近年、韓国のスタートアップの投資市場は閉塞局面に陥っている。コマース、プラットフォームなどだけでなく、人工知能(AI)技術を基盤としたテック企業は、高い技術力を有しているにも関わらず、米国など海外企業に比べて評価が低い現実に直面している。これは投資家が安定性と収益性を優先し、さらに慎重になった結果でもあるが、韓国のスタートアップが足を踏み入れている韓国の市場サイズと、目標とするターゲット市場のサイズに相対的な差があることに、その根本的な原因があるといえるだろう。資金不足の問題も解決していかなければならないが、同時に韓国のスタートアップエコシステムがグローバル競争力を確保することも必要だ。

従って、スタートアップがターゲットとする市場の規模を拡大することが不可欠だ。韓国で成功事例に挙げられるHyperconnect(ハイパーコネクト)とsendbird(センドバード)も、中東と米国など海外市場をまずターゲットにしてグローバル企業に成長した。Balance Hero(バランンスヒーロー)もインド市場をターゲットに集中して事業を拡大した結果、創業から10年で過去最大の売上を記録した。これは、韓国市場だけに頼るより、海外市場で機会を模索することがスタートアップの生き残りと成長のための重要な戦略であることを示している。

起業家たちに筆者がよく強調する言葉は「より大きな市場を狙え」というものだ。国家的、文化的違いは時間と努力を通じて克服することができ、同じ努力を傾けた時、韓国市場だけを狙うよりも、海外市場でより良い成果を得られる可能性が高い。実際、グローバル市場進出は、より大きな顧客層、様々な投資の機会、そして革新的なネットワーク形成を可能にする。これは単に売上増大だけでなく、企業の持続可能性と競争力を強化する上でも重要な役割を果たす。

もちろん難しいのは事実だ。Balance Heroも予想した期間よりも軌道に乗せるまでに長くかかり、予想外の難関に遭遇して事業を畳みかけそうになる危機もあった。それでも海外進出は単に選択ではなく、不可欠な戦略だ。

スタートアップがグローバルの舞台で成功するためには、ローカライゼーション戦略とともに、強力なパートナーシップの構築が必要だ。現地で多くの時間を過ごして現地の環境に慣れ、現地でクオリティの高い人材を採用して権限を委任し、役割を任せることを続けていかなければならない。このプロセスで政府機関の中小ベンチャー企業部(省)、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)などが支援するプログラムを活用することも必要だ。

また、起業家たちは自信を持って挑戦すべきだ。グローバル市場は無限の可能性を提供し、失敗さえも貴重な学習経験として作用し得る。特にAIなどの先端技術分野では、急速に変化する環境の中で、新たな機会を捉える力が重要だ。韓国のこれまでの経験とデータ及びAI、テック力を基にすれば、十分競争力を兼ね備えることができる。また、このために起業家たちは絶えず学習し、ネットワークを拡張し、変化に俊敏に対応しなければならない。

シャオミの創業者は「台風の雪の中では豚も飛ぶ」と話した。成長する国で、成長するビジネスをすれば、韓国のスタートアップにはより高い可能性がある。また、成長する国でのビジネスは、単に売上増大を越えて、企業の長期的な生き残りと成長のための鍵となる。海外をターゲットにする時、投資や買収合併(M&A)などの可能性はさらに高い。政府と民間の協力の下、起業家たちは自信を持ってグローバルの舞台に挑戦すべきで、これを通じて韓国のスタートアップエコシステムが世界的に認められた革新ハブとして位置づけられることを期待している。

<画像=Balance Heroのイ・チョルウォン代表 >

原文:https://www.etnews.com/20250623000072