【MTリポート】宇宙AI工場がやってくる

【編集より】イーロン・マスクのSpaceX(スペースX)が12日(現地時間)、NASDAQ市場に上場した。SpaceXの上場は、Starlink(スターリンク)、Starship(スターシップ)、xAIを一体化し、宇宙に巨大なAIインフラ・宇宙データセンターを構築しようという長期構想の出発点でもある。SF小説のようなSpaceXのビジョンが次世代AI産業の解答となり得るか検証する。

宇宙テリトリー争い…「宇宙DC、本当に実現できるの?」専門家の見解は

「乗り越えるべき山が多い技術です。自動車・ロケット・スマートフォン市場の黎明期のように」。

宇宙データセンター(DC)について、韓国のある科学技術専門家はこう語った。SpaceX、Blue Origin(ブルーオリジン)、Starcloud(スタークラウド)などの米国企業から中国スタートアップのADA Space(成都国星宇航科技有限公司)まで参入しているが、きちんとした成果物を示したところはまだない。しかし、1〜2年以内と、予想より早く実現できるという見通しも出てきている。

宇宙で初めてAIを稼働させた事例はすでに昨年12月に登場した。米スタートアップStarcloudの「Starcloud-1」衛星だ。NVIDIA(エヌビディア)の「H100」チップを1個搭載した60kg級の小型衛星は、昨年11月に打ち上げられ、約1か月かけて宇宙でGoogleのLLM(大規模言語モデル)「Gemma(ジェマ)」を訓練した。その後12月には「こんにちは、地球人たち!私が想像する通りなら、青と緑の魅惑的な組み合わせだ」という最初のメッセージを地球に送った。

ただし、Starcloudが厳密な意味での「宇宙DC」を実現したとは言い難いというのが専門家たちの見解だ。人類にAIサービスを提供するには、単純なメッセージ生成を超えた、意味のある水準の推論・演算が可能でなければならないからだ。高性能GPUを最低でも数十枚搭載した衛星が、十分な電力供給を受けながら昼夜を問わず稼働することが前提となる。イ・チュンウ韓国航空宇宙研究院宇宙探査研究センター長は「GPUが宇宙放射線環境に耐えながら任務を遂行できることを確認したという点には意味がある」としながらも、「数十万枚を搭載した地上データセンターと比べれると、機能はデモレベルに留まっている」と述べた。

現在「完成形」に近いと評価されるモデルは、「エッジコンピューティング」の役割を担うノード(Node)衛星を中心に、複数の観測・通信衛星を接続した群集衛星だ。地上・海洋観測などの任務を担う衛星たちは、地球低軌道や静止軌道を周回しながらデータを収集する。小型のキューブ衛星でも十分に実現できる。こうして集めたデータは、衛星間レーザー通信を通じてノード衛星へ送信される。ノード衛星はStarcloud-1のようにGPUを搭載した衛星で、複数の衛星が送ってきたデータをリアルタイムで集約・分析する、いわば「頭脳」の役割を果たす。処理されたデータは低軌道通信衛星網を通じて地上へ転送される。SpaceXが構築した「Starlink」がまさにこれにあたる。

イ・チュンウセンター長は「群集衛星を構築するという観点で、より成功に近づいていると見られるのは中国の宇宙コンピューティングスタートアップADA Spaceだ」と述べた。ADA Spaceは昨年5月、宇宙データセンター用衛星12基を打ち上げた。中国ビッグテック企業Alibabaが開発した大規模AIモデル「Qwen(チューエン)-7B」が搭載されており、衛星ごとに1秒間に744兆回の演算が可能な高性能AI半導体を搭載しているとされる。これらの衛星をすべて接続すると、一つの巨大な宇宙スーパーコンピュータが出来上がる。いわゆる「三体群集コンピューティングシステム」だ。

再利用打ち上げ機から放熱板まで…克服すべき難題は

米テキサス州ボカチカのスターベースでSpaceXの次世代メガロケット「Starship V3」が12回目の試験発射を行っている。
全長124mに達する次世代モデル「V3」は、イーロン・マスクの宇宙企業SpaceXのIPOを前に試験発射に成功した。

まだ道のりは長い。宇宙DC構築のためには乗り越えるべき難題が山積みである。代表的なものとして、電力供給、冷却、宇宙放射線、打ち上げ機の4つが挙げられる。高性能GPUは莫大な電力を必要とする。NVIDIAのH-100チップ1個だけでも最大700W(ワット)の電力を消費する。宇宙には無限のエネルギー源である太陽熱があるが、太陽電池技術が伴ってはじめて太陽熱を実際の電力に変換できる。ロケットに積んで打ち上げられるほど軽量でありながら、変換効率が高く耐久性に優れた太陽電池が必要だ。

冷却も問題だ。宇宙空間は零下数十度と非常に寒いが、完全な真空状態だ。地上のように自然な空気循環で熱を排出することができない。そのため、衛星が継続的に熱を放出できるよう巨大な放熱板を取り付けなければならない。これが衛星の総重量を増加させる要因となる。

宇宙放射線に強いAI半導体も必要だ。宇宙には目に見えない小さな放射線粒子が無数に漂っており、半導体素子がこの粒子にさらされると誤作動が生じる可能性がある。実質的な演算と推論を担うAI半導体にとって極めて致命的だ。

