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「海外進出を狙うスタートアップ、日本を狙ってみて」

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「海外進出を狙うスタートアップ、日本を狙ってみて」

韓国最大規模の創業財団であるD・CAMPのキム・ヨンドク代表インタビュー全文

  • 日本、アナログ文化が多い
  • デジタルインフラ参入の機会
  • 有料サービスにも好意的
  • 2021年にD.CAMP代表に就任
  • 就任後、グローバル、地域事業を推進
  • 任期満了後もベンチャー支援継続


「韓国のスタートアップが海外進出を検討する際、日本を思い浮かべてみてほしいと言いたいです。日本にチャンスがあります」。

D・CAMP(ディーキャンプ)のキム・ヨンドク代表は最近、ソウル市にある宣陵(ソルルン)D・CAMPで韓国の毎日経済新聞のインタビューに応じ、このように語った。キム代表は「日本は地理的に、心理的に近い国」とし、「革新の面で韓国が比較的優位性を持っているため、参入さえすれば大きな成長を遂げることができるだろう」と展望した。

Gmarket(ジーマーケット)をNASDAQ(ナスダック)に上場させてEXIT(エグジット)したキム代表は、その後、LOTTE VENTURES(ロッテベンチャーズ)を経て、2021年にD.CAMPの代表に就任した。D・CAMPは2012年に19の金融機関が出資して設立した韓国最大規模のスタートアップ支援機関で、Karrot(キャロット)、Viva Republica(ビバリパブリカ)、Woowa Brothers(ウーアブラザーズ)、yanolja(ヤノルジャ)などのユニコーン企業はもちろん、3500社あまりのスタートアップがD・CAMPの間接投資を受けた。

ベンチャー市場に多くの資金が流入した2021年、そして投資心理が冷え込んでいる2023年。極と極を見せる市場で、キム代表は「グローバル」と「地域」という全く異なる二つのキーワードに重点を置いて事業を推進してきた。グローバルは韓国のスタートアップの海外進出、地域事業は韓国の非首都圏地域のスタートアップ交流活性化プロジェクトを意味する。キム代表は「非首都圏地域のスタートアップの交流、連結を支援し、彼らが成長できる足場を用意しようと努力してきた」とし、「また、韓国のスタートアップが海外の舞台でも思う存分飛躍できる場を設けようと思っていた」と語った。以下はキム代表との一問一答


△昨年から海外事業への支援が増えた。

▲D.CAMPに来てから、韓国のベンチャー企業の海外事業支援について模索してきた。どこに行くのか、どんなサービスをするのか?そして、なぜ海外事業をしなければならないのかという答えを探した。韓国のベンチャーエコシステムの流れを見ると、韓国のスタートアップがかなり成熟し、実力もあると感じた。海外に十分に出ていけると考えている。また、韓国の国内市場は狭いため、必然的に海外に出るしかない。


△海外の中でもどの国に焦点を当てているのか?

▲海外進出といえば、まずは米国を思い浮かべる。世界最高のスタートアップの聖地だ。実力のあるスタートアップが米国に行けば成功するだろうが、基本的に「比較優位」が十分でなければならない。米国と韓国を比較したとき、私たちが比較優位性があるかというと、正直、少し劣る面がないわけではない。韓国からの輸出が多いのは東南アジア、中国などだ。比較優位があるからこそ可能だ。このような点で日本と比較したとき、我々が優位だと思う。そこで、私たちが参入する価値があるシンガポールを中心に、東南アジアと日本をターゲットにした。


△日本市場への進出と聞いてもしっくりこない。なぜ日本をターゲットにしたのか。

▲人口は1億人を超え、国土も広い。所得水準もとっくに3万ドルを超えている。蓄積された資本は比較にならないほど豊かな国だ。飛行機で2時間で行ける。スタートアップのエコシステムの観点から見ると、革新のスピードの面で韓国は強みがあると思う。日本はアナログ部分が強い。体系的でマニュアルを重視し、先進国として備えるべき確固たるインフラなどがある。ただ、革新のエネルギーは韓国の方が大きくてスピーディーだと思う。ビジネスになるためには、ギブアンドテイクにならなければならない。互いに譲り合い、共存する部分が確実にある。


