「バイオ企業ではあるが、当初から臨床参入よりも大量生産能力の確保に懸けてきた。この戦略が、メガカリオンが打ち立てた45Lの記録を上回ることができた背景でもある」
イ・ミヌ ドゥセル代表は最近、MONEYTODAYのスタートアップ専門メディアプラットフォーム「ユニコーンファクトリー」との取材で、「Ducell(ドゥセル)は韓国内で人工血小板の大量生産体制を最初に構築した企業だ」と述べた。
2021年に設立されたDucellは、幹細胞ベースの人工血小板を開発・生産するバイオスタートアップだ。同社は今年1月、世界初となる50L培養器を活用した人工血小板生産に成功し、大量生産の基盤を整えた。これは、人工血小板開発の先頭を走る日本のメガカリオンが昨年末に達成した45Lの生産記録を上回る成果だ。以降Ducellは京畿道安養(アニャン)の準GMP(準優秀医薬品製造管理基準)生産施設を買収し、本格稼働を控えている。

イ・ミヌ ドゥセル代表/提供:Ducell
先行企業の試行錯誤を反面教師に…最終的に日本を追い抜く
Ducellが臨床より生産に先に集中したのは、日本のメガカリオンの事例を反面教師としたためだ。2012年に設立されたメガカリオンは、世界で初めてiPSC(人工多能性幹細胞)ベースの人工血小板臨床に進み、安全性を立証した。しかし当時は生産効率が低く、10L培養器4台を稼働してようやく患者1人に投与する分量を生産できる程度で、大量生産の限界を露呈した。結局現在は臨床2相を暫定中断したまま、生産工程の高度化と製造効率の改善に力を注いでいる。
Ducellは同じ試行錯誤を繰り返さないため、研究初期からスケールアップ技術と生産施設の確保を最優先課題とした。その結果、今年1月に世界で初めて50L培養器を活用した人工血小板生産に成功し、メガカリオンの記録を上回った。Ducellは現在、安養の生産施設に50L培養器2台を導入し、月100L規模の生産体制を構築している。来年には200L培養器2台を追加導入し、長期的には月500L規模まで生産能力を拡大する計画だ。あわせて2027年末から輸血用人工血小板の臨床を推進し、早ければ2029年の商用化を目指している。
「血液不足はすでに現実化」…赤血球ではなく血小板を選択
人工血小板の商用化に成功した企業が世界的に存在しない中、イ代表がこの分野に挑戦したのは、韓国内の血液供給体系の限界を直接目撃したためだ。イ代表は緑十字、Handok(ハンドク)、ファーストバイオを経て、抗がん剤、退行性脳疾患治療薬、糖尿病治療薬などの新薬開発の経験を積んできた。特に緑十字在籍時に血液製剤事業を間近で見守り、献血に依存する韓国内の血液供給構造の脆弱性を実感した。血液需給に支障が生じるたびに海外から原料を調達しなければならず、原料血液の価格も着実に上昇していた。献血人口の減少と高齢化が続くほど、既存の供給体系だけでは限界が明らかだと判断した。
決定的なきっかけは2020年の新型コロナウイルスパンデミックだった。社会的距離確保と献血減少が重なり、血液不足事態が現実化した。これを受けて政府も人工血液開発の必要性を公式に言及し始めた。これを契機にイ代表は、人工血液の商用化がもはや遠い未来ではなく現実的な課題だと判断した。
イ代表は「幹細胞技術も十分に発展した以上、今こそ人工血液を商用化できる時点だと考え、2021年に創業を決意した」と語った。
一般に「人工血液」と呼ばれるが、現在の技術で人間の血液全体をそのまま作ることは事実上不可能だ。代わりに、血液を構成する赤血球や血小板などの個別成分を幹細胞で生産する方式が現実的な開発方向となっている。Ducellが赤血球ではなく血小板を選んだのは、血小板の事業拡張性のためだ。血小板は止血機能だけでなく、傷が治り新しい肌が再生する過程でも重要な役割を果たす。傷ができると血小板は出血を防ぐと同時に、組織再生と細胞成長を促進する様々な成長因子(Growth factor)を分泌し、損傷した組織の回復を助ける。この特性を活用すれば、細胞治療剤の培養素材はもちろん、変形性関節症や皮膚再生など様々な再生医療分野へ事業を拡大できると判断した。輸血用人工血小板の商用化には長い開発期間と莫大な資金が必要なため、同社は血小板を活用した複数の派生事業を通じてまず収益基盤を整えるという戦略だ。
溶解物から再生治療剤まで…「輸血用人工血小板開発のための成長エンジン」
このプラットフォーム戦略の最初の事業が、先端バイオ素材「血小板溶解物」だ。血小板溶解物は血小板を分解して得た成長因子素材で、細胞を培養するのに使われる。細胞を増殖させるためには成長因子が不可欠だ。Ducellは人工血小板溶解物を細胞治療剤開発企業などに供給し、早ければ年内に売り上げを上げる計画だ。特に血小板溶解物は別途の認可手続きが不要で、臨床なしでもすぐに売り上げを出せる。
イ代表は「すでにドイツのPLバイオサイエンスと200万ドル規模の購買意向書(LOI)を締結しており、今年下半期に本契約が締結されれば初の売り上げが発生すると期待している」と述べた。
中長期的には変形性関節症治療薬をはじめとする再生医療分野へ事業を拡大する計画だ。現在医療現場では、患者自身の血液から血小板を分離して使用するPRP(多血小板血漿)治療が活用されているが、人によって血小板の品質が異なり治療効果にも差が生じる。一方Ducellは、GMP生産施設で標準化された人工血小板を生産し、一貫した品質を確保することを目標としている。
イ代表は「輸血用人工血小板の開発が会社のミッションだとすれば、血小板溶解物と再生治療剤用血小板事業はそのミッションを現実にする会社の成長エンジンだ」と語った。
原文:https://www.unicornfactory.co.kr/article/2026080622520725573
