ヒットは設計される
ハリウッドがスターのシステムを発明したとき、彼らが売ろうとしていたのは映画ではなく、「夢」だった。スタジオは観客の欲望を設計する方法を習得し、俳優はコンテンツの一部ではなくコンテンツそのものとなった。韓国ドラマは今、その方法を今一度使用している。
最初からグローバル市場を狙って立案されたMBCの金土ドラマ『21世紀の大君夫人』は第10話の全国視聴率13.3%、首都圏13.5%、瞬間最高視聴率15.4%で2日連続自己最高記録を更新した。1話の累積視聴者は2225万人、Disney+(ディズニープラス)のグローバル部門韓国シリーズ1位となった。このヒットの背景には緻密な設計があった。
1つ目の戦略、キャスティング
Kakao Entertainment(カカオエンターテインメント)とMBCは企画段階からグローバルOTTでの同時公開を前提にキャスティングを行った。主演のピョン・ウソクは『ソンジェ背負って走れ』でアジアでのファンダムを確固たるものにし、IU(アイユー)は長い間築いてきた韓国内外での信頼により、本人そのものがコンテンツとなる俳優だ。グローバルファンダムを持つ2人の俳優を企画初期から計画に含めたのがこの作品の1つ目の戦略だった。
結果は放映前から現れた。話題性調査史上初、放送開始前にドラマ話題性で1位を記録したのだ。放映後も5週連続出演者話題性1・2位を維持し、ニュース・VOD・動画全部門を席巻した。ファンダムがドアを開き、システムが一般視聴者まで引き寄せた。グローバルを優先目標として構造設計されており、韓国でのヒットは一緒に付いてきた成果であった。
スターパワーはドラマの外でも作用した。IGAWorks(アイジエーワークス)のTVインデックスによると、IUがモデルを務めるフライドチキンブランドのPPLシーンの本放送・再放送合算での視聴者は約689万人に達したという。スターのブランドパワーが広告消費につながるということを裏付ける数値となった。
Netflix(ネットフリックス)ではなくDisney+を選んだ
キャスティングが戦略の全てではない。MBCはDisney+をパートナーとして選んだ。核心はIPだった。
SBSは2024年にNetflixと戦略的パートナーシップを締結した。制作費を受け取る代わりにコンテンツを渡すという仕組みだった。MBCは別の道を選んだ。Disney+をパートナーに選び、製作費300億ウォン(約32億円)台のプロジェクトでIPを手にした。プラットフォーム投資を受けながらもIPを確保できている事例は韓国ドラマ市場でも珍しいとの評価を受けている。
Disney+全世界韓国シリーズ1位、放映初期73カ国でTOP10入り。MBCは全ての広告枠が完売したとしている。
ない国を売る
21世紀の立憲君主制の大韓民国。地図上には存在しない国である。しかし、それを全世界が目にしている。
グローバル視聴者に韓国の歴史知識を求めない世界観。それがこの作品の3つ目の戦略だった。韓国という具体的な地名を使いながらも、現実とは異なった世界観を作ることで、特定の文化圏の知識がなくても楽しめる普遍的なストーリーを形作ることができる。
俳優のキャスティングを終えた後に、合流したパク・ジュンファ監督はドラマ『還魂』シリーズでファンタジー世界観構築の経験を積んだ演出家だ。2022年のMBC脚本公募で審査委員たちが「立憲君主制という設定を現代的にうまく展開させたロマンス」と評価した脚本に、彼の演出がプラスされることで、世界観が完成した。米国のTIME(タイム)誌が「2026年、最も期待される韓国ドラマ」1位にこの作品を挙げたのは、この世界観が海外でも通用するということ意味している。
276億ウォン(約29億円)の赤字と1つの選択
この作品が生まれた背景には切迫感がある。MBCは昨年276億ウォン(約29億円)の営業損失を記録した。放送文化振興会の理事会でこの作品は「創業以来最大の収益の柱となるドラマ」と言及された。
原作は2022年のMBCドラマ脚本公募長編シリーズ部門優秀賞受賞作である。同じ公募の応募作である『ストーブリーグ』は編成の問題でSBSで放映された。しかし、今回は違った。企画会社と放映社が同一であり、地上波公募がグローバルテントポールIPの出発点となり得ることを初めて示した。
視聴率は氷山の一角
Nielsen Korea(ニールセンコリア)はDisney+ストリーミング数は集計しない。第10回の全国視聴率13.3%は水面上の数字だ。『ソンジェ背負って走れ』がテレビ視聴率5%台にとどまっていたにも関わらず話題性でトップを独占していたように、視聴率という指標では現実を完全に測ることはできない。
本当の数字は他にある。多くの視聴者を集めただけでなく、その視聴者の27.6%が放送分量の4分の3以上を最後まで視聴しているのだ。これはチャンネルを変えなかった人がそれだけ多かったということを意味する。第1話基準MBCチャンネル本放送・再放送合算の視聴者だけ901万人であり、TVチャンネル全体を合算した累積視聴者は2225万人に達した。Disney+でのストリーミング数はこの集計には含まれていない。そして第10回がシリーズ最高視聴率を記録した。後半に進んでも、視聴者が離脱しなかったという事実自体が1つの指標となる。これは、システムが作ったドアを物語が最後まできちんと掴んでいた結果である。
韓国ドラマの次の舞台はすでにグローバルだ。韓国国内で検証を終えた後、海外に出るのではなく、最初から世界を視野に入れて立案する方法へと変化している。良い材料が良いコンテンツを保証するわけではない。グローバルを狙った企画、検証されたキャスティング、普遍的な世界観、それをひとつにまとめる演出が噛み合ってこそヒットが生まれる。『21世紀の大君夫人』はこの方法が実際に作用することを示した。
