「はるか昔、ウサギは不老不死の薬を求めて月へと旅立ちました。月明かりの下で、彼は臼を抱え、夜に休むことなく薬草をつき続けます。
おとぎ話のようなこの物語を、ブランドの核に据えた企業があります。それがまさに、Kビューティーのスキンケアブランド「tokki on the moon(トッキ・オン・ザ・ムーン)」を展開するOver The Moon Global(オーバーザムーングローバル)です。成分表だけでは区分ができないほど似た製品が多く、新しい素材が登場すればすぐに類似商品が次々と生まれるKビューティー市場の中で、同社は「良い製品のためなら月まで行く」というウサギの献身的な姿勢をブランド哲学に掲げました。
その哲学をもとに、tokki on the moonはローンチから半年余りでAmazonのミストカテゴリーのベストセラー100位以内に入り、最近ではオリーブヤングのグローバルモールにも登場しました。同ブランドを率いるキム・ユラ代表に、tokki on the moonについて詳しくお話を伺いました。

<over the moon.global キム・ユラ代表>
目次
- Q1.代表ご自身とover the moon.globalについてご紹介をお願いします。
- Q2.over the moon.globalを創業する前のご活躍について具体的にお聞かせいただけますか?
- Q3.自らブランドを立ち上げたいと思ったきっかけを教えてください。
- Q4.現在のチームはどのようにして結成されたのでしょうか?チームづくりで重視することについても教えてください。
- Q5. 「tokki on the moon」というブランド名は、どのようにして生まれたのでしょうか?
- Q6.米由来のPDRNを活用した製品開発について教えてください。
- Q7.製品詳細ページに登場する「スキップケア」とは、何でしょうか?
- Q8.ブランドを準備する段階で、Kビューティー市場についてどのように捉えていましたか?
- Q9.実際に「tokki on the moon」をローンチから間もないにもかかわらず、海外インフルエンサーから自発的なコラボレーションの提案が入ってくるそうですね。彼らが先にブランドに反応した理由は何だと思いますか?
- Q10.ブランド発売以来、最も記憶に残っている瞬間はいつでしょうか?
- Q11.Mark&Company・SOLID ONE PARTNERSと組むことになった経緯を教えてください。
- Q12.この先どのようなラインナップを計画していますか?
- Q13.今後の事業拡大について教えてください。
- Q14.最後に、代表が思い描くtokki on the moonの最終的な姿について教えてください。
Q1.代表ご自身とover the moon.globalについてご紹介をお願いします。
こんにちは、over the moon.global代表のキム・ユラです。私は11年間にわたり、事業開発とマーケティングのキャリアを積んできました。ハイパーコネクト、タリン、クリエイトリップを経てKビューティーブランドのバイオダンスで北米事業を統括しました。当時、2024年度基準でAmazonの売上を0ウォンから608億ウォンまで作り出し、その経験をもとに昨年over the moon.globalを創業して月のウサギの神話にちなんだ「tokki on the moon」というブランドを立ち上げました。
Q2.over the moon.globalを創業する前のご活躍について具体的にお聞かせいただけますか?
この事業を始める前には、「Biodance」というスキンケアブランドで働いていました。BiodanceのAmazonでの売上を0ウォンから608億ウォンまで成長させた経験を持っています。
当時、最も大きな課題として感じていたのは、製品力と、その魅力を消費者に伝える力との間にギャップがあることでした。例えば、Biodanceには睡眠中に4時間以上使用することで効果を発揮するスリーピングパックがあったのですが、この説明自体が消費者に全く伝わっていなかったんです。だから製品名を思い切って「オーバーナイトマスク」に変更し、インフルエンサーにシーディングする際にも、使い方を大きく書いた付箋を製品の目立つ位置に貼って送るなど、消費者が混乱する余地を最大限減らす工夫をしました。
また、韓国国内で既に効果が実証されていたパフォーマンスマーケティングの素材を、海外向けの訴求ポイントとして作り直すことだけに集中し、3~6ヶ月という時間を費やしました。当初は費用をかけない無償シーディングだけを実施していましたが、訴求ポイントとガイドラインを明確にしたことで、再生回数100万を超えるバイラルコンテンツが生まれ、その反応を確認して初めて、有料マーケティングにも自信を持って投資を拡大できたんです。その後、模倣するブランドが増えたため、「オリジナル」キャンペーンやニューヨークでのポップアップなど、他社がまだ取り組んでいない試みも継続的に実施しました。
このような判断が一つずつ積み重なった結果、マスクパックだけでなく、Amazonのビューティーカテゴリー全体で1位を獲得し、608億ウォンの売上を上げるという結果につながったのだと思います。
Q3.自らブランドを立ち上げたいと思ったきっかけを教えてください。
マーケティングや事業開発は、最終的には製品の企画・開発と一体となって進めるべきだと考えていましたが、当時の体制では、製品開発のプロセスに私自身が参加することは難しかったんです。
そこに、Kビューティー市場全体に対する問題意識も重なったことも影響があったかもしれません。
現在のKビューティー市場では、成分やテクスチャーは似通った製品が多い一方で、海外市場でも通用するブランドアイデンティティを確立できている企業は、まだ多くないと感じていたんです。米国の流通チャンネルへの進出を準備する過程では、韓国基準では十分にブランディングができているように見えるブランドであっても、現地ではブランドのアイデンティティについて、はるかに細かく問われることを実際に経験しました。
そうした経験を通じて、明確なブランドストーリーがなければならないという確信が生まれ、製品企画に携わりたいという思いと、この確信が合わさり、自らブランドを立ち上げることになりました。
Q4.現在のチームはどのようにして結成されたのでしょうか?チームづくりで重視することについても教えてください。
現在は私を含めて4人で事業を進めていますが、全員、以前に別の会社で一緒に働き、すでに多くの成果を生み出した経験のあるメンバーです。ブランディングを担当しているディレクターは、以前の職場で仲間として一緒に働いていた頃からブランディングについて深く考え、着実に意見を交わしてきた方です。デザイナーとも長い間一緒に仕事をしてきましたし、マーケターの2人とも、それぞれ以前インターンとして働いていた頃に出会いました。
チームメンバーを見るうえで、最も重視しているのは問題解決能力です。美容市場は非常に変化が早いため、経験の豊富さよりも、新しい状況に直面した時にも解決策を見つけられる人のほうが、はるかに重要だと考えています。その基準に基づいてチームを作っています。

