
「映像に感性を乗せることができます。夏の感性も、日本人が感じる日本的な感性も乗せられるプリセットがあります。プリセットをクリックすれば、望む形で作業できます。」
韓国内での定着と日本進出がぶつかったら何を先に手放すか。
「ぶつからないように最初からうまくやらないといけません。ぶつかってはいけません。それぞれのチームの目標があるでしょうから。まずは、PoC2件を目指しています。私は欲がないこともありますが、これは私たちの会社の事情とも似ています。私たちはこれまで一度も投資を受けたことがありません。だからこそより一層、石橋を叩きながら進んでいます。これまで事業をしてきた方向性がそうでした。私は黒字でなければ、事業が金を稼げなければ、それは事業ではないと考えています。前を見ながら、石橋を叩きながら進みます。」
準備は整えてある。同社は現地での商談後2週間以内にカスタマイズした提案書を送り、一か月以内にテストアカウントを開いて企業PoCに入る手順をあらかじめ定めている。現地で共同営業やリセリングを共に行う販売パートナーの発掘も並行している。日本語のホームページと製品紹介資料、サービス内の多言語体系と多通貨決済も整えてある。準備を終えてから市場を選んだのではなく、市場を先に定めてそれに合わせて準備を整えてきたというのがヨム代表の説明だ。ここに今年推進中のAWSマーケットプレイス登録が加われば、日本企業が慣れた方式でサブスクリプション・契約・決済を進められるようになる。
PoC2件を作るための戦略はあるか。
「大手通信会社などの紹介をたくさん受けています。日本の放送業界は伝統があり、新しいツールを受け入れる際の検討が長く、慎重です。先ほどPoC2件と申し上げましたが、それが可能かどうかもよくわかりません。これまで日本をビジネスで5~6回訪れましたが、ビジネスを一つ始めるまで、食事を一度共にするところまで1年かかりました。だから名刺100枚は重要ではないと言ったのです。たくさん会って何をするのかということです。結局確率を高めなければならず、同じ相手に何度も会わなければならないということですから。」
<画像=SFACSPACEヨム・ミンホ代表/©Platum>