何より、低コストの打ち上げ機が確保されなければならない。専門家たちは、衛星数万基を宇宙空間に展開するためには、少なくとも週に数回は打ち上げ機を発射する必要があると見ている。現在、それに近い打ち上げサービスを持つのはSpaceXがほぼ唯一だ。「韓国型打ち上げ機」のNuri号でさえ、2023年の3回目の打ち上げ以降、約2年の空白を経て2025年11月に4回目の打ち上げを行った。打ち上げ単価を下げるためには、打ち上げ機を複数回再利用する「再使用型宇宙往還機」技術も必要だ。商業レベルの再使用型宇宙往還機技術を実証したのは、SpaceXとBlue Originのみだ。

解決策を探しながら技術格差を克服するためには、「小さな試み」から着実に重ねていくべきだという声も出ている。航空宇宙工学者のキム・スンジョ ソウル大学機械航空工学部名誉教授は「Starcloudは創業1年で初の衛星を打ち上げた。技術的に見れば韓国でも十分に可能なレベルだ」と述べた。さらに「60kg級の小型衛星だったとしても早期に打ち上げて、韓国の実証事例を作っていくことが重要だ」と強調した。

米スタートアップStarcloudの初の衛星「Starcloud-1」/Starcloud SNS

宇宙産業が開花すれば、韓国DC基盤技術確保・実証に追い風

韓国宇宙産業エコシステム比較/デザイン=ユン・ソンジョン

SpaceXの上場が韓国に与える波及効果への関心が高まっている。SpaceXと協業する韓国企業が増えたり、政府の「宇宙データセンター打ち上げ」のスケジュールが加速するという期待の声が上がっている。宇宙産業が高い品質とセキュリティを要求する以上、既存の供給業者との長期協業が続く見通しだ。

「垂直統合」で知られるSpaceXは、バリューチェーンに入れるのか?

SpaceXは最近提出した投資説明書で「当社のサプライチェーンは概ね垂直統合されているが、打ち上げ機・衛星・AIなどの部門に不可欠な一部の特殊素材や部品は外部サプライヤーに依存している」と明らかにした。SpaceXのバリューチェーンは強固であるものの、外部企業が参入できる扉は開かれているということだ。

ここ数年で韓国の宇宙企業も分野別に100社以上に増えた。宇宙航空庁(KASA)が発表した「2025年宇宙産業および航空製造産業実態調査」によると、2024年基準で韓国内の衛星体(衛星本体)分野の企業はNARA Space Technology(ナラスペーステクノロジー)、SatrecI(サトレックアイ)、HANCOM InSPACE(ハンコムインスペース)など102社で、2020年より40社増加した。打ち上げ機分野の企業はHanwha Aerospace(ハンファエアロスペース)、INNOSPACE(イノスペース)、Perigee Aerospace(ペリジエアロスペース)など108社で、同期間に24社増えた。さらに地上局・発射台など地上設備分野(111社)と、リモートセンシング・衛星放送通信・衛星測位などの衛星活用サービス分野(188社)もそれぞれ24社、23社増加し、エコシステムが拡大してきた。

とりわけ、すでにSpaceXと協業中の供給業者に注目が集まっている。宇宙打ち上げ機用素材であるニッケル合金を生産するSphere(スフィア)は昨年8月、SpaceXと10年以上の長期供給契約を締結した。先端金属製造企業HVM(エイチブイエム)も特殊合金を供給しており、INOX(イノックス)先端素材は2023年から宇宙航空用電磁波シールド(EMI)キャリアテープを納品している。OCIホールディングスの子会社OCI TerraSus(テラサス)は、太陽電池用ポリシリコンの長期供給契約締結が有力とされている。これらの供給業者はSpaceXとの長期協業が期待されている。

SpaceXは投資説明書に「新たなサプライヤーの資格を検証したり、代替協力業者へ切り替えるプロセスには長い時間がかかるか、あるいは失敗することもある」とし、「特定の重要な製品やサービスについては、資格を持つ協力業者のプールが限定されており、価格上昇圧力や品質リスクにより大きくさらされる」と記した。

政府、K-ムーンショットで宇宙データセンター開発…追い風は吹くか?

SpaceXが公開した映像写真に、先月22日(現地時間)、米テキサス州ボカチカのスターベースで試験発射されたSpaceXの「Starship V3」が地球大気圏に再突入している様子が映っている。

SpaceXの上場に注目が集まれば、韓国政府の宇宙データセンター事業にも追い風が吹くという期待が高まっている。代表的な事業が科学技術情報通信部が推進する「K-ムーンショット」だ。科学技術分野にAIを全面導入する超大型R&Dプロジェクトで、計12のミッションで構成される。「宇宙データセンター基盤技術確保・実証」はその一つだ。2030年までに関連中核技術を宇宙で実証し、2035年にノード衛星を打ち上げることが長期目標だ。ノード衛星はデータセンターの中核衛星として、低軌道衛星からデータを受け取りAIを活用して圧縮・分析する。2030年には小型衛星を打ち上げ、太陽電池パネルの作動確認、AI半導体の不良有無、地上との衛星通信の確認を行う予定だ。打ち上げ機にはNuri号を活用する計画で、韓国内企業が開発したAI半導体を使用する。

K-ムーンショットのPDを務めるイ・チュンウ韓国航空宇宙研究院宇宙探査研究センター長は「宇宙データセンターは国家安全保障と直結しているため、中核技術はできる限り国産を使いたい」とし、「最終ロードマップは今年9月の科学技術関係閣僚会議の議決を経て発表される予定だ」と語った。

<画像=宇宙データセンター群集衛星モデル/ユン・ソンジョン>

原文:https://www.unicornfactory.co.kr/article/2026061022152493168