Q5. 「tokki on the moon」というブランド名は、どのようにして生まれたのでしょうか?
もともとは、会社名である「over the moon」をブランド名として使いたいと考えていました。「月に上ったように喜びがあふれる状態」を意味する表現で、美容製品を通じてそのような喜びを届けたいという私たちのビジョンをそのまま盛り込んでいたんです。
ですが、商標権の問題で使用できないことがわかり、より直感的な「tokki on the moon」という名称に変更しました。「バニー」や「ラビット」のといった英語の名称の代わりに、ハングルでウサギを意味する「トッキ」という表現を使い、あえてKビューティーと言わなくても、自然に韓国さ感じられるようにしました。
キャラクターを取りれた理由は、ブランドに一貫した語り手が必要だと感じたからです。月のウサギの神話は、私が幼い頃から好きだった物語ですが、人々に不老不死の薬を与えるため、自らの命を捧げて月へ向かった、献身の象徴でもあります。その精神を受け継ぎ、「良い製品のためなら月まで行く」という意志をブランドに込めようと考えました。そういえば、この物語自体が、海外のお客様との自然な会話のきっかけになることもありますが、「どうしてうさぎなの?」と聞かれた時にこの話をすると、皆さんとても興味を持ってくださるんです。

Q6.米由来のPDRNを活用した製品開発について教えてください。
現在発売しているPDRNミスト、ゲル&クリーム、バブルマスクの3製品は、いずれも臨床試験を経て数値もかなり良好ですが、私たちは数値そのものだけでなく、この臨床試験データをどのようにブランド体験へとつなげるかにも力を入れてきました。
ミストは対照群と比較して、肌のバリア機能の改善効果125.47%を確保しており、この数値は米国のお客様に対する実際の訴求ポイントとして機能しています。
効果だけでなく、ビジュアルでも確実な訴求ポイントを作るため、製品開発にはかなり力を注ぎました。人工パールを使用しなくてもほのかに輝くミスト、泡が立ち上がった後に止まることで洗い流すタイミングを知らせてくれるバブルマスク、宝石を思わせる見た目のゲルクリームまで、思わず実物を見て、使ってみたくなるようなテクスチャーを目指しました。
成分には、韓国らしさと科学的根拠を両立させるという考えのもと、米由来PDRNと黒米エキスを採用しています。黒米は抗酸化成分が白米より6倍多く、米由来PDRNは精米の過程で廃棄される米ぬかをアップサイクルした、持続可能な原料でもあります。また、黒米には「ブラックライス」ではなく「パープルライス」という名前を付けましたが、ブランドのメインカラーが紫色なのもこの成分から着想を得たものです。

Q7.製品詳細ページに登場する「スキップケア」とは、何でしょうか?
あまり聞き馴染みのない言葉かと思いますが、文字通り、スキンケアの工程を省いて使えるという意味です。以前10ステップ、14ステップといったコリアンスキンケアが流行しましたが、実際に現地のお客様に会ってみると、手順を理解できなかったり、負担に感じたりする場合の方がはるかに多かったんです。そこで、ステップ数を減らしながら、効果を最大化しようという考えから、この言葉をつけました。
実は、似たような概念のスキンミニマリズム、スキンストリーミングといった表現は、以前から存在していました。「スキップケア」は私たち独自の表現を見つけようとして生まれた言葉ですが、最近ではいくつかの雑誌でも使われているようです。
私たちは、この方向性を最も明確に製品とメッセージに込めたブランドになりたいと考えています。