D.CAMPのキム・ヨンドク代表


△日本で韓国の大企業が大きな活躍をしていない。

▲大企業は難しいと思う。過去、韓国の大企業はほとんど日本から技術とビジネスモデルを取り入れてきた。日本の技術を韓国に合わせてローカライズし、さらに一歩進んで世界的な技術にした。韓国のスタートアップは自分たちのビジネスモデルで日本にアプローチするのだ。米国や欧州は成功時の報酬は大きいが、成功する確率は低い。確率を反映した期待値が米国、欧州は低い。特に欧州は欧州連合(EU)で結ばれているが、国によって文化が異なる。一つの市場として見るのは難しい。


△日本は低成長国という認識があるが。

▲低成長国であるということは、変化のスピードが遅く、変化をうまく受け入れられないという意味だと言える。考えれば考えるほど、もっとチャンスがあるのではないかと思う。これをむしろ逆手に取ることができると考える。そして有料サービスに対する認識において、日本は韓国、中国よりも好意的だ。最初はビジネスビジネスパートナーとして関係を築くのは難しいが、一度関係を築けば、長い間協力を続けることができる。もちろん参入は難しいだろう。ただ、売上規模、安定的な収益源をつくる上で日本が他の国に比べてメリットがある。地理的な利点もある。韓国に対する心理的・文化的な距離感も大きくない。


△D・CAMPはどのように日本進出を支援しているのか?

▲通常、海外進出を支援するというと、スペースを提供することが多い。しかし、それよりも、海外で実質的にビジネスをするための支援をすべきだと思う。海外に出ると詐欺に遭うことが多いが、現地のネットワークにうまく接続するだけで、このような懸念を大幅に減らすことができる。些細なことかもしれないが、現地で信頼できる人を紹介し、現地機関の助けを受けられるようにつなぐことだけでも、スタートアップが現地に適応する時期を3~6ヶ月程度短縮できると思う。D・CAMPはシンガポールの情報通信メディア開発庁(IMDA)と業務協約(MOU)を結び、韓国のスタートアップの海外進出を支援しているが、日本も同様だ。現在、日本のフィンテック革新センター「FINOLAB(フィノラボ)」と協定を結んでいる(FINOLABは日本の3大銀行が集まって東京に設立したインキュベーションオフィス)。


△現在、日本進出に関心のある韓国のスタートアップはあるか?

▲100社あまりの企業が参加している。もちろん、全ての企業が日本市場に進出できるわけではない。日本市場への進出前に韓国で事前点検をしなければならない。専門家とのミーティングを通じて、日本で事業性があるかどうかなども検討する必要がある。出発前にすべてのチェックリストを確認することで、現地市場で発生する可能性のある問題を最小限に抑えることができる。このために、この1年間ずっとD・CAMPのスタッフを日本に出張させた。現地の人々に私たちの意志を示すことも必要だからだ。一度日本を訪れてからしばらく経ってから訪れると、現地で私たちの意志を疑われることがある。1~2ヶ月ごとに長期出張をし、スタッフを入れ替えたり、新たに送ることなどを繰り返したりして、日本にD・CAMPが進出しているように見せようとしている。海外出張をするスタッフには申し訳なく、感謝するばかりだ。


△最近、スタートアップ市場の雰囲気が気がかりだ。投資が大幅に縮小したという話が多い。

▲昨年、米国が基準金利を急上昇させ、ベンチャーに投資する企業の資金が減った。リスクに投資するよりは、銀行に預けておくだけで高い利息がもらえるのだから当然のことだ。ロシアとウクライナの戦争、米国と中国の対立など、注視すべき話題も多くなった。ただ、ここでベンチャー投資がさらに減るとは思えない。来年上半期以降、景気が好転するという楽観的な期待をしている。投資市場は景気より先行する傾向があるため、今年後半からはベンチャー投資市場も良くなるのではないか?また、この困難な時期に生き残った企業の立場からすれば、競争力がある程度確保されたので、今後投資を受けるにはより良い環境になると見ている。


△投資が凍結している状況で、D・CAMPの役割は何か?

▲投資会社の立場では、現在の状況では保守的に運営するしかない。投資ファンドの場合も、後続の投資が続かないので、組成がうまくいかない。市場で良いスタートアップはどんどん出てくるので、水を与え続けなければならない。私たちは公益財団だ。もっと多くのところに投資したかった。D・CAMPは毎年15社に直接投資を行うが、今年は50社に投資するのが目標だ。こういう時こそ、私たちがベンチャーのエコシステムに力を与えなければならないと思った。もちろん、私たちスタッフにとってはかなり大変だろう。少人数で例年15件の投資を検討するのも大変だったのに、50件もやらなければならない。だから最大限プロセスを変え、代替案を模索している。今年5月までに22社に投資を完了した。スタッフには申し訳なく、感謝するばかりだ。間接投資も増やした。2021年以前は年間60億ウォン(約6億6,000万円)程度を間接投資していたが、昨年は200億ウォン(約22億円)を投資した。


△地域事業にも最近力を入れている。地域事業とは具体的にどのようなものか?