Q8.ブランドを準備する段階で、Kビューティー市場についてどのように捉えていましたか?
成分や価格だけを理由に購入される製品は、いつでも他の商品に置き換えられると思っています。 例えば、米国の「Rhode(ロード)」や「Summer Fridays(サマーフライデイズ)」のようなブランドは、成分を詳しく知らなくても、新商品が出れば購入するファン層があるのに対し、Kビューティーは「セクシーではないけれど効果のある製品」といった切り口でコンテンツに登場することがよくあります。技術力は高いのに、欲しいと思わせるブランディングができていないという市場の空白を感じていました。
だからこそ、創業初期から「自分のドレッサーに置きたくなる化粧品」を作ることを目指しました。
Q9.実際に「tokki on the moon」をローンチから間もないにもかかわらず、海外インフルエンサーから自発的なコラボレーションの提案が入ってくるそうですね。彼らが先にブランドに反応した理由は何だと思いますか?
やはり私たちがこだわってきたブランドイメージが伝わった結果だと思っています。
一般的に、新しいブランドはインフルエンサーからの返信率が低いのですが、私たちは比較的高い方で、他のインフルエンサーが投稿したコンテンツを見て、先方から連絡をくださるケースも多いです。以前は1日10件程度だったご提案は、ありがたいことに、現在では1日に数十件まで増えました。多くの問い合わせに対応するため、返信の自動化や、専用フォームでの応募受付などを行い、ブランドと相性が良いインフルエンサーの方々を中心に進めています。

Q10.ブランド発売以来、最も記憶に残っている瞬間はいつでしょうか?
しばしばインフルエンサーの友人たちの動画に私自身が直接登場し、自分のブランドや製品を紹介することがあるのですが、数日前、聖水で行われた小規模の合同ポップアップに、その動画を見て来てくださった米国のお客様がいらっしゃいました。
その方は、韓国で必ずやりたいことリストの一つに、私たちのポップアップを訪れて製品を購入することを挙げてくださっていました。会場内の他のブランドの商品を見ることなく、私たちの製品だけを購入して帰られたのですが、本当に「私たち」に会いにきてくださったのだと感じました。これまでで最も大きな励みになった瞬間だったと思います。
Q11.Mark&Company・SOLID ONE PARTNERSと組むことになった経緯を教えてください。
二社とは紹介を通じて知り合いました。初めて会って話をする中で、ビューティー企業を本気で成長させようという意志をとても強く感じ、ビューティー市場に対する理解度とネットワークが、私たちにとって実質的な助けになると確信したため、一緒に取り組むことにを決めました。
実際に、流通会社の紹介や、オフラインイベントへの参加や支援事業など様々な面で積極的に支援してくださっています。少人数のチームだけでは手が回らない部分を、実務面でも一緒に支えていただいているので、投資だけを受けて終わる関係ではなく、それ以降の成長も一緒に作っていく関係なのだと実感しています。
あの時一緒に取り組むことを決めて本当に良かったです。

Q12.この先どのようなラインナップを計画していますか?
下半期に、クレンザーとセラムを発売する計画です。クレンザーは現在と同じ米PDRNラインで展開し、セラムはもう少しインテンシブなケアコンセプトに、新しい成分を検討しながら準備を進めています。
Q13.今後の事業拡大について教えてください。
米国と韓国国内を中心にブランドを立ち上げましたが、現在、米国AmazonとTikTok Shopで築いたB2Cの成果を、次の市場へと広げている段階です。特に、オリーブヤングのグローバルモールでは、個別マーケティングを行っていなかったにもかかわらず、スキンケアカテゴリー全体20位以内に入ったのですが、私たちにとって、これは非常に意味のあるシグナルでした。 「北米市場に集中して認知度を高め、マーケティングリソースを重点的に投入すれば、他の市場も自然に開拓できる」という、これまでの経験に基づく戦略が実証されつつあると考えています。
そのため現在は、そのような自然な反応が見られる地域から、オフライン展開やB2Bへと拡大を進めています。北米圏のオフライン流通チャネルについて協議しているほか、シンガポール、日本、中東でも同様に話が進んでいます。欧州については、まだ市場参入前の段階なので、まずは許認可の取得からコツコツ進めています。
また、競争があまりにも激化しているオンライン上の露出から一歩離れ、コア顧客が自発的に集まる合同ポップアップに参加することでブランドを広め、私たち独自の強固なコミュニティを構築したいと考えています。7月にはラスベガスで展示会に参加し、9月にニューヨーク、10月にLAでお客様にお会いする予定です。

Q14.最後に、代表が思い描くtokki on the moonの最終的な姿について教えてください。
一般的に、基礎化粧品によるスキンケアはメイクアップと違って面倒で、寝る前にルーティーンとして仕方なくやるものとして受け止められることが多いですよね。私は、そのイメージを覆したいんです。やらなくてはいけないことではなく、むしろ楽しみで待ち遠しくなるような瞬間にできるような製品をこれからも作り続けたいと考えています。また、優れた製品だけでなく、楽しい経験も提供できる、持続可能なブランドになりたいです。
🐇Over the moon.global公式サイト:https://www.overthemoon.global/
原文:https://www.innoforest.co.kr/report/569/
革新の森:https://www.innoforest.co.kr/
マークアンドカンパニー:https://markncompany.co.kr/