▲D・CAMPに来てやらなければならないと思ったことは大きく2つあった。グローバル事業と地域事業。地域事業は、韓国の非首都圏地域のベンチャーエコシステムのためのことだ。地域の起業エコシステムの最も急務な問題は「つながり」だった。地域の状況を見ると、かなり劣悪だと思った。投資家に会うことも容易ではなく、現地のスタートアップ同士の交流もあまりなかった。スタートアップはネットワークが非常に重要だ。非首都圏のスタートアップがソウルに来た時に感じる気持ちは、おそらく韓国人が初めてニューヨークに行った時に感じる気持ちと似ていると思う。スタートアップのエコシステムが全く異なる。インフラがかなり不足していた。つながりを活性化することが地域の起業エコシステムに最も重要だ。


△では、どのような方法で地域スタートアップの交流を活性化できるのか。

▲私たちが歩み寄っていった。圏域を慶尚道(キョンンサンド)、全羅道(チョルラド)、忠清道(チュンチョンド)、江原道(カンウォンド)、済州(チェジュ)に分け、毎月4つの都市で現地のスタートアップのための様々な交流イベントを行う。最も効果的なプログラムである「リモートワーク」を導入した。スタッフのアイデアで、一日、その地域にあるスタートアップの代表者とソウルの投資家やスタートアップの代表など関係者が集まり、一つのオフィスで働くというものだ。働きながら話をして、話しながら仕事をする。効果は絶大だった。終わったら、打ち上げをした。地域のスタートアップにはこのような機会が不足していた。


△地域にあるスタートアップはかなり肯定的か?

▲今年行った事業の中で最も成功している。昨年試験的にやった後、フィードバックをもらい、とても良かったので、今年は毎月やっている。このようなネットワークの連結は当然、結果が出るだろう。ただ、スタッフの業務負担が大きくなった。申し訳なく、感謝しかない。


△D・CAMPに来て2年が経った。一般的に任期は3年だ。

▲1年間は適応するのに時間を費やした。起業エコシステムにいたのだが、スタッフとコードを合わせるのに6ヶ月を費やした。初めて来てすぐにグローバル、地域事業を叫び、既存の事業規模を5倍に、投資を3~5倍にするなど、積極的に事業を拡大したため、スタッフの間で「すごい強者だ」「外から見たのと違うね」という話が出たそうだ。今まで色々なことをしてきた。自分で墓を掘った。私自身も大変だし、スタッフのバーンアウトも多くなった。でも結局、最初に話した通り、5倍まで成果が上がっているし、スタッフも成長し、自信もついてきた。


△今後の計画は?

▲今年、グローバル事業が本格化しそうだ。安定軌道に乗せなければならないし、地域事業は満足できるが、やることが多すぎる。スタッフもこれでは大変だ。スタッフの負担が少なく、安定的に回せる体制を整えることが今年の目標だ。私たちのスタッフはかなり若い。平均年齢は30代前半だが、情熱とマインドは相当なものだ。私ができることは、能力を高めることと、彼らがより力を発揮できる環境をつくることだ。


△個人的な計画が気になる。

▲性格上、一か所に長くいることができない。仕事が手に馴染んだら出発しなければならないようだ。安住するスタイルではない。最近いろいろ考えているのだが、新たに事業をやってみたいという気持ちもある。環境やエネルギー問題など、人類の生存に関わる問題に対して、代替案を模索し、ビジネスができないだろうか?でも、新しく事業を始めると、過労死するかもしれない(笑)。周りからは「第2線でサポートせよ」とアドバイスされる。第2線でできることが何かあるのかも考えている。

投資家になるという考えはあまりない。このエコシステムがとても良い。エネルギッシュな仲間と出会い、疎通できることはとても大きな感動だ。今の座右の銘は「他人の成功を助ける人になろう」だが、第2線でサポートすることもやりがいがある。


画像:D.CAMPのキム・ヨンドク代表がソウル・ソルルンD・CAMPで写真撮影をしている

原文:https://mirakle.mk.co.kr/m/view.php?sc=51800015&year=2023&no=470582

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記事を書いた人
